報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「北関東トンボ返り」

2024-06-17 20:23:35 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月12日13時44分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR(東日本)東京駅]

〔とうきょう、東京。ご乗車、ありがとうごさいます。次は、神田に、停車します〕

 私達を乗せた山手線電車が東京駅に到着する。
 賑やかな発車メロディを背に、コンコースに下りる。
 さすが巨大ターミナルの1つということもあり、コンコースは多くの乗客で賑わっている。

 愛原「リサなら、『駅弁買うー』とか言って、駅弁屋に寄ろうとするんだろうな」
 高橋「今日はうるさくなくて良かったっスね。酒とつまみも、買い放題っスよ」
 愛原「おいおい。今回は仕事の出張なんだから、それはダメだよ」
 高橋「まだ、腹空かないっスか?」
 愛原「お前が食べる分には、別にいいよ?」
 高橋「冗談っスよぉ……」

 新橋駅で買った新幹線のキップを片手に、新幹線乗換改札口を通過する。

 愛原「21番線だな。自由席だから、少し早めに行って並んでいよう」
 高橋「先生、俺、一服してきていいっスか?」
 愛原「いいよ」

 喫煙所はホーム上にある。
 トイレはコンコース内。
 エスカレーターでホームに上がり、喫煙所のある1号車付近へ。
 途中の自販機で、私はお茶を買った。
 腹は空いていないので食べ物は必要無いだろうが、飲み物は持っておいた方がいいだろうと思い、ペットボトルを購入しておいた。

 

〔「今度の21番線の電車は、14時12分発、“やまびこ”211号、仙台行きです。終点仙台まで、新幹線各駅に止まります。……」〕

 高橋「じゃ、行ってきます」
 愛原「ああ」

 高橋は喫煙所に行き、私は乗車口の列に並んだ。
 中途半端な時間で、各駅停車ということもあり、そんなに待ち客はいなかった。
 発車の時間まで、まだ少しあるというのも理由だろう。
 リサが心配するといけないので、列車が来るまでの間、私は彼女にLINEを送っておいた。
 まだ、授業中のせいか、すぐには返信は返って来なかった。
 まあ、当然だろう。
 あくまでも、ただのお知らせである。

[同日14時12分 天候:晴 JR東北新幹線211B列車1号車内]

 しばらく待っていると、上野方向から回送列車が入線してきた。
 どうやら折り返し運転ではないらしい。
 10両編成のE5系電車だった。
 “はやぶさ”用の車両であるが、今では“やまびこ”はもちろん、“なすの”にも使用される。
 先に列車に乗り込み、2人席を確保していると、高橋が戻って来た。

 高橋「お待たせしました」

 そう言って、私の隣の通路側に座る。

 愛原「お前はいつもギリギリだなー」
 高橋「サーセン。新幹線ん中は、もうタバコ吸えないんで、なるべく吸い溜めしときたくて……」
 愛原「そうかい」

 恐らく、那須塩原駅に着いても吸いたがるんだろうな。

〔「お待たせ致しました。14時12分発、“やまびこ”211号、仙台行きが発車致します。ご乗車のお客様は、車内でお待ちください」〕

 ホームから発車ベルの音が聞こえて来る。

〔21番線から、“やまびこ”211号、仙台行きが、発車致します。次は、上野に、止まります。黄色い線まで、お下がりください〕
〔「21番線、お待たせ致しました。“やまびこ”211号、仙台行きが発車致します。ベルが鳴り終わりますと、ドアが閉まります。お見送りのお客様は、黄色い線までお下がりください」〕

 甲高い客扱い終了合図のブザーが鳴ると、車両のドアが閉まる。
 この客扱い終了合図、かつてはジリジリベルだった。
 東海道新幹線ホームと違い、可動式安全柵は無い為、車両のドアが閉まると、列車がスーッと動き出す。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、東北新幹線“やまびこ”号、仙台行きです。次は、上野に止まります。……〕

 私は善場係長にメールを送った。
 “やまびこ”211号で、まずは那須塩原に向かうと。
 そこまでは良かったが、係長からは、『かしこまりました。今の出張の件、リサには伝えましたか?』と、聞かれた。
 そこで私は、LINEで通知したと返信すると、『リサを刺激しない為にも、そこは黙ってておくべきでしたね』とのこと。
 私は急いでリサへのLINEを送信取消にしようと思ったが、既に既読が付いてしまっていた。

 善場「ホテル天長園へ向かうということは、上野利恵と会うということはリサも想像が付くでしょう。いくら高橋助手が一緒とはいえ、リサとしては気が気でないはずです」
 愛原「そうでした。しかし、LINEは既に既読が付いてしまいました」
 善場「リサからの返信は何と?」
 愛原「いえ、まだです。恐らく、授業中か何かで返信できないのだと思います」
 善場「承知しました。恐らく、今から愛原所長が詳しい説明をしたところで、リサにとっては言い訳されているとしか思わないでしょう。私からもリサには言っておきますし、これは私共からの正式な仕事の依頼によるものだと証明する為、依頼書を所長の事務所に送っておきます。取り急ぎ、まずはファックスで。それをリサに見せて、何とか説得してください」
 愛原「分かりました。お手数をお掛けして、申し訳ございません」
 善場「依頼書については、後ほど原本を作成してお持ちするつもりでしたので、お気になさらないでください。愛原所長は、出張に専念してください」
 愛原「承知致しました」

 というメールのやり取りをした。
 それを高橋に伝えると……。

 高橋「元はと言えば、リサが先生の命令を拒否したのが悪いんスから、あいつが先生にとやかく言えることじゃないっスよ」

 と、言ってくれた。

 高橋「俺も一緒ですから、もし向こうで女将のオバハンが先生に何かしようとしても、護衛は任せてください」

 高橋はそう言って、パーカーのポケットにしまってあるデザートイーグルをチラ見させて言った。

 愛原「それが使用されないことを祈るよ」

 私は肩を竦めた。
 全く、私も迂闊だな……。

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