SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「東京タクシー」

2010年03月03日 | 映画(タ行)

 韓国のキム・テシク監督が撮った日本語の映画。

 楽天的な気分が全編を覆っている作品だ。批判的な意味ではなく、むしろそれがとても心地良い。

 DVDでは発売されているが、映画版は編集を変えてあるということだ。しかも一般公開の予定が無く、四谷の韓国文化院で開催された上映会(2/25)以外は、夕張映画祭ともう一箇所(関西方面?)の上映会でしか見ることが出来ないそうだ。2009年の釜山国際映画祭には特別招待を受けている。

 ソウルのロックフェスティバルに参加することになったロックグループの一人が飛行機嫌いで、ではタクシーで行ってしまおう!という乗りの作品だ。で、どうやったのかは分からないが、あっけなく着いてしまってからのロードムービーである。

 韓国を走る東京タクシーを見て、違法営業ではないかと現地のタクシーが追う。ドライバー役が山崎一で、つかまった挙句の片言英語のやり取りに「駅前留学nova」での学習体験が活きており笑える。(novaCMのタレントだ。)

 全編にみなぎる「明るい希望」は何なんだ!機会があればぜひ見るべし!!

映画 「ディア・ドクター」

2009年11月16日 | 映画(タ行)
 このところ映画付いている笑福亭鶴瓶が主演。瑛太、余貴美子、香川照之、八千草薫 がしっかりと脇を固めている。

 何かを求める人たちがいて、それを与える人がいる。ただそれを与えるには資格がいる、というのがテーマだ。

 資格とは法によるライセンスということだが、ライセンスを持っている人たち以上に真摯にそれをこなしているとしたら、ライセンスがないことを咎める事が出来るのだろうか。

 その自称「医師」が冒頭近くで、「車は運転しない、だって免許を持っていないから」と言っている。自分でよく分かっているのだ。そういう意味では一番苦悩したのは自分自身のはずだ。ただ、それが鶴瓶のキャラクターなのかそうは見えない。

 ラストのさらなる変身はむしろ爽やかで、うれしい味わいを残してくれる。

 テイストは少し異なるが、緒形拳が主演した奥田瑛二監督作品「長い散歩」も咎めたてることの出来ない罪を描いていた。

映画 「ドゥームズデイ」

2009年10月02日 | 映画(タ行)

 イギリスを舞台に、ウィルス感染から物語が始まるが「28日後...」「28週後...」のホラー系には走らない。

 感染地区が封鎖されて27年、生存者がいるらしいことが分かる。壁の外にもウィルス感染者が出たため、封鎖地区にワクチンを求めて潜入する部隊の物語だ。

 無法地帯と化した封鎖地区でのサバイバル・アクションの展開が見所となる。壁の中を率いるのがまるでパンク・ロック集団で、生贄集会はロックショーの趣だ。全体にジョン・カーペンター風、マッドマックス風かと思うと中世騎士が現れて古代ローマのコロセウム風死の闘技が繰りひろげられたりする。

 この混沌とした様式、既視感の奔流の中で凄まじいパワーのアクションが炸裂する。しかも主人公が女性、というところにエイリアンやターミネーターからの流れも合わさる。

 ファンにはたまらないカルト作品となるだろう。

映画 「TAJOMARU」

2009年09月18日 | 映画(タ行)

 芥川の「藪の中」を原作とする映画といえば黒澤の「羅生門」だが、三船の演じた多襄丸を今回は小栗旬が演じる、と思っている人が多いのではないか?

 そこに多少のひねりがある。

 「多襄丸」は泣く子も黙る伝説的な盗賊だが、ここでは一つのブランドのようになっており、特定の個人の名前ではない。むしろ「多襄丸」を名のる資格を持った盗賊と言った方が良い。

 三船の多襄丸は本作では松方弘樹が演じている。王を倒したものが次の王になるように小栗が多襄丸の名を次ぐ。

 「羅生門」で有名な森のシーンも白州の証言も筋書きに散りばめてある。ただ、本作でキーとなるのは田中圭の演じる新たなキャラクター、桜丸だ。敵役であり、ラストの小栗旬との対決シーンはなかなかの迫力だ。

 しかし、桜丸がダークサイドに落ちる当たりの描写があえて省略されているために、物語としての厚みがなくなっている。善から悪へのその変身が思いもよらないミステリー仕立てになるのなら省略もありうるが。

 松方・多襄丸はさすがにうまい。貫禄の中に軽さかあって素晴らしい演技だ。ただ、結果的にこの人物はあまりの好人物なのだ。したがって倒されるのは単なる誤解によるのであって、真に邪悪なるモノが倒されて新たな悪を継ぐと言う迫力が小栗にもない。

 作中でも小栗・多襄丸を評して「多襄丸がこんなに上品でいいのか」という意味の台詞があるくらいだ。

 ラストは愛する人と自由を得て万万歳のはずなのだが、おまえらそれで食っていけるのか、と心配したくなるほど頼りなげだ。

映画 「天使の眼、野獣の街」 ~ 野獣の街に咲く傘の花

2009年09月14日 | 映画(タ行)

 地味な香港映画の小品ながら佳作。

 冒頭、多くの人物が次々にスクリーンに映り、これから何かが起こるらしい期待感が観客の心をとらえる。ちょっとブライアン・デ・パルマ作品を思わせる滑り出しだ。

 犯罪の捜査陣が細かく役割分担されており、これはその監視班なる組織の新米女性と先輩の物語。その採用試験を兼ねた実地訓練のさなか即事件となる。

 監視と追跡が役目なので、決定的ななにかを目撃しても、そこから先の逮捕劇は別の部隊に譲らなくてはならないもどかしさがドラマを生む。

 それにしても日常のハイテク監視システムがここまで進んでいれば、もはや犯罪の生まれる余地はないのではと思えるが、悲劇は毎日のように起きている。

 降りしきる雨の俯瞰撮影で、傘の花が咲くが「シェルブールの雨傘」とは色調が違う。ノワール映画だから。

映画 「ダイアナの選択」

2009年08月26日 | 映画(タ行)

