[5月9日18:15.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]
私の名前は愛原学。
ここから徒歩5分圏内の雑居ビルに、事務所を構えている。
18時で事務所を閉め、それからマンションに帰って来た。
愛原:「ただいまァ」
高橋:「あっ、先生。お帰りなさいっス」
愛原:「おーう」
高橋:「すぐ、夕飯にするんで、もう少しお待ちください」
愛原:「ああ、分かった。リサは?」
高橋:「部屋にいますよ」
愛原:「そうか」
今日はリサは学校帰り、事務所には寄らなかった。
リサが唯一の単独行動を許されているのが、登下校である。
かつては斉藤絵恋さんが登下校で一緒だったが、沖縄に転校してしまったので、今はリサが1人で登下校している。
リサの学校に友達はいるが、全員が住む方向がバラバラなので、学校を出たり、上野駅で別れてしまうのだ。
愛原:「うーむ……」
女の子らしく、部屋のドアには『リサのへや』と書かれた木札がぶら下がっているのだが、そこに描かれているイラストが、明らかにアメリカのオリジナル版リサ・トレヴァーである。
このオリジナルと日本版のリサは、血統的には何の繋がりもない。
ただ、リサ・トレヴァーの体内で作られたGウィルスが、こちらのリサ達に受け継がれたというだけの話だ。
アメリカのアンブレラ本社では、研究者のウィリアム・バーキン博士が自らに投与してBOW化するも暴走。
ネメシスにも投与されたが、やはり実用化されなかったようだ(されても困るが)。
その為、アメリカではGウィルスの研究は完全に廃止。
日本法人だけがその研究を引き継ぎ、天長会信者の白井伝三郎が、教義で語られている『最も危険な12人の巫女たち』を具現化するべく、Gウィルスを悪用。
天長会で経営していた児童養護施設の子供達(特に少女)や、施設周辺の栃木県内で少女達を誘拐して人体実験を行った。
『12人』の中で、今生き残っているのは『2番』こと、うちのリサのみ。
最も成功したG生物とも言われる。
愛原:「リサ……」
部屋に入る前に、リサの部屋のドアに聞き耳を立てた。
微かに電マの音がする。
食欲は落ちても、性欲は旺盛のままのようだ。
私は放っておいて、自分の部屋に行って着替えることにした。
[同日18:30.天候:晴 愛原のマンション]
夕食には湯豆腐と寿司が出た。
これだけだと足りないと思ったのか、高橋は他にも焼き鳥の盛り合わせや天ぷらの盛り合わせも買って来ていた。
愛原:「ビールが進みそうだねぇ」
高橋:「ありがとうございます」
私は缶ビールの蓋を開けた。
湯豆腐といっても、土鍋の中に入っているのは豆腐だけではなく、大根も入っている。
あまり具材を入れると、おでんになってしまうので、具材はこれだけだ。
因みに豆腐、私は絹ごし派。
リサ:「んー、お寿司美味しい~!」
Tシャツに黒い短パン姿のリサは、寿司を頬張った。
愛原:「いいのか?今日は焼き鳥以外、肉無しだけど?」
リサ:「ここ最近、魚とか、サッパリ系の気分なの」
愛原:「そうなのか」
今まで重い肉ばかりを食べて来たので、その反動でも来たのだろうか?
