報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「マルチタイプ達の造反?」

2016-05-16 10:13:25 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月12日07:00.天候:晴 アーカンソー州某所・DCアーカンソー研究所]

 研究所内のどこかにある居住区。
 そこのベッドに、アルバートは寝ていた。
 起こしに来るのは、金髪碧眼の青年。
「おはようございます、ドクター。起床のお時間です」
 白いワイシャツに黒いベストを羽織り、黄色いネクタイを着けて、黒いズボンをはいている。
 まるで、鏡音レンを大人の男性にしたような風体である。
「そうか……」
 アルバートはベッドから起き上がった。
「ジャニスが朝食の用意をしておりますよ」
「ああ、分かった。すぐ行けばいいんだな、ルディ?」
「もちろん、顔を洗ってからですよ」
 ルディはニッコリ笑った。
 そして出て行く時、部屋のドアの鍵を開けた。
 電子ロックらしく、ルディが右手をセンサーにかざすとドアが開いた。
「外の様子はどうだ?」
「まだ安全とは言えません。でも、安心してください。ボク達が全力でドクターの安全を守ります」
「そ、そうか。それは……頼もしいな」
 何故か冷や汗を流すアルバート。
「この研究所自体がドクターの“お城”です。ボク達は“ナイト(騎士)”として、当然ですよ」
 ルディは笑みを浮かべた。
 だがその笑みは、どこか冷たかった。
 作り主に似てそうなっているのか……。

[5月14日10:00.天候:晴 成田空港第1ターミナル]

 ガラガラとキャリーバッグを引く敷島達。
「まだちょっと早かったかな?」
 敷島は腕時計を見た。
「いや、こんなもんですよ。あくまで、10時20分までに手荷物検査を終えて、出発ロビーの中にいろという話ですから。少し余裕があった方がいいです」
 平賀が答えた。
「そうですか。それならいいんですが……。それにしても……」
 敷島は後ろを見た。
 後ろからは辛そうにバッグを引くアリスの姿があった。
「お前、大丈夫か?」
「“多い日”に当たっちゃっいました?」
「……バイキング食べ過ぎた。胸やけする……」
「はあ?」
 変な顔をする平賀。
「バイキングなんて日本の文化だと言って、食いまくってましたから」
「あの、皿に山盛りはネタじゃなかったんですか!?」
 平賀は目を丸くした。
「ネタじゃなくてガチです」
「それと、荷物重い……」
「なに持ってきたんだよ?ちゃんと機内に持ち込める物、持って来たんだよな?」
「エミリー達の交換部品は、現地で調達できるよ?」
「分かってるし、大丈夫だから……」
「後で漢方胃腸薬やるから、とにかくゲートまで頑張れ」
 陸路で移動する場合は、マルチタイプ達が荷物運びをしてくれて、とても楽であったのだが。

「おはようございます」
 待ち合わせ場所に到着すると、既に鳥柴は到着していた。
「おはようございます」
 昨日と同じスーツ姿である。
「あれ、お1人ですか?」
「はい、そうです。よろしくお願いします」
「こちらこそ」
「それでは早速中に入りましょう」
 敷島達は手荷物検査場の中に入った。

[同日11:20.天候:晴 成田空港第1ターミナル→JAL12便機内]

