報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「週末の予定」

2023-11-02 20:34:29 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月24日13時30分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 ピッ♪ピッ♪ピッ♪と、加湿機能付き空気清浄機がアラームを鳴らす。
 東京の冬はとても乾燥するので、それを防ぐ為に、事務所内には加湿機能付きの空気清浄機を導入している。
 加湿用の水タンクが空になったことを知らせるアラームだ。

 高橋「あ、俺、水入れてきます」
 愛原「ああ、頼むよ」

 高橋が席を立ち、空気清浄機から水タンクを取り出す。
 そして、給湯室に向かって行った。
 そのタイミングで、事務所の電話が鳴り出す。

 パール「お電話ありがとうございます。愛原学探偵事務所でございます」
 善場「NPO法人デイライト東京事務所の善場です。霧崎事務員、愛原所長は御在席でしょうか?」
 パール「少々お待ちくださいませ」

 パールは電話を保留にした。

 パール「愛原先生、デイライトの善場主任から電話です」
 愛原「ああ、分かった」

 私は自分の机の電話を取った。

 愛原「お電話替わりました。愛原です」
 善場「善場です。お疲れ様です」
 愛原「いつもお世話になっております」
 善場「昨日申し上げましたリサの歯科検査についてですが、詳細が分かりましたので、これからファックスで送らせて頂きます。確認のほど、よろしくお願い致します」
 愛原「分かりました」
 善場「何か質問がございましたら、いつでも御連絡ください」
 愛原「承知しました」

 電話連絡はこれだけ。
 因みにメールではなく、ファックスにしたのは、ネットからの流出を恐れてのことだろう。
 電話を切ると、すぐに複合機からファックスが受信された。

 愛原「来た来た……」

 私がファックス用紙を手に取って確認すると、リサの歯科検査の場所が紹介されていた。

 愛原「うーむ……」
 高橋「どこなんですか?」
 愛原「埼玉県さいたま市中央区のとある歯科医院だ」
 高橋「普通の歯科医院っスか!?」
 愛原「そう、だね……。しかも、場所が斉藤元社長の家とか、『鬼の棲む家』の近くだわ」
 高橋「凄い偶然っスね。作者の行動範囲の狭さが浮き彫りに出てますよね」

 雲羽「大きなお世話だ!」

 愛原「そこに土曜日の午後、来て欲しいらしい」
 高橋「土曜日ですか……」
 愛原「営業してないのかな?」
 高橋「俺、調べてみますよ」

 高橋は自分の机のパソコンで、ネット検索してみた。
 すると、ファックスに書かれている歯科医院のサイトが見つかった。
 本当にそれだけを見ると、普通の歯科医院である。
 『院長紹介』のページで、眼鏡を掛けた壮年の院長が笑顔で写っている。

 高橋「このオッサンがリサの牙を抜くんスか?」
 愛原「分からんな。それより、営業時間は?」
 高橋「えー……あっ、土曜日は昼までですよ。で、日曜・祝日は休みっス」
 愛原「なるほど。一般の患者の治療が終わった後で、リサの検査をやるんだな」
 高橋「BSAAの関係者っスかね?」
 愛原「分からんが、全くの無関係ってことはないだろうな。例えば、協力者とか……」

 私は2枚送られてきたファックスのうち、もう1枚を確認した。
 そちらが、むしろ歯科検査の概要が書かれている。
 詳細は極秘なので、当日でないと説明されない。

 愛原「うわ、抜くの1本だけじゃないんだ……」

 私自身、親知らずを抜く治療をしたことがあるので、その大変な気持ちは理解できた。
 あれはキツかった。
 治療が終わっても、しばらくは痛くて、口が大きく開かないのだ。

 高橋「この際だから、あいつの危険物の牙、全部抜いてもらいましょうよ」
 愛原「サンプルが欲しいだけだから、そんなには抜かないだろうが」

 だいたい終わるのが、夕方頃になるかもしれないとのことだ。
 サンプル採取に際して、特に食事制限は無い。
 昼食は取ってもいいし、終わった後で夕食を食べてもいいらしい。
 まあ、辛い経験をすることになるリサの為に、昼と夜は美味い物食わせてやろう。

 高橋「車、出しましょうか?」
 愛原「そうだな……。帰り、迎え頼むよ。行きは俺とリサで、電車で向かう」
 高橋「分かりました」

[同日16時00分 天候:晴 同地区 同事務所]

 リサ「ただいま」

 リサが帰って来た。

 愛原「お帰り。実力テストの方はどうだった?」
 リサ「まあまあかな。赤点は無いと思う」
 愛原「付属の大学に行くんだから、学内テストで赤点は困るぞ」
 リサ「分かってる」
 愛原「ところで、昼は何食った?」
 リサ「豚肉生姜焼き定食」
 愛原「ん!?豚肉が重なっちまったか……」
 リサ「ん?夜も生姜焼き?」
 愛原「いや、違う。トンカツ定食だそうだ」
 リサ「何だ。肉が食べれるなら、それくらい大丈夫だよ」
 愛原「そ、そうか。それでだな、善場主任から連絡があったんだ。これを見てくれ」

 私は善場主任から送られてきたファックスを見せた。

 リサ「これ……1本だけじゃないんだ」
 愛原「そうなんだよ。ヘタすりゃ全部抜かれるかもしれない」
 リサ「うえ……」

 リサはあからさまに嫌そうな顔をした。
 牙自体は抜かれても、またすぐに生えてくるだろう。
 しかし、抜くプロセスがキツいわけである。
 そりゃ、昼過ぎに始まって夕方に終わるわけである。

 愛原「食事制限は無いそうだから、昼と夜は美味いもん奢ってやるよ」
 リサ「うん……ありがとう」

 リサは死んだ目で答えた。
 一応、概要にはサンプル採取に当たり、なるべく麻酔を使用すると書かれていた。
 まあ、人間の抜歯のような感じで行うとのこと。
 書かれてはいないが、それでもBOWにどれだけ麻酔が効くかは未知数だろう。

 リサ「まあ、いいや。ここでわたしが暴れたら、先生に迷惑が掛かるだけだもんね」
 愛原「す、すまないな」
 リサ「いいよ。それよりね、レイチェルが注文してた明るい青のブルマが届いたってよ」
 愛原「そうなのか」
 リサ「トレーニング用に穿くにしても、さすがにこの季節は無理だろうね。レイチェルは普通の人間だし」
 愛原「まあ、だろうな」
 リサ「後で画像送ってもらうから、先生にも見せてあげるね」
 愛原「ああ、ありがとう」

 リサはやや重い足取りで、今日は階段ではなく、エレベーターで4階に上がって行った。

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