日々、心のつぶやき☆

映画やフィギュアや好きな事を勝手につづっています。最近、弱気なのでダニエウ・アウヴェスのようなタフさが欲しいです。

「ヴィンセントは海へ行きたい」

2012-06-22 15:04:10 | 映画・DVD・音楽・TV・本など




「ヴィンセントは海へ行きたい」をWOWOWで観ました。
2011年のドイツ映画、日本では未公開のうえ、DVDにもなっていません。
ドイツ映画賞の最優秀作品賞と最優秀主演男優賞も獲ったとか。
主人公のヴィンセント役の俳優が脚本も手がけたそうです。

さて、ロードムービーは大好きですが、この作品はとても良かったです。
難しいテーマでもあるけれど、描き方はウィットに富んでいました。
何といってもヨーロッパの風景が素晴らしすぎでした。


おもな内容は・・・

トゥレット症候群を患う青年ヴィンセント(フロリアン・ダーヴィト・フィッツ)は母の葬儀の最中でも抑えられない重度のチック症状に悩まされていた。
政治家の父親に強引に療養施設に入れられ、そこで知り合った強迫性障害のアレクサンダー、摂食障害のマリーと共に施設を抜け出してイタリアの海に向かう・・・

トゥレット症候群と言うのは聞いた事がありましたが、チック症状がより重いもので、さらにやっかいなのはコブロラリアと言って汚い言葉や卑猥な言葉を無意識に口走ってしまう事です。
そんな症状で小さい時から生き難さや誤解をされたりと苦しんで生きてきたはずのヴィンセント。

離婚して離れて暮らす父親は態度も冷たく、施設に任せることしか考えていません。
でもそこには夫婦にしかわからない様々な理由もあったのです。

施設では拒食症のマリーと知り合い、同室のアレクサンダーもひょんなことから一緒に脱走するわけです。
この三人の精神的障害はそれぞれに深刻で生き辛そうでした。
強迫神経症のアレクサンダーはクラシック音楽が大好きで、出先では手を洗ってばかり。
その上、トイレがきれいだとかなり嬉しそうでした。

拒食症のマリーは「食べること自体が不潔!」と食事を摂取する事を拒みます。
ヴィンセントからお願いされ、少しだけ口にしても更に体調を悪くする。
多分、一番命にかかわる深刻な問題だと思いました。
マリー役、とっても良かった。

3人が車を乗り換えたりしてアルプスを越え、イタリアを目指すシーンは本当に息をのむような美しさでした。
特に高い十字にまたがる三人の姿、とっても良かった。

施設のローザ医師とヴィンセントの父親の追跡も二人の気持ちの関わりが変化してきてその辺も良かったです。
最終的にはマリーの体調が悪くなり入院。
それぞれも施設や元の場所に戻るのですが、意を決してヴィンセントは車から降ります。
そしてアレクサンダーも一緒についていくのです。
二人が街を見下ろし「行こう。 社会の中へ。」と歩きだし、ヴィンセントの運動チック症状の動きで終わりました。


それぞれの精神的障害を抱えた若者が、お互いを想い海を目指す。
マリーはおそらく「死の世界」へ向かう願望が強かったはず。
最後に病院のベッドに縛られたマリーが「ほどいて・・・」とヴィンセントにお願いしても拒まれたのは
マリーを想ってのこと。
「生きてほしい」・・・ただそれだけを願ったヴィンセントだったと思います。

障害を抱えて社会の中で理解されながら生きていくのはどこの国でも大変でしょう。
でもこのドイツ映画の中では偽善でもなく、ただそのままの描写に多くの事を感じられました。
特にヴィンセント役の俳優はとても良かった。
(ちょっとだけメルヴィル・プポーにも似ているけど)


3人の若者、そしてローザ医師とヴィンセントの父親。
それぞれの気持ちを考えさせられた作品でした。


今回の評価は・・・   星3つ半   ☆☆☆★   掘り出しものの作品ですよ。

   

   

   

   

   

   

   

   

   

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