因みに、アメリカのオリジナル版リサ・トレヴァーが食事をする描写は全く無い。
愛原:「肉でも、さっぱりしているヤツとかはあるぞ」
リサ:「このチキンとかでしょ?」
愛原:「それもあるけど、例えば桜肉とかな」
リサ:「桜肉……桜のお肉……?」
愛原:「違う違う。馬の肉さ」
リサ:「馬の肉!?」
愛原:「あとはジンギスカンだ」
高橋:「ジンギスカン……。そんなにサッパリしてますかね?」
愛原:「牛や豚よりはサッパリしてるんじゃないの?」
高橋:「まあ……そうかもですね」
この時は、特に何も無かった。
リサは出された物を全部食べていたし、私が途中コンビニに立ち寄って買って来たケーキなどのスイーツもリサは食べた。
[5月13日13:00.天候:曇 同区内 愛原学探偵事務所]
リサに異変が起き始めたのは、それから数日後の事である。
この時も、特に学校に行くまでは何とも無かった。
肉食はあまり好まず、魚食や採食を好んでいた。
ピッ!(スマホのアラームが一瞬だけ鳴る音)
愛原:「ん?まただな」
それはデイライトから提供された、とあるアプリ。
BSAAで開発された、BOW探知アプリとでも言うのか。
要はBOWの気配を察知すると、アラームで教えてくれるというものだ。
感度などは自由に設定でき、私はリサが第3形態以上になるとアラームが鳴るという設定にしていた。
第3形態に変化すると、BSAAが出動することになっているからだ。
異変というのは、アラームが鳴ってすぐに止まるという現象が午前中から何度も繰り返されているというものだ。
普通、こういうアラームというのは、鳴動した後、画面をタップしないと止まらないようになっている。
但し、例外もあって、例えばリサが第3形態に変化して、また第2形態以下に戻るとアラームも自動で止まる。
そういうことが午前中から繰り返されているので、私はアプリの不具合だと思った。
ピピピピピ!
愛原:「ん!?」
因みにアラーム音は、JRの防護無線のアラームにそっくりである(電車に乗っていて、『電車を止める信号を受信した為、緊急停車した』とか言うと、それのこと)。
高橋は、『炊飯器で米が炊き上がった時の音』とか言っていたが。
愛原:「あれ?」
私が手を伸ばしてアラームを止めようとすると、また勝手に止まる。
高橋:「先生、ウザいんで、通知オフにしませんか?」
高橋のスマホにもそのアプリは落とし込んでいるが、高橋は既に通知オフにしている。
愛原:「うーん……そうだなぁ……」
リサがそんな高頻度で変化を繰り返すわけがないし、もしそうなら、今頃とっくに大騒ぎであろう。
第1形態までなら何とか誤魔化せるかもしれないが、第2形態以降は明らかに化け物の姿をしているのだから。
愛原:「ちょっと善場主任に相談してみるわ」
私は事務所の電話を取り、善場主任に連絡してみることにした。
が、その前に着信があった。
モニタを見ると、善場主任の番号だった。
愛原:「はい、もしもし。お疲れ様です」
善場:「善場です。愛原所長、お疲れ様です」
用件はやっぱり、今のアプリのことだった。
どうやら、善場主任のスマホなどでも、同じ現象が起きているらしい。
ということは、やっぱりアプリの不具合なのだろうか。
善場:「BSAAが調査をしておりますが、どうやらアプリの不具合ではないようです」
愛原:「アプリのせいじゃないということは、リサ自身の問題ですか?」
善場:「そうかもしれません。今、リサは学校ですね?」
愛原:「はい、そうです。時間帯的に、昼休みが……あっ」
すると、私のスマホに着信があった。
画面を見ると、何と東京中央学園からだった。
愛原:「あっ、ちょっ、ちょっと……!」
私が一瞬テンパりかけると、高橋が私のスマホを取った。
高橋:「はい、もしもーし!……はい、そうッス!今、愛原先生は別件対応中なんで、弟子の自分……高橋と言いますけど、代わりに出ました」
と、機転を利かせてくれた。