「アリスの希望は、そもそもムリがあったってわけだ」
 敷島はしたり顔で言った。
 アリスは往復ファーストクラスでの移動を希望したわけだが、本社から却下された。
 身分分相応としての判断かと思われたが、実はそもそも成田〜ダラス・フォートワース便にはファーストクラス自体が存在しなかったのである。
 最高クラスでもビジネスクラス。
 ではそれなのかというと、そうではない。
 往路で敷島達に割り当てられたのは、プレミアム・エコノミー。
 これはエコノミークラスとビジネスクラスの間に設けられたクラスだ。
 ビジネスクラスが段々とファーストクラス寄りにバージョンアップして行く中、エコノミークラスはシートの材質や形状が変わるだけで、大したアップはしていなかった為、格差が大きくなってしまった。
 そこで各航空会社では、その差を埋める為に、もう1つクラスを設けることになった。
 それがプレミアム・エコノミーである。
 見た目は、昔のビジネスクラスといった感じである。
 なので、エコノミーより少し広いといった感じ。
 ただ、専用ラウンジが利用できるなどの、ソフト面でエコノミーと差が付けられているようだ。
「うるさいわね」
 アリスは敷島の嫌味に頬を膨らませた。
「お帰りの際はクラスアップが約束されてますよ」
 と、鳥柴。
「生きて帰れたら、の話でしょ?」
「まあ、それはそうですが……。皆様の成果によっては、ファーストクラスの搭乗も考慮するとのことです」
「生きて帰れる保証ができるだけでも、ビジネスクラスは確定なんだ。それでいいじゃないか、アリス?」
「ファーストクラスに乗せてくれる条件って何?」
「色々と細かい所がありますが、要はアルバート所長の生け捕りと、ジャニスとルディを捕獲することです」
「……死体と鉄塊にして確保はダメ?」
「ビジネスクラスでよろしければどうぞ」
「大変だな」
 敷島はソファから立ち上がった。
 ちょうど敷島達が乗る便の搭乗案内の放送が流れたからである。

 成田空港から直行便が毎日飛んでいる路線であるが、飛行機自体はそんなに大きなものではない。
 200人は乗れないだろう。
 それでファーストクラスが無かったのだ。
 帰りに乗るかもしれないビジネスクラスの中を通り、プレミアム・エコノミーは機内の真ん中辺りにある。
「えーと、ここですね」
 窓側に2人席が並び、中央に3人席が並んでいる。
 敷島達には進行方向右側の2列席が前後して確保されていた。
「ここでいいですか?」
「アリスは鳥柴さんと乗っとけよ」
「OK.主任同士、愚痴のフライトになりそうね」
「よろしくお願いします」
 アリスは研究主任、鳥柴は営業主任である。
「あ、なるほど。確かに、エコノミーより広いや」
 敷島と平賀が隣同士で座る。
「そうですね」
 JALスカイプレミアムと呼ばれるもので、シートピッチは107cm(1070mm)。
 これは、一部を除く新幹線の普通車と同じ数字である。
「うん。これなら、エコノミークラス症候群は大丈夫かもしれませんね」
「それは良かったです」

 飛行機は5分ほど遅れて出発した。
 しかしそこから離陸するまで、更に5分ほどの時間を要した。
「平賀先生はよく飛行機にお乗りになってますから、離着陸の重圧や衝撃にはもう慣れっこなんですよね?」
「まあ、そんなもんだということで」
「私なんかあんまり乗りませんで、未だに手に汗握るんですよ」
「はははは。敷島さんもそのうちボカロが海外デビューとかしたら、よく乗るようになるんじゃないですか?」
「……だといいんですが」
 敷島は溜め息をついた。
「よくシンディに連れ戻される際、両脇を抱えられて飛ぶことには慣れたんですけどねぇ……」
「ちょっと待ってください。何ですか、そのディズニーランドより怖いアトラクションは?」
「平賀先生はエミリーにされません?」
「されませんよ!……たまに、うちチビ達を抱えて飛ぶことはしますが」
 エミリーとしては、オーナーの子供の相手をしている一環のつもりらしい。
「普通に飛行機かヘリコプターで飛んでください」
「気をつけまーす」

[5月13日21:20.天候:雨 アメリカ合衆国アーカンソー州・DC研究所]

