報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスター” 「AR団とシンディ」

2014-09-15 22:17:51 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月15日09:00.㈶日本アンドロイド研究開発財団本部 敷島孝夫、鏡音リン・レン、七海]

 本部内で少し仮眠を取った敷島は、収録の為にリンとレンをテレビ局に連れて行くことにした。
「敷島さん」
 そこへ、七海に呼び止められる。
 久しぶりに見るメイド服姿の七海。
 アリス研究所では事務の手伝いで来ているため、事務服を着ていることが多いからだ。
「これをお持ちになってください」
「これは……?」
 七海から渡されたのは、クレジットカードとほぼ同じ大きさ・厚さのカード。
 しかし表面には、ONとOFFというボタンがある。
「シンディ起動のリモコンスイッチです。これを押すだけで、シンディが起動します」
「ちょっ……!そんな簡単でいいのか!?」
「はい。敷島さんにおかれましては、いつでもシンディを連れて帰って頂きたいと太一様の御意向です」
「ふえ……」
 ある意味、厄介払いじゃないのかと思った敷島だった。
 因みにシンディは、頑丈な鉄扉に閉じられている研究室の椅子に座って“眠って”いる。
「このリモコンのスイッチを入れた人間の命令を聞くように設定されておりますので、くれぐれも紛失することのないようにと……」
「七海、お前が持ってればいいだろ?これから俺はテレビ局に行かなきゃいけないんだ」
「申し訳ありませんが、私も太一様とこれから本部を出ないといけないのです」
「兄ちゃんなら、無くしそうだYo〜?」
 リンがイタズラっぽく言った。
「うるさい。そこまで言うなら、持っててやるよ」
 敷島はスーツのポケットの中に入れた。
「それじゃ、さっさと行くぞ。今日はNHKで収録だ」
「じゃあ、渋谷だね」
「ボーカロイドに1番理解のあるテレビ局だから、失礼の無いようにな」
「はーい!」
「分かりました」
 因みに1番ボーカロイドに理解の無い(とされる)テレビ局は【お察しください】。

[同日11:30.渋谷にあるNHK局内の男子トイレ 敷島孝夫]

「オーマイガー!神は我を見捨てたもうた!!」
 頭を抱え、大絶叫を上げる敷島。
 すると、敷島の閉じ籠っている個室の上から、トイレットペーパーが投げ込まれた。
「お客さん、紙が無かったかい?取りあえず、それ使ってくんな」
 トイレ掃除のオジさんの声が外から聞こえた。
「紙が無いんじゃない!神に見放されたんだ!」
「はあ???」

[同日同時刻 NHK局内、関係者用廊下 ???]

 何故か廊下を小走りに走る宅配ピザの店員。
 手には配達用のピザの箱を抱えている。
 しかしその中に入っているのはピザではなかった。
 店員らしき男は、左耳に付けたインカムでどこかと連絡していた。
「会長、例のロボットの起動リモコン、無事に手に入りました」
{「ご苦労さん。すぐにそれでシンディを起動させて、こちらに連れて来るんだ」}
「了解です、会長」
 何と、男は宅配ピザの配達員に扮したテロ組織のスパイだった!?

[同日12:00.財団本部ビル、防災センター ???]

「こんにちはー。ケンショー工務店です。内装工事に入ります」
「は?ケンショー工務店さん?」
 防災センターの受付にやってきた、いかにも建設作業員風の男が3人。
 受付に座っていた警備員が、予定外の作業に首を傾げた。
「うち、事前の作業届が無いと作業できないんですけど……」
「あ、作業届の控えならあります」
 リーダーらしき男が1枚の書類を渡した。
「実は財団さんから急に作業を頼まれましてね、ビルの管理会社さんには届出を出したんですが、まだこちらに承認の通達が来てないかもですねー」
「うーむ……。確かに、管理会社の担当者の印鑑はありますね……」
「でしょ?でしょ?」
「一応、こちらの控えをコピーさせて頂きます」
「どうぞどうぞ」
 偽造作業届にまんまと騙された警備員。
 入館簿にも適当な偽名と連絡先を書いた作業員風の男3人は、こうして本部に入り込んだ。

