殺し屋のような風采の男がミッションを受けて殺しを実行する、という物語なのだが、サスペンスではない。犯罪映画ですらないかもしれない。
音楽で言えばマイケル・ナイマンのミニマル・ミュージックを映像で見せられているような感覚だ。単純な反復が繰り返され、ほとんど展開はない。が、同じ反復でも微妙に変化しながら徐々に展開している。
殺し屋が太極拳のようなエクササイズをし、2杯のエスプレッソを注文する。そこにメッセンジャーが現れ、指示書と報酬の入ったマッチ箱をお互いに交換すると男は読み終えた指示書を飲み込んでしまう、という光景が場所と相手を変えながら延々と繰り返されるのだ。
何かが起きそうで起きない。おかげで前に座っていた叔父さんは途中で眠りに落ちてしまった。なかなか豪華な配役も見られるのだが。
他のジム・ジャームッシュ作品では「コーヒー&シガレッツ」が感覚的にもっとも近い。コーヒーとタバコを基本アイテムに人生の諸相を見せる、こちらはなかなか味わい深いオムニバス作品になっていた。