[9月14日23:50.東北急行バス仙台営業所 敷島孝夫&鏡音リン・レン]
「お待たせしました。23時55分発、“スイート”号、東京行きです」
営業所前の停留所に、大型のバスが横付けされた。
オレンジ色のLED表示版によると、東京テレポートとある。
東京駅が終点ではないようだ。
「荷物は荷物室だからな」
「はーい」
「リン、お前は荷物じゃない!」
「ぅおっと!」
敷島は荷物室に行くリンの襟首を掴んだ。
「人間型のお前らは、ちゃんと座席に乗れるからな」
「冗談だYo〜」
「すいません、これを……」
レンは粛々と係員に大きな荷物を預ける。
「3人です」
敷島は乗車券を運転手に渡した。
運転手は乗客名簿片手に、
「それでは1、2、3のA席です」
「はい」
予約制なので席番は分かっていたが、改めて見ると……。
(独立3列シートだよなぁ……。3人横1列の方がしっくり来るのに、縦1列とは……)
敷島は運転席の後ろである1A席に座った。
「あっ、コンセントある〜」
「ああ。充電しとけよ、お前ら」
敷島は車内に持ち込んだバッグを荷棚の上に上げながら言った。
3連休の中日ということもあってか、座席は満席のようだった。
よくこんなすぐ満席になるようなバスを予約できたものだと敷島は思った。
何だかんだ言って、財団もそれなりに力があるということだろうか。
少なくとも、警察権を動かすまでの力は無いとのことだが……。
バスは2〜3分ほど遅れて、営業所の前を発車した。
次は仙台駅前22番バス停に止まる。
仙台市内での乗車はそれで終わり。
高速に入るまでは消灯しないのが、ベタな夜行バスの法則だ。
[9月15日00:00.東北急行バス仙台営業所の待合室 営業所の職員]
待合室にはテレビが点いている。
今日の便を全て見送った職員は待合室内の点検と清掃に入った。
「ん?」
テレビでは深夜のニュースをやっていた。
〔「……ここで、テロ組織からの犯行声明が入っているもようです」〕
女性キャスターが神妙な顔で言った。
画面が変わり、3人の男達が映る。
真ん中にいるのがリーダーだろうか。
左右には何故か銃ではなく、電動ドリルとチェーンソーを持った男2人が、まるで自動小銃よろしく手に構えている。
〔「我等は機械が人間の仕事を奪うことを許さぬ市民団体、アンチ・ロボット団」〕
「市民団体だ?見た目テロリストでねーの」
地元の職員は訛りを出しながら、テレビの自称市民団体にツッコんだ。
〔「機械によって人間が仕事を追われることを見かね、それを推進する全ての組織に宣戦布告をするものである」〕
「ちょっと、佐々木さん!まだゴミ箱、片付いてねーよ!」
「あいよ、今やるよー。ったく、何が仕事が追われるだよ。お掃除ぐれぇ、ロボットがやったっていいっちゃねー」
職員はボヤきながらテレビを消した。
「佐々木さんや、そのテレビ……」
「ん?」
[9月15日05:15.東京駅八重洲口バス停 敷島孝夫&鏡音リン・レン]
冬ならまだ夜中という時間、バスが首都高速の呉服橋出口を出る。
それと同時に、消灯されていた車内の照明が点灯した。
それで目が覚める乗客も多い。
〔「長らくのご乗車、大変お疲れさまでした。まもなく、東京駅八重洲通りに到着致します。お降りの方はお忘れ物の無いよう、お支度をしてお待ちください。東京駅八重洲通りの次は、終点、東京テレポートです」〕
敷島は着けていたアイマスクと耳栓を外した。
準備万端で乗車していたもようである。
敷島は大きな欠伸をして手足を伸ばした。
「再起動、完了」
敷島のすぐ後ろに座るリンが呟いた。
「ん?お前、再起動なんかしたのか?」
「ううん。兄ちゃんが」
「再起動じゃねーよ。今のは」
「ははは……」
姉のボケに苦笑いするしかない双子の弟、レン。
バスは東京駅八重洲中央口前の交差点を左折し、専用のバス停に止まる。
そこは老舗の路線バス会社。最近、雨後のタケノコのように乱立したツアーバス(現、高速路線バス)とは違い、駅の近くに停留所を構える。
「はい、お待たせしましたー」
