報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「北関東トンボ返り」 2

2024-06-19 20:40:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月12日15時20分 天候:晴 栃木県那須塩原市 JR東北新幹線211B列車1号車内→那須塩原駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、那須塩原です。宇都宮線、黒磯方面はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。那須塩原の次は、新白河に止まります〕

 愛原「うーむ……」

 私達を乗せた新幹線は、ダイヤ通りに運転を続けていた。
 それはいいのだが、何だかリサの様子がおかしい。
 いや、様子すら窺えないというべきか。
 リサからLINEの返信が全く来ないのだ。
 スマホを全く覗いていないというわけではない。
 ちゃんと既読は付く。
 しかし、スルーされてしまうのだ。
 先ほどもデッキに出て音声通話を試みたが、出なかった。
 仕方が無いので、『魔王軍のグループLINE』への進入を試みようと思っている。
 もちろん、善場係長には報告した。

 高橋「リサのヤツ、先生からの御連絡をスルーするとは、いい度胸ですね?そろそろ射殺を考えた方がいいかもしれませんぜ?」

 高橋は不敵に笑うと、デザートイーグルを覗かせた。

 愛原「大騒ぎになるから、ここでそんな物騒な物を披露するのはやめなさい」
 高橋「サーセン」

〔「まもなく那須塩原、那須塩原です。2番線に到着致します。お出口は、左側です。那須塩原で、3分停車致します。発車は15時23分です。発車まで、しばらくお待ちください」〕

 それにしても、リサのヤツ、どうしたんだろう?
 既読は付くから、確認はしているはずなのだが……。
 列車は下り副線ホームに移ると、ホームに入線した。

 高橋「先生、また一服していいっスか?」
 愛原「いいよ」
 高橋「サーセン」
 愛原「俺は下の待合室で待ってるよ」
 高橋「分かりました」

 

〔「ご乗車ありがとうございました。那須塩原、那須塩原です。お忘れ物、落とし物の無いよう、お降りください。2番線に到着の電車は、15時23分発、“やまびこ”211号、仙台行きです。終点、仙台まで、各駅に止まります」〕

 私達は列車を降りた。

 高橋「それじゃ、また後で」
 愛原「ああ」

 高橋はホーム上の喫煙所に行き、私はエスカレーターに乗ってコンコースに向かった。
 エスカレーターを降りて、2階コンコースに着くと、着信音が鳴った。
 しかし、LINEの音声通話の着信ではなく、普通の音声通話だった。
 スマホを見ると、善場係長からだった。

 愛原「もしもし?愛原です」
 善場「愛原所長、お疲れさまです。今、那須塩原駅ですか?」
 愛原「はい。たった今、新幹線を降りました。一息吐いたら、ホテル天長園に向かいます」
 善場「かしこまりました」

 どうやら善場係長、GPSで私達を追跡しているようだ。
 もっとも、そんな事は今に始まったことではない。

 善場「リサの件ですが……」
 愛原「は、はい!」
 善場「やはり、今回の出張の事は教えない方が良かったと思います」
 愛原「も、申し訳ありません!」
 善場「まあ、もう過ぎたことですから。私からリサに連絡を取ったところ、とても怒っていました。『わたしを差し置いて、他の鬼の女の所に行くのか』と」
 愛原「で、でも、今回はただの出張……」
 善場「分かっています。もちろん、愛原所長の応対をするであろう上野利恵副支配人も、よく理解しているはずです。ですが、彼女は前科1犯、愛原所長への未遂行為も含めますと2犯とも言えます。リサとしては、気が気で無いのでしょう」
 愛原「もしも利恵が変な気を起こしたら、デイライトさんはもちろん、BSAAも厳しい態度で臨むはずです」
 善場「その通りです。しかし、それはあくまで、頭で理解できている場合の話。リサも今は鬼型のBOWですから、そんな自制心が外れた鬼の行動については自分でも分かっているのでしょう。そんな所へのこのこ向かう愛原所長が理解できないようです」
 愛原「で、ですが……」
 善場「どうしてもまた上野利恵と会う場合は、リサも連れて行った方がいいかもしれませんね。とにかく、今回の件につきましては、所長にこの出張を依頼した私共にも責任があります。所長が帰京されるまでの間、こちらで何とか説得しますから、所長は業務に専念してください。何度も申し上げますが、費用については気になさらなくて結構ですので」
 愛原「分かりました……」

 私は電話を切った。

 愛原「はー……」

 何て私は迂闊なことをしたのだろう……。

[同日16時00分 天候:晴 栃木県那須塩原市某所 ホテル天長園]

 那須塩原駅西口からホテルに向かおうとしたが、ホテルの前を通るバスは本数が少ない。
 案の定、まだバスは走っている時間帯ではあるものの、ちょうど良い便が無かった。
 そこでここは、善場係長のお言葉に甘えて、タクシーで向かうことにした。
 都内でもまだ利用できる、黒塗りのクラウンセダンのリアシートに乗り込む。
 そのタクシーでおよそ30分ほど揺られると、ホテルに到着した。
 平日ながら、今日はそこそこ宿泊客がいるらしく、来客用の駐車場にはそれなりの車の台数が止まっている。
 タクシーはホテルの敷地内に入り、ロータリーを回って、正面エントランスの前に着いた。

 愛原「領収証、お願いします」
 運転手「かしこまりました」

 ここでの費用は立替払いである。
 私は財布から現金を取り出すと、それで料金を払った。
 もちろん、領収証を貰うのは忘れない。

 上野利恵「愛原先生、お待ちしておりました!」

 女将専任だった頃は着物姿がメインだった上野利恵だが、副支配人になってからは、黒いスーツを着るようになった。
 それでも、臨時に女将を兼任する時などは、たまに着物を着ることがある。

 愛原「あ、ああ。突然、申し訳無いね」

 タクシーを降りると、上野利恵が満面の笑みを浮かべて出迎えてくれた。

 愛原「例の物、金はいくら掛かってもいい。あれを1つ貰いたい」
 利恵「かしこまりました!ご案内させて頂きます!どうぞ、こちらへ!」

 利恵は私と高橋をホテル館内へと招き入れた。
 この間、高橋はパーカーのポケットに手を入れて、いつでもマグナムを発砲できるように準備していた。

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