[1月1日12:30.日蓮正宗・正証寺 稲生ユウタ、威吹邪甲、威波莞爾、藤谷春人]
「はーい、元旦勤行に参加の方はこちらー!」
「班長、明けましておめでとうございます」
「おおっ、稲生君。おめでとう。今年もよろしくな」
「こちらこそ」
「ちゃんと正装してくる辺りが感心だぞ、2人とも」
藤谷は紋付き袴姿の威吹とカンジを見て言った。
「フフ、まあな……」
「これでキミ達が人間だったらなぁ、新年早々御受誡だったのに」
藤谷が残念そうな顔をした。
「オレはともかく、カンジは人間界生まれの人間界育ちなこともあって、こっちの世界に戸籍があると聞いたが……」
威吹が言うと、
「! じゃあ、カンジ君。ちょっと話そうか」
「は?」
「お茶と菓子くらい出すぞ。さあさあ。さあさあ」
「やめい!」
威吹の一喝。
「班長、いかにも誓願達成できてませんみたいな感じでみっともないですよ」
さすがのユタも呆れた顔をした。
「だってさ、昨年の誓願達成率最悪だったんだもん」
「こればかりは仏縁だからしょうがないって言ってたじゃないですか。その代わり……」
「ん?」
ユタはタブレットを取り出した。
「都内の布教区全部合わせて、退転率はうちのお寺が1番低いですよ」
「どうやって調査したんだ、おい?」
[同日13:00.同場所 威吹邪甲&威波莞爾]
「おっ、始まったな」
本堂から鈴の音が聞こえてきて、題目を唱える声が聞こえて来た。
「先生、僅かに鬼の匂いがしますが……」
「ああ、キノと栗原殿が既に年明けの時点でここにいたらしい。『鬼の匂い』はなかなか取れないからな、その残り香だろう」
もっとも、普通の人間には感じ取れないほどである。
「それにしても……」
「ええ」
この寺院には顕正会の会館と違いそこそこ広い駐車場が完備されている。
そこに、1台のマイクロバスが止まっていた。自前の白ナンバーではなく、都内のバス会社のもので、当然ながら運転手もバス会社の人間である。
信徒達を乗せて来たと思ったら、真っ先に降りて来たのは副講頭だという。
それ以外に降りてきたのは未入信者。つまり、新願者である。
「珍しいですね。だいたい20人くらい降りてきましたよ」
「ああ」
「元旦勤行が終わるのが1時間後ぐらいだとして、その後はどうしますか?」
「ユタ次第だな。魔道師達は……まあ、いいだろう」
そごう・西武が1日から初売りをやっていると聞いたイリーナ。
これから都内の寺院へ元旦勤行に行くのならばと、都内の西武百貨店に出向いた次第。
今頃は弟子のマリアと、福袋でも購入している頃だろう。
[同日14:30.JR池袋駅埼京線ホーム ユタ、威吹、カンジ、イリーナ、マリア]
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の4番線の電車は、14時37分発、各駅停車、大宮行きです。……〕
「一気に20名も、元旦から集団御受誡なんて、副講頭やるなぁ……」
ユタはさっきまでの元旦勤行を振り返っていた。
「顕正会……いや、他のお寺でもこんなことはないだろう」
「そうでしょうとも」
威吹は当たらず障らずの反応をした。
「マリアさんは、何を買ったんですか?」
ユタはマリアにすり寄った。
「私は……」
ユタがマリアと話している間、威吹はカンジに話し掛けた。
「カンジ。お前も頭が良い。よく考えて良い案を出してほしい」
「何をでしょう?」
「どうやったらユタの機嫌を損ねず、やんわりとあの魔道師と引き離せるかだ」
「なるほど……」
「今すぐである必要は無いし、理由は言わなくても分かるな?」
「はい」
威吹とカンジの企み。これが後に大きなトラブルの元になるとは……。
「はーい、元旦勤行に参加の方はこちらー!」
「班長、明けましておめでとうございます」
「おおっ、稲生君。おめでとう。今年もよろしくな」
「こちらこそ」
「ちゃんと正装してくる辺りが感心だぞ、2人とも」
藤谷は紋付き袴姿の威吹とカンジを見て言った。
「フフ、まあな……」
「これでキミ達が人間だったらなぁ、新年早々御受誡だったのに」
藤谷が残念そうな顔をした。
「オレはともかく、カンジは人間界生まれの人間界育ちなこともあって、こっちの世界に戸籍があると聞いたが……」
威吹が言うと、
「! じゃあ、カンジ君。ちょっと話そうか」
「は?」
「お茶と菓子くらい出すぞ。さあさあ。さあさあ」
「やめい!」
威吹の一喝。
「班長、いかにも誓願達成できてませんみたいな感じでみっともないですよ」
さすがのユタも呆れた顔をした。
「だってさ、昨年の誓願達成率最悪だったんだもん」
「こればかりは仏縁だからしょうがないって言ってたじゃないですか。その代わり……」
「ん?」
ユタはタブレットを取り出した。
「都内の布教区全部合わせて、退転率はうちのお寺が1番低いですよ」
「どうやって調査したんだ、おい?」
[同日13:00.同場所 威吹邪甲&威波莞爾]
「おっ、始まったな」
本堂から鈴の音が聞こえてきて、題目を唱える声が聞こえて来た。
「先生、僅かに鬼の匂いがしますが……」
「ああ、キノと栗原殿が既に年明けの時点でここにいたらしい。『鬼の匂い』はなかなか取れないからな、その残り香だろう」
もっとも、普通の人間には感じ取れないほどである。
「それにしても……」
「ええ」
この寺院には
そこに、1台のマイクロバスが止まっていた。自前の白ナンバーではなく、都内のバス会社のもので、当然ながら運転手もバス会社の人間である。
信徒達を乗せて来たと思ったら、真っ先に降りて来たのは副講頭だという。
それ以外に降りてきたのは未入信者。つまり、新願者である。
「珍しいですね。だいたい20人くらい降りてきましたよ」
「ああ」
「元旦勤行が終わるのが1時間後ぐらいだとして、その後はどうしますか?」
「ユタ次第だな。魔道師達は……まあ、いいだろう」
そごう・西武が1日から初売りをやっていると聞いたイリーナ。
これから都内の寺院へ元旦勤行に行くのならばと、都内の西武百貨店に出向いた次第。
今頃は弟子のマリアと、福袋でも購入している頃だろう。
[同日14:30.JR池袋駅埼京線ホーム ユタ、威吹、カンジ、イリーナ、マリア]
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の4番線の電車は、14時37分発、各駅停車、大宮行きです。……〕
「一気に20名も、元旦から集団御受誡なんて、副講頭やるなぁ……」
ユタはさっきまでの元旦勤行を振り返っていた。
「顕正会……いや、他のお寺でもこんなことはないだろう」
「そうでしょうとも」
威吹は当たらず障らずの反応をした。
「マリアさんは、何を買ったんですか?」
ユタはマリアにすり寄った。
「私は……」
ユタがマリアと話している間、威吹はカンジに話し掛けた。
「カンジ。お前も頭が良い。よく考えて良い案を出してほしい」
「何をでしょう?」
「どうやったらユタの機嫌を損ねず、やんわりとあの魔道師と引き離せるかだ」
「なるほど……」
「今すぐである必要は無いし、理由は言わなくても分かるな?」
「はい」
威吹とカンジの企み。これが後に大きなトラブルの元になるとは……。