報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「何度目かのホテル天長園」

2022-06-24 14:58:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月7日16:30.天候:雨 栃木県那須塩原市 ホテル天長園]

 愛原:「急げ!急げ!急げ!」

 予定通り、路線バスをホテル前の通り上で降りる。
 さすがに路線バスということもあり、ホテルの前までは入ってくれなかった。
 で、バスを降りると空には雷鳴が轟き、雨が降り出し始めた。
 大粒の雨だ。
 私達はバスを降りると、急いでホテルまで走った。

 愛原:「間一髪間に合った……のかな?」

 ホテル正面入口の屋根の下まで行くと、シャワーみたいな雨が降り出していた。
 空からはゴロゴロと雷が鳴っている。

 高橋:「普通の雨ならギリセーフなんでしょうけどねぇ……」
 リサ:「まあ、何とかなる精神で何とかなった」
 凛:「早く入りましょう」

 入口の所には、歓迎札が掲げられていて、そこに『愛原学先生御一行様』と書かれていた。

 高橋:「偉いっスね!ちゃんと、先生を先生と呼んでますよ?」
 愛原:「俺は別に偉い先生じゃないんだがねぇ……」

 本来、探偵はそんな風に呼ばれるものではない。
 だが、私に師事する高橋がそう呼び、リサがそれを真似して、リサの周囲の者達がそれを真似して……といった構図だ。

 フロント係:「いらっしゃいませ」
 愛原:「予約していた愛原です」

 私がフロントに向かうと、凛も付いてきた。
 凛は当然の如く、フロントの中に入って行ったので、私は一瞬ビックリする。
 だが、元々凛は女将であった母親と共に、ここでアルバイトをしていたのだった。
 高校進学を気にアルバイトを辞めたと思うが、母親が名義上このホテルの共同支配人の1人であった為、ここでも自由に振る舞えるようだった。

 凛:「愛原先生は、こちらの書類に書いてください」

 恐らく特別割引を利かせる為の書類があるのだろう。
 一般の宿泊者カードとは違う物を書かされた。
 書く内容そのものは同じであったが。

 フロント係:「ありがとうございます。それでは、こちらがカードキーなっておりますので」
 愛原:「ありがとう」
 凛:「それじゃ先生、どうぞごゆっくり。私達は寮に戻ります」

 このホテルの裏手には従業員寮があり、上野姉妹はそこに住んでいた。
 2人とも上京の為、引き払ったわけではないようだ。
 母親の上野利恵がいつ釈放されるか分からないので、引き払うにも引き払えないのだろうか。

 リサ:「えー?リン達は泊まらないの?」
 凛:「このプランは『スタッフ紹介プラン』なので、スタッフが泊まると意味が無いんです。お風呂だけは御一緒させてもらいますから」
 愛原:「まあ、いいじゃないか。部屋に行こう」

 私は部屋のカードキーを持って、エレベーターに向かった。
 驚いたことに、古いエレベーターはリニューアルされていた。
 それ自体は珍しいことではないが、セキュリティが強化され、乗り場ボタンの下にカードリーダーが設置された。
 ここに先ほどのカードキーを当てないと、ボタンを押しても反応しないというものだ。

〔上に、参ります〕

 昔、都内のビルの防災センターに勤務していた経験から、もしかしたらと思ったのだが、やはりそうだった。
 カードリーダーは内側にもあって、乗り込んだ後で内側のカードリーダーにもカードを当てないと、やはり行き先階のボタンが押せないようになっていた。

〔ドアが、閉まります〕

 高橋:「いきなりメンド臭くなりましたね?」
 愛原:「何かあったんだろうなぁ……」
 リサ:「何かあったに決まってるでしょ。先生が襲われた!」
 愛原:「え!?それのせいなの!?」
 高橋:「エレベーターは関係無くね?」
 愛原:「なあ?」

 リサ達の得意技に、ダクトを通ってマップ移動できるというものがある。
 BOWや、最近のザコクリーチャーもそれをやってのけて来ているので、逃げ込んだ部屋に誰もいないからと言って安心してはいけない。
 ダクトを通って追い掛けて来る恐れがある。
 私も上野利恵には、それで部屋に侵入されて襲われた。
 リサも第3形態まで変化させれば肉体を軟化できるということもあり、そのスキルを使用することができる。