 ※いやー、書類が偽物かどうかまで完全に見極めはできないからねー。精巧に作られて、尚且つ巧妙な芝居されたらお手上げっスよ。(by本業が防災センター警備員の作者)

[同日12:15.財団本部13階東部B地区1305部屋 AR団のエージェント3人]

「暗証番号入力式だぞ?」
「大丈夫っス。前、ここへの出入り業者の仕事してたもんで」
「さすがだな」
 というわけで暗証番号式ロックを易々と解除した3人。
 椅子の上には、電源の切られているシンディが眠っていた。
「このリモコンを押せば、勝手に起動して俺達の言うことを聞く設定らしいっス」
「わざわざダクト工事にかこつけて、そこで奴らの会話を盗聴しただけのことはあるな」
 リモコンを押すと、機械の唸り声が聞こえた。
 そして、シンディが目を開ける。
 その目が3人に向けられた。
「お、おい。俺はお前のスイッチを入れた者だぞ。言う事聞け」
「……で、何をすればいいの?」
 シンディが椅子から立ち上がって男達を見据えた。
「お、俺達と一緒に来い」
「分かったわ」
「おお!」
「ちゃんと言う事聞くぞ!」
「よし!さっさとこんなビル、おさらばだ!」
 男達はシンディを連れ出した。

[同日同時刻 NHK局内の男子トイレ 敷島孝夫&鏡音リン・レン]

「オーマイガッ!オーマイガー!」
「プロデューサー!どうしました!?もう収録終わりましたよ!何があったんですか!?」
 個室の中で絶叫を上げる敷島。
 その外でレンがドアを何度もノックして呼び掛けた。
「うぇぇぇん!兄ちゃんが……プロデューサーが壊れちゃったYo〜!!」
 トイレの外ではリンが泣きじゃくっていた。
「誰か兄ちゃん修理して〜!」
「プロデューサー!しっかりしてください!」

[同日13:00.東京都新宿区内 明治通り AR団エージェント3名&シンディ]

 スモークの張ったミニバンで明治通りの内回り線を走る件の男3名。
「会長、予定通り、シンディを連れ出しました」
{「ご苦労さん。あとは奴らにバレないよう、アジトまで連れてきてくれ」}
「了解っス。会長」
「いやー、しかしここまで行くとは思わなかったなー」
「あのボーカロイド・プロデューサーから、リモコンキーをパクる時は冷や冷やしたよ」
「…………」
 左右の口角を上に向けているシンディ。
 このミニバンはハイブリットカーだった。
「ロボットがお嫌いなのに、車は随分と最新式なようね」
 シンディが口を開いた。
「あー?そりゃ、車はロボットでないもんよー」
「俺達は環境保護団体でもあるんだぜ?電気をバカスカ食うロボットより、こっちのハイブリット車の方がよっぽど環境に優しいってもんよ」
「悪かったわね。電気をバカスカ食べて……」
「!」
 その時、車が急に交差点を左折した。
「おい、道が違うぞ!?」
「取りあえず、明治通りをどん詰まりまで行ってだな……」
「分かってるよ!」
「分かってるんなら、お前……」
 何故か車が右に左に曲がって行く。
「何やってんだ!早く明治通りに戻れよ!」
「は、ハンドルが……!ハンドルが勝手に動く……!」
「はあ!?」
「何言ってんだ、お前!?」
「ちょっ……!取りあえず止まれ!ブレーキ踏め!」
「さ、さっきから踏んでるんだが、全然減速しねぇ!どうなってんだ!?」
 その時、男の1人が冷笑にも似た微笑を浮かべるシンディに気づいた。
「てめっ!何かしたのか!?」
「はあ?私は何もしてないわ。言われた通り、ここでおとなしく座ってるじゃない?何か文句あんの?」
「コイツ、いけしゃあしゃあと……!」
 カーナビは、現在地として、ある有名な施設を示した。
「うわわっ!」
 その時、車が急加速を始める。
「ぶ、ぶつかるー!!」
 駐車場の出入口のゲートバーを破壊し、その前に立っていた警備員が慌てて回避する。
「でーっ!?」

 ズガッシャーン!!

