報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔道師の正月」

2016-01-06 20:57:23 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月1日10:00.天候:晴 長野県白馬村郊外・マリアの屋敷 マリアンナ・ベルフェ・スカーレット&イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

〔「松本、加藤、アウトー!」「アホちゃうか!何やねん、親父って!」「うわー……!」〕

 点けっぱなしのリビングのテレビ。
 正月特番のバラエティ番組が流れている。
 その周辺には、打てば鳴るほどの酒瓶が何本も転がっていた。
 ウィスキーやワインが多い。
「うー……」
 そこのソファに寝転がったり、テーブルに突っ伏して寝ているのは魔道師師弟コンビ。
「う……もうこんな時間かぁ……。おっ?今年は珍しく、アタシが先に起きたなぁ……」
 イリーナは目を細めたまま、得意げな顔をした。
「マリアー、起きなさい。もうとっくに年明けてるよー」
「ん……」
 イリーナは直弟子のマリアの肩を揺さぶった。
「あ……おはようございます、師匠」
「今日は別に挨拶があるでしょう?」
「えーと……」
「ほら、読者の皆さんにも」
「読者!?……明けまして、おめでとうございます」
「はい、おめでとー」
「……私達、去年も同じ新年を迎えてませんでしたか?」
「ダンテ一門は、年末年越しを酒盛りで過ごすのが掟だからねぇ……」
「いや、ちょっと待ってください。それ、私、初めて聞きましたけど?」
「ひゃははー。ユウタ君がいれば、まだ幾分違った年越しだったかもしれないけどねぇ……」
「まあ、そうかもしれませんけど」
「今度はユウタ君の家で、年末年越しさせてもらおうかねぇ……」
「ユウタに『家族水入らずの新年を』って言ったの、誰でしたっけ?」
「誰だったかしらねぇ……。それよりマリア、飲み過ぎたから迎え酒しよう」
「何言ってるんですか。“魔の者”に狙われますよ?」
「大丈夫。“魔の者”も、正月三箇日は休みだよー」
「“魔の者”は今度、日本人に憑依したんですか?」
「でも、せっかくこうして日本に住んでるんだから、日本的なお正月を過ごしたいわねぇ……」
「魔道師の私達が、振袖着て初詣に行くのも変ですからね」
「ひゃはははっ(笑)!確かに!ていうか、アタシらはそもそも似合わないよ」
「師匠は体大きいから、似合わないと思いますよ。日本のホテルの浴衣着て、師匠だけ『ガイジンさん』でしたからね」
「その点、マリアは小柄だから似合ってたわねぇ……」
 と、そこへ……。
「あら、ダニー?どうしたの?」
 ゴゴゴゴゴゴと何かしらのオーラを放ちながら、ダニエラが畏まった様子で、しかし顔は無表情のまま、魔道師達に近づいた。
 いつものメイド服を着ている。
「お食事の準備が整ってございます。ご主人様方……」
 するとマリアがポンと手を叩いて、
「そうでした。日本風と言えば、昨日、私の人形達に『お餅を焼いて、お雑煮作って』って命令しておきました」
「それを早く言いなさい。行くわよ、今すぐに!」

 1Fの食堂に行く。
 洋風のテーブルの上、アンティークなランプが乗せられた所に、焼いた餅や雑煮が並べられるのは、どこかミスマッチだ。
「これはユウタ君の知識?」
「聞いておいて良かったです」
「うんうん。そうだねぇ……」
 BGMはエントランスホールにあるピアノではなく、どこから持って来たのか、琴であった。
 座ってそれを弾くのは、いつもはピアノを弾いているハク人形こと、クラリス。
 歌うのはミク人形こと、ミカエラだった。
「畏れも知らずに♪ハイカラ革命♪極めて磊落♪壱(ひい)、弐(ふう)、参(みい)よ♪……」
「マリアが一人前になってから、人形達のスキルも上がってるわね」
「あの寝かせるハープ?は、どこから持ってきたのでしょう?」
「……お琴くらい、少し日本に対して知識のあるイギリス人は知ってると思うけど?」

[同日11:00.天候:晴 同場所 マリア&イリーナ]

