報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“ユタと愉快な仲間たち”、ボツネタ

2014-01-22 19:48:51 | 日記
[1月1日 09:00.長野県内の広大な森の中にある洋館 マリアンナ・ベルゼ・スカーレット&イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

〔「……法道大学の○×選手、只今、箱根登山鉄道の踏切を越えました。その先には報恩大学の△□選手が……」「駅伝選手の踏切横断と言えば、現在はその箱根登山鉄道だけとなりました。長らく名物であった第一京浜の蒲田の踏切は、京急線が高架化工事を終えて、既に今は昔の話になっております」〕
「う、ううーん……」
 テレビのある広い部屋。そのテーブルに突っ伏すマリアと、壁際のソファに横たわるイリーナの姿があった。
 テーブルの上とイリーナの足元には、打てば響くようなワインやウィスキーの空瓶が何個も転がっていた。他には、食い荒らしたとしか言いようの無いオードブルの残骸……。
 マリアが意識を取り戻したようだ。
「うー……」
 マリアは頭をトントンと叩いた。
「師匠、師匠」
 マリアはふらつきながら、半分いびきをかいて寝ている師匠を揺さぶった。
「ううーん……。あと5分……」
「いや、ダメです。何かもう……年明けたみたいなんで」
「ええっ!?」
 弟子に言われて、飛び起きるイリーナ。しかし、すぐに頭を抱える。
「あてててて……。飲み過ぎた……。まだ酒抜けてない……」
「いくら忘年会だからって、飲み過ぎですよ。……お互い様ですけど」
「じゃあ、迎え酒しましょ。二日酔いにちょうどいい〜。そしてそのまま新年会よ」
「どこの世界に、忘年会と新年会を同時進行する魔道師がいますか」
「ここにいるじゃない」
「そうじゃなくて……」
「それにしても……」
 イリーナは室内を見渡した。
「アタシ達2人だけで静かに飲むはずが、何だか宴会みたいに盛り上がっちゃったわねぇ……」
「部屋は人形達に掃除してもらいますが、随分とだらしない年末年越しですね」
「そうだ。部屋を片付けたら、新年の挨拶に行きましょう」
「どこへ?」
「決まってるじゃない。稲生君ところよ」

[同日10:00.埼玉県さいたま市中央区 ユタの家 マリア&イリーナ]

「ひゃっほー!というわけで、埼玉に到着ぅ〜!」
「師匠、元気過ぎですよ」
「いいから早く、ピンポンやって」
「はい。ほら、ミク。ピンポンだ」
 マリアは抱えていたミク人形を地面に置いた。
 緑色の長い髪をツインテールにした人形を、何故か“初音ミク”と呼んだ稲生ユウタ。
 フランス人形のドレスに付いた背中のぜんまいを回してやると、ミクが宙に浮いて……。
 ラケットとプラスチックのボールを持ち、インターホンに……。
「違う!卓球のピンポンじゃない!」
「……まだ命令伝達が未熟のようね。正月休み返上で、修行再開しないとダメかしら」
「何の用だ?」
 すると玄関から金色の短髪、両耳にピアスを着けた男が出て来た。
「キサマ、誰だ?」
 マリアはその男をにらみつけた。
「お前達こそ、誰だ!?人間ではないな!」
「正確に言えば、元・人間よ。魔道師のイリーナとその弟子のマリアでーっす!」
「……知らん!」
「知ろうが知るまいが、そんなことはどうでもいい。私達はユウタ氏に会いに来たのだ」
「稲生君と威吹君なら、アタシ達のこと知ってるから、ここに呼んできてもらって」
「威吹先生とユウタ殿はお休み中だ。約束も無いのに、お呼び立てするわけにはいかん」
「威吹……先生!?なに、あなた、威吹君の弟子か何か?」
「オレは偉大なる威吹邪甲先生の弟子、威波莞爾だ。先生やユウタ殿がお休みの間、オレがこの家の守りをしている」
「平たく言えばこうね。今、威吹君とユウタ君は寝正月中で、寝ているところ。今起きてるのはあなただけ。アポ無し新年の挨拶に来たアタシ達の為だけに、わざわざ起こしたくない。だから帰れってこと?」
「そうだ!
「普通はそうかもしれないわね。でもアタシはともかく、マリアが来たこと、ユウタ君は喜ぶかもしれ……」
 その時、イリーナの顔面に“風”が迫ってきた。持っていた魔道師の杖で受け止める。
「帰れと言ってんだよ、アラミレBBA」
 カンジは口元を歪め、刀を持ったままイリーナに言った。
「あらみれー?……ひっ、アラウンド・ミレニアム!BBA……ババァ!」
 アラサーは30歳前後、アラフォーが40歳前後なら、アラウンド・ミレニアム、略してアラミレというのは1000歳前後。

[同日10:15.ユタの家(威吹の和室) 稲生ユウタ&威吹邪甲]

