[1月16日00:00.天候:曇 アルカディア王国西部辺境の町オークタウンの宿屋 稲生勇太&アレクサンドラ(サーシャ)]
稲生のスマホのアラームが鳴る。
「うーん……」
こんな真夜中に起床したのは、これからダンジョンを探索しなければならないからだ。
身支度を整えて部屋を出ると、既に部屋の前にはサーシャが腕組みをして待っていた。
「ちゃんと起きれたみたいだな。目は覚めたか?」
「まだちょっと眠いですけど……」
「ま、冒険にはこういうこともあるさ。お宝を見つけたら、パーッとやって疲れを癒そうよ」
(サーシャ、お宝には興味が無かったんじゃ……?)
しかし、そこは黙ってておく。
1階に下りると、さすがに酒場の営業も終了したようだ。
人間界の大都市の繁華街では、まだ盛り上がっている時間なのだが。
フロントに行くと太った女将ではなく、波平さん頭のマスターが座っていたのだが、肘をついて居眠りしていた。
まだ、魔道師エレーナが住み込みバイトをしているホテルの方が真面目と言える。
[同日01:00.天候:雷 オークタウン郊外の廃屋 稲生&サーシャ]
何でこういうホラーチックな展開になると、都合良く雷が鳴るのだろう。
さすがに最近の新しいホラー映画もそれに気づいたのか、都合良く雷が鳴ることもなくなったようだが。
「あれ?結界が……」
聞き込み調査によると、夜は結界の力が弱まるものの、まだ存在しているということだった。
ところが実際に行ってみると、全く存在が見えない。
見えないほどに弱まったのか、或いは……。
「消えてるね。もしかして、先客か?」
「ええっ?」
「ま、いいや。私は素人だからね。あなたに任せるよ」
稲生はまたもや宿屋から持ち出した安物のコップを取り出して、結界があった所に投げた。
昼間の通りなら、レーザービームが飛んできて焼き払われるはずだが、コップはそれを通り越して屋敷の中に飛び込み、普通に石畳のアプローチの上に落ちて割れた。
「おー、やっぱり結界が消えてる。誰かが破ったのか?」
「ちょっと待ってください」
「だから敬語はいいって。ホントに律儀なヤツだなー。もしかして、好きな先輩魔道師さんにも遠慮してたりしてる?それだと進展しないよ」
「余計なお世話です……いや、だよ」
稲生は少しムッとしながらも、結界があった辺りを調べてみた。
すると、結界があった場所の下に細かい紙切れが落ちていた。
それをかき集めてみると、件の結界の形に似た図柄が描かれていたようだった。
「これは何?」
「依り代ですね。イリーナ先生みたいなベテランは無から結界を張り出すことができますが、経験がまだ足りない魔道師は、結界を張るに当たって、『下書き』が必要になります。例えば魔法陣を描いて、それに結界を張ってもらうというやり方ですね。でもここは周辺が石畳になっていて、魔法陣が描けないので、紙に描いたものと思われます」
「で、それがバラバラになっているということは……?」
「文字通り、誰かが破ったんだと思いますね」
「てことは、やっぱり先客がいるか。よし。そいつが味方とは限らない。心して行くよ」
「は……はい」
2人は正門の門扉を開けて、正面玄関に向かう石畳の上を進んだ。
エントランスまでは何も起きなかった。
例え廃屋でも鍵くらいは掛かっているのではないかと思われたが、重厚な木製の観音開きの玄関は簡単に開いた。
「やっぱり先客がいるね」
廃屋だから当然だが、館内は真っ暗である。
時折、雷光が窓から差し込んでくるくらい。