 敷島達を乗せた飛行機が成田を離陸した頃、1機のヘリコプターが研究所の敷地内に墜落していた。
 火炎を噴き上げて燃え盛るヘリコプター。
 その機体には、辛うじてそのヘリが所属していたと思われる文字が書いてあった。
 『DSS』と。
 デイライト・セキュリティ・サービスというデイライトコーポレーション直営の警備会社のヘリだろう。
 アメリカでは登録手続きさえすれば、警備会社であっても銃の所持はできるし、ややもすれば警察の特殊部隊ばりの活動をすることも可能だ。
 デイライトでは直営警備会社に、そのような装備をさせているのだろう。
 だがヘリまで操縦させる装備を持たせておきながら、マルチタイプには形無しであったようだ。
 何故なら、研究所の屋上からそのヘリコプターを見下ろしてせせら笑うマルチタイプ姉弟の姿があったからだ。
 右手は強力なライフル銃に変形させている。
「ドクター、また邪魔な会社のヘリを撃ち落としましたよ。でも、ごめんなさい。ドクターの大事なお城の敷地内に煙を立ててしまいました。後でちゃんと片付けますので、どうかお許しください」
 ルディは体内に搭載されている通信機で、アルバートに報告した。
{「そ、そうか。よく、やったな。キミの言う通りだ。ちゃんと片付けておいてくれよ」}
 するとジャニスも、
「ドクター!私も褒めて!ヘリを撃ち落としたのはルディだけど、そこから脱出してきたクルーを蜂の巣にしたのは私なんだよ!」
 と、設定年齢の割には鏡音リンと大して変わらぬ無邪気な無線を飛ばしてきた。

 やはり、アルバート達はテロリストに成り下がってしまったのだろうか。

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9 コメント

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つぶやき (雲羽百三)
2016-05-16 12:54:33
来月の添書登山の申し込みに末寺に向かっている最中なのだが、埼京線のダイヤが数分ほど乱れている。
私にはケチが付いた形となったが、数分遅れのおかげで間に合った人もいたわけで、私以上に福運の強い人間がこの電車に乗り合わせているらしい。
これが宗門関係者なら良いのだが、恐らくそれは無いだろう。
いずれにせよ、私の罪障消滅は周囲にも影響を及ぼすものらしい。

私の罪障消滅のせいで電車が遅れ、真に申し訳ない。
返信する
つぶやき 2 (雲羽百三)
2016-05-16 14:26:24
添書登山の申し込み、無事にできた。
その足でバスの予約もしてみたが、実に楽なものである。
私を知っている御僧侶から、早目の御本尊下附を促されてしまった。
広宣流布とは御本尊流布であることを考えると、御僧侶の御言葉は適切であろう。
私の信心が弱いだけだ。
返信する
つぶやき 3 (雲羽百三)
2016-05-16 15:24:48
巌虎独白の河童さんなんだが、あれが創価学会員の総意であるとするならば、やはり宗門に戻って来て欲しいとは思わない。
戻ってきた元学会員達も、学会時代のやり方をしようとしている。
顕正会ならそのやり方は大歓迎なのだろうが、宗門ではやらないで欲しいな。

私に慈悲が無いだけかな。
返信する
おつかれさまです (愛国清澄)
2016-05-17 07:18:33
雲羽さん、おはようございます! お疲れさまです(`・ω・´)ゞ

誰かに叱られるかもですが、私も学会員を戻すのは、賛同できかねます。
先般Facebookをロムってたんですが、結構私の知る妙な感じがする講の、講員もしてるんですね。

で、最近はネパールをバンバン引き入れてるのですが、Fbには「宗教観」とか「政治観」も書けるのです。
そしたら、「ヒンズー教」ってしてあるのです。

御受戒させてて、これですやん?普通ここは「日蓮正宗」でしょ?
何が言いたいかと言うと、「そんな簡単に入れ替えられない」のではないでしょうか?