 遅い朝食が終わり、今度は食後のお茶を飲む。
「グリーンティー(緑茶)が食後のお茶とは……」
「手が込んでるわね。マリアは初夢は見たの?」
「ああ、それなんですけど……。私も、予知夢を見たかもしれません」
「へえ……。早くも、予知夢を見るようになったか。で、どんなの?」
「中山……単勝……5」
「は?」
「複勝……5……7……10……。枠連が……」
「って、今度のJRA金杯の予想じゃないの!」
 その時、イリーナの頭にピーンと浮かぶものがあった。
「その予知夢は当たりそうなの?」
「かなり鮮明でした」
「んふふふふふ♪すぐに藤谷さんに新年の挨拶をなさい」
「ま、まさか……?」
「ユウタ君には、5日まで実家にいていいみたいなことも伝えておいてね」
「ええっ!そんな……」
 マリアはあからさまに嫌そうな顔をした。
「何なら、マリアがユウタ君の家に遊びに行きなさい。藤谷さんを儲けさせて、予想料をしっかり受け取ってくるのよ!」
「は、はあ……」
「ユウタ君の3日の夜行バスはキャンセルさせて、5日は特急のグリーン車で帰っていいからって」
「そう、伝えておけばいいんですか?」
「マリアの予知能力次第よ」
「多分、大丈夫だと思いますけど……」
 マリアは、自分に指示を出す師匠の使役悪魔が一瞬、“強欲の悪魔”マモンに見えてしまった。
 イリーナの使役悪魔は、“嫉妬の悪魔”レヴィアタンである。
 マモンにあっては、マリアに続いてエレーナが免許皆伝を今年中に受ける予定とのことなので、その際に契約する悪魔だということが内定している。
 いや、エレーナの免許皆伝自体が内定状態なわけだから、更に契約する悪魔となると、内定の内定、つまり内々定ということになるか。

[同日同時刻 天候:晴 東京都区内某所(日蓮正宗・正証寺) 藤谷春人]

「はーい!元旦勤行、午前の部が終わった人!お帰りはこちらからー!明日は池田大作の誕生日ですんでね、くれぐもチョーシに乗った学会員達に絡まれないように!」
 藤谷は自ら整理役を引き受け、時々笑いも飛ばしながら、本堂整理をしていた。
「え?もう絡まれた?それじゃ明日、アポ無し折伏してやりましょう!『池田大作の誕生日?命日の間違いだろ?』って!」
 ……こういうノリの末寺があるのかどうかは、作者も知らない。
「元旦勤行、午後の部に参加する為にお昼抜きでやってきた無謀な……もとい、熱心な人達はこちらに並んでくださーい!」
 などとやっている藤谷の所に、早速功徳の現証が現れた。
「はい、もしもし?……おおっ、稲生君かー!?明けまして、おめでとう!稲生君、帰省中だろ?早いとこ、参詣に来なよ……え?脱講願?そんなもん俺が破り捨てておいたよー!だから、早く来い」
 ↑班員の話も聞かずに破り捨てたアホ班長がここにいた。
 顕正会には当たり前のようにいるが、法華講にもいるのかは【お察しください】。
「……え?金杯?いや、競馬はもう卒業したよ。……ああ。いや、やっぱりね、ギャンブルってなぁ、三悪道ですよ、三悪道。……うん」
{「そうなんですか。それは……いいのか悪いのか」}
「ん?何だ?稲生君も金杯に興味があるのか?」
{「いや。マリアさんが初夢で予知夢を見たらしいんですが、それが金杯の予想らしいんですよ。結構、当たるかもしれないと……」}
「そ、そうなのかっ!?……あ、いや、実はね、確かに俺は個人的に競馬は辞めたんだ。だがね、俺の仕事、土建業だって知ってるだろ?やっぱこの業界、ギャンブル好きが多くってさぁ……。親父の命令で、お得意さんを接待しなきゃいけないんだ。何か、競馬に興味があるみたいだからさぁ……。いや、俺的にはね、信仰上そういうのは良くないって思ってんだけどさぁ……」
{「で、班長、どうするんですか?」}
「お得意様の為に、ちょっとお願いしようかなぁ……?」
{「分かりました。イリーナ先生から、『成功報酬はよろしく』とのことです」}
「うおっ!?それを早く言えっ!イリーナ先生がバックに付いているのなら、100パー当たってるも同然だな!稲生君、5日に来れる!?」
{「先生から、是非とも『立ち会え』と言われました」}
「そうかっ!じゃあ、早速頼むぞ!」
{「分かりました」}

 電話の向こうで稲生が溜め息をついて、軽い頭痛を覚えていた様子だったが、
「大聖人様!正月早々から大功徳あざざざざざーっす!!」
 藤谷はそんなことお構いなしだった。
コメント (5)
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