「わ、わてのキャデラックがーっ!?」
「何してまんねん!?」
 たまたま駐車していた、とある有名お笑い芸人の高級車に突っ込んでやっと止まった。

[同日13:15.NHK局内の医務室 敷島孝夫&鏡音リン・レン]

「取り乱してしまいまして、すいませんでした……」
 敷島は医務室スタッフに何度も頭を下げて退出した。
「んもー、兄ちゃんったら……」
「シンディのリモコン起動キーを無くしたって……そんな、簡単に……」
「さすがにこれは辞表書かないとマズいだろうな……」
 その時、カメラマンやら見たことのあるリポーターが慌てて外に出て行くのを見かけた。
「あ?何だ?何の騒ぎだ?」
「ボク、見てきます」
「あ、リンも!」
 ボーカロイドの双子姉弟が外に向かって走り出した。
 そこで敷島は、真相の1つを知ることになる。
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小説の途中ですが、ここで本日の雑感をお送りします。 0915

2014-09-15 21:49:27 | 日記
 高速太郎さんへの返事を書いていて、余っているバスの発着枠、代ゼミの前から発着しているツアーバスにあげてもいいんじゃないかと思った。
 そのツアーバスも高速路線バスに認定されないと運行できなくなったわけだし、ちょうどいいんじゃないかな。

 パラパラ茜さんがブログを更新されたが、今度の新記事は元顕正会員の私から見れば、比較的まともな内容になっている。
 どこの会館でも、比較的中はきれいに清掃されている。
 否定する人もいるかもしれないが、少なくとも私は本部・地方を問わず、ブログにアップしたくなるほどの汚い会館を見たことがない。
 会館職員も親切な人達だったそうだが、そんなの当たり前だ。
 むしろ不親切な人がいたとしたら、私がここでアップしたいくらいだ。
 そこは平等。顕正会員だろうが、法華講員だろうが、お坊さんだろうが、これはと思ったらアップさせて頂く。
 で、生え抜きの信徒さんから見たら違和感を感じるのは最後の文ではないだろうか。
 しかし、元顕正会員の私から見れば不自然さは無い。
 会館参詣に渡り歩くというのは、顕正会員にとってはごくごく当たり前のことだ。
 むしろ旅行先に顕正会の会館があるかどうかは、重要問題である。
 しかし、生え抜きの法華講員はそうは思わないだろう。
 せいぜい旅行先で、どうしても御本尊の御前で勤行したいという人に限り、御供養やら御供物やらを持参して参詣させて頂くもので、故意に他支部の寺院にお寺参りするものではないという考えだからだ。
 今度のパラパラ茜さんの記事、是か非かはそれぞれの立場によって違うだろう。

 思いっきり、顕正会員ならOK、法華講員ならNGという内容になっていて、久方ぶりに面白いと思った。
コメント (2)
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“アンドロイドマスター” 「テロリスト集団AR団」

2014-09-15 17:19:10 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月14日23:50.東北急行バス仙台営業所 敷島孝夫&鏡音リン・レン]

