報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「善場との話」

2022-04-04 15:59:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月12日15:30.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 善場:「……特にマークした行き先ではありませんが、斉藤社長がわざわざ指定したということは、何か意味があるのかもしれませんね」
 愛原:「それでは、この依頼をお受けしても?」
 善場:「はい。むしろ、斉藤社長が何を意図して『最後の依頼』をしてきたのか、それを調査して頂きたいです」
 愛原:「分かりました。それと、1つ気になることがあるのですが……」
 善場:「何でしょう?」
 愛原:「テレビの速報で、テロップに『斉藤社長、刑事告訴へ』とありました。まだ、刑事告訴が決まったというわけではないのですね?」
 善場:「そうですね。あれは私達というよりは、警察がマスコミに流したものです。警察は警察で、斉藤社長を追っているので」
 愛原:「警察が?」
 善場:「白井がバイオテロ組織ヴェルトロの残党と、何らかの繋がりがあることは既に御存知かと思います」
 愛原:「はい」
 善場:「斉藤社長が白井と繋がっていたということは、白井を通して斉藤社長もヴェルトロと繋がっていたと思いませんか?」
 愛原:「な、なるほど!でも、警察が刑事告訴しようというのは……」
 善場:「私は、あのハイジャック事件も斉藤社長が絡んでいるのではないかと思っています」
 愛原:「ええっ!?」
 善場:「あくまでも、個人的な見解ですが。テロ組織の捜査は警察が行っているので。私達は、あくまでもバイオハザード事件そのものを追う側ですので」
 愛原:「どうしてそう思われるのですか?」
 善場:「考えてもみてください。今のこの御時世、都合良くハイジャックに巻き込まれることなんて稀ですよ?そもそもハイジャック事件ですら発生しないのに」
 愛原:「た、確かに……」
 善場:「しかもハイジャックの実行犯、ヤング・ホーク団はヴェルトロの下部組織であることがインターポールからも明らかにされています」
 愛原:「ええっ!」
 善場:「警察はその証拠を掴んだのかもしれませんね」
 愛原:「うあー……」
 善場:「まさか斉藤社長がハイジャック事件の黒幕とまでは思いませんが、彼らの犯行計画を聞いてそれに便乗したということは有り得るかもしれませんね。彼らの行き先はロシアのウラジオストク。ハイジャック事件に巻き込まれた被害者とあらば、パスポートが無くても入国できますから」
 愛原:「そんなことを計画するなんて……」
 善場:「愛原所長にとっては、大口契約先に裏切られた形となって、非常に残念でしょうが……」
 愛原:「残念ですね。でもまだ、私にはデイライトさんという大口顧客がいますから」
 善場:「私共も、こんな仕事を頼める民間人は愛原所長方くらいしかいないと思っています」
 愛原:「それで、逮捕状はいつ取れるのでしょうか?」
 善場:「警察の証拠集めの進捗具合にもよりますが、恐らく来週中には請求できるのではないでしょうか」
 愛原:「来週中……」

 私はカレンダーを見た。
 来週末、リサ達は春休みに入る。

 愛原:「絵恋さんの為にも、発表は週末にしてもらえないかなぁ……と」
 善場:「そうですね。そこは警察も考えるでしょうし、私達の方からも申し入れてみましょう」
 愛原:「よろしくお願いします」

[同日16:00.天候:曇 東京都港区新橋 デイライト近くのコインパーキング]

 私と高橋はデイライトさんの事務所をあとにした。
 今日は車で来ていて、近くのコインパーキングに車を止めていた。

 愛原:「高橋、料金入れたぞ」
 高橋:「あざっス」

 領収書を発行して、これは経費で落とす。
 私はバン車の助手席に乗り込んだ。
 高橋が車のエンジンを掛ける。

 高橋:「そんじゃ、このまま事務所に戻っていいっスね?」
 愛原:「ああ、頼む」
 高橋:「お任せください」

 高橋は車を発進させて、駐車場を出た。
 そして都道50号線、新大橋通りへと進める。
 私を乗せている時の奴の運転は……多少スリリングな所はあるものの、とても逆走して白井の車と正面衝突させたとは思えなかった。

 愛原:「……もしかしてオマエさ」
 高橋:「はい?」
 愛原:「相手の車が白井の物と知ってて特攻した?」
 高橋:「い、いや、ただの偶然っスよ?」
 愛原:「そうか?」
 高橋:「は、はい!」
 愛原:「ふーん……」
 高橋:「いや、マジですよ」
 愛原:「まあ、オマエがウソ付いてる証拠なんて無いけどな」
 高橋:「は、はい。ですよね」

 それでも、やっぱり怪しい物は怪しいのだ。

 高橋:「それで、春休みの行き先は……」
 愛原:「いや、まだだ」
 高橋:「まだなんですか?」
 愛原:「作者のネタが固まっていない」
 高橋:「は?何スか?」
 愛原:「いや、何でも無い!」

[同日17:00.天候:曇 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 事務所に戻った私は、善場主任との話を書類を纏めていた。
 高橋は先に帰って、夕食の支度をしてもらっている。

 愛原:「ん?」

 その時、事務所の電話が鳴った。

 愛原:「はい、もしもし。愛原学探偵事務所です」
 女性:「あ、あの……」
 愛原:「はい?」
 女性:「私、斉藤絵恋の母でございます」
 愛原:「ああ!どこかで聞き覚えがある声だと思ったら、絵恋さんのお母様でしたか。旦那様にはいつもお世話になっております」
 絵恋の母:「実は……愛原さんにはお話ししておこうかと思い、お電話差し上げた次第でございます……」
 愛原:「と、仰いますと?」

[同日18:00.天候:晴 同地区内 愛原学のマンション]

 愛原:「ただいまァ」
 高橋:「先生、お帰りなさい」
 リサ:「先生、お疲れー」
 愛原:「ああ」

 私は自分の部屋に入ると、着ていたコートを脱いで、スーツから私服に着替えた。

 高橋:「今日の夕食はチキンカツ定食です」
 愛原:「そうか。リサには、特別大きいのをやれよ」
 高橋:「分かってますよ」
 愛原:「リサ、これから春休みまでの予定は?」
 リサ:「明日は休みだから、サイトーとアキバに遊びに行く。で、あとは修了式まで学校は午前中だけ」
 愛原:「そうか」
 リサ:「何かあったの?先生、少し緊張してる」
 愛原:「そうか。緊張しているように見えるか」
 リサ:「うん……」
 愛原:「今は……話せない。前職の警備員もそうだが、探偵にも守秘義務があるもんでね」
 リサ:「シュヒギム?」
 高橋:「仕事で知り得た機密を、家族にも漏らしちゃいけねぇってことだ。ですよね、先生?」
 愛原:「そういうことだ」
 リサ:「サイトーのお父さん、やっぱり逮捕されるって話?」
 愛原:「それもあるんだが……。まあ、他にも色々とあるってことだ」
 高橋:「斉藤社長の事は残念でしたが、まさかそれで事務所の経営が傾くってわけじゃないスよね?」
 愛原:「いや、大丈夫だ。うちには、まだデイライトさんからの仕事がある」
 高橋:「ですよね」

 『最後の依頼』とはいえ、あんな高額の小切手を寄越してくるというのは……。
 何だか裏がありそうな気がした。
 そして、絵恋さんの母親からの電話。
 あれは……もちろん気持ちは分かるのだが、大変なことになりそうだぞ。

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