「明かりくらい何とかならないのか?魔法で」
「いや、魔法でなくても大丈夫です」
稲生はローブの中から懐中電灯を出した。
「おおっ?面白い道具だな。これも魔法具かい?」
「普通に人間界で売ってるものですけど……」
稲生は懐中電灯の明かりを点けた。
「で、どこへ行きます?」
「やっぱ、屋敷の主人の部屋に行くべきだな。屋敷の主人なら、お宝の場所を知ってるだろう?そのヒントが部屋にあるかもしれない」
いつしかトレジャーハンティングみたいになっている。
「屋敷の主人の部屋っていうと、1階の奥でしたっけ?」
「いや、2階の奥でしょ」
「あれ?……あ、そうか」
マリアの屋敷でも主人の部屋は2階になっているが、マリアはその階下で寝泊まりし、実質的に主人の部屋はイリーナが使っている。
名義はマリアの屋敷だが、実際の主人はイリーナで、マリアは住み込みの管理人みたいなものだと聞いたことがある。
マリアの屋敷もそうだが、この屋敷も実際には色々な仕掛けが施されていた。
例えば、吊り天井になっている応接室。
絵画に仕掛けられた宝石を取ると、天井が落ちてきて、取った者を押し潰してしまう仕掛けとか。
これにはその宝石を取った後、天井が落ちてくるまでの間、イミテーションの宝石を代わりに嵌め込んでやると、吊り天井の落下を止めることができる。
他にもエンブレムを外すと、閉じ込められてしまうが、そこに予め別の場所から持って来た別のエンブレムを嵌めてやると、再び扉は開く。
そして外したエンブレムをまた別の所に嵌めてやると、隠しアイテムが取れるとかいうものだ。
「稲生も色々知ってるんだね?」
「まあ。マリアさんの屋敷にも、似たような仕掛けはありますから」
「てことは、ここは今、魔道師が使ってるってことかい?」
「あ……!そうか!」
あまりにもマリアの屋敷にある仕掛けとそっくりなので、逆に何の疑いも持たなかった。
だが、これはダンテ一門の中で紹介されている仕掛けだ。
入門した魔道師見習に渡される魔道書にも書いてあった。
「ダンテ一門の魔道師の誰かが使ってるのかな?だとしたら、会えたら話が早い!」
「その魔道師さんに頼んで、エリックの居場所を占ってもらうってことは可能かい?」
「その魔道師さんが、どのジャンルの人なのかにもよりますが、水晶球の扱い方は本科の内容です」
つまり、ジャンルを問わず、ダンテ一門においては水晶球の扱い(占いも当然含む)は必修科目となっているということだ。
ポーリンのような薬師系とかだと、水晶球は基本で習ったくらいの感覚なので、尋ね人を探す能力までは期待できないかもしれない。
だがイリーナくらいだと、物凄く期待できる。
「早いとこ主人の屋敷に行こう。そこにいるかもしれない」
「はい!」
2階の主人の部屋と思われる所。
「……人の気配はしませんね」
「魔道師さんなら気配を消すことは可能だろう?」
「まあ、そうですけど……」
稲生はドアノブに手を掛けて回してみた。
鍵は掛かっていなさそうだった。
「では、開けますよ」
「開けたら稲生はちょっと引っ込んでて」
「どうしてですか?」
「こういう場合、中にいるのはここのボスという展開だったりするんだ。開けた途端、いきなり襲って来るかもしれない。稲生はそんな経験無いだろう?」
「そ、そうですね。できれば避けたい展開ですが」
「そういうことだ。じゃ、行くぞ」
「はい」
稲生はドアノブを回し、内開きのドアを思いっ切り押し開けた。
すると!