「お待たせしました。23時55分発、“スイート”号、東京行きです」
 営業所前の停留所に、大型のバスが横付けされた。
 オレンジ色のLED表示版によると、東京テレポートとある。
 東京駅が終点ではないようだ。
「荷物は荷物室だからな」
「はーい」
「リン、お前は荷物じゃない!」
「ぅおっと!」
 敷島は荷物室に行くリンの襟首を掴んだ。
「人間型のお前らは、ちゃんと座席に乗れるからな」
「冗談だYo〜」
「すいません、これを……」
 レンは粛々と係員に大きな荷物を預ける。
「3人です」
 敷島は乗車券を運転手に渡した。
 運転手は乗客名簿片手に、
「それでは1、2、3のA席です」
「はい」
 予約制なので席番は分かっていたが、改めて見ると……。
(独立3列シートだよなぁ……。3人横1列の方がしっくり来るのに、縦1列とは……)
 敷島は運転席の後ろである1A席に座った。
「あっ、コンセントある〜」
「ああ。充電しとけよ、お前ら」
 敷島は車内に持ち込んだバッグを荷棚の上に上げながら言った。
 3連休の中日ということもあってか、座席は満席のようだった。
 よくこんなすぐ満席になるようなバスを予約できたものだと敷島は思った。
 何だかんだ言って、財団もそれなりに力があるということだろうか。
 少なくとも、警察権を動かすまでの力は無いとのことだが……。

 バスは2〜3分ほど遅れて、営業所の前を発車した。
 次は仙台駅前22番バス停に止まる。
 仙台市内での乗車はそれで終わり。
 高速に入るまでは消灯しないのが、ベタな夜行バスの法則だ。

[9月15日00:00.東北急行バス仙台営業所の待合室 営業所の職員]

 待合室にはテレビが点いている。
 今日の便を全て見送った職員は待合室内の点検と清掃に入った。
「ん?」
 テレビでは深夜のニュースをやっていた。

〔「……ここで、テロ組織からの犯行声明が入っているもようです」〕

 女性キャスターが神妙な顔で言った。
 画面が変わり、3人の男達が映る。
 真ん中にいるのがリーダーだろうか。
 左右には何故か銃ではなく、電動ドリルとチェーンソーを持った男2人が、まるで自動小銃よろしく手に構えている。

〔「我等は機械が人間の仕事を奪うことを許さぬ市民団体、アンチ・ロボット団」〕

「市民団体だ?見た目テロリストでねーの」
 地元の職員は訛りを出しながら、テレビの自称市民団体にツッコんだ。

〔「機械によって人間が仕事を追われることを見かね、それを推進する全ての組織に宣戦布告をするものである」〕

「ちょっと、佐々木さん!まだゴミ箱、片付いてねーよ!」
「あいよ、今やるよー。ったく、何が仕事が追われるだよ。お掃除ぐれぇ、ロボットがやったっていいっちゃねー」
 職員はボヤきながらテレビを消した。
「佐々木さんや、そのテレビ……」
「ん?」

[9月15日05:15.東京駅八重洲口バス停 敷島孝夫&鏡音リン・レン]

 冬ならまだ夜中という時間、バスが首都高速の呉服橋出口を出る。
 それと同時に、消灯されていた車内の照明が点灯した。
 それで目が覚める乗客も多い。

〔「長らくのご乗車、大変お疲れさまでした。まもなく、東京駅八重洲通りに到着致します。お降りの方はお忘れ物の無いよう、お支度をしてお待ちください。東京駅八重洲通りの次は、終点、東京テレポートです」〕

 敷島は着けていたアイマスクと耳栓を外した。
 準備万端で乗車していたもようである。
 敷島は大きな欠伸をして手足を伸ばした。
「再起動、完了」
 敷島のすぐ後ろに座るリンが呟いた。
「ん?お前、再起動なんかしたのか?」
「ううん。兄ちゃんが」
「再起動じゃねーよ。今のは」
「ははは……」
 姉のボケに苦笑いするしかない双子の弟、レン。