大きなエアー音と共にスライドドアが開き、乗客が降車を始める。
「眠いな……」
敷島は欠伸をしながら乗降口のステップを踏んだ。
しっかり者のレンは、荷物室に預けた荷物を受け取る。
「プロデューサーの荷物です」
「ん?ありがとう。てか、何だっけこれ?テレビ収録の資料だったっけ?」
「違いますよ。アリス博士からお預かりした、グレネード弾とデコイです」
「結局持って来たのかよ!危ねーな!」
敷島は一気に目が覚めた。
[同日05:30.中央快速線各駅停車 敷島&リン・レン]
「ゆっくり来たけど、この電車に乗っても、朝6時くらいには財団に着いちゃうのか。いいのかな……」
敷島は茶色とオレンジの座席に腰掛けて首を傾げた。
5時半発の中央快速線を走るオレンジ色の各駅停車は、まずは進路を北に向けて走る。
〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は中央線、各駅停車、高尾行きです。次は神田、神田。お出口は、右側です。地下鉄銀座線は、お乗り換えです〕
「七海姉ちゃんが出迎えてくれるんでしょ?だったら、大丈夫だと思うな」
リンとレンは座席に座らず、運転席室の前に立っていたが、敷島の呟きを聞いてやってきた。
「まあ、最近は七海もしっかりするようになってきて、『天然ボケのドジっ子メイド』という面は無くなったけどな。コーヒーくれって言ったら、紅茶とコーヒーのブレンドで『紅ヒー』なんてのを持ってきやがって、危うく泡吹きそうになったよ」
「事務作業は完璧なんですけどねぇ……」
レンも首を傾げた。
「ああ。人件費は高いからな、七海が1機いるだけで大変な経費節減だよ」
敷島は笑みを浮かべた。
(さすがにボカロPだけは機械化できそうにないだろうがな)
敷島は心の中でニヤッと笑った。
[同日06:00.㈶日本アンドロイド研究開発財団本部 敷島&リン・レン]
「あのー、おはようございます。仙台支部で参事やってる敷島と申しますが……」
敷島は初めて入る本部ビルの休日・夜間通用口にやってきた。
本部は自社ビルではなく、大手の地所会社が所有している。
それに入居しているテナントだ。
「あー、ハイハイ。JARAさんですね。身分証はお持ちですか?」
財団を英語に略すると、JARAになる。
敷島がジョニデ角度から取った写真付きの職員証を呈示すると、警備員はバインダーに挟まれた書類を持って来た。
「じゃあ、こちらの入館簿に御記入を……」
警備員自身、仮眠明けか何かだろうか。
同じく仮眠明けのようなものの状態である敷島と、何か雰囲気が似ていた。
「あっ、敷島さん」
ビルの奥から七海がやってきた。
「よお、七海」
七海が小走りにやってきたと思うと、
「ぅあっち!」
点字ブロックに躓いて転んだ。
「お前なぁ……。さっき、リン・レンと『最近の七海はしっかり者』って言ってたのに……」
敷島は呆れた。
入館手続きを済ませた敷島達。
七海の後について、エレベーターに乗り込む。
「今、シンディは?」
「“寝て”います。いつでも、さっきの通用口から連れ出しOKとのことです」
「今連れ出しても、俺はリン・レンの収録に付き合わないといけないからな」
「一緒に連れて行ったらどうですか?」
「バカ言え。テレビ局ってのは、立ち入り禁止区域の多い建物だぞ。関係者以外の立ち入りは厳禁だ。せめて、それが終わるまではここに保管しておいてもらいたいな……」
「お待たせしました。23時55分発、“スイート”号、東京行きです」
営業所前の停留所に、大型のバスが横付けされた。
オレンジ色のLED表示版によると、東京テレポートとある。
東京駅が終点ではないようだ。
「荷物は荷物室だからな」
「はーい」
「リン、お前は荷物じゃない!」
「ぅおっと!」
敷島は荷物室に行くリンの襟首を掴んだ。
「人間型のお前らは、ちゃんと座席に乗れるからな」
「冗談だYo〜」
「すいません、これを……」
レンは粛々と係員に大きな荷物を預ける。
「3人です」
敷島は乗車券を運転手に渡した。