高橋:「は?……はあ……。えっ、マジっすか!?……んじゃあ、どうしますかね?……あー、分かりました。そんじゃ、後で愛原先生に聞いてみますんで……はい。その時、また電話するってことで。……了解っス!それじゃ、また」
私は固定電話の方を保留にして、高橋に聞いた。
愛原:「何だって?」
高橋:「リサの担任のセンコー……もとい、教師からなんスけど、リサが具合悪くしちゃって、今、保健室で寝てるんらしいんスよ」
愛原:「ええーっ!?」
高橋:「何だったら今日は早退させるみたいなんスけど、どうもかなり具合悪いんで、迎えに来れるかどうかってことらしいっス」
愛原:「わ、分かった。ちょっと待ってろ」
私は保留を解除すると、今の電話の内容を善場主任に伝えた。
善場:「そうですか。それなら、すぐに迎えに行ってあげてください。そして、状況をすぐこちらに報告してください」
愛原:「分かりました」
私は電話を切ると、高橋に車の用意をするよう命じた。
幸い高橋の免停は、先月末で解除されているので助かった。
私の名前は愛原学。
ここから徒歩5分圏内の雑居ビルに、事務所を構えている。
18時で事務所を閉め、それからマンションに帰って来た。
愛原:「ただいまァ」
高橋:「あっ、先生。お帰りなさいっス」
愛原:「おーう」
高橋:「すぐ、夕飯にするんで、もう少しお待ちください」
愛原:「ああ、分かった。リサは?」
高橋:「部屋にいますよ」
愛原:「そうか」
今日はリサは学校帰り、事務所には寄らなかった。
リサが唯一の単独行動を許されているのが、登下校である。
かつては斉藤絵恋さんが登下校で一緒だったが、沖縄に転校してしまったので、今はリサが1人で登下校している。
リサの学校に友達はいるが、全員が住む方向がバラバラなので、学校を出たり、上野駅で別れてしまうのだ。
愛原:「うーむ……」
女の子らしく、部屋のドアには『リサのへや』と書かれた木札がぶら下がっているのだが、そこに描かれているイラストが、明らかにアメリカのオリジナル版リサ・トレヴァーである。
このオリジナルと日本版のリサは、血統的には何の繋がりもない。
ただ、リサ・トレヴァーの体内で作られたGウィルスが、こちらのリサ達に受け継がれたというだけの話だ。
アメリカのアンブレラ本社では、研究者のウィリアム・バーキン博士が自らに投与してBOW化するも暴走。
ネメシスにも投与されたが、やはり実用化されなかったようだ(されても困るが)。
その為、アメリカではGウィルスの研究は完全に廃止。
日本法人だけがその研究を引き継ぎ、天長会信者の白井伝三郎が、教義で語られている『最も危険な12人の巫女たち』を具現化するべく、Gウィルスを悪用。
天長会で経営していた児童養護施設の子供達(特に少女)や、施設周辺の栃木県内で少女達を誘拐して人体実験を行った。
『12人』の中で、今生き残っているのは『2番』こと、うちのリサのみ。
最も成功したG生物とも言われる。
愛原:「リサ……」
部屋に入る前に、リサの部屋のドアに聞き耳を立てた。
微かに電マの音がする。
食欲は落ちても、性欲は旺盛のままのようだ。
私は放っておいて、自分の部屋に行って着替えることにした。
[同日18:30.天候:晴 愛原のマンション]
夕食には湯豆腐と寿司が出た。
これだけだと足りないと思ったのか、高橋は他にも焼き鳥の盛り合わせや天ぷらの盛り合わせも買って来ていた。
愛原:「ビールが進みそうだねぇ」
高橋:「ありがとうございます」
私は缶ビールの蓋を開けた。
湯豆腐といっても、土鍋の中に入っているのは豆腐だけではなく、大根も入っている。
あまり具材を入れると、おでんになってしまうので、具材はこれだけだ。
因みに豆腐、私は絹ごし派。
リサ:「んー、お寿司美味しい~!」
Tシャツに黒い短パン姿のリサは、寿司を頬張った。
愛原:「いいのか?今日は焼き鳥以外、肉無しだけど?」
リサ:「ここ最近、魚とか、サッパリ系の気分なの」
愛原:「そうなのか」
今まで重い肉ばかりを食べて来たので、その反動でも来たのだろうか?
