日々、心のつぶやき☆

映画やフィギュアや好きな事を勝手につづっています。最近、弱気なのでダニエウ・アウヴェスのようなタフさが欲しいです。

「父、帰る」

2011-06-02 13:20:40 | 映画・DVD・音楽・TV・本など



「父、帰る」をBSで観ました。
2003年製作のロシア映画です。
アンドレイ・ズビャギンツェフ監督の初作品とか。
ベネチア国際映画祭で金獅子賞と新人監督賞を受賞しています。

おもなあらすじは・・・

アンドレイ(ウラジーミル・ガーリン)とイワン(イワン・ドブロヌラヴォフ)の兄弟は母と祖母と暮らしていた。
父親の顔も覚えていない二人の前に、ある日12年ぶりに父親が帰り戸惑ってしまう。
父親は二人を連れて数日旅をすると言いだし、父子3人で出かけるのだった。
近寄りがたく、高圧的な父親に対して、弟のイワンは不満を募らせていくのだった・・・と、こんな話なのですが。


ロシア映画を観る機会はあまりないですが、この作品は重く暗い内容でラストも決して幸せな終わりじゃないけれど、作品全体の作りがかなり秀逸でした。
一番良かったのはカメラワークの素晴らしい事!
重い映画なのに、一つ一つの構図が美しく、心に残るシーンが多かったです。


そしてイワンを演じる子役の表情が素晴らしかった。
母や祖母に守られ(時には甘やかされ保護されていたようだけど)、高い所から飛び込む事もまだできずにいる子どもである。
父親の姿を見ても「本当のお父さんなのか・・・」と疑い、神経質に眉をしかめる表情ばかり。
旅の途中の車の中でも、食堂でもなかなか父親の言う通りには動かない頑固さ。
そんなだから車から降ろされたり、土砂降りの雨に濡れてばかり。
このイワンの演技だけでも、唸るシーンがいっぱいありました。


父親に対して戸惑いながらも好戦的な兄のアンドレイ。
イワンよりも年長だけあって、大人の男=父というようにいろいろ影響を受けていく。
無愛想な父親のたった一度の笑顔を誘いだしたのがアンドレイの笑い話でしたね。


父親の本当の気持ちはどうだったのだろうか?
なぜ12年も音沙汰なしだったかも説明はありません。
ただ、息子二人を連れて旅に出て厳しい体験をさせる事が父としての責務と感じていたのかもしれない。
それにしてもあの高圧的な態度!
私が男の子でもイヤになっちゃうな。
その上、今まで何をして暮らしていたのかも説明がなく、島に浮かぶ無人島で土を掘り返し「箱」を持ち出そうとしていたけど、あの「箱」は何だか最後までわからず。


ラストで父に激しく叱られる兄アンドレイをかばうイワンの叫び。
ナイフを手に「何で帰って来たんだ?」「もっと違う父親が良かった」「あんたなんか嫌いだ」と絶叫します。
それに対して父親は腹をわって話そうと「ワーニャ!」とイワンを愛称で呼び追いかけるのですが・・・
まさかの落下事故で父は死んでしまいました。


そして父親を運ぼうとして船に乗せた二人。
その船が目を離したすきに離岸し沈んでいくシーンにまたイワンは絶叫!
「パパ! パパー!」と心から叫ぶシーンは圧倒されました。
あんなに「パパ」と呼ぶ事を拒んでいたイワンなのに・・


この旅で多くの辛い経験をする事になってしまった兄弟。
父の車に乗り込んで運転するアンドレイがイワンに「(濡れた)靴を脱げ!」と命令する姿は父の生き写しのようでした。


絵はとてもきれいだけど最初から最後まで重い内容の作品でした。
でも初めて手掛けた作品をこんな完成度の高さで仕上げるとは。
無駄なシーンが一つもなく、なんだか記憶に強く残る作品でした。
ロシア映画に興味が出てきたかも・・・


今回の評価は・・・   星3つ半   ☆☆☆★


   

   

   

   

   

   

   


この作品を撮った後に兄アンドレイ役のウラジーミル・ガーリンがこの湖で事故死したとか・・・
そんなエピソードも含めて哀しい気持ちになりました。   




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