日々、心のつぶやき☆

映画やフィギュアや好きな事を勝手につづっています。最近、弱気なのでダニエウ・アウヴェスのようなタフさが欲しいです。

「そして、私たちは愛に帰る」

2010-01-08 14:23:54 | 映画・DVD・音楽・TV・本など
本日も映画のお話・・・

WOWOWで「そして、私たちは愛に帰る」を観ました。
2007年のカンヌ国際映画祭で最優秀脚本賞などを受賞。
監督・脚本はファティ・アキン氏でトルコ系移民二世の若き注目される方とか。

物語はドイツとトルコ、2000キロに渡ってすれ違う三組の親子が運命のままめぐり合い、別れ、またつながっていく様子を描いています。

トルコ系移民のアリとその息子ネジャット。
娼婦のイェテルとその娘アイテン。
ドイツ人の母スザンヌとその娘ロッテ。

以上の三組の親子がみごとに絡まっていくのですが、それぞれの人物描写もとても丁寧です。
そしてお互いの本当の意味での関係は観ているものにしかわからず、そんな描き方も良いな~と思いました。
(あと少しのところで繋がっていくのに・・・って歯がゆかったりもします)

特に私は娘ロッテを失って悲しむ母スザンヌに心を打たれました。
保守的で娘を愛する母として、突然現れたトルコ人女性のアイテン。
ロッテはアイテンに振り回されるように思えて心配でならない。
そして「トルコもEUに加盟すれば問題は解決する!」と信じるスザンヌ。
物語は悲しい方向に進むのですが、スザンヌのその後の気持ちの変化はすごいです。
これこそ「喪失から生まれる希望」なのでしょうか?
私だったら子どもを失ったらそんな気持ちになれない・・・
だから余計にスザンヌの生き方に注目してしまいました。


この映画の時代背景としてトルコが抱える社会問題があります。
1960年代に西ドイツの時に人手不足を解消するためにトルコ移民を労働者として受け入れたそうです。
出稼ぎから定住になって、今では270万人ものトルコ移民が暮らしているとか。
そして彼らに対する社会的差別やトルコのEU加盟の是非を含めて、多くの問題が絡んでいるのですね。


私達は日頃意識していない「アイデンティティ」の問題をヨーロッパの多くの人達が強く意識して生きている現実。
そんな中でも、親と子の愛情とか自国へのこだわりとか、そんな事をたくさん考えた作品でした。


どんなに悲しくてもつらくても「運命」をそのまま受け入れるという心境は、ヨーロッパなど大陸的なものの考えなのでしょうか?
愛する娘を失っても、その国トルコやアイテンを攻める事もしないスザンヌの生き方。
つくづく私の考えなんて小さいし、狭いな・・・と思いました。



空港を行き交う「棺」のシーン。
ドイツ語の本を扱う本屋のシーン。
トルコ人として闘うアイテンの表情などなど、引き込まれるシーンがたくさんありました。
地味な映画かもしれませんが。


今回の評価は・・・  星4つ  ☆☆☆☆














「生と死は隣あわせ、すべての死は生誕である」というのがアキン監督の死生観だそうです。
運命を見事に描いた優秀な作品です。


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