「わあーっ!!」
「くっ……!」
サーシャの読み通り、部屋から飛び出してくる者達がいた。
だが、それはコウモリ。
いきなりドアを開けられたコウモリが驚いて、何匹か飛び出してきたのだった。
稲生は驚いて尻もちをついた。
「も、もしかして、魔道師さんじゃなくて、魔族が住んでいたりして!?」
「それならそれで倒してやるまでだ!」
サーシャは剣を構えて、主人の部屋に飛び込んだ。
「サーシャ!」
稲生はふらつきながらも立ち上がって、魔法の杖を持って後から入った。
主人の部屋は雨戸が閉めきられていて外の様子は全く見えなく、それ故に真っ暗だった。
「……誰もいない」
「ええっ?」
「そんなバカな!誰もいないぞ、稲生!」
「先客もいるはずなのに、どうしたんでしょ?まさか、既に先客は帰った後?」
確かに、これだけ大きい屋敷の主人の部屋の割には室内は殺風景だった。
古い机と椅子、空になった本棚があるだけだった。
明らかに引っ越しの後のように、色々と持ち出された跡があった。
「参ったなぁ……」
「何か残ってないか、探してみよう」
「魔法の杖でも使ってみましょう。……金属探知を頼む」
稲生が手持ちの魔法の杖(というか棒)に向かって話し掛けると、それがまるでハンディタイプの金属探知機のようになる。
それで屋敷の主人の部屋を調べてみると、一応木張りの床の下に金貨が数枚と、壁の中にどこのものか分からぬ鍵が埋め込まれていた。
「七光石(吊り天井の部屋で見つけた魔界の高価な宝石)が1つと金貨が5枚と、へんてこりんな鍵か。その鍵、どこの鍵なのか調べてみよう」
「そうですね」
ここで手に入れた物を全てしまい、部屋から出ようとした時だった。
「うっ!?」
「あっ!?」
突然、室内が大きく揺れ出した。
大地震だろうか?
だが、その揺れ方がハンパじゃない。
立てないほどの大きな揺れ。
しかも、沈没直前の船のように大きく右に傾いたり左に傾いたりする。
「わあーっ!」
「うあーっ!」
あまりの傾きに稲生とサーシャはドアの横の壁に叩き付けられた。
稲生の顔の上に、普段は股当てに隠されたサーシャのビキニショーツが乗っかってくる。
「こ、このままじゃヤバい!稲生、部屋から脱出するよ!」
「は、はい!」
「そのドアノブを開けて……って、私がどかなきゃ動けないか……」
「は、はい……!」
サーシャがようやく稲生の顔に乗せていた大きな尻をどけた。
稲生は手を伸ばして、部屋のドアを開けた。
その直前、部屋にドンッ!と大きな音がして、それ相応の衝撃が走る。
だがそのショックで、稲生達は部屋の外に飛び出すが如く脱出することができた。
「ああーっ!?」
「!!!」
その際、稲生達はとんでもない光景を目の当たりにしてしまった。
稲生のスマホのアラームが鳴る。
「うーん……」
こんな真夜中に起床したのは、これからダンジョンを探索しなければならないからだ。
身支度を整えて部屋を出ると、既に部屋の前にはサーシャが腕組みをして待っていた。
「ちゃんと起きれたみたいだな。目は覚めたか?」
「まだちょっと眠いですけど……」
「ま、冒険にはこういうこともあるさ。お宝を見つけたら、パーッとやって疲れを癒そうよ」
(サーシャ、お宝には興味が無かったんじゃ……?)
しかし、そこは黙ってておく。
1階に下りると、さすがに酒場の営業も終了したようだ。
人間界の大都市の繁華街では、まだ盛り上がっている時間なのだが。
フロントに行くと太った女将ではなく、波平さん頭のマスターが座っていたのだが、肘をついて居眠りしていた。
まだ、魔道師エレーナが住み込みバイトをしているホテルの方が真面目と言える。
[同日01:00.天候:雷 オークタウン郊外の廃屋 稲生&サーシャ]
何でこういうホラーチックな展開になると、都合良く雷が鳴るのだろう。
さすがに最近の新しいホラー映画もそれに気づいたのか、都合良く雷が鳴ることもなくなったようだが。
「あれ?結界が……」
聞き込み調査によると、夜は結界の力が弱まるものの、まだ存在しているということだった。
ところが実際に行ってみると、全く存在が見えない。
見えないほどに弱まったのか、或いは……。
「消えてるね。もしかして、先客か?」
「ええっ?」
「ま、いいや。私は素人だからね。あなたに任せるよ」
稲生はまたもや宿屋から持ち出した安物のコップを取り出して、結界があった所に投げた。
昼間の通りなら、レーザービームが飛んできて焼き払われるはずだが、コップはそれを通り越して屋敷の中に飛び込み、普通に石畳のアプローチの上に落ちて割れた。
「おー、やっぱり結界が消えてる。誰かが破ったのか?」
「ちょっと待ってください」
「だから敬語はいいって。ホントに律儀なヤツだなー。もしかして、好きな先輩魔道師さんにも遠慮してたりしてる?それだと進展しないよ」
