SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「デス・プルーフ in グラインドハウス」

2007年09月05日 | 映画(タ行)
 サイコキラーの元スタントマンとその標的になる現役スタントウーマンの対決映画。

 スタントウーマン役に本職のスタントウーマンを起用、本来スクリーンに顔をさらさないスタントの本格的演技デビューだ。したがって危険シーンもCG無しの実写ですべてを見せてしまう。

 主人公が登場するのは映画の後半で、それまではヒッチコックの「サイコ」のように、話の主役と思っていた人たちがあっさり死んでしまい、観客は感情の移入先をなくして途方にくれてしまう。
 ただ感情移入したくなる主役と間違うような人物は出てこず、若いお姉ちゃんたちがどうでもいいようなことを延々と喋り捲っている風景がB級テイストというべきか、タランティーノ的というべきか。

 その緩い感じが急に殺気を帯びてトーンが一変するあたりの感覚は見事だ。カート・ラッセルがサイコキラー=中年の元スタントマンを怪演している。
 スピルバーグのデビュー作「激突!」('71)は最後までドライバーの顔がわからないが、こんな人だったのかもしれないと思わせる。

 本作ではその「激突」ではなく、同じ年に公開されたアメリカン・ニューシネマの「バニシング・ポイント」(リチャード・C・サラフィアン監督)がキーになっている。

 ラストはあまりに唐突に終わってしまうのが可笑しいが、相手が悪党だとはいえ、その報復は一種の凄惨なリンチであり、こんなことでスカッとしてはいけないのではないか、とややうしろめたい気持ちになる。