報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「リサの体調悪化」 2

2022-06-30 20:23:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月13日14:00.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]

 私は高橋の運転する車で、東京中央学園上野高校に向かった。
 車はシルバーのバネットNV200である。
 レンタカーショップとリース契約している車だが、場合によってはADバンになることもある。
 いずれにせよ商用バンであるが、これを契約しているのは、何も安いからだけではない。
 商用車はどこにでもいる為、どんな場所に止まっていても不自然さが無い。
 その為、探偵として隠密行動をする際のカムフラージュに打ってつけなのだ。
 探偵事務所によっては、タクシーを貸し切ることもあるのだという。
 タクシーも確かに、どこにいても不自然ではない。
 また、レンタカーと違ってナンバーでそれとバレることは無い為、タクシーを活用するのだそうだ。

 愛原:「ここだな……」

 私達は学校に到着すると、来訪者用の駐車場に車を止めた。

 愛原:「高橋はここで待っててくれ」
 高橋:「分かりました」

 車を降りて、通用口へ向かう。
 中に入って最初の入口に事務室があり、そこで用件を伝える。
 そこで事務員が職員室に取り次いでくれ、私が本当に呼ばれて来たのだと判明される。

 事務員:「それでは保健室に向かってください。保健室は、この廊下を真っ直ぐ行って……」
 愛原:「分かりました」

 午後の授業中の為か、校内は静かだった。
 校庭では体育の授業が行われているのか、そこから元気な声が聞こえる。

 愛原:「ここだな……」

 保健室の前に到着すると、私はドアをノックした。

 愛原:「失礼します。愛原リサの保護者、愛原学です」
 養護教諭:「これはどうもお疲れ様です。どうぞ、中へ」

 保健室の中に入ると、リサはベッドに座っていた。

 リサ:「先生、ゴメン……」

 リサの顔色は悪く、頭を右手で抱えていた。

 愛原:「どこか痛いのか?」
 リサ:「痛いってわけじゃないんだけど……」
 養護教諭:「1時間目の授業の時から、調子が悪かったらしいです。2時間目は体育だったんですが、思うように体が動かせなかったとか……」
 愛原:「ええっ?」
 養護教諭:「極めつけは、昼食の時ですね。食べた後、戻してしまったらしくて……。それで、ここに運ばれて来たんです」
 愛原:「大丈夫なのか!?」
 リサ:「吐いたら少し……」

 食中毒ではないのかとも思ったが、リサ以外にそんな体調不良を訴えている生徒はいないので、食中毒ではない。

 愛原:「何を食べたんだ?」
 リサ:「A定食……」

 A定食といったら、肉系を中心とした定食である。

 愛原:「最近はB定食だっただろ?」
 リサ:「今日は食べれるかなって思ったんだど……ダメだった」

 A定食のメニューは生姜焼き定食だという。
 つまり、豚肉だな。
 やはり今のリサは、肉を受け付けないのか?

 養護教諭:「今日のところは、早退して様子を看てあげてください。場合によっては、病院の受診を……」
 愛原:「分かりました」

 私は制服姿のリサを立たせ、保健室から連れ出した。

 高橋:「あっ、先生」

 高橋は車の外で待っていた。

 愛原:「リサを乗せてやってくれ」
 高橋:「はい」

 高橋は助手席後ろのスライドドアを開けた。
 リサを乗り込ませる。
 私も隣に座って、スマホを取り出した。

 愛原:「善場主任、お疲れ様です」

 それで善場主任に掛け、リサの状態を説明する。
 すると善場主任は……。

 善場主任:「分かりました。それでは、医療機関を受診してもらいますので、これから指定する医療機関に向かってください」
 愛原:「は、はい」

 その医療機関とは……。

[同日15:00.天候:曇 東京都中央区日本橋某 某複合ビル]

 藤野にまで行かされるのかと思ったが、そんなことはなかった。
 しかも、行き先は中央区内。
 東京中央学園から車で15分くらいで到着できる場所だ。
 ビルに駐車場は無いので、取りあえず私とリサはビルの前で降り、高橋にはどこか近くのコインパーキングにでも車を止めてもらって、後で来てもらう形にした。
 ビルそのものは、どこにでもある普通のオフィスビル。
 高層ビルというわけではないが、菊川周辺にある数階建ての小規模なビルというわけでもなかった。
 広いエントランスには警備員が立哨しており、エレベーターも低層階用と高層階用とで分かれていた。
 ビルによっては、ここで何かしらの入館手続きをしないとエレベーターに乗れない場合もあるが、このビルではそれは必要無いようだ。
 こんなオフィスビルに学校制服を着たJKがいるのは不自然だが、特に警備員に話し掛けられることもなかった。
 善場主任に言われた通り、低層階用のエレベーターホールに向かう。
 そこのフロア案内には、とある階に診療所があると明記されていた。
 つまり、特に秘密の診療所ではないということである。
 エレベーターも、オフィスビルにあるということでシンプルなデザインではあったが、特に変な所は無かった。
 メーカーも東芝製と、ごくごく普通である。
 そのエレベーターで、低層階の上の方のフロアに上がって行く。
 それでも途中階は飛ばして行く、急行エレベーターだった。
 エレベーターを降りると、すぐに診療所というわけではなかった。
 エレベーターホールに近接してはいたが、共用部まるっと診療所というわけではないらしい。
 入ると、他にも患者がいる普通の診療所だった。
 受付で、

 愛原:「すいません。デイライト東京事務所から、急患で連絡が入っていると思うのですが……」

 私が言われた通り、デイライトの名前を出すと、受付係の女性は……。

 受付係:「はい。お名前は?」
 愛原:「愛原です」

 私の名前でいいのか、リサの名前でいいのか分からなかったので、取りあえず名字だけ名乗ってみた。
 すると受付係の女性は……。

 受付係:「かしこまりました。それでは、こちらの問診表をお書きになって、またこちらにお持ちください」

 と、まるで初診受付のような対応をされた。
 違うのは、そこで保険証の提示を求められなかったこと。
 恐らく、デイライトが今回の医療費の全てを負うことになっているので、私に保険証の提示を求めなかったのだろう。
 急患扱いといっても、今のリサは取りあえず歩くことはできる。

 愛原:「リサ、書けるか?」
 リサ:「うん。大丈夫」

 私は問診票が挟まれたバインダーと、ボールペンをリサに渡した。

 愛原:「どうやら、受診している女子学生はリサだけじゃないみたいだぞ?」
 リサ:「……チッ」

 リサが舌打ちしたのは、そのJCだかJKがセーラー服を着ていたからだ。
 リサにとってはアンブレラの研究所でコスプレさせられ、そのまま性的実験を受けさせられた苦い思い出があるからだ。
 もしも東京中央学園の制服がブレザーでなかったら、入学を拒否していたかもしれないという。
 この診療所、どうやら婦人科もあるらしいな。
 それでか。

 リサ:「書いた……よ」
 愛原:「よし」

 私はリサからバインダーとボールペンを受け取ると、それを受付に渡した。

 受付係:「ありがとうございました。それでは、こちらをお持ちになりまして、あちらのレントゲン受付でお待ちください」
 愛原:「は?レントゲン?」

 何でレントゲンを受ける必要があるのだろう?
 まあ、リサの体調不良の原因が分からないので、様々な角度から検査をしようということなのだろうか。
 とにかく、渡された書類を持って、まずはレントゲン室に向かった。

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