翻って考えたら、私も大日蓮からの転載の、夏期講習会の猊下のご指南を、上げましたが、空しく聞こえるのです。

止めといた方がいいと、私も思います。

長文お許しm(__)m

愛国 清澄 拝

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愛国 清澄さんへ (雲羽百三)
2016-05-17 11:30:35
こんにちは。

誓願という数字に囚われた結果でしょうね。
もちろん、戻りたいと自ら志願してくる人までも拒むわけではありませんが、しかしこちらの言いたいことは既に分かっているでしょうから、学会にいたければ学会にいれば良いと思いますよ。

私も顕正会の言いたいことは分かりますし、学会の言いたいことも河童さんを見れば分かります。
でも、私は宗門にいたいのです。
ただ、それだけですよ。
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Unknown (愛国清澄)
2016-05-17 12:50:48
雲羽さん こんにちは! そうそう先のコメで、地震の事をお聞きしなかった。 列車若しくは道路状況、混乱は生じてないでしょうか?

それと、もう一つ書き忘れた、ってのは「学会の人が望んだら」それはそれって事でした。

私の生みの母親の事は、ブログで挙げてる通りです。
あのお母さん、どうしたって「日顕宗」と呼んでる位ですから、戻る(って表現もどうなんだか?)気はないでしょう。
それで、幸せだ、って言ってんだから、いいんじゃないの?って思いますね。
ただ、私は色々言われますよ。「今度会いたいから、と私たち(上層部)の事は言わず、電話で誘い出せ。」ってねww

母親は私に、「日顕宗のご本尊なんか返して!学会のご本尊で信心して!」って言われますけど…。

私は学会に「行きたくない」という意志、なんですね。

私もただ、それだけw

愛国 清澄 拝
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愛国 清澄さんへ (雲羽百三)
2016-05-17 14:17:50
 こんにちは。

 それでいいと思いますよ。
 できれば、四国道人さんの池田名誉会長の入院(週刊文春)ネタなんか見せてあげると良いかもしれません。
 文春が動くということは、よほどのことですから。

 それでも池田名誉会長に付いて行くというのなら、それはもうしょうがないことなんじゃないかと。
返信する
こんにちは! (んっ?)
2016-05-17 14:19:02
以前、巌虎さんの所に書きましたけど
私の母は宗門問題時に退会して
宗門へ走りました。

母は私を此の信心へ導いてくれた大恩人です。
私は御本尊様に祈り続ける事十数年。

母は脱講し、再び学会へと入会致しました。
法華講にいた間にあらゆる病に冒され
再婚相手からの暴力に泣かされる毎日。

「阿部さんの御本尊様は拝する気になれないし、
出来るならば懐かしい日達上人の御本尊様が戴きたい」と云うので
改革僧侶にお願いし下付して戴きました。

それからの母の病状は巌虎さんの所に
書きましたので、此処には書きませんが

まさに御本尊様のお力を改めて見せ付けられるものです。

同じく退会こそしなかったものの
退転状態だった河童君が、半世紀経た今頃になって
「大聖人門下の創価人」等と名乗り邪義を吐きつづけるのを観ると
吐き気がします。
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んっ?さんへ (雲羽百三)
2016-05-17 17:20:16
こんにちは。

恐らく武闘派法華講員であれば、んっ?さんのお母様に対し、河童さん以上に吐き気を催すことを言うと思います。
また、顕正会員であっても、学会相手の武闘派なら、やっぱり否定的なことを言うと思います。
しかし、んっ?さんから見たお母様の体験については事実でありましょうし、学会で上手くやっておられるのならそれで良いと思うのです。

昔の河童さんのことは、公務員の仕事をサボってクビになったことくらいしか知りませんが、あたかもそれが、自身の体験発表として美化されているのだとしたら、やっぱり違うとは思いますね。
離婚歴・再婚歴があるとのことですが、これについては、1度も結婚したことの無い私がとやかく言うことではないでしょうな。
さすがは、「創価学会に入れば仕事と嫁には困らない」と、私の地元で言われるだけのことはあると思います。
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