 バスは東京駅八重洲中央口前の交差点を左折し、専用のバス停に止まる。
 そこは老舗の路線バス会社。最近、雨後のタケノコのように乱立したツアーバス(現、高速路線バス)とは違い、駅の近くに停留所を構える。
「はい、お待たせしましたー」
 大きなエアー音と共にスライドドアが開き、乗客が降車を始める。
「眠いな……」
 敷島は欠伸をしながら乗降口のステップを踏んだ。
 しっかり者のレンは、荷物室に預けた荷物を受け取る。
「プロデューサーの荷物です」
「ん?ありがとう。てか、何だっけこれ?テレビ収録の資料だったっけ?」
「違いますよ。アリス博士からお預かりした、グレネード弾とデコイです」
「結局持って来たのかよ!危ねーな!」
 敷島は一気に目が覚めた。

[同日05:30.中央快速線各駅停車 敷島&リン・レン]

「ゆっくり来たけど、この電車に乗っても、朝6時くらいには財団に着いちゃうのか。いいのかな……」
 敷島は茶色とオレンジの座席に腰掛けて首を傾げた。
 5時半発の中央快速線を走るオレンジ色の各駅停車は、まずは進路を北に向けて走る。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は中央線、各駅停車、高尾行きです。次は神田、神田。お出口は、右側です。地下鉄銀座線は、お乗り換えです〕

「七海姉ちゃんが出迎えてくれるんでしょ?だったら、大丈夫だと思うな」
 リンとレンは座席に座らず、運転席室の前に立っていたが、敷島の呟きを聞いてやってきた。
「まあ、最近は七海もしっかりするようになってきて、『天然ボケのドジっ子メイド』という面は無くなったけどな。コーヒーくれって言ったら、紅茶とコーヒーのブレンドで『紅ヒー』なんてのを持ってきやがって、危うく泡吹きそうになったよ」
「事務作業は完璧なんですけどねぇ……」
 レンも首を傾げた。
「ああ。人件費は高いからな、七海が1機いるだけで大変な経費節減だよ」
 敷島は笑みを浮かべた。
(さすがにボカロPだけは機械化できそうにないだろうがな)
 敷島は心の中でニヤッと笑った。

[同日06:00.㈶日本アンドロイド研究開発財団本部 敷島&リン・レン]

「あのー、おはようございます。仙台支部で参事やってる敷島と申しますが……」
 敷島は初めて入る本部ビルの休日・夜間通用口にやってきた。
 本部は自社ビルではなく、大手の地所会社が所有している。
 それに入居しているテナントだ。
「あー、ハイハイ。JARAさんですね。身分証はお持ちですか?」
 財団を英語に略すると、JARAになる。
 敷島がジョニデ角度から取った写真付きの職員証を呈示すると、警備員はバインダーに挟まれた書類を持って来た。
「じゃあ、こちらの入館簿に御記入を……」
 警備員自身、仮眠明けか何かだろうか。
 同じく仮眠明けのようなものの状態である敷島と、何か雰囲気が似ていた。
「あっ、敷島さん」
 ビルの奥から七海がやってきた。
「よお、七海」
 七海が小走りにやってきたと思うと、
「ぅあっち!」
 点字ブロックに躓いて転んだ。
「お前なぁ……。さっき、リン・レンと『最近の七海はしっかり者』って言ってたのに……」
 敷島は呆れた。

 入館手続きを済ませた敷島達。
 七海の後について、エレベーターに乗り込む。
「今、シンディは?」
「“寝て”います。いつでも、さっきの通用口から連れ出しOKとのことです」
「今連れ出しても、俺はリン・レンの収録に付き合わないといけないからな」
「一緒に連れて行ったらどうですか?」
「バカ言え。テレビ局ってのは、立ち入り禁止区域の多い建物だぞ。関係者以外の立ち入りは厳禁だ。せめて、それが終わるまではここに保管しておいてもらいたいな……」
コメント (4)
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“アンドロイドマスター” 「前途多難な2号機」

2014-09-15 10:07:49 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月14日21:00.アリスの研究所 敷島孝夫、アリス・シキシマ、鏡音リン・レン]