運転手は乗客名簿片手に、
「それでは1、2、3のA席です」
「はい」
予約制なので席番は分かっていたが、改めて見ると……。
(独立3列シートだよなぁ……。3人横1列の方がしっくり来るのに、縦1列とは……)
敷島は運転席の後ろである1A席に座った。
「あっ、コンセントある〜」
「ああ。充電しとけよ、お前ら」
敷島は車内に持ち込んだバッグを荷棚の上に上げながら言った。
3連休の中日ということもあってか、座席は満席のようだった。
よくこんなすぐ満席になるようなバスを予約できたものだと敷島は思った。
何だかんだ言って、財団もそれなりに力があるということだろうか。
少なくとも、警察権を動かすまでの力は無いとのことだが……。
バスは2〜3分ほど遅れて、営業所の前を発車した。
次は仙台駅前22番バス停に止まる。
仙台市内での乗車はそれで終わり。
高速に入るまでは消灯しないのが、ベタな夜行バスの法則だ。
[9月15日00:00.東北急行バス仙台営業所の待合室 営業所の職員]
待合室にはテレビが点いている。
今日の便を全て見送った職員は待合室内の点検と清掃に入った。
「ん?」
テレビでは深夜のニュースをやっていた。
〔「……ここで、テロ組織からの犯行声明が入っているもようです」〕
女性キャスターが神妙な顔で言った。
画面が変わり、3人の男達が映る。
真ん中にいるのがリーダーだろうか。
左右には何故か銃ではなく、電動ドリルとチェーンソーを持った男2人が、まるで自動小銃よろしく手に構えている。
〔「我等は機械が人間の仕事を奪うことを許さぬ市民団体、アンチ・ロボット団」〕
「市民団体だ?見た目テロリストでねーの」
地元の職員は訛りを出しながら、テレビの自称市民団体にツッコんだ。
〔「機械によって人間が仕事を追われることを見かね、それを推進する全ての組織に宣戦布告をするものである」〕
「ちょっと、佐々木さん!まだゴミ箱、片付いてねーよ!」
「あいよ、今やるよー。ったく、何が仕事が追われるだよ。お掃除ぐれぇ、ロボットがやったっていいっちゃねー」
職員はボヤきながらテレビを消した。
「佐々木さんや、そのテレビ……」
「ん?」
[9月15日05:15.東京駅八重洲口バス停 敷島孝夫&鏡音リン・レン]
冬ならまだ夜中という時間、バスが首都高速の呉服橋出口を出る。
それと同時に、消灯されていた車内の照明が点灯した。
それで目が覚める乗客も多い。
〔「長らくのご乗車、大変お疲れさまでした。まもなく、東京駅八重洲通りに到着致します。お降りの方はお忘れ物の無いよう、お支度をしてお待ちください。東京駅八重洲通りの次は、終点、東京テレポートです」〕
敷島は着けていたアイマスクと耳栓を外した。
準備万端で乗車していたもようである。
敷島は大きな欠伸をして手足を伸ばした。
「再起動、完了」
敷島のすぐ後ろに座るリンが呟いた。
「ん?お前、再起動なんかしたのか?」
「ううん。兄ちゃんが」
「再起動じゃねーよ。今のは」
「ははは……」
姉のボケに苦笑いするしかない双子の弟、レン。
バスは東京駅八重洲中央口前の交差点を左折し、専用のバス停に止まる。
そこは老舗の路線バス会社。最近、雨後のタケノコのように乱立したツアーバス(現、高速路線バス)とは違い、駅の近くに停留所を構える。
「はい、お待たせしましたー」
大きなエアー音と共にスライドドアが開き、乗客が降車を始める。
「眠いな……」
敷島は欠伸をしながら乗降口のステップを踏んだ。
しっかり者のレンは、荷物室に預けた荷物を受け取る。
「プロデューサーの荷物です」
「ん?ありがとう。てか、何だっけこれ?テレビ収録の資料だったっけ?」
「違いますよ。アリス博士からお預かりした、グレネード弾とデコイです」
「結局持って来たのかよ!危ねーな!」
敷島は一気に目が覚めた。
[同日05:30.中央快速線各駅停車 敷島&リン・レン]
「ゆっくり来たけど、この電車に乗っても、朝6時くらいには財団に着いちゃうのか。いいのかな……」
敷島は茶色とオレンジの座席に腰掛けて首を傾げた。