 トリッキーな作品だ。ゆえに大きな余韻が心に残される。

 高校の銃乱射事件で生き残ってしまったヒロインの日常に落とされた影を描く。高校時代のエヴァン・レイチェル・ウッドと大人になってのユマ・サーマンがダブル・キャストでダイアナを演じている。

 二人の命のどちらを選ぶか、という究極の選択は「ソフィーの選択」でも描かれた。ソフィーは二人の子供のどちらを選ぶかを迫られたが、ダイアナの場合は自分か親友かを選択しなければならなかった。

 映画は過去と現在が交互に描かれていくが、ラスト近くになってそれが混線してくる。これが「衝撃のラスト」への伏線となる。

 人は死が迫った瞬間に、これまでの人生が走馬灯のように頭を巡るというが、この作品もその刹那の物語であったことがわかる。ただし頭を巡ったものは・・・。

 原題「THE LIFE BEFORE HER EYES」に、鑑賞後なるほどとうなずく事になる。

映画 「劔岳 点の記」

2009年07月31日 | 映画(タ行)

 地図作りの原点であるポイント設置と測量の仕事が理解できる。

 日本最後の未踏の地=地図の空白を埋める困難を実写で見せる、その迫力と美しさはカメラマンとして日本映画界に君臨してきた監督・木村大作の力量が存分に発揮された。

 オーソドックスなカット割りと編集でジックリ美しい山の景観を堪能できる。測量隊と山岳会が、葛藤からお互いの理解にいたるプロセスも丁寧に描かれる。

 ただ陸軍幹部が役者をそろえた割りにステレオタイプで見せ場がないのはもったいない。逆にもっと省略的に扱う方法もあったのではないかと思う。
 クラシックの名曲が全編いたるところで流れるのは、ここぞというクライマックスで印象的に響くのと違ってやや鳴りすぎの感もある。

 どうやっても困難な中で、やはりここしかないかという最後の登頂ルートを選択し、お先にという感じで山岳隊に挨拶をしてから先は、たいした困難もなくトントンと頂上にいたり、本当にここが頂上なのかとやや拍子抜けしてしまった。

 役者はとても良い。特に香川照之は足の運びや腰つきが、本物の山の案内人のようだ。ただ、重い荷を担ぎ測量士に楽をさせるはずが、行者様を助ける段になって浅野忠信の測量士の方が負担が大きくなってしまったのは気の毒だった。

映画 「トランスフォーマー リベンジ」

2009年07月10日 | 映画(タ行)

 シャイア・ラブーフ主演のシリーズ第2作。

 150分の長尺でどんな作品になるかと、期待というよりは不安があった。が、結果的に心配は無用であった。スケールアップして見応え十分、長いジェットコースターに乗られて得した気分で劇場を後にできる。

 ど派手なアクションにいかにもアメリカ映画的なユーモアをまぶして、上映の間身を委ねていれば良い。深いドラマも、心理的な葛藤も無縁の娯楽、ハリウッド・エンターテインメントの世界だ。

 万全の体調ではなかったのでボンヤリ見ていた場面もあり、ラストの大バトルシーンに、なぜパリ旅行に行っていた両親がいるのか分からなかったが、細かいことは気にならないほどの圧倒的な物量作戦の前にひれ伏すのみだった。

映画 「ターミネーター4」

2009年07月01日 | 映画(タ行)

 メカニックな戦闘シーン満載の迫力編。「トランスフォーマー」など最近のハリウッド・アクション大作の流れに沿っている。

 そもそものシリーズの魅力はシュワルツェネガーの肉体派アクションによるところが大きかった。それが人間ではなくマシンであったという設定が秀逸だったのだ。

 加えてドラマパートの深みがヒット要因でありシリーズ化につながったと思う。

 今回からジョン・コナー役にクリスチャン・ベールを向かえて、時代設定も未来となり「新シリーズ化」といったほうが良いくらいに印象の違う作品になっている。

 2時間弱の作品だが気合の入った戦闘シーンの連続で少々疲れる。その分、ドラマは薄味で琴線に触れる部分がない。今後の展開に期待したいところだ。

映画 「天使と悪魔」

2009年06月10日 | 映画(タ行)

 「ダ・ヴィンチ・コード」の続編というよりはトム・ハンクス演じる“ロバート・ラングドン”シリーズ第2弾で、独立して楽しめる作品。

 前作との関連で言えば、そのためにヴァチカンとの仲があまりよろしくない状態になっているというのが前提としてある程度の話だ。

 例によって謎解き部分は時間の制約もあってサクサクと進行してしまう。が、今回はミステリーとしての犯人探しにかなりの比重があり、配役の豪華さもあって前半よりもむしろ後半が面白く最後まで楽しめる。

 タイトルが人間の二面性を象徴しているようで、怪しげな人が実はそうでない、あるいはその逆のミスリードを二重三重に張り巡らせただけでなく、四人の枢機卿の誘拐事件の前にもっと大きな事件が隠されていた事が分かり、ラストのドンデン返しに繋がる。

 ロン・ハワード監督は前作の不評を見事に挽回、職人芸で映画本来の娯楽性を堪能させてくれる。

 進歩的な老人と頑固で保守的な若者の確執という、これも逆転の構図だ。