「じゃ、気をつけて行ってよ、タカオ」
「あいよ。ま、所詮俺なんてこんな役ばっかだよ」
「事務職はツラいねー、兄ちゃん」
 リンがイタズラっぽく笑う。
「『兄ちゃん』じゃなくて、プロデューサーと呼びなさい」
 アリスが注意する。
「まあまあ。ボクも一緒ですから」
 と、レン。
 敷島はこれから財団本部に保管されているシンディの引き取りに向かうところだ。
 リンとレンは護衛ではなく、ただ単に都内での仕事が被っただけである。
「経費削減で夜行バスで移動って……。アリスは新幹線のグリーン車なのになぁ……」
「アリス博士は特別だからね」
「だから、アタシが交渉して、帰りくらい新幹線に乗せてあげるわよ」
「へーへー。期待してます」
 敷島はエントランスで靴を履いた。
「エミリーは一緒に来ないのか?」
「テロ対策で、この研究所の警備の為にここにいてもらうわ」
「金沢に行く時みたいに、途中でバージョン達が襲ってきても困るぞ?」
「あっ、思い出した!」
 ポンとアリスは手を叩いた。
「大丈夫よ。そういう時の為に、ちゃんとモノは用意したから。エミリー、例の物を持って来て」
「イエス。ドクター・アリス」
 アリスは研究所の奥へ向かうと、すぐに戻って来た。
 手にはアルミ製のバッグを持っている。
 大きさはA3サイズくらいか。
 開けると、
「これが電撃グレネードで、これがパルス・グレネード、これがRデコイね。使い方はOK?」
「東京に着く前に俺が逮捕されるわ!」
 兵器的には、どちらがテロリストなんだか……。

[同日21:15.のぞみヶ丘ニュータウン、バス折返し場 敷島&リン・レン]

「プロデューサー!バス、もういますよ!」
「急げ!あれが駅に行く最終バスだ!」
「はい!」
 仙台市北部の、とあるニュータウンの外れにある研究所。
 その下には、バスの折返し場がある。
 オレンジ色のLED表示器で、『泉中央駅』と書かれた路線バスが発車を待っていた。
 その表示は赤枠で囲まれており、最終便であることを表している。

〔「泉中央行き最終、発車します」〕

 敷島達が乗り込むと、エンジンが掛かる。
 下りの便は立ち客が出るほどなのだろうが、上り便は現時点で乗客ゼロだった。
 1番後ろの席に座ると、バスは折返し場を発車した。

「兄ちゃん……じゃなかった。プロデューサー、夜行バスの中は充電コンセント付いてるの?」
「ああ。今は大抵、夜行便は付いてるんじゃないかな」
 敷島は夜行バスの乗車券を見た。
「財団本部は新宿にあるってのに、行き先が東京駅行きとはな……。明日は平日だから、中央線メチャ込みかもしれないな……」
「プロデューサー、明日は祝日ですよ」
 レンが笑みを浮かべて言った。
「おっ、そうか。あー、それで分かった」
 敷島は納得したように言った。
「祝日なら本部ビルも閉館日だから、地下1階のプロムナード(地下商店街)も休みだ。つまり、在館者はほとんどいない。シンディはこっそり夜間・休日通用口から出すつもりだな」
「なるほど。それなら大騒ぎになりませんもんね」
 仙台側、東京側ともシンディの活躍により、テロは鎮圧された。
「それにしても、マリオ達が言ってたんだが、確かにテロリストの姿が見えてこないな。あの廃ホテルのケンショー何とかって奴らがそうなのかと思ってたけど、そうでもないみたいだし……」
「ええ」
 リンとレンは仙台市内で仕事中だったので、シンディの起動・稼働実験には立ち会っていない。
 立ち会っていたMEIKOの話では、まずはマリオとルイージに異変が起きたという。
 ただ、彼らは賢い判断で、すぐさま自らの電源を落とした。
 それがヒントとなり、バージョン・シリーズが暴走する信号が発せられたことがすぐに分かった。
 エミリーがすぐに対応に当たったが、4.0の1機が放ったパルス・グレネードを被弾してしまったため、電装系異常で緊急停止。
 何とか全てのソフトの起動が終了したシンディが、代わりに対応に当たったとのこと。
「バージョン4.0にパルス・グレネードを持たせた、誰かがいるってことだな」
 アリスが製作したものと機能は基本同じだが、見た目が違うことから、別の第三者であろう。

