[4月1日18:00.天候:晴 長野県北部 マリアの屋敷]
稲生:「あれ?アルカディアタイムスの夕刊だ」
稲生が1Fのエントランスホールに行くと、エントランス脇のメール室でメイド人形の1人が郵便物の仕分けをしていた。
といっても、9割方がイリーナ宛である。
稲生宛は殆ど無い。
その為か、配達された新聞の置き場所にされていたりする。
稲生:「新聞もらって行きますよー」
メイド人形は稲生の言葉にコクコクと頷いた。
稲生:「あっ、そうか……」
新聞の一面記事には、『ダンテ一門、新年度人事発表さる!』と書かれていた。
稲生の為に、新聞は英語版の他に日本語版も配達されていた。
新聞はこの他に人間界の英字新聞と、とある全国紙が配達されている。
悠久の時を生きる魔道師のこと、たった1年おきでは大きな事は基本的に起こらない。
数人単位で新弟子が入ったことだの、誰かが独立しただの、誰が階級が上がったか下がったかのことが書かれている。
稲生が新弟子として入った時も、しっかりこの新聞に書かれた。
そしてそれは、切り抜きとして保存してある。
欧米人だけで構成されているはずのダンテ門流に、初めての日本人新弟子が入ったことが報じられた。
但し、本来は他門との協定に基づいて欧米人のみにしていた為、協定違反ではないかということも書かれていた。
そんなことを思い出しながら、稲生はある項目に注目した。
それは、見習(Intern)から1人前(Low Master)になった者の所。
『ポーリン組:エレーナ・マーロン 契約悪魔:マモン』
稲生:「そうか。エレーナもやっとローマスターか……」
因みに契約悪魔のマモンとは、キリスト教における七つの大罪で、強欲を司る悪魔のことである。
対応する動物(やモンスター)はゴブリン、狐、針鼠、烏ということになっている。
しかしエレーナの使い魔は黒猫であり、これは本来、嫉妬の悪魔レヴィアタンに対応するものである。
だが、特に使い魔に関する記述が無いことから、特に変更する必要は無いのだろう。
稲生:「ん?」
更に稲生の目を引く物はまだあった。
『尚、今年度よりデビルネームはフルに名乗ることが決定された。これはキリスト教徒の洗礼名(例としてマリア、ヨハネなど)がそのまま名乗られているのに対抗するものであるとされる』
稲生:「ん?ということは、エレーナの名前がエレーナ・マモン・マーロンになるのか?何か、日本語的に語感が悪いなぁ……」
だが、記事にはまだ続きがある。
『これに伴い、フルネームが長くなって煩わしいという場合に備え、デビルネームをそのまま洗礼名のようにアルファベットに略して名乗ることも良いとされた』
ということは、エレーナの場合は『エレーナ・M・マーロン』ということになる。
稲生:「ふむふむ……」
稲生はそのまま大食堂に行って、夕食を取った。
稲生:「新聞に大きく載ってますよ」
イリーナ:「おっ、さすが。御用新聞は早いねぇ」
稲生:「御用新聞……。するとマリアさんの名前、『マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレット』ということになるんですね?」
イリーナ:「そういうことになるね。因みにアルファベットの頭文字はBだよ」
稲生:「なるほど」
マリア:「スペインやポルトガルはたたでさえフルネームが長いのに、もっと大変ですね」
稲生:「そうなんですか」
イリーナ:「本人達が直接来て名乗ってくれればいいんだけど、なかなか日本に来ないからね。洗礼名・自分の名前・母方の姓・父方の姓でフルネームだから」
稲生:「ええっ!?」
マリア:「デビルネームの中には長いヤツもあるから、それを充てられたら大変ですね」
イリーナ:「そうねぇ……。だから、頭文字のアルファベットで略してもいいってことになったのね」
稲生:「何だか大変ですねぇ……」
もちろんイリーナ組には、何ら変化は無し。