因みに、アメリカのオリジナル版リサ・トレヴァーが食事をする描写は全く無い。
愛原:「肉でも、さっぱりしているヤツとかはあるぞ」
リサ:「このチキンとかでしょ?」
愛原:「それもあるけど、例えば桜肉とかな」
リサ:「桜肉……桜のお肉……?」
愛原:「違う違う。馬の肉さ」
リサ:「馬の肉!?」
愛原:「あとはジンギスカンだ」
高橋:「ジンギスカン……。そんなにサッパリしてますかね?」
愛原:「牛や豚よりはサッパリしてるんじゃないの?」
高橋:「まあ……そうかもですね」
この時は、特に何も無かった。
リサは出された物を全部食べていたし、私が途中コンビニに立ち寄って買って来たケーキなどのスイーツもリサは食べた。
[5月13日13:00.天候:曇 同区内 愛原学探偵事務所]
リサに異変が起き始めたのは、それから数日後の事である。
この時も、特に学校に行くまでは何とも無かった。
肉食はあまり好まず、魚食や採食を好んでいた。
ピッ!(スマホのアラームが一瞬だけ鳴る音)
愛原:「ん?まただな」
それはデイライトから提供された、とあるアプリ。
BSAAで開発された、BOW探知アプリとでも言うのか。
要はBOWの気配を察知すると、アラームで教えてくれるというものだ。
感度などは自由に設定でき、私はリサが第3形態以上になるとアラームが鳴るという設定にしていた。
第3形態に変化すると、BSAAが出動することになっているからだ。
異変というのは、アラームが鳴ってすぐに止まるという現象が午前中から何度も繰り返されているというものだ。
普通、こういうアラームというのは、鳴動した後、画面をタップしないと止まらないようになっている。
但し、例外もあって、例えばリサが第3形態に変化して、また第2形態以下に戻るとアラームも自動で止まる。
そういうことが午前中から繰り返されているので、私はアプリの不具合だと思った。
ピピピピピ!
愛原:「ん!?」
因みにアラーム音は、JRの防護無線のアラームにそっくりである(電車に乗っていて、『電車を止める信号を受信した為、緊急停車した』とか言うと、それのこと)。
高橋は、『炊飯器で米が炊き上がった時の音』とか言っていたが。
愛原:「あれ?」
私が手を伸ばしてアラームを止めようとすると、また勝手に止まる。
高橋:「先生、ウザいんで、通知オフにしませんか?」
高橋のスマホにもそのアプリは落とし込んでいるが、高橋は既に通知オフにしている。
愛原:「うーん……そうだなぁ……」
リサがそんな高頻度で変化を繰り返すわけがないし、もしそうなら、今頃とっくに大騒ぎであろう。
第1形態までなら何とか誤魔化せるかもしれないが、第2形態以降は明らかに化け物の姿をしているのだから。
愛原:「ちょっと善場主任に相談してみるわ」
私は事務所の電話を取り、善場主任に連絡してみることにした。
が、その前に着信があった。
モニタを見ると、善場主任の番号だった。
愛原:「はい、もしもし。お疲れ様です」
善場:「善場です。愛原所長、お疲れ様です」
用件はやっぱり、今のアプリのことだった。
どうやら、善場主任のスマホなどでも、同じ現象が起きているらしい。
ということは、やっぱりアプリの不具合なのだろうか。
善場:「BSAAが調査をしておりますが、どうやらアプリの不具合ではないようです」
愛原:「アプリのせいじゃないということは、リサ自身の問題ですか?」
善場:「そうかもしれません。今、リサは学校ですね?」
愛原:「はい、そうです。時間帯的に、昼休みが……あっ」
すると、私のスマホに着信があった。
画面を見ると、何と東京中央学園からだった。
愛原:「あっ、ちょっ、ちょっと……!」
私が一瞬テンパりかけると、高橋が私のスマホを取った。
高橋:「はい、もしもーし!……はい、そうッス!今、愛原先生は別件対応中なんで、弟子の自分……高橋と言いますけど、代わりに出ました」
と、機転を利かせてくれた。
高橋:「は?……はあ……。えっ、マジっすか!?……んじゃあ、どうしますかね?……あー、分かりました。そんじゃ、後で愛原先生に聞いてみますんで……はい。その時、また電話するってことで。……了解っス!それじゃ、また」
私は固定電話の方を保留にして、高橋に聞いた。
愛原:「何だって?」
高橋:「リサの担任のセンコー……もとい、教師からなんスけど、リサが具合悪くしちゃって、今、保健室で寝てるんらしいんスよ」
愛原:「ええーっ!?」
高橋:「何だったら今日は早退させるみたいなんスけど、どうもかなり具合悪いんで、迎えに来れるかどうかってことらしいっス」
愛原:「わ、分かった。ちょっと待ってろ」
私は保留を解除すると、今の電話の内容を善場主任に伝えた。
善場:「そうですか。それなら、すぐに迎えに行ってあげてください。そして、状況をすぐこちらに報告してください」
愛原:「分かりました」
私は電話を切ると、高橋に車の用意をするよう命じた。
幸い高橋の免停は、先月末で解除されているので助かった。
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