ヒトリシズカのつぶやき特論

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2013年6月24日の日本経済新聞紙朝刊の「設備更新 減税で促進」を拝読しました

2013年06月26日 | 日記
 2013年6月24日発行の日本経済新聞紙朝刊の一面記事は見出し「設備更新 減税で促進 法人税額を圧縮」という記事です。経済産業省と財務省が2014年度の税制改正として検討している法人税減税の概要を伝える記事です。

 日本経済新聞社のWebサイト「日経電子版」では、当該記事の見出しは「設備更新 減税で促進 損失を前年度分から還付」と少し変わっています。



 安倍晋三内閣は、今月閣議決定した成長戦略として、2012年度の企業の設備投資額が63兆円だったものを、今後3年間で70兆円台に乗せる目標を掲げました。これを実現する具体的な施策として、経済産業省と財務省は製造業などの企業が設備投資を促進する具体策を考案していると報じています。

 具体的には(1)設備廃棄による欠損金を前年度に納付した法人税から還付する、(2)原価償却費を一括して損金に算入できる、(3)研究開発支援 の三つを提示すると報じています。

 こうした設備投資減税の恩恵を受ける製造業として「電機業界」などは技術革新が激しいので、設備を廃棄すると、減価償却が進んでいないために、「巨額の除去損が生じて赤字になるケースもある」と、記事では報じています。

 この「設備更新 減税で促進」の対象は、巨額赤字に苦しむシャープやパナソニック、ソニーなどなのでしょうか。減価償却の進んでいない生産設備の廃棄を進めることは、新しい生産設備を導入することに本当につながるのか疑問が残ります。また、事業不振を続ける国内の半導体企業は生産設備の廃棄を進めても、生産設備更新を実行するかどうかも不透明です。

 最近の円安によって中・小型液晶パネル事業を好転させているジャパンディスプレイ(東京都港区)は既に生産設備の増強を発表済みです。この設備更新(?)が減税対象になるのかどうかも不明です。

 見出しの「設備更新 減税で促進」が実現できるのか、よく分かりません。電機業界や自動車業界では、以前の円高対策として、生産設備の海外移転が進んでほぼ移行済みです。日本国内にある生産設備を廃棄しても、国内に新しい生産設備を導入するのかどうかは、国内・国外を組み合わせた生産態勢全体の事業戦略に依存します。

 電機業界や自動車業界などの大手企業では、国内の生産設備の更新は施策案のように、一部は生産設備の更新を進める可能性があります。これに対して、中小企業や零細企業は生産設備を更新する余裕があるのかどうかは不透明です。その理由は、電機産業でのヒット商品不足です。例えば、国内メーカーの携帯電話機・スマートフォンや液晶テレビ、パソコン・タブレット型携帯機器などで、ヒット商品が誕生すれば、その部品などを供給する中小企業や零細企業は増産に励みます。こうなれば、生産設備の更新が始まります。そのヒット商品が登場する兆しがあるのかどうかは分かりません。

 また、自動車業界では小型乗用車から軽自動車へのシフトが国内では進んでいます。ハイブリッド自動車を含めた小型自動車で、ヒットがでるのかかどうかも不透明です。

 中小企業や零細企業が、今後仕事が増えると判断しない限り、生産設備の更新には踏み切りません。

 アベノミックスによる成長戦略では、日本企業が研究開発を進め、その研究成果を生かした独創的な製品を市場に送り出し、その製品がヒット商品にならないと、生産設備の更新を実行しません。日本のモノづくり企業がヒット商品を産み出すことが、設備更新を進める前提になります。こうした前提条件を施策ではどう織り込んでいるのかどうかは、今回の経済産業省と財務省が提案する法人税減税ではよく分かりません。