稲生は見習としての修行を継続、マリアはローマスターとして魔法の鍛練を続行せよということだ。
稲生:「! そういえば……」
マリア:「?」
稲生:「マリアさんは自作の人形、エレーナは黒猫が使い魔で、他にもカラスや黒い犬を使い魔にしている魔道師さん達がいますが……」
イリーナ:「うん」
稲生:「先生の使い魔を僕はまだ見たことがありません」
イリーナ:「おー、そうか。そう言えばそうだったね」
マリア:「師匠ほどのグランドマスターになれば、ほぼ契約悪魔から供給される魔力だけで事足りるようになるから、あまりファミリア(使い魔)を必要としないんだ。それに師匠のファミリア、人間界にいちゃマズいものだし」
稲生:「ええっ?」
イリーナ:「うん、そうだね。よし、分かった。じゃ、久しぶりに遠足に行きますかー」
稲生:「え、遠足!?」
イリーナ:「社会科見学でも修学旅行でもいいよ」
稲生:「どこに行くんですか?」
マリア:「人間界以外だから、魔界だよ。そもそも、師匠のファミリアってのはd……」
イリーナ:「ああーっと!マリア!そこは見てのお楽しみってことにしたから、内緒にしてて!」
マリア:「そんな演出しなくても……」
稲生:「魔界にいないといけないということは、人間界には普通に存在しないというものですね」
イリーナ:「まあ、そういうことね」
普段フランス人形の姿をしているマリアの人形達は、マリアの魔法によって人形形態のままコミカルな動きをしたり、人間形態になってメイドとして働いたりする。
普段はメイド服を着たフランス人形の姿をしているわけだから、別にそれがそのまま人間界にしても差支えは無い。
また、エレーナの黒猫も、知っている人間の前では人語を話すが、それ以外は普通の黒猫だ。
だからこれも人間界にいても、そんなに問題は無い。
しかし、イリーナの使い魔は違うという。
イリーナ:「早速明日行きましょう。準備をしといてね」
稲生:「分かりました」
稲生:「あれ?アルカディアタイムスの夕刊だ」
稲生が1Fのエントランスホールに行くと、エントランス脇のメール室でメイド人形の1人が郵便物の仕分けをしていた。
といっても、9割方がイリーナ宛である。
稲生宛は殆ど無い。
その為か、配達された新聞の置き場所にされていたりする。
稲生:「新聞もらって行きますよー」
メイド人形は稲生の言葉にコクコクと頷いた。
稲生:「あっ、そうか……」
新聞の一面記事には、『ダンテ一門、新年度人事発表さる!』と書かれていた。
稲生の為に、新聞は英語版の他に日本語版も配達されていた。
新聞はこの他に人間界の英字新聞と、とある全国紙が配達されている。
悠久の時を生きる魔道師のこと、たった1年おきでは大きな事は基本的に起こらない。
数人単位で新弟子が入ったことだの、誰かが独立しただの、誰が階級が上がったか下がったかのことが書かれている。
稲生が新弟子として入った時も、しっかりこの新聞に書かれた。
そしてそれは、切り抜きとして保存してある。
欧米人だけで構成されているはずのダンテ門流に、初めての日本人新弟子が入ったことが報じられた。
但し、本来は他門との協定に基づいて欧米人のみにしていた為、協定違反ではないかということも書かれていた。
そんなことを思い出しながら、稲生はある項目に注目した。
それは、見習(Intern)から1人前(Low Master)になった者の所。
『ポーリン組:エレーナ・マーロン 契約悪魔:マモン』
稲生:「そうか。エレーナもやっとローマスターか……」
因みに契約悪魔のマモンとは、キリスト教における七つの大罪で、強欲を司る悪魔のことである。
対応する動物(やモンスター)はゴブリン、狐、針鼠、烏ということになっている。
しかしエレーナの使い魔は黒猫であり、これは本来、嫉妬の悪魔レヴィアタンに対応するものである。
