報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「尾行調査中」

2024-08-09 16:17:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月6日12時30分 天候:晴 静岡県富士市水戸島本町 ENEOSスタンド]

 クライアントの次男を乗せた観光バスは、2台編成。
 2台の大型バスは、難無く国道139号線を南下している。
 かつては有料道路だった自動車専用道路、西富士道路を走行して富士市に入った私達は、一旦バスから離れると、ガソリンスタンドに寄った。
 車はレンタカーである為、返却時にはガソリンを満タンにしなければならないからだ。
 新富士駅近くのセルフスタンドに入った。

 愛原「そんなにガソリン、減ってないだろ?」
 高橋「そうっスね」

 高橋には不服かもしれないが、無難にライトバンを借りている。

 リサ「ちょっとトイレ」

 リサはリアシートから降りると、トイレに向かった。
 5月になり、東京中央学園は夏服の着用が認められるようになった為、リサは堂々とそれを着ている。
 暑がりの鬼型BOWは、ブラウスも長袖ではなく、半袖を着用していた。
 ブラウスの上は、制服の1つであるグレーのニットのベストを着けているが……。
 スカートに関しては、冬用の緑の物を穿いている。
 下が寒いとか、そういうわけではなく、グレーのベストに、夏用のグレーのスカートはダサい感じがする為。
 夏はベストを着用しないという想定なのだろうが、こういう切り換えの時期にそんなことが起こる。
 高橋は運転席から降りると、慣れた様子でタッチパネルを操作した。

 愛原「この残量なら、何リッターくらい入る?」
 高橋「まあ、20も入んないと思いますよ。最近の車は燃費がいいっスから」
 愛原「だよな。如何に走り屋の車が、地球に厳しい環境設定なのかが分かるよ。お前が走り屋時代、最後に乗ってた車は?」
 高橋「100系チェイサーです!」
 愛原「100系ならスベーシアだろ?」
 高橋「いや、チェイサーはスズキじゃないっスよ?」
 愛原「え?」
 高橋「え?」
 愛原「……何らかの認識の違いがあるようだ」
 高橋「……うっス」

 大した量の給油ではないので、それはすぐに終わる。
 観光バスもそんなにスピードを出して走っているわけじゃないし、すぐに追いつけるだろう。

 リサ「お待たせー」

 リサがスッキリした顔で戻って来た。
 どうやら、少し我慢していたようだ。

 愛原「よし、じゃあ行こう」

 リサがリアシートに乗り込むと、高橋はすぐに車を走らせた。

 リサ「あのね、さっきエレンからLINEがあったんだけど……」
 愛原「何だ?」
 高橋「便所でLINEしてんじゃねーよw」
 リサ「エレンが『沖縄山手学苑』に通ってるのは知ってるでしょ?」
 愛原「知ってるよ。それがどうした?」
 リサ「東京の山手学苑と共同で、合宿をやってるんだって」
 愛原「ああ。山手学苑もゴールデンウィークに受験対策の合宿をやるんだってな。俺が現役生だった頃は、夏休みに入ってから行われていたものだが、今はゴールデンウィークまで潰されるのか」
 高橋「俺は別に塾なんか行きませんでしたけどね。それでも地元の高校入れましたよ」
 愛原「ヤンキー校だろ、どうせ?」
 高橋「それでも卒業すりゃあ、こっちのモンです。おかげでその後、ネンショーや少刑に行ったら、学者扱いっスよ」

 素行不良で収監される者の中には、不登校でロクに中学校はもちろん、最悪小学校すら通っていなかった者もいる。
 その中で高校まで行けた者は、尊敬されるのだそうだ。
 ましてや高橋は、卒業者。

 愛原「ヤンキー校とはいえ、高校卒業できたのに収監されるとは……」
 高橋「ハハ……さすがに反論できないっス」
 愛原「で、その山手学苑の合宿が何だって?」
 リサ「費用が高いからエレンは参加しなかったみたいなんだけど、今回はかなり豪華なんだって」
 愛原「かなり豪華とは?」
 リサ「合宿先が八丈島」
 愛原「マジかよ!?」
 リサ「エレンとの思い出の地」
 愛原「そうだなぁ」
 リサ「知ってたら、エレン誘って行くのに」
 愛原「いやいや!明後日には修学旅行控えてんのに、何言ってんだw」
 リサ「夏休みは、そういう所に合宿に行く塾に行きたい」
 愛原「……別に、遊びに行くんじゃないんだからな?2~3日は勉強漬けだぞ?」
 リサ「それでもいい。それでもアンブレラの研究所にいた時はできなかったから」
 愛原「……そうか。まあ、前向きに検討しておくよ」
 リサ「! おー!」

 善場係長も、まんざらでも無かったみたいだし。

 愛原「八丈島ってことは、飛行機で行くのかな?」
 リサ「船みたいだよ」
 愛原「船!?日の出辺りから出てる、あの船か!?」
 リサ「パンフレットだと、見た目豪華な船だったよね?」
 愛原「あ、そういえばそうだったな」

 豪華客船とまではいかないものの、例えば太平洋フェリーとか、商船三井フェリーくらいの見た目ではあった。
 少なくともこの前乗った東京湾フェリーよりも大きく、内装も客室やレストランが完備されていた。

 愛原「あれで行くのか。……いいな」
 リサ「でしょ!?先生も保護者枠で参加!」
 愛原「いや、俺は……」
 高橋「じゃ、俺は助手枠で参加!」
 リサ「そんなもん無いよ」
 高橋「あぁッ!?」
 愛原「まあ、まだ先の話だから。もしかしたら、もっと他にいいコースがあるかもしれないそ」
 リサ「それもそうだね」

 少子化で、どこの学習塾・予備校も生徒確保に必死である。
 そんな中、ゴールデンウィークや夏休みの合宿などを魅力化し、それで生徒確保に走る所もあるようだ。
 そのような中で、クライアントの息子達が通う東京中央進学塾は堅実な方だと言える。

[同日12時40分 天候:晴 同市柳島 日産レンタカー新富士駅前店]

 東海道新幹線の“こだま”のみが発着する新富士駅。
 そこの北口である富士山口のバスロータリーの外側に、レンタカーショップがある。

 リサ「あっ、バスが止まっている」

 このバスロータリーには団体バス用のバースがあり、そこにあの観光バス2台が止まっていた。
 どうやら、無事に追い付いたようである。
 バスを降りた団体客は、今度は駅構内にある団体客待合所で、列車の時間まで待機するのである。

 愛原「どうやら、無事のようだな。こっちも早く車を返して合流するぞ」
 高橋「はい!」

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