報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「慌ただしい出発」

2021-11-16 19:58:53 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月1日18:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 愛原:「誕生日ケーキだぞ~」
 リサ:「わーい、食べる~!」
 愛原:「16歳の誕生日、おめでとう!」
 リサ:「ありがとう!本当は15歳までに、先生とエッ○したかったんだけど、16歳なら心置きなくデキるね!」
 愛原:「な、何で!?」
 リサ:「だってぇ……法律では、女は16歳から結婚していいんでしょ?」
 愛原:「こ、今年まではな」
 リサ:「そう!だから、今年!今年して!来年はできなくなっちゃう!」

 2022年度から法律が変わり、女性も結婚できるのは18歳からとなる為である。
 その為、2021年度中は16歳のリサは結婚できるが、来年は17歳になる為に、結婚できなくなるのである。
 但し、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたことにより、未成年は親の同意が必要というのも無くなる。

 愛原:「今、結婚したら学校行けなくなっちゃうぞ?」
 リサ:「う……それは嫌だ」
 愛原:「そうだろそうだろ?それに……」

 キッチンから漂う、香ばしい肉の香り。

 高橋:「できたぞ。500gの超厚ステーキだ。表面はウェルダンだが、中身はレアだぞ」
 愛原:「愛原リサ誕生日特別記念GⅠだ。ステーキも特別だぞ」
 リサ:「食べる!!」

 リサ、第1形態に戻って、ステーキやケーキをバクバク食べた。
 すっかり結婚のことは忘れるほどに。

 高橋:「見た目は鬼娘なのに、食欲はウマ娘ですよ?」
 愛原:「うーむ……。東京競馬場を1周走らせたいくらいだ」
 高橋:「おっ、いいっすね!」
 愛原:「それとリサ」
 リサ:「ふぁに?」(←口いっぱいに食べ物を詰めている)
 愛原:「帰り際に何か色々ともらって来たみたいだが?」

 リサ、口に詰め込んだ食べ物を飲み込む。

 リサ:「うん。学校の皆が、私に誕生日プレゼントくれた」
 愛原:「ウィルスや寄生虫に感染させて、無理やり祝わせたわけじゃないだろうな?」
 リサ:「全然。皆、天然」

 気になる回答だが、一応リサは否定したので、それを信じておこう。

 リサ:「あ、そうだ。先生、これ書いて」

 リサは私に婚姻届を差し出した。
 まるで学校で渡されたプリントを、保護者に渡す感覚だ。

 リサ:「コジマからのプレゼント。コジマのお父さん、区役所の偉い人だから、すぐに受理してくれるって」

 小島さんとは、リサの取り巻き女子の1人である。

 愛原:「返してきなさい!」
 リサ:「えーっ!」
 高橋:「えーじゃねぇ!先生を困らせんな!」
 愛原:「まあまあ。それよりリサ、俺からもプレゼントあげるから」
 リサ:「えっ!」
 愛原:「まず、これは善場主任から。まあ、いつもの図書カードNEXTだ。これで好きな本を買って読んで、より人間に近づけるようになれってことだな」
 リサ:「なるほど。分かった。先生からは?」
 愛原:「俺からはクオカードをやろう。これなら、本以外の物も買えるぞ」
 リサ:「ありがとう!……お兄ちゃんは?」
 高橋:「俺は後でゲーム買ってやる。“バイオハザード・ヴィレッジ”か?」
 リサ:「それはもうサイトーんちでやった。別なのがいい。サイトーも持ってないヤツ」

 リサ・トレヴァー、特異菌BOW達を次々に無双するの図。

 愛原:「絵恋さんからは何をもらったんだ?」
 リサ:「豪華客船のキップ」
 愛原:「返して来なさい!そんな高いの!」
 高橋:「リサのことだから、メーデーメーデー叫んでバイオハザード引き起こしますぜ」
 愛原:「だから尚更だよ」

