太宰 治
若い頃ハマりましたよ、太宰治。
なぜかっていうと母の初恋の人(中学校の先生)の写真がすごく似ていて
気になってしまったからなのね。
記憶も薄れかけていましたので
ブームに乗って本棚から黄ばんだ文庫本を取り出してみました。
豆電球がよく似合う暗さと侘しさがあるのに、ユーモアが感じられる作風、
読んでいたら思い出してきました。
年ごろも境遇もバラバラな女性が主人公の、14篇が収められています。
主人公たちは、一見弱い立場や悩み多き状態の女性のようですが
なぜかポジティブ、というか、おおらかな印象を受けました。
女性は何も言わずに耐えるが良し!と思ってそうな気がしないでもないけどね。
でも、男ってしょうがないのです、という雰囲気も漂う…
だから許してね、ってことか?
3~4篇を選ぶのがすごく難しかったのですけれども、特に気に入ったものを…
『恥/1942年』
作品に書いてある通りの、貧しく自堕落で病気がちな作家だと思って叱咤激励の手紙を送り
ついには毛布をあげようと家まで訪ねて行ったのに…
“ 作家 ” という響きが醸し出すイメージ…今なら外国で猫と遊んでいそうですが
当時は酒浸りで女たらしタイプが主流だったのかしら?
『十二月八日/1942年』
いつものような朝支度の合間に、ラジオから「米英と開戦」と聞こえてきます。
変わらない日常のようで、新聞もラジオも会話も、戦争のことばかりになります。
第二次世界大戦開戦の日、主婦が送った一日を記したものです。
まだまだ庶民生活は長閑で、皆が「日本が勝つ!」と思っているんですよね…
『雪の夜の話し/1944年』
せっかくスルメを手に入れて、妊娠中の兄嫁に持って帰ろうとしたのに
雪にはしゃいで落としてしまいました。
そこで美しい景色を瞳の中に残して、兄嫁へのおみやげにしようと思います。
これは『少女の友』という雑誌に掲載されたそうで、とても可愛いお話です。
でも怠け者で金づまりの作家(兄)が登場したりして… 自分のことかな?
『貨幣/1946年』
七七八五一号の百円札のひとりごとです。
新しかった時はありがたがられたのに、次第に闇の世間で使われるようになりました。
でも時には、とても心温まることに使われることもあるんです。
女性に見立てられた百円札が身の上を語るんですけどね… いい話し。
お金を使う時に、この物語を思い出せば無駄遣いが減るかしら?
他にも、孤高と清貧の画家だと思っていた夫がぁぁぁ という『きりぎりす』
十二歳で将来を嘱望されてしまった少女の戸惑いを描いた『千代女』
人の良さにつけ込まれて客をもてなし続ける『饗応夫人』なんかが好きでした。
『おさん』というのは、主人公の夫が心中する話しなんですけれども
これが太宰自身の心中を、前もって茶化しているような気がして…ちょっと複雑です。
ほんと、再読して良かったわ!!
他の本も全部読み直してみようと思っています。
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ちくま文庫は表紙が素敵です