[同日21:45.地下鉄泉中央駅 敷島&リン・レン]

 だいたい30分くらい路線バスに揺られて、ようやく仙台市地下鉄南北線の北の終点駅に到着する。
 泉副都心とも呼ばれるこの町は、明らかに南の終点である富沢駅より賑わっていた。
「大人3名」
「はい」
 敷島がプリペイド・カードで運賃を払っている間、大きなバッグを持ったリンとレンがノンステップバスの広い前扉から先に降りた。
「兄ちゃん、Suicaを出すギャグはやらないんだね」
「誰がやるか!作者じゃあるまいし!」
 ↑帰省中、地元の市営バスと地下鉄でやらかした作者。なもんで、地下鉄仙台駅の改札口には大きく『Suicaは使えません』と書いている。
「唯一キップで、普通の電車に乗るのはここの地下鉄くらいだよ。あとは新幹線くらいだ」

 キップ売り場や改札口は地上にあるが、ホームは地下(?)にある。

〔お知らせ致します。この電車は、富沢行きです。発車まで、しばらくお待ち願います〕

「プロデューサー、七海から通信です」
 と、レン。
「七海から?」
 敷島は一旦電車から降りると、通信リンクを繋いだ。
「ああ、俺だ。どうした?」
{「明日の件なんですけど、太一様から本部まで迎えに行くように指示を受けましたので、よろしくお願いします」}
「えっ、平賀先生行かないの?」
{「はあ……。太一様は、シンディの再稼働反対派ですし……」}
「そっか……」
 平賀にしてみれば、師事していた南里を殺された恨み節があろう。
 なので今でもウィリー本人に対しては嫌悪しているし、心の奥底ではアリスも嫌っている。
「まあ、そういうことならいいや。お前も確か決戦の時は、ボディをまるまる交換しなきゃいけないくらいの損傷を受けたんだよな」
{「はい」}
「取りあえず財団の意向だから、お前も恨み節の1つでもあるだろうが、そこは我慢してくれ」
{「はい。十条博士からも強く指示されました」}
「それなら尚更に従わないとな。あの爺さん、やる時ゃやるから。それじゃ」
 敷島は通信リンクを切った。
 そして、先頭車に戻る。

〔「ご案内致します。この電車は21時51分発、仙台、長町方面、富沢行きです。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

[同日21:51.仙台市交通局1000N系先頭車内 敷島、リン・レン]

 電車は定刻に発車した。
 ポイント通過で、電車が大きく揺れる。
 その後は地上に出て、地下と同じく暗い夜の鉄路を南に進んだ。
(それにしても……)
 と、敷島は思う。
 平賀の気持ちは分かる。
 むしろ当然のことだし、科学者とて人間だから情で動くこともあるだろう。
 だから、平賀はいい。
 問題は十条だ。
 前のシンディをいち早く処分したがったのは十条だった。
 学術研究の為に、ボディだけは残しておきたいという他の理事の意見を押しのけて、ほぼ強行的に処分を下したのだ。
 表向きには世論対策の為だとしていた。
 しかし今回、十条は稼働賛成派に回っている。
 ただ単に賛成というわけではなく、強く反対している平賀をなだめ、他の反対派理事達の説得に回ったくらいだ。
 この矛盾した行動が分からない。
「前のシンディは、もはや許されざる存在じゃった。しかし、今度再稼働させるシンディは違う。同一ではあるが、似て非なるものじゃ。遺恨をいつまでも残してはならぬ」
 という主張だ。
 傍にいるキールによると、
「よく分かりませんが、『2度と後悔はしたくない』とのことです」
 ということだ。
(ま、幹部の皆さん達は色々なこと考えて大変なこった。名ばかり役職の俺は粛々と下の仕事をやっておこう)
コメント (3)
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他人の不幸は蜜の味