 愛原:「一応、報道もされたから、外部向けに『館内セキュリティを向上させました』というアピールなのかもしれんね」

〔ピーン♪ 7階です。下に、参ります〕

 私達が宿泊する客室フロアに到着する。

〔ドアが、閉まります〕

 因みにこのエレベーター、オーチス製で、アナウンスは富沢美知恵氏という声優が声をあてている。
 氏は有名どころでは、“クレヨンしんちゃん”の『まつざか先生』や、“ゴーストスイーパー美神”の『小笠原エミ』、“ブラックラグーン”の【某メイドさん】の役を務めている。
 が、先にそちらの声を知っている者がエレベーターのアナウンスを聴くと、『本当に本人?』と首を傾げるのである。

 愛原:「えーと……この部屋だな」

 私はつい和室二間の部屋を想像していたのだが、入って見るとそこは洋室だった。
 ツインの部屋が2つ繋がった、いわゆる『コネクティングルーム』であった。

 愛原:「よし。俺と高橋はこっちのベッドで寝るから、リサは隣のベッドで寝てくれ」
 リサ:「えー?ベッド1つ余るよ?」
 愛原:「3人なんだからしょうがない」
 リサ:「だから先生が、私の隣で寝て?」
 高橋:「マグナム撃ち込むぞ、コラ!」
 愛原:「まあまあ」

 その時、部屋のチャイムが鳴った。

 高橋:「俺が出ます!」

 高橋はマグナムを構えた。

 愛原:「おいおい。そんな身構えなくても……。リサ、BOWの気配はするか?」
 リサ:「ううん、しない」
 愛原:「ほら。普通の人間だよ」

 外国ではそれが強盗である可能性もあるのだが、今さら人間の強盗くらいで驚く私達ではない。
 こちとら、もっと恐ろしい化け物達を相手にしてきているのだ。

 女将:「失礼します。御挨拶の方、よろしいでしょうか?」

 入って来たのは新しい女将だった。
 上野利恵が不祥事案件を起こした為に解任となり、代わりに別の女将が就任したようだ。
 今度の女将は、普通の人間らしい。
 私よりもずっと年上の女性だった。
 さすがに、私の母親ほどではないがな。

 愛原:「どうぞどうぞ」
 女将:「本日は天長園をご利用頂き、ありがとうございます。よろしければ、お部屋の御説明と館内の御説明をさせて頂きたいと存じますが、宜しいでしょうか?」
 愛原:「是非」

 こういう女将の説明も、旅行気分の1つだと私は思う。
 既に何度か泊まっているホテルなので、新しい情報は殆ど無かったが、しかし全く無かったわけではなかった。
 やはり、この部屋はリニューアルされていた。
 元々はやはり和室だったらしい。
 それを前の女将の不祥事案件により、損傷してしまった為、思い切って洋室に改装したのだそうだ。
 確かにホテル外観と、部屋の外側と比べれば、やけにこの部屋は真新しい感じを受ける。

 女将:「愛原様方には前任の者が多大な御迷惑を掛けてしまい、そのお詫びの意味も込めまして、こちらのお部屋を御用意させて頂いた次第でございます」

 確かに、私が利恵に襲われた部屋と同じフロアだったような気がする。
 ていうか、まんまこの部屋だったのでは?
 しかし、さすがにダクトは存在したままだった。
 まあ、建物の構造上、仕方が無いとは思うが。

 女将:「御夕食は6時からとなってございますので、それまでの間、どうぞごゆっくりとお寛ぎくださいませ」
 愛原:「ありがとう」

 私は夕食の前に、温泉に浸かることにした。
 外は相変わらず大雨が降っている。
 露天風呂は、この時間帯は諦めざるを得ないだろう。
 まあ、どうせゲリラ豪雨か何かだろうし、夜には止むだろうから、その時に入ればいいか。

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1 コメント

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Unknown (雲羽百三)
2022-06-24 17:07:35
>結婚までのハードルが多過ぎて途中で断念する人がほとんどです。
①相談所or奇跡的にいい人に出会う
②複数人で遊びにいけるくらい仲良くなる
③二人で遊びに行けるくらい仲良くなる
④付き合う
⑤同棲する
⑥両親など、周囲の理解を得る
⑦金銭的な条件が合う
⑧結婚
確変を何連続当てないといかんのよ?
最初の①を突破できる可能性がすでに数%、これではどうにもならん。

これもヤフーコメントで見つけた、激しく同意のコメント。
3回も結婚できた妙観講員さんは、むしろその事について体験発表して頂きたい。
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