フランスの小説家が初めて手がけた監督作だというが、とてもよく出来ている。抑制の効いた演出で、ヒロインの閉ざされた心がゆっくりと開いていく、そのプロセスが描かれる。
何が起きたのかボンヤリと分かるが、それがだんだんハッキリした実像を結んでくる。それは映画のために意図されたミステリーなどでは無く、15年の不在の後にヒロインの実像が世界に認知される過程そのものなのだ。
主演のクリスティン・スコット・トーマスが素晴らしい。ラストに「私は、ここにいる」という台詞が二度繰り返される。二度目は自分自身に向かって言っているように聞こえる。
「アバター」も面白く見たが、その一方でこういう作品もキチンと作られ、それを日本でも鑑賞できるのがうれしい。