「んー?何だ何だ?」
 威吹は眠い目を擦って起き上がった。
「うわ、もうこんな時間……。ユタ、起きて。もう10時過ぎてるよ」
「ううーん……」
 ユタは起き上がった。
「あー、よく寝た」
「寝過ぎだよ」
「昨日の片づけをしないと……。あれ?きれいになってる」
「恐らく、カンジが片付けてくれたんだろう」
「さすがだな、カンジ君は。昨夜なんか、だいぶ散らかして、いかにも男の部屋って感じだったのに」
「全くだな」
 ユタと威吹は笑った。
「え……と、そのカンジ君は?」
「メシの準備でもしてくれてるんじゃないかな?」
「おおっ、お節料理!?」
「どうだかね。……い、いや、待て」
 威吹は長く尖った耳をすました。
「何か……外で戦ってるみたいだ」
「は?誰と!?」

[同日同時刻同場所。 マリア、イリーナ、ミク人形、カンジ]

「ミク、ぶった切っておやり!!」
 ミク人形は小さな体に似合わず、大型のサーベルを振るってカンジと戦っていた。
「でく人形の分際で!」
 押されているカンジだった。
「師匠に無礼な発言をしたこと、地獄で後悔するがいい」
 ミク人形に魔力を与えて戦わせているのはマリア。その間マリアは無防備になるため、屋敷ではその他複数の人形がマリアの護衛に当たる。
 今回は怒ったイリーナがマリアの周囲にバリアーを張っているため、カンジは弱点に気付くも、手出しができないでいた。そして、

 ガキーン!

「うっ!?」
 カンジの刀が弾き飛ばされた。刀はサクッと稲生家の庭にある植木に突き刺さった。
「新年早々、Go to hellね」
 ミクはギラッと両目を光らせて、大きくサーベルを振り上げた。
「ちょっと待ったーっ!」
 ピッピーッ!と、車掌が吹く笛と同じ笛を吹いて止めに入るユタ。
「なに勝手なことをしてるんだ、カンジ!」
「先生……」
「余計な不始末の元になるから、勝手な争いをするなと前に言っただろう!?忘れたか!」
「も、申し訳ありません……」
 カンジはすぐに片膝をついた。これが妖狐族の最敬礼になるらしい。
「あなたのお弟子さん?」
 イリーナが威吹を睨みつけた。
「一応そうだ。カンジが何かしたのか?」
「アタシのことをBBA呼ばわりしたのよ!」
「そ、そうか。まあ、だいたい合っていると思うが、非礼の件は詫びよう。てか、BBAって何だ?
 マリアはそれよりも、今起きた現象に唖然としていた。
(ユウタが笛を吹いたら、魔力が無効化された!?)
 ユタが笛を吹いた瞬間、ミクの動きが止まり、バリアーも消えてしまった。
 無論自分は魔力を出し続けていたし、ユタの思わぬ登場で怯むような師匠でもない。

[同日10:30.ユタの家の応接間 ユタ、威吹、イリーナ、マリア、カンジ]

「とにかく、私達は新年の挨拶に来ただけだ」
「こりゃどうも。わざわざ、遠路はるばる……」
 ユタはニヤけた顔を隠しきれず、自ら率先してお茶を入れた。
「そういうこと。“瞬間移動”の魔術は妖狐でも使えないから、アタシ達から出向いたわけ。そしたら、いきなりアレよ」
「まあ、その件は悪かった。何しろ生真面目な性格の割には、若いせいか、血の気も盛んな所もあってな。後でまた言い聞かせておく」
「しかしアレですねぇ、ミクも強くなりましたね。確か前は、チェーンソーなんか持ってましたけど、今はサーベルなんて」
 ユタは笑みを絶やさずに、紅茶を魔道師達の前に置いた。
「そうね。おかげさまでマリアの魔力も、日に日に上昇してる」
「私はもちろん、師匠の魔力まで無効化させるとは……」
「えっ、カンジ君、そんなことしたんですか?」
「違う。ユウタさん、あなただ」
「僕が?いつ?」
 ユタは目を丸くした。
「……知らないでやったのか?」
 マリアは不審な顔をした。
「ユウタ殿はS級の霊力をお持ちだ」
 まるで自分のことのように話すカンジだったが、
「あんたの“獲物”じゃないでしょ」
 イリーナの反論に、
「くっ……!」
 あえなく自爆。
「わざわざ魔道師がただの新年の挨拶に来るとは思えん。他に、何か用事があるんじゃないのか?」
 威吹が言った。
「さすがね。実はそうなの」
 イリーナはニヤッと笑った。
「何かありましたか?」
 それはマリアも初耳だった。
(まさか、ユウタのさっきの“魔法”について急きょ調査を……!?)
 イリーナは脱いだローブの中にあるポケットから、ある物を出した。それは1枚の紙。
「高島屋の初売りに行こうと思って」

 ズコーッ!!

「長野だったら、名古屋店の方が近いと思うが……」
 カンジが冷静に突っ込んだ。
 もっとも、直営店か否かの違いはある(大宮が直営)。
「それに、高島屋の初売りは確か、明日だったと思いますが……」
 と、ユタ。しかしすぐに、
「あ、でも、そごうの方は今日からだったかな……」
「そこ行きましょう!」
「勝手に行けよ。オレは午後から、ユタに付き添って初詣に行くんだ」
 威吹は呆れて言った。
「あっと、そうだった……」
 ユタは残念そうな顔をした。
「うーん……そうねぇ……」
 イリーナは考えて、
「じゃあ、こうしましょう」
 何か提案した。

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