報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔法使い 金杯予知で 大儲け」

2016-01-09 21:43:06 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月5日15:20.天候:晴 東京都中央区銀座 JRAウインズ銀座4F 稲生勇太、マリアンナ・ベルフェ・スカーレット、藤谷春人]

 中山金杯は15時30分の発走である。
 他の重賞ではないレースは、だいたい発走の2〜3分前には馬券の販売を終了するのに対し、金杯のような重賞にあっては5分前に締め切られることが多い。
 トイレに行っていたマリアはそこから出た時、意外な人物と遭遇した。
「あっ!?」
「おっ?」
 それは……。
「ケンショーブルー!」
「ああっ!?ロリ魔女のマリアンナとかいうヤツじゃねーか、ああっ!?」
「黙れ!こう見えても、私は25だぞ!」
 やはり師匠のイリーナと比べて、小柄な体型を気にしているところはある。
 だが、そこを稲生に好かれたというのもあるのだが。
「女子高生の制服でも着た方がいいじゃねーのか、ああっ!?」
「こ、このっ……!」
 日本人なら若く見られることは良いこととされるが、あまり子供っぽく見られることは、欧米人にとっては屈辱だそうだ。
「てかよー、俺様が勝ったらよー、ヤらせろよな、ああっ!?」
「誰がキサマなんぞと!」
「おーい、何やってんだ?そろそろレース始まるぞー」
「マリアさん、何かあったんですか?さっきから騒がし……ああっ?!」
 法華講員と顕正会員、幾度目かの遭遇である。
「ほお、これはこれは!毎度毎度負け続きのサトーさんじゃありませんか?」
「ああっ!?藤谷よー、オメーはよー、また修羅道剥き出して競馬かよっ、ああっ!?さすがは堕落した宗門だぜっ!」
「うるせっ!俺はまだ修羅道だけだからいいんだよ。そういうお前こそ、修羅道にプラスして餓鬼道、畜生道もしっかり入ってんじゃねーか!」
「ああっ!?」
「おう、忘れてたぜ。レース終了後は地獄界も待ってんな。今のうちに払い戻して帰った方がいいんじゃねーのか?」
「ああっ!?俺様はよー、元旦勤行の後で10時間も唱題してきたんだよっ、ああっ!?オメーは何時間唱題したんだっ、ああっ!?」
「正証寺で1時間」
「プwww 両眼滝のその日は近いぜ、ああっ!?」
「ふん。出所不明の日布上人の大幅本尊に10時間と、モノホンの日達上人の常住御本尊に1時間とじゃ、どれだけの差があるかな?」
 正証寺の開山上人は日達上人という設定。
 学会の寄進で建立された寺院であることが露呈された。
「マリアさん、大丈夫ですか?ブルーに何かされませんでしたか?」
「あいつがレースに勝ったら、乱暴される……!」
「何ですって!?」
「ほお……。彼氏持ちの女性に、随分な口を叩くものだな。やっぱ、アンタは作者の見込み通りの出自か?」
「ああっ!?何だって!?」
「で、アンタは何番を買ったんだ?」
「ああっ?んじゃ、特別に教えてやるぜ」
 ↑マリアが予知したものとは、てんで違う馬ばかり。
「いい加減、顕正会には功徳が無いってことに気づきやがれ」
「ああっ!?クソ坊主共の犬野郎に言われたかねーぜ!」
「はいはいっと。じゃ、稲生君達。あっちのデカいモニタで功徳を実感してこようか?」
「おう、マリアよー!去年、空港でお漏らししたことをバラされたくなかったらよー、後で俺様とヤらせろよなっ、ああっ!?」
「あ、あいつ……!こ、殺してやる……!!」
 マリアはギリギリと歯軋りをした。
「落ち着いて落ち着いて」
 マリアの背中を押しながら宥めすかせる稲生。
 何気にマリアの体に触れている。
「僕はそれくらい気にしませんから」
 後ろからマリアの耳に向かって話し掛ける稲生。
「ひっ……!」
 マリアに嫌悪感と恍惚感の両方が訪れた。
「あんなヤツ、相手にするだけ無駄です。……マリアさん?」
「き、気持ち悪い……!もう1回、トイレに行ってくる……!」
「あ、はい!」

