「僕を葬る」と書いて「ぼくをおくる」と読みます。
メルヴィル・プポーの出演作品を探してDVDで鑑賞。
この作品、名匠と言われるオゾン監督のものです。
余命3か月と宣告された31歳のフォトグラファーが、死に直面したことにより自分自身を見つめ直す姿をつづったヒューマンドラマ。
監督は『8人の女たち』の名匠フランソワ・オゾン。『まぼろし』に続き“死”を題材に取り上げたオゾン監督の分身とも言うべき主人公を、『夏物語』の実力派俳優メルヴィル・プポーが演じる。穏やかで静かな語り口と、主人公の心の葛藤を細やかに表現したプポーが印象的。 (シネマ・トゥデイより抜粋)
まずは役者に惚れ込んで観ました。
仕事にのっていたフォトグラファーのロマン(メルヴィル・プポー)が突然ガン告知を受けます。
余命3ヵ月をどうとらえたら良いのか、序盤は不安や苛立ちが気持ちをコントロールできないものにします。
ロマンはゲイ!なので恋人も若い青年。
その恋人にも家族にも仕事先にも自分の運命を告げる事なく、一人で苦悩するのですが。
休暇をとって祖母の家に行ったシーンはとても良かったです。
祖母をジャンヌ・モローが演じるのですが存在感たっぷり。
ロマンは祖母には自分の問題を話しました。
祖母の「なぜ私に言ったの?」の問いかけに
「僕たちは似ているから・・・もうすぐ死ぬ・・・」と答えるロマン。
祖母が飲んでいるサプリの説明シーンで祖母のセリフ
「これを飲んでいたら健康のまま死ねるわ・・・」
そしてロマンに対して「今夜、あなたと死にたい・・・」と言います。
この言葉でロマンは今までの苦しみや恐怖、孤独のつらさが一気にあふれて涙するのです。
この二人のシーンは心揺さぶるほどジーンときました。
祖母に最後の別れを言ったあと、写真を撮ろうとして泣くロマン。
姉に電話で謝罪するロマン、そして遠くから写真を撮る。
教会で子ども時代の自分を見て涙するシーンもとても良かったです。
静かに流れる一筋の涙、ロマンのつらさを充分描いていました。
突然、代理父(?)になる展開はフランスならではの考えかわかりませんが、消え行く命と新たな生命の誕生をうまく表していたと思います。
映画の中で、男性同士のかなり白熱したラブシーンもあったり、映像的にリアルすぎるシーンを嫌う人がいるかもしれません。
でもオゾン監督(自身もゲイ)だからこその描写でしょうし、男性同士と言ってもロマンにとってはとても大事なパートナーだから、私は嫌悪感は感じませんでした。
というより、メルヴィル、ナイス演技!
だんだん痩せ細っていくロマンが最後に海に行くのですが、海岸の喧騒の中で彼の孤独を強く感じました。
暮れ行く海で命を終える・・・とても静かなシーンです。
波の音しか聞こえない中で彼は死んでいったのですね・・・
最後の撮影シーン・・・
私が家族の立場だったら余命宣告の事は打ち明けてほしい。
大切な家族、特に息子がこんなつらい思いを一人で背負って死んでいくなんて耐えられないな・・・
ロマンの最後の選択は彼なりに考えた結果なのでしょうが、あまりに切ないです。
映画全体が余計なセリフがなく、ロマンの心の動きを静かにそして重く描いていました。
悲しいけれど、心の奥に残る良い作品でした。
役者のメルヴィル贔屓で観たものの、充分評価できる内容でした。
ジャンヌ・モローが良いです。
今回の評価は・・・ 星4つ ☆☆☆☆
(配給は日活か、なるほど)