報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「帰りの旅路」 2

2024-05-07 15:33:04 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月26日17時59分 天候:晴 栃木県那須塩原市大原間 JR那須塩原駅・新幹線ホーム→東北新幹線280B列車7号車内]

 

〔ピン♪ポン♪パン♪ポン♪ 5番線に、18時3分発、“なすの”280号、東京行きが17両編成で参ります。この電車は、各駅に停車します。グランクラスは、10号車。グリーン車は9号車、11号車。自由席は1号車から6号車と、12号車から17号車です。尚、全車両禁煙です。まもなく5番線に、“なすの”280号、東京行きが参ります。黄色い線まで、お下がりください〕

 私がリサとLINEのやり取りをしていると、接近放送が鳴り響いた。
 リサはこれから夕食のようだが、とても腹が減って仕方が無いのだという。
 そりゃそうだろう。
 意識が無い間は食べることができないのだから。
 研究施設ではどういった食事が提供されるのかは知らないが、それでリサが空腹で暴走したりしないようにしてもらいたいものだ。

〔「5番線、ご注意ください。18時3分発、“なすの”280号、東京行きの到着です。黄色い点字ブロックの内側まで、お下がりください。終点、東京までの各駅に止まります」〕

 “はやぶさ”用のE5系車両を先頭に、“こまち”用のE6系を連結した17両編成がやってきた。
 編成が長いせいか、自由席は空いていた。
 これなら、自由席に乗っても良かったかもしれない。

〔「ご乗車ありがとうございました。那須塩原、那須塩原です。お忘れ物の無いよう、お降りください。5番線に到着の電車は、18時3分発、“なすの”280号、東京行きです。……」〕

 私は指定席の7号車に乗り込み、3人席の窓側に座った。

 高橋「戻りました!」
 パール「戻りました」
 愛原「そうかい。あと、3分ある」
 高橋「追い越しですか?」
 愛原「そういうことだ」

 その時、通過線である上り本線を同じ編成の列車が猛スピードで追い抜いて行った。
 後続列車を2~3本待つこともある東海道新幹線と違い、東北新幹線は基本的に1本の列車にだけ追い抜かれる。
 私は鞄を網棚に上げ、テーブルを出して弁当や飲み物をそこに置いた。

 高橋「リサからはLINEガンガン来てます?」
 愛原「来てる来てる。見舞いに来てくれとか、早く帰りたいとか、そういうヤツな」
 高橋「しばらくそこに閉じ込めといた方が、平和の為っスよ」
 愛原「こらこら」

 私は買っといた缶ビールの蓋を開けた。

〔「お待たせ致しました。18時3分発、“なすの”280号、東京行き、まもなく発車致します」〕

 ホームから発車ベルの音が僅かに聞こえて来る。

〔5番線から、“なすの”280号、東京行きが発車致します。次は、宇都宮に止まります。黄色い線まで、お下がりください〕
〔「5番線、ドアが閉まります。ご注意ください。5番線、ドアが閉まります」〕

 甲高い客扱い終了合図のブザーが聞こえて来た。
 その後、車両のドアが閉まる音も。
 そして列車は、スーッと動き出した。

〔「那須塩原からご乗車のお客様、お待たせ致しました。本日も東北新幹線をご利用頂き、ありがとうございます。各駅停車の“なすの”280号、東京行きです。次は、宇都宮に止まります。……」〕

 愛原「昨日、今日と天長園に行ったことはリサには内緒にしとこうな」
 高橋「えっ?何でですか?」
 愛原「利恵達と会ったことがリサにバレたら、色々と誤解される」
 高橋「なるほど。修羅場になる可能性がってことっスね」
 愛原「うん。別に、善場主任の依頼で行ったわけじゃないし」
 高橋「善場のねーちゃんのせいにもできないっスね。……てか、何で先生は那須に?」
 愛原「そりゃあもう、俺と歳の近い美女が誘ってくれたら、男としては行かないわけにはいかないし?その美女が『あれ』や『これ』をしてくれるっていうなら、そりゃもう男としては……」
 高橋「先生?その美女ってのが、あの女将を指すんであれば、BSAAから目ェ付けられるんで、かなりヤバいと思うんスけど?」
 愛原「だから、リサには内緒な?」
 パール「先生の御命令とあらば……。せっかく来たのに、蓮華に邪魔されて散々でしたね」
 愛原「まあな……」
 高橋「でもそいつは、アネゴがロケランでブッ殺したはずじゃ?」
 愛原「何か、怪しいんだよ、それでも……。利恵の言う通り、本当は東京に帰らず、天長園に留まっていた方が安全なのかもしれない」

 尚、上野利恵とは何も無かったわけではなく、昼食後の時間潰しの際に【ぴー】や【ぴー】、最後に【ぴー】があったことは報告しておく。

 (上野利恵「認知とか親権とか慰謝料とか、そういう後々面倒なことは一切無いので、どうか3人目を生ませてください……」)

[同日19時16分 天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東北新幹線280B列車→JR(東日本)東京駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。東海道新幹線、東海道本線、中央線、山手線、京浜東北線、横須賀線、総武快速線、京葉線と東京メトロ丸ノ内線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 事態が動いたのは、大宮駅を出てからしばらくしてから。
 それまでもリサとはLINEで会話をしていたのだが、突然リサが、『所内に警報が鳴った』と書いた。
 私が何の警報かと聞くと、『分からない』という。
 リサはまだ処置室のような所におり、そこで点滴を受けていたとのことだ。
 スマホの使用は認められているもよう。
 むしろそれに集中させて、なるべく暴走させないようにしたいという魂胆かもしれない。
 それが終わって点滴の管を抜き、取りあえず居住区に戻ろうかという話になった際、警報が所内に響き渡ったということだ。
 リサの話が本当なのであれば、警報の原因はリサではない。
 もしリサが暴走したのであれば、呑気にLINEなんかできないはずである。

 愛原「とにかく、オマエは絶対暴走するなよ?」

 という念を押して、善場主任に連絡を取ることを試みた。
 だが、やはり現場では緊急事態が発生しているのか、善場主任が電話に出ることは無かった。

 高橋「先生、どうしますか?このまま中央快速に乗り換えちゃいます?」
 愛原「そうだな……。いや、やめておこう」

 善場主任に呼ばれたわけでもない。
 それに現地には、BSAAなども待機している。
 それなら、私達が行っても邪魔なだけかもしれない。

 愛原「取りあえず、事務所に戻ろう。そこで情報収集だ。幸い、リサが原因では無いようだから、現場からのレポートはリサがしてくれる」
 高橋「分かりました」

 そうこうしているうちに、列車は東京駅のホームに滑り込んだ。

〔とうきょう、東京です。とうきょう、東京です。ご乗車、ありがとうございました〕
〔「ご乗車ありがとうございました。終点、東京、終点、東京です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。22番線に到着の列車は、折り返し、19時28分発、“やまびこ”219号、仙台行きとなります。……」〕

 私達は列車を降りた。

 愛原「うん、何か東京の方が暖かい」
 高橋「少し、ジメッとしますね」
 パール「曇ってるからでしょう。北関東は晴ですが、南関東は曇とのことです」
 愛原「そうだな。取りあえず、タクシーに乗って急いで事務所に戻ろう」
 高橋「はい!」
 パール「かしこまりました!」

 私達は改札口に向かった。

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