「余計なお世話です……いや、だよ」
稲生は少しムッとしながらも、結界があった辺りを調べてみた。
すると、結界があった場所の下に細かい紙切れが落ちていた。
それをかき集めてみると、件の結界の形に似た図柄が描かれていたようだった。
「これは何?」
「依り代ですね。イリーナ先生みたいなベテランは無から結界を張り出すことができますが、経験がまだ足りない魔道師は、結界を張るに当たって、『下書き』が必要になります。例えば魔法陣を描いて、それに結界を張ってもらうというやり方ですね。でもここは周辺が石畳になっていて、魔法陣が描けないので、紙に描いたものと思われます」
「で、それがバラバラになっているということは……?」
「文字通り、誰かが破ったんだと思いますね」
「てことは、やっぱり先客がいるか。よし。そいつが味方とは限らない。心して行くよ」
「は……はい」
2人は正門の門扉を開けて、正面玄関に向かう石畳の上を進んだ。
エントランスまでは何も起きなかった。
例え廃屋でも鍵くらいは掛かっているのではないかと思われたが、重厚な木製の観音開きの玄関は簡単に開いた。
「やっぱり先客がいるね」
廃屋だから当然だが、館内は真っ暗である。
時折、雷光が窓から差し込んでくるくらい。
「明かりくらい何とかならないのか?魔法で」
「いや、魔法でなくても大丈夫です」
稲生はローブの中から懐中電灯を出した。
「おおっ?面白い道具だな。これも魔法具かい?」
「普通に人間界で売ってるものですけど……」
稲生は懐中電灯の明かりを点けた。
「で、どこへ行きます?」
「やっぱ、屋敷の主人の部屋に行くべきだな。屋敷の主人なら、お宝の場所を知ってるだろう?そのヒントが部屋にあるかもしれない」
いつしかトレジャーハンティングみたいになっている。
「屋敷の主人の部屋っていうと、1階の奥でしたっけ?」
「いや、2階の奥でしょ」
「あれ?……あ、そうか」
マリアの屋敷でも主人の部屋は2階になっているが、マリアはその階下で寝泊まりし、実質的に主人の部屋はイリーナが使っている。
名義はマリアの屋敷だが、実際の主人はイリーナで、マリアは住み込みの管理人みたいなものだと聞いたことがある。
マリアの屋敷もそうだが、この屋敷も実際には色々な仕掛けが施されていた。
例えば、吊り天井になっている応接室。
絵画に仕掛けられた宝石を取ると、天井が落ちてきて、取った者を押し潰してしまう仕掛けとか。
これにはその宝石を取った後、天井が落ちてくるまでの間、イミテーションの宝石を代わりに嵌め込んでやると、吊り天井の落下を止めることができる。
他にもエンブレムを外すと、閉じ込められてしまうが、そこに予め別の場所から持って来た別のエンブレムを嵌めてやると、再び扉は開く。
そして外したエンブレムをまた別の所に嵌めてやると、隠しアイテムが取れるとかいうものだ。
「稲生も色々知ってるんだね?」
「まあ。マリアさんの屋敷にも、似たような仕掛けはありますから」
「てことは、ここは今、魔道師が使ってるってことかい?」
「あ……!そうか!」
あまりにもマリアの屋敷にある仕掛けとそっくりなので、逆に何の疑いも持たなかった。
だが、これはダンテ一門の中で紹介されている仕掛けだ。
入門した魔道師見習に渡される魔道書にも書いてあった。
「ダンテ一門の魔道師の誰かが使ってるのかな?だとしたら、会えたら話が早い!」
「その魔道師さんに頼んで、エリックの居場所を占ってもらうってことは可能かい?」
「その魔道師さんが、どのジャンルの人なのかにもよりますが、水晶球の扱い方は本科の内容です」
つまり、ジャンルを問わず、ダンテ一門においては水晶球の扱い(占いも当然含む)は必修科目となっているということだ。
ポーリンのような薬師系とかだと、水晶球は基本で習ったくらいの感覚なので、尋ね人を探す能力までは期待できないかもしれない。
だがイリーナくらいだと、物凄く期待できる。
「早いとこ主人の屋敷に行こう。そこにいるかもしれない」
「はい!」
2階の主人の部屋と思われる所。
「……人の気配はしませんね」
「魔道師さんなら気配を消すことは可能だろう?」
「まあ、そうですけど……」
稲生はドアノブに手を掛けて回してみた。
鍵は掛かっていなさそうだった。
「では、開けますよ」
「開けたら稲生はちょっと引っ込んでて」
「どうしてですか?」
「こういう場合、中にいるのはここのボスという展開だったりするんだ。開けた途端、いきなり襲って来るかもしれない。稲生はそんな経験無いだろう?」
「そ、そうですね。できれば避けたい展開ですが」
「そういうことだ。じゃ、行くぞ」
「はい」
稲生はドアノブを回し、内開きのドアを思いっ切り押し開けた。
すると!