5時半発の中央快速線を走るオレンジ色の各駅停車は、まずは進路を北に向けて走る。
〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は中央線、各駅停車、高尾行きです。次は神田、神田。お出口は、右側です。地下鉄銀座線は、お乗り換えです〕
「七海姉ちゃんが出迎えてくれるんでしょ?だったら、大丈夫だと思うな」
リンとレンは座席に座らず、運転席室の前に立っていたが、敷島の呟きを聞いてやってきた。
「まあ、最近は七海もしっかりするようになってきて、『天然ボケのドジっ子メイド』という面は無くなったけどな。コーヒーくれって言ったら、紅茶とコーヒーのブレンドで『紅ヒー』なんてのを持ってきやがって、危うく泡吹きそうになったよ」
「事務作業は完璧なんですけどねぇ……」
レンも首を傾げた。
「ああ。人件費は高いからな、七海が1機いるだけで大変な経費節減だよ」
敷島は笑みを浮かべた。
(さすがにボカロPだけは機械化できそうにないだろうがな)
敷島は心の中でニヤッと笑った。
[同日06:00.㈶日本アンドロイド研究開発財団本部 敷島&リン・レン]
「あのー、おはようございます。仙台支部で参事やってる敷島と申しますが……」
敷島は初めて入る本部ビルの休日・夜間通用口にやってきた。
本部は自社ビルではなく、大手の地所会社が所有している。
それに入居しているテナントだ。
「あー、ハイハイ。JARAさんですね。身分証はお持ちですか?」
財団を英語に略すると、JARAになる。
敷島がジョニデ角度から取った写真付きの職員証を呈示すると、警備員はバインダーに挟まれた書類を持って来た。
「じゃあ、こちらの入館簿に御記入を……」
警備員自身、仮眠明けか何かだろうか。
同じく仮眠明けのようなものの状態である敷島と、何か雰囲気が似ていた。
「あっ、敷島さん」
ビルの奥から七海がやってきた。
「よお、七海」
七海が小走りにやってきたと思うと、
「ぅあっち!」
点字ブロックに躓いて転んだ。
「お前なぁ……。さっき、リン・レンと『最近の七海はしっかり者』って言ってたのに……」
敷島は呆れた。
入館手続きを済ませた敷島達。
七海の後について、エレベーターに乗り込む。
「今、シンディは?」
「“寝て”います。いつでも、さっきの通用口から連れ出しOKとのことです」
「今連れ出しても、俺はリン・レンの収録に付き合わないといけないからな」
「一緒に連れて行ったらどうですか?」
「バカ言え。テレビ局ってのは、立ち入り禁止区域の多い建物だぞ。関係者以外の立ち入りは厳禁だ。せめて、それが終わるまではここに保管しておいてもらいたいな……」
西口に有った、旅館ホテルの送迎バスや観光バスの有料駐車が東口に移動しています。
1階からは、ペデストリアンデッキに一度上がってから、降りることになり、チョット不便です。
情報ありがとうございます。
確かに西口に、そういったバスが止まってましたね。
まあ、タクシー降り場や一般車乗降場が狭いというのもあるでしょうが……。
秋保温泉や作並温泉からだと、東口は遠回りで大変でしょうね。
で、駅の構造上、1階からだと……。分かります。
元々東口は大宮駅と違って、最初から駅裏でしたから、電車の乗り場からも少し離れてるんですよね。
西口よりはバス発着枠が余っていて(確か、使用していないバス停のポールが2〜3本くらいあったはずです)、そこを送迎バス等に使わせるというアイディア自体は悪くはないと思いますがね。
西口側の工事が終われば、県内の短距離便は、青葉通に戻るようです。
県外の中長距離便は、東口に集約し分けることで、利用者に分かり易くが、狙いのようです。
仕事がら、情報をしっかり掴んでないといけないのですが・・・今回は、バス会社さんから教えられましたとさ!
また文字化けしてしまいましたね。すいません。
「2から3」です。
仙台駅の駅舎自体が工事をしているそうで、それが終わるまでは落ち着かなさそうですね。