報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「BOW同士でも軋轢はある」

2019-07-25 14:41:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月13日02:00.天候:不明 某県山中県道バイパス 妖伏寺トンネル工事現場]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は仕事で山奥を走る道路トンネルの工事現場に……って、暢気に解説している場合ではない。
 確か、私は……そうだ!
 シールドマシン内部で、黒カビに飲み込まれたんだった!
 それから程なく意識を失って……?
 ん?ここはどこだ!?真っ暗だぞ!?
 しかも、地に足の付いていない感覚!
 まるで無重力の中に閉じ込められているかのようだ。
 まさか私は死んだのか!?

 ……いや、待て。
 何か聞こえる。
 話し声のようだ。
 これは……リサの声?
 誰かと話している?

 ???:「いいじゃん、このまま食べちゃえば?あなたも人喰いなんでしょう?」
 リサ:「愛原さん達は別!愛原さん達と約束したもん!絶対に人喰いはしないって!」
 ???:「私達はどうせBOW。このまま言う事聞いてたって、どうせ実験台だとか色々利用されて終わり。アメリカ人のあのコだって、モノ扱いされて結局は殺されたのよ?このままでは私達も同じ」
 リサ:「私は愛原さん達を信じる!」
 ???:「あなたとは友達になれないようね」

 一体、何だ?
 リサは誰と話している?
 聞いたことのない声だ。
 声からして、リサと同じくらいの歳の女の子のようだが……。
 それより、私のこの状態は一体何なんだ?
 どうも、あのコ達と話の内容からして私は捕まったようなのだが……。
 と!

 リサ:「愛原さん!早くここから出て!」

 リサがベリべリと何かを剥がす音を立てた。
 私の向こうで、その音が聞こえる。
 まるで石灰岩を剥がすかのように……って、私はいつの間に石灰岩の中に閉じ込められたんだろうか?

 愛原:「プハッ!」

 息苦しさから解放された時、向こう側にリサの姿が見えた。
 リサは尚も私を閉じ込めている脆い岩のようなものを剥がしている。
 そして、最後には私はその中から落ちた。

 愛原:「いでっ!」
 リサ:「愛原さん、大丈夫!?」
 愛原:「いでででで……。一体、何なんだ?」
 リサ:「エブリンがね、愛原さん達を食べようとしたの。だけど、もう要らないって」
 愛原:「な、何だって!?」

 やはり私達は危うく捕食されるところだったようだ。

 愛原:「高橋は!?」
 リサ:「あそこ!」

 リサが指さした所には、私と同じように石灰化した歪な壁の中に下半身だけ呑み込まれた高橋の姿があった。

 愛原:「高橋!大丈夫か!?」

 私はリサと一緒に高橋を救出した。

 高橋:「う……先生……?俺は……?」
 愛原:「生きてるな!?よし!」

 私は高橋を起こそうと手を伸ばした。
 しかし、その手を掴む者がいた。

 ???:「この女と別れちゃいなよ、先生?」
 愛原:「わあっ!?」

 それはウェーブの掛かった黒い髪をショートボブにした少女。
 黒いワンピースを着て、不気味な笑顔を見せている。
 だが、私がびっくりして仰け反ると同時にその少女は消えた。

 リサ:「エブリン、やめて!」
 高橋:「敵ですか、先生!?……何だ、テメェは!?」

 高橋は見えない誰かに向かってマグナムを構えた。
 どうやら高橋は幻覚を見ているようだ。

 愛原:「! リサ、後ろにいるぞ!」

 リサの後ろには、リサの首に手を伸ばそうとしているエブリンの姿があった。
 リサよりも幼い顔立ちで、身長も低い為に年下らしく見える。
 しかし、リサは動じない。

 リサ:「エブリンはもういないよ。“黒いお友達”を連れて、引っ越して行っちゃった」
 愛原:「な、なに?!し、しかし、現に……!」
 エブリン:「リサなんかと付き合っても不幸になるだけだよ?」

 また私の手を掴んで来るエブリンの姿があった。

 リサ:「それは幻覚。私には見えるけど、恐らくそれは高橋兄ちゃんには見えない。そして、高橋兄ちゃんの手を掴んでるエブリンの姿も先生には見えないと思う」
 愛原:「ど、どういうことだ!?」
 リサ:「この中から早く出よう。あいつは獲物に幻を見せるのが得意なの」
 愛原:「な、何だ、幻覚か。高橋、何だかヤバそうだから早く出るぞ!」
 高橋:「先生から離れろ、クソガキが!!」
 愛原:「惑わされるな!幻覚だ!」

 私は先ほど入って来たドアを開けようとしたが、何かに引っ掛かっているのか開かない。
 そこはリサがBOWならではの強い腕力でこじ開けた。
 マシンの外も石灰化したカビに覆われていた。
 それにドアが引っ掛かっていたのだ。

 愛原:「まだモールデッドが外にいるかもしれないから、気をつけて行くぞ!」
 高橋:「はい!」

 私達が出口に向かって走ると、向こうから武装した男達がやってきた。
 ワッペンにはBSAAとある。

 愛原:「やっぱりバイオハザード絡みだったか……」

 というか、私達の方がこの国連組織より歩みが早いとは……。

[同日04:00.天候:晴 同トンネル工事現場事務所]

 BSAA極東支部日本地区本部の隊員達に連れられて、私達はトンネルの外に出た。
 そこには他にも多くの隊員達が駐留していて、さながらベースキャンプのような雰囲気だった。
 そこの一画に設置された救護所で、私達は検査を受けた。
 どうやら、アメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザードと同じ特異菌であるらしい。
 そこで驚かれたのは、リサはBOWだから当たり前だが、私や高橋が殆ど感染していなかったことだ。
 高橋にあっては群馬県で起きたバイオハザードの時に抗体ができたと考えられるが、私の場合はどうも最初から抗体があったようであるとのことだった。

 高橋:「さすが先生!やはり凡人ではないですね!正に神降臨です!」
 愛原:「いや、大げさだよ」

 私は肩を竦めてみせたが、霧生市のバイオハザードといい、豪華客船のバイオハザードといい、そして新種のカビを利用した特異菌によるバイオハザードといい、全てにおいてその力を無効化させるものが私の体の中にあるという。

 BSAA医療技師:「もしよろしかったら今度、BSAAにて精密検査を……」
 愛原:「既にそちらさんの息の掛かっている病院で検査は受けているので、そこに問い合わせれば私のデータが出て来るはずです」

 そのうち、私もモルモットにされる日が来るのかもしれないな。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「トン... | トップ | “私立探偵 愛原学” 「徹夜... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事