良くも悪くも主演・堺雅人の映画だと思った。ストーリーに劇的な展開があるわけでない。何か事件が起こるわけでもない。幕末に生きた一人の武士が家計簿を付けていたという話である。
初めから「武士の家計簿」を見るつもりで出かけたわけではなかった。
5月3日、今話題の「八日目の蝉」を妻と一緒に観ようと札幌シネマフロンティアに向かった。
ところがゴールデンウィーク中の話題の映画ということで観ようと思った時間帯は満員のために入場できなかった。
そこで帰ればよいものを、私たちはその足で札幌駅北口から程近いところにある「蠍座(さそりざ」に向かった。名画座である蠍座でかかっている映画に期待したのだ。
するとちょうど良い時間に「武士の家計簿」が上映されるというので急遽観ることにしたのだった。
※ 右が主演の堺雅人、左が妻役の仲間由紀恵です。
映画は加賀藩・前田家に代々算用者(会計係)として仕えた猪山家の八代目の直之が猪山家にかさんだ借金の返済のために「勝手方入拂帳」(家計簿)をつけ、家計費の無駄を省きつましく生きたという実話を映画化したものである。
※ 上役に対面する主演の堺雅人です。
冒頭に記したように劇的な展開があるわけではない。何か事件が起こるわけでもない。つましく生きる武士の生活のエピソードが散りばめられた映画といった印象である。
このような映画での堺雅人の一種独特の存在感が光る。まさにはまり役といえようか。
以前、「南極料理人」の堺雅人を観たとき「彼のどこが良いのか」よく分からなかったが、彼はこうした淡々としたストーリーの役柄に存在感を発揮するタイプのようである。
算用者というのは、今で言えば経理係的存在だろうか?
刀が幅をきかす武家社会においては目立たない傍流的存在だったのかもしれない。
そんな武家社会において算用者として力を発揮しつつ、自家の入拂帳(家計簿)をつけて一家を守った侍がいた、という意外性がこの映画を興味深くしている。
※ 藩の算用者はこのように一ヶ所に詰めて計算(算盤)をするようです。
一つの発見があった。
この蠍座は名画座ということで料金が一本800円なのだが、シニア(60歳以上)は700円ということが判明した。
時期を逸しながらも話題作が時折上映される。これからもチェックしたい映画館である。