「わあーっ!!」
「くっ……!」
サーシャの読み通り、部屋から飛び出してくる者達がいた。
だが、それはコウモリ。
いきなりドアを開けられたコウモリが驚いて、何匹か飛び出してきたのだった。
稲生は驚いて尻もちをついた。
「も、もしかして、魔道師さんじゃなくて、魔族が住んでいたりして!?」
「それならそれで倒してやるまでだ!」
サーシャは剣を構えて、主人の部屋に飛び込んだ。
「サーシャ!」
稲生はふらつきながらも立ち上がって、魔法の杖を持って後から入った。
主人の部屋は雨戸が閉めきられていて外の様子は全く見えなく、それ故に真っ暗だった。
「……誰もいない」
「ええっ?」
「そんなバカな!誰もいないぞ、稲生!」
「先客もいるはずなのに、どうしたんでしょ?まさか、既に先客は帰った後?」
確かに、これだけ大きい屋敷の主人の部屋の割には室内は殺風景だった。
古い机と椅子、空になった本棚があるだけだった。
明らかに引っ越しの後のように、色々と持ち出された跡があった。
「参ったなぁ……」
「何か残ってないか、探してみよう」
「魔法の杖でも使ってみましょう。……金属探知を頼む」
稲生が手持ちの魔法の杖(というか棒)に向かって話し掛けると、それがまるでハンディタイプの金属探知機のようになる。
それで屋敷の主人の部屋を調べてみると、一応木張りの床の下に金貨が数枚と、壁の中にどこのものか分からぬ鍵が埋め込まれていた。
「七光石(吊り天井の部屋で見つけた魔界の高価な宝石)が1つと金貨が5枚と、へんてこりんな鍵か。その鍵、どこの鍵なのか調べてみよう」
「そうですね」
ここで手に入れた物を全てしまい、部屋から出ようとした時だった。
「うっ!?」
「あっ!?」
突然、室内が大きく揺れ出した。
大地震だろうか?
だが、その揺れ方がハンパじゃない。
立てないほどの大きな揺れ。
しかも、沈没直前の船のように大きく右に傾いたり左に傾いたりする。
「わあーっ!」
「うあーっ!」
あまりの傾きに稲生とサーシャはドアの横の壁に叩き付けられた。
稲生の顔の上に、普段は股当てに隠されたサーシャのビキニショーツが乗っかってくる。
「こ、このままじゃヤバい!稲生、部屋から脱出するよ!」
「は、はい!」
「そのドアノブを開けて……って、私がどかなきゃ動けないか……」
「は、はい……!」
サーシャがようやく稲生の顔に乗せていた大きな尻をどけた。
稲生は手を伸ばして、部屋のドアを開けた。
その直前、部屋にドンッ!と大きな音がして、それ相応の衝撃が走る。
だがそのショックで、稲生達は部屋の外に飛び出すが如く脱出することができた。
「ああーっ!?」
「!!!」
その際、稲生達はとんでもない光景を目の当たりにしてしまった。