[同日16:00.同場所 稲生、マリア、藤谷]

 げっそりとした表情をして、やっとトイレから出て来たマリア。
「だ、大丈夫ですか?」
 外で待っていた稲生。
「ああ……。何とか……。れ、レースはどうなった?」
「マリアさんのおかげで、大勝利です!今、班長が換金に行っている所です」
「……ブルーは?」
「はあ……。あそこに……」
 稲生が指さした所には、サトーが完全に石灰化した状態で立ち尽くしている姿があった。
 そこへ、藤谷がエスカレーターを昇って戻って来た。
 藤谷は黒いジャケットを羽織っているが、その全てのポケットが異様に厚くなっている。
 また、手持ちのセカンドバックも、はちきれんばかりの太さになっていた。
 サトーの身に起きたことを瞬時に理解した藤谷は笑って、
「へっ、そうか。ざまぁみろってんだ。これで顕正会に功徳が無いってこと、思い知ったか」
 石灰化したサトーに軽くローキックを2回ほどかましてやったが、それどもブルーは微塵も動かなかった。
「さっ、結果が出たところで、さっさとおさらばしようか」
 意気揚々と引き揚げる稲生達。
「近くの駐車場に俺の車を止めてるからさ」
「あ、はい」
 マリアは顔色を悪くしていたが、ここから立ち去れば少しは元に戻るだろうかと思った。

 昼食を取ったマクドナルドと同じビル内にある立体駐車場。
 リフトから下りてきた車に藤谷が乗り込み、ターンテーブルの上までバックする。
 それで出口の方向に車が回転した。
 リアシートに乗り込む稲生とマリア。
「ありがとうございましたー!」
 係員の威勢の良い挨拶に送られて、ベンツは一方通行の道を走り出した。
「しかし、凄い札束の数ですね?」
「ああ。親父には内緒な?」
「はあ……。それより、マリアさんに成功報酬を」
「ああ。少し走ったらな。さすがに、こんな札束を持って歩き回るのもアレだしよ」
「どうするんですか?」
「俺の銀行口座に入れておくさ。幸い、日曜日でも銀行のATMは開いてるからな」
「なるほど……」
「あとは、お寺にも御供養だな。これだけの大功徳を頂いたんだから、それなりのキャッシュバック……もとい、御供養をさせて頂くのは当然だ」
「そうですねぇ……」
「稲生君達、時間ある?」
「えっ?ええ。本当はもう長野に帰っているはずですから」
「そうか。それなら、ちょっと付き合ってもらえないか?」
「今度はどこに行くんですか?」
「せっかくだから、夕飯も奢ってあげるよ。今度はマックとかじゃなく、ちゃんとしたフレンチだ」
「へえ……」

[同日17:00.JRAウインズ銀座 ケンショーブルー(佐藤公一)]

 未だに石灰化したままのブルー。
「ちょっと、お客さん!もう閉店なんだから、早く出てくださいよ」
 緑色の制服を着た整理員に話し掛けられるも、全く微動だにしない。
「隊長、またこの人ですよ」
 駆け付けた警備員も呆れていた。
「取りあえず、外に運び出しておけ」
 と、警備隊長。
「いいんですか?外、冷えて来ましたよ?」
「この手の類は殺しても死なないから、東京の寒空くらい平気だ」
「それもそうですね」
「浅草や上野じゃあるまいし、銀座なら外で寝てても身ぐるみ剥がされることはないだろう」
「いやー、この青いオジさん、ボロ負けしてるから、剥がされる身ぐるみ自体無いっスよ」

 口々に好き勝手なことを言いながら、ブルーを外に排除して閉館作業をする整理員と警備員達であった。
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