報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「リサと怪奇画」

2023-01-26 20:18:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月25日15時36分 天候:晴 東京都千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅→都営新宿線1574K電車最後尾車]

 リサと桜谷は上野駅で別れ、リサはJR上野駅から山手線で秋葉原駅に向かった。
 そして、そこから徒歩で都営地下鉄岩本町駅に移動し、地下のホームに下りる。

〔まもなく3番線に、各駅停車、本八幡行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。この電車は、当駅で、少々停車します〕

 リサ「!」

 珍しく、中線に電車がやってくる。
 岩本町駅は2面3線の構造。
 上りホームと下りホームに挟まれるようにして、副線が存在する。
 この線路は、通過待ちに使われる。

 リサ(今日はこっちなんだ……)

 そして、中線に京王電車が入線してきた。
 “京王ライナー”などには使用されない、従来の車両(9050系)である。
 急行電車に抜かれるからか、車内は空いていた。
 あまり使用されない線路ではあるが、両側のホームにはホームドアが付いている。

〔3番線は、各駅停車、本八幡行きです。いわもとちょう、岩本町、秋葉原〕

 リサは電車に乗り込むと、ローズピンクの座席に腰かけた。

〔「15時39分の発車です。発車までご乗車になり、お待ちください。この電車は当駅で、急行電車の通過待ちを致します」〕

 リサがスマホを取り出すと、LINEの着信があった。
 それは高橋からだった。
 どうやら愛原も高橋も、マンションに帰っているらしい。

 リサ(『帰りに100円ローソンでお使い頼む』?……買い物には行ったはずだけど、買い忘れたんだね……)

 リサはマスクの中で苦笑した。
 高橋とやり取りしているうちに、4番線の下り本線を、別の京王電車が通過して行った。
 そちらは“京王ライナー”にも使われる5000系電車だった。
 但し、地下鉄用に座席を横向きにセットされている。
 京王電車ばかりが登場するが、ここは都営地下鉄である。

〔「お待たせ致しました。各駅停車の本八幡行き、まもなく発車致します」〕

 短い発車メロディがホームに鳴り響く。
 都営大江戸線でも使用されているメロディだ。

〔3番線、ドアが閉まります〕

 ホームドアと電車のドアが閉まる。
 都営の車両のドアチャイムがJR東日本の通勤電車のそれと同じなら、京王電車はJR東海の普通電車と同じ音色である。
 最後尾に乗っているので、車掌の発車合図のブザーが微かに聞こえてくる。
 それからエアーの抜ける音がして、電車が動き出した。

〔次は馬喰横山、馬喰横山。都営浅草線、JR総武快速線はお乗り換えです。お出口は、左側です〕

 リサ(今日の夕食は、生姜焼き定食か……)

 リサがそう思ったのは、お使いの中に、『生姜焼きのたれ』が入っていたからである。

 リサ(この前食べたのは、ポークソテーだったから……要は、ポークジンジャーだよね。……まあ、いいか。肉が食べれれば……)

[同日15時46分 天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅]

 リサを乗せた京王電車は、無事に菊川駅に到着した。

〔2番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。きくかわ~、菊川~〕

 電車を降りて、改札口に向かう。
 対向電車も来ることがあるので、強風には注意だ。
 実際、コンコースにもそのような注意書きが書かれている。
 特に、リサのような制服のスカートを穿いている場合は要注意である。

 リサ「ん?」

 改札口は定期で通過するから良いのだが、残額が少ないことに気づいた。

 リサ(少しチャージしておこう。後でお兄ちゃんか先生にもらえばいいよね)

 改札の外に出てから、券売機の所に行き、手持ちのPasmoに2000円ほどチャージした。
 それから駅の外に出ようとしたのだが……。

 リサ「ん?」

 駅構内にある、無料のパンフレットやフリーペーパーを配布しているコーナー。
 その中には東京都や墨田区からの広報もあるのだが、その中に、東京都が主催する絵画コンクールについてのお知らせがあった。

 リサ(なるほど。サクラヤは、これに出展するんだ)

 案内の中には、過去に最優秀賞を取った作品がいくつか紹介されている。

 リサ(フムフム……。つまり、サクラヤの絵が最優秀賞を取ったら、わたしもここに……。ふふふふ……)

 リサは広報を持って行くことにした。
 そして、出口に向かうエスカレーターに乗る。
 この時はまだ気づかなかったが……。

[同日16時15分。天候:曇 同地区内 愛原のマンション]

 リサ「ただいま」
 愛原「お帰り。お使い、悪かったね?」
 リサ「別にいい。お兄ちゃん、これ」
 高橋「おう、悪いな。先生とのラブラブデートに気を取られて、忘却の彼方に……」
 愛原「誰がラブラブデートじゃい!ただの仕事だろうが!」
 リサ「先生とラブラブデートしていいのは、わたしだけ!」
 高橋「ンだと、コラ!」
 愛原「高橋。今日の夕食は?」
 高橋「あ、ハイ。豚肉生姜焼きです」
 リサ「やっぱり」
 愛原「肝心の生姜焼きのたれを忘れるとは……」
 高橋「さ、サーセン」
 愛原「俺の希望で、豚肉はロースの薄切りにしてもらったけど、それで良かったかな?」
 リサ「うん、いいよ。学食だと、ばら肉になるからね。ばら肉の玉ねぎタップリのヤツ」
 愛原「ああ、あれな。俺はそれより、ロースの方が好きなんだ」
 リサ「うん、そうだね」
 愛原「それより、絵は完成したのか?」
 リサ「した!……これが写真」

 リサはスマホに撮影した、『魔王様の肖像画』を愛原に見せた。

 愛原「おー!いいじゃんいいじゃん!是非、間近で観たいものだ!」
 高橋「ガチで魔王っぽいっスね。こりゃ、レベル50でも倒せるかどうか……」
 リサ「これがそのコンクールの案内」

 リサは菊川駅から持ってきた案内を見せた。

 愛原「東京都主催のコンクールか。こりゃ凄いな。これで最優秀賞取れたら、凄いもんだよ」
 リサ「だよね!わたしも、ここに載るってことだよね!?」

 リサは鼻息を荒くした。

 愛原「そ、そういうことになるな」
 リサ「それとね、美術室で面白い絵を見つけたの!」

 リサは南原という元美術部員で、怪奇画家として活動している男の話をした。

 愛原「そうなのか。俺も観たくなってきたな~」
 高橋「先生!?」
 リサ「だよね!だよね!」
 愛原「……あれ?でもさ、今度のコンクール……。特別審査員の中にいる、南原某っての、その人じゃないか?」
 リサ「え!?」
 愛原「怪奇画家って書いてある。怪奇画家で南原っての、そう何人もいないだろうから、これがその南原さんって人じゃないの?」
 リサ「おお~!勝ったも同然!」
 愛原「いや、エコ贔屓はしないだろうよ」
 リサ「この人、プロの画家ってことは、個展とか開いてるんだろうね?」
 愛原「だろうな」
 リサ「個展やってたら、観てみたい!」
 愛原「う、うん。他に、どんなのがあるか、観てみたいな」
 リサ「調べてみていい?」
 愛原「よし。調べてみようか」
 高橋「先生。そんな、女なんかにうつつを抜かして……」
 愛原「悪いな、高橋。俺はLGBTでも何でも無いんだ」
 リサ「JKやJCが好きなの、フツーだよね!でも先生、リアルではわたしだけじゃないとダメだよ」
 愛原「そ、そうだな。はははは……」

 リサの機嫌を損ねて暴走させた場合、監視業務委託を受けている愛原に責任が問われることになる。

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