 “バイオハザードシリーズ”において、船内におけるバイオハザード事件というのは鉄板だ。
 その為、コロナ禍初期、正に豪華客船“ダイヤモンドプリンセス”号においてバイオハザードが発生した時、多くのバイオファンはそれらをイメージしたという。
 もちろん、コロナウィルスはゾンビウィルスではないので、ゾンビが跋扈することは無かったが。

[同日21:00.天候:晴 愛原のマンション→日本交通タクシー車内]

 リサ:「先生、タクシー来たよ」

 マンションのベランダから、新大橋通りを覗いていたリサが言った。

 愛原:「よし、それじゃ行くか。準備はいいな?」
 高橋:「OKです」
 愛原:「じゃ、行こうや」

 私達は荷物を手に、マンションを出た。

 リサ:「こんな夜に出発なんて、何か珍しいね」
 愛原:「そうだな。ま、それだけ今回の依頼はガチだってことだ」

 マンションの前に到着した、予約のタクシーに乗り込む。
 荷物はハッチを開けてもらって、そこに積み込む。
 トールワゴンタイプの車種だったので、後ろにそのまま3人乗り込んだ。

 愛原:「東京駅までお願いします」
 運転手:「はい、ありがとうございます。東京駅はどちらに着けますか?」
 愛原:「そうですねぇ……。八重洲側でお願いします」
 運転手:「かしこまりました」

 タクシーが走り出す。
 リサは助手席後ろに座っていたが、そこに設置されているモニタを見ていた。
 因みに私はスーツだが、高橋とリサは私服である。
 10月になってもまだ東京は暑かったが、多分東北は涼しいだろう。
 リサは薄緑色のTシャツに、ジーンズのショーパンを穿いている。
 高橋は一応、黒いタンクトップの上に半袖のシャツを着ていたが、第2ボタンまで外している上に、派手な金色のネックレスを着けていた。
 傍から見れば、確かに変な組み合わせかもしれない。
 リサは少し私に寄り掛かり気味で座っていた。

[同日21:15.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅八重洲中央口→東北新幹線乗り場]

 タクシーは渋滞に巻き込まれることもなく、スムーズに東京駅に到着した。

 愛原:「お世話さまでした。領収証ください」
 運転手:「はい、ありがとうございます」

 私が料金を払っている間、リサが降りて、後ろに積んだ荷物を降ろした。
 もっとも、リサのはリュックだし、高橋はキャリーバッグだ。
 高橋のバッグに着替えとかを入れているので、私のは普通のビジネスバッグである。

 愛原:「よし、行こう」

 お釣りと領収証を財布に入れ、私達は東京駅構内に入った。
 金曜日の夜ということもあって、駅構内は賑わっている。
 緊急事態宣言解除はダテではないようだ。

 愛原:「キップは1人ずつ持とう」
 高橋:「ありがとうございます。“はやぶさ”ではないんですね」
 愛原:「多分、“はやぶさ”は賑わってるんだろう。金曜日の夜だし。俺達が乗るのは、仙台行きの最終列車だよ」
 リサ:「先生、駅弁買っていい?」
 高橋:「オマエ、さっきケーキとステーキ、あんだけ食っといてよぉ!」
 リサ:「駅弁は別腹だよ?」
 高橋:「くぉらっ!太るぞ!」
 リサ:「変化すれば太らないよ?」
 高橋:「あのなぁ!」
 愛原:「多分、これくらい夜遅くなると、もう駅弁屋は閉まってるんじゃないか?」
 リサ:「ええーっ!?」
 愛原:「で、おまけに“やまびこ”じゃ、車販も無いだろう。自販機の飲み物で我慢しとけ」
 リサ:「ぶー……」

 多分、“はやぶさ”にしなかったのは、テロ対策もあるんじゃないかな。
 駅間距離が長い列車だと、テロに巻き込まれやすい。
 そこで、わざと停車駅の多い“やまびこ”のキップを、善場主任は寄越したのではないかと私は考えた。
 私はリサと高橋の、まるで本当の兄妹みたいなやり取りを微笑ましく見ながら、キップを改札機に通した。

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