だが、特に使い魔に関する記述が無いことから、特に変更する必要は無いのだろう。
稲生:「ん?」
更に稲生の目を引く物はまだあった。
『尚、今年度よりデビルネームはフルに名乗ることが決定された。これはキリスト教徒の洗礼名(例としてマリア、ヨハネなど)がそのまま名乗られているのに対抗するものであるとされる』
稲生:「ん?ということは、エレーナの名前がエレーナ・マモン・マーロンになるのか?何か、日本語的に語感が悪いなぁ……」
だが、記事にはまだ続きがある。
『これに伴い、フルネームが長くなって煩わしいという場合に備え、デビルネームをそのまま洗礼名のようにアルファベットに略して名乗ることも良いとされた』
ということは、エレーナの場合は『エレーナ・M・マーロン』ということになる。
稲生:「ふむふむ……」
稲生はそのまま大食堂に行って、夕食を取った。
稲生:「新聞に大きく載ってますよ」
イリーナ:「おっ、さすが。御用新聞は早いねぇ」
稲生:「御用新聞……。するとマリアさんの名前、『マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレット』ということになるんですね?」
イリーナ:「そういうことになるね。因みにアルファベットの頭文字はBだよ」
稲生:「なるほど」
マリア:「スペインやポルトガルはたたでさえフルネームが長いのに、もっと大変ですね」
稲生:「そうなんですか」
イリーナ:「本人達が直接来て名乗ってくれればいいんだけど、なかなか日本に来ないからね。洗礼名・自分の名前・母方の姓・父方の姓でフルネームだから」
稲生:「ええっ!?」
マリア:「デビルネームの中には長いヤツもあるから、それを充てられたら大変ですね」
イリーナ:「そうねぇ……。だから、頭文字のアルファベットで略してもいいってことになったのね」
稲生:「何だか大変ですねぇ……」
もちろんイリーナ組には、何ら変化は無し。
稲生は見習としての修行を継続、マリアはローマスターとして魔法の鍛練を続行せよということだ。
稲生:「! そういえば……」
マリア:「?」
稲生:「マリアさんは自作の人形、エレーナは黒猫が使い魔で、他にもカラスや黒い犬を使い魔にしている魔道師さん達がいますが……」
イリーナ:「うん」
稲生:「先生の使い魔を僕はまだ見たことがありません」
イリーナ:「おー、そうか。そう言えばそうだったね」
マリア:「師匠ほどのグランドマスターになれば、ほぼ契約悪魔から供給される魔力だけで事足りるようになるから、あまりファミリア(使い魔)を必要としないんだ。それに師匠のファミリア、人間界にいちゃマズいものだし」
稲生:「ええっ?」
イリーナ:「うん、そうだね。よし、分かった。じゃ、久しぶりに遠足に行きますかー」
稲生:「え、遠足!?」
イリーナ:「社会科見学でも修学旅行でもいいよ」
稲生:「どこに行くんですか?」
マリア:「人間界以外だから、魔界だよ。そもそも、師匠のファミリアってのはd……」
イリーナ:「ああーっと!マリア!そこは見てのお楽しみってことにしたから、内緒にしてて!」
マリア:「そんな演出しなくても……」
稲生:「魔界にいないといけないということは、人間界には普通に存在しないというものですね」
イリーナ:「まあ、そういうことね」
普段フランス人形の姿をしているマリアの人形達は、マリアの魔法によって人形形態のままコミカルな動きをしたり、人間形態になってメイドとして働いたりする。
普段はメイド服を着たフランス人形の姿をしているわけだから、別にそれがそのまま人間界にしても差支えは無い。
また、エレーナの黒猫も、知っている人間の前では人語を話すが、それ以外は普通の黒猫だ。
だからこれも人間界にいても、そんなに問題は無い。
しかし、イリーナの使い魔は違うという。
イリーナ:「早速明日行きましょう。準備をしといてね」
稲生:「分かりました」