2014-09-14 11:20:09 | 日記
 セロリさんが顕正会で壮年部長をやっておられた方の体験発表を紹介しておられる。
 体験発表というか、壮年部長時代の告白手記といった方が良いか。
 大幹部の立場として見た顕正会の実態が暴露されているが、私も知っている内容だ。
 特に長年やってきた人ほど、顕正会の間違いに気づいたら、無気力になるのだという。
「俺の○○年は何だったのだろうか」
 と。
 私は足掛け10年、顕正会で信仰してきた。
 結構長い方なのではないだろうか。
 無論、その中には化石化していた時期も含まれている。
 10年もバリバリ活動していたわけではない。
 だが、それでもどうして10年も続けることができたのか。
 法華講員の折伏に掛からなかったからというのは表向きの理由で、少しでも疑問があったら、ネットで調べるくらいのことはできたはず。
 だから御受誡とまでは行かなくても、自主脱会くらいはできたはずだ。
 しかし、私の場合は脱会と御受誡は同時である。厳密に言えば宗門発行の脱会届は、後日、内容証明で送った。

 いや、疑問が全く無かったわけではない。
 それには私の嫌な性格が大きく関わっている。
 元顕正会員でブログをやっているくらいの人なら知っているが、本来なら功徳に満ち溢れているはずの幹部が何故か不幸になり、いつの間にか組織内から消え失せて行くという現象。
 1人や2人くらいなら、もしくは忘れた頃にまた1人……というくらいなら、そういうこともある程度で済んだだろう。
 また、他の幹部もそれで下の会員を誤魔化すこともできる。
「幹部とはいえ、そこは凡夫だから、たまにはそういうこともあるんだ」
 と。
 しかし、そうではない。1人また1人と、次々と幹部が消えて行く。
 そして長年やっていると、いくら組長止まりの私でも顔見知りは増えて行くから、それなりの情報ネットワークが構築されている(というのは表向きで、実は私の所属した組織が【自主規制致します】)。
 だから、どうしてあの幹部が消えたのかという真実も耳にする機会はあるのだ。
 だったらどうして、自分も嫌になって辞めようとしなかったのか。
 それが、私の性格だ。
 この記事のタイトル、『他人の不幸は蜜の味』これだ。
 空威張りしていた幹部が自滅して行く中、それを薄笑いを浮かべて見ていたのは事実。
 法華講がつまらないと愚痴をこぼしているのは、法華講では一部の例外はあれ、基本的に自滅する人物はいないからだ。
 周りが幸せなので、私自身は……という現実を突き付けられるのが法華講という組織だ。
 だから私のような人物は、顕正会が相応しい。
 他人の不幸を蜜の味として味わえる人間は、そのまま顕正会にいればよろしい。

 ……あれ?今、誰か別の顕正会員を思い浮かべたぞ?
 同じく他人の不幸を喜ぶ、年齢的には婦人部にいてもいいオバちゃん。
 バブルの名残を忘れられない、イタいオバちゃん。
 とあるアイドルの襲撃事件の被害者を謗り、覚せい剤の加害者を擁護する、あのオバちゃんだ。
 少なくとも、あの人の方が私より先に自滅する自信があるぞ。
 というか、私は自滅しない。
 大石寺参詣を続け、御開扉を賜っている限り、それは有り得ないと思っている。
 最近は、他人の不幸が蜜の味に思えなくなってきた。
 どちらかというと、
「他人の振り見て、我が振り直せ」
 とか、
「明日は我が身」
 みたいな感じだな。

 まあ、それだけでも正しい信仰をしている証と言えるのではないだろうか。
コメント (8)
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