報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Sisters” 「イベント2日目」

2017-06-11 09:59:28 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月4日08:00.天候:曇 北海道札幌市中央区 京王プラザホテル札幌]

 ボーカロイド達の部屋割りだが、4人部屋の“ファミリー”にMEIKO、初音ミク、鏡音リン、巡音ルカ。
 3人部屋の“トリプル”にMEGAbyteの3人(結月ゆかり、Lily、未夢)、“ツイン”にKAITOと鏡音レンが寝泊まりしている。
 皆一斉に時間になると起き出す(スリープモード解除)のだが、その際に行われるのが『ロボット工学三原則』。
 JARA財団の取り決めで行われたもので、それが崩壊した今は無効なのだが、今でも行われている。

 初音ミク:「三原則その1……」
 鏡音リン:「ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない」
 MEIKO:「三原則その2……」
 巡音ルカ:「ロボットは与えられた命令に服従しなければならない。但し、与えられた命令が第一条に反する場合は、この限りではない」

 KAITO:「三原則その3!」
 鏡音レン:「ロボットは第一条及び第二条に掲げる内容に反する恐れの無い限り、自己を守らなければならない」

 今日は1階のレストランで朝食を取った敷島達。

 シンディ:「あのコ達の唱和が終わったようです」
 敷島:「そうかそうか」

 エレベーターで客室に戻るところだった。
 因みに『起床時』に唱和を行うので、その設定時間により唱和時間はバラける。

 敷島:「思い出すなぁ……」
 シンディ:「何がですか?」
 敷島:「キールだよ。勝手に第5条まで作っただろ?あいつ」
 シンディ:「『三原則その5!……己の意思に基づき、前掲全ての項目を否定する!』ですか。あのクソ野郎……!」

 三原則なのに第5条まであるという不思議さにツッコミが入る。

 シンディ:「姉さんを誑かした上に、裏切りまでするとは……!」
 敷島:「まあまあ。その恨みはお前のライフルで果たせたじゃないか」

 当時まだ銃火器を搭載していたシンディ。
 本当は頭を撃ち抜いてやりたいところだったが、敷島の命令で背中から胸を貫通させるだけであった。

 シンディ:「そうですね」
 敷島:「あの時、キールのメモリーを咄嗟の判断で飲み込んだのは凄かったな」
 シンディ:「あの時はそうした方が良いと思ったのです。姉さんみたく、【ぴー】に自分から入れるほど私は痴女じゃありませんので」
 敷島:「ほおほお」

 敷島の隣の部屋のドアが開く。
 そこは平賀とエミリーの部屋。
 出て来たのは……。

 エミリー:「ほお?誰が痴女だって?」
 シンディ:「!!!!!」

 ゴッ!と鈍い音がそのフロアに響いたことは言うまでもない。
 エミリーとシンディには、本当に子宮に相当する部分に重要機密媒体を隠し持つ入れ物がある。
 スパイとしての用途も想定して設計されたのが分かる一面だ。

[同日09:00.天候:曇 北海道札幌市豊平区 札幌ドーム]

 再びジャンボタクシー2台に分乗して札幌ドームに向かう。
 関係者駐車場出入口付近には、入り待ちのファン達が待っていた。

 敷島:「エミリー、お前も注目されてるぞ?」
 エミリー:「光栄ですが、私は『用途外』ですので」

 助手席に座るエミリーは後ろを振り向いて微笑を浮かべた。
 そして、関係者入口の前で車が止まる。

 鏡音リン:「今日は何やるの?」
 MEIKO:「それくらい覚えておきなさい。2日目はライブよりも、触れ合いイベントの方がメインなのよ。でしょ?社長」
 敷島:「まあ、そうだな。他の事務所に花を持たせるという意味合いが今日は強い。ボーカロイドの中には歌だけじゃなく、パフォーマンスが得意なのもいる。レンがちょうどバック宙が得意なのと似てるかな」
 鏡音レン:「バック宙ですか。昨日もやりましたけど、もう1回やります?」
 敷島:「まあ、今日の流れ次第だな。詳しい話は、また事前の打ち合わせがあるから」
 KAITO:「トークとかもあるんじゃない?」
 結月ゆかり:「AKBみたいにジャンケン大会とか?」
 Lily:「私は普通にライブやってる方がいいかな……」
 未夢:「何だか今日は楽しそうねぇ」

[同日13:00.天候:曇 同ドーム内]

 敷島:「マジでやるのか!?」

 ドーム内に設けられたのは、かつてロボットサーカスで使われたセットによく似ていた。

 敷島:「ベータ・プロダクションさん!」
 オーナー:「ウチのロボットはただ単に歌えるだけやのうて、パフォーマンスも完璧ですわ。やっぱり、エンターテイメントは必要でっせ」
 敷島:「いや、それは分かりますが、本当に大丈夫なんですか?」
 オーナー:「うちのはボーカロイドよりも更にエンターテイメント性を高めた物や。発明狂に作らせた最高のロボットがうちにはいまっせ」
 敷島:「ほお……」

〔「さて、これより皆様にお見せ致しますのは、直流1万5000ボルトの高圧電流の鉄輪の中を上手く潜れますかどうか!『世紀の電極ブランコ!』まずは、普通のロボットが飛んでみせます!」〕

 恐らくは旧式のバージョン辺りを流用したものと思われるロボットが空中ブランコに乗り、それで輪っかに向かって飛ぶ。
 が、ロボットは上手く潜ることができず、高圧電流に触れて爆発した。
 それもまた観客にスリルを味わわせるパフォーマンスなのだろう。

〔「おーっと!やはり、普通のロボットでは潜ることは不可能のようです!それではお待たせしました!ついに真打ちの登場です!ベータ・プロダクションが誇る最新鋭のロボット!ミスター・ライデンの登場です!」〕

 ライデンは身長180cm以上を誇る大柄の男性を模して造られたロイドのようだ。

 オーナー:「ライデンの胸に、モニタが付いとりますやろ?あそこには1万分の1秒まで測れるコンピューターが搭載されておりますのや。ライデンにとっちゃ、あんな輪っか、止まって見えるっちゅうもんでっせ」
 敷島:「ほお……それはそれは。(ていうか、うちのマルチタイプはそれ以上の性能だけど……。まあ、あの輪っか潜りをするだけなら、1万分の1秒の計算で十分か……)」

 ライデンの顔付きは、まるでハリウッドの映画スターのような感じで、この見た目もファンを付かせる要因の1つだろう。
 そのライデンが空中ゴンドラでブランコの所まで上がる時、マルチタイプ達の方を見てウィンクした。

 シンディ:(キモっ!こっち見んな!)

 シンディがライデンに睨み返し、エミリーの方を見ると……。

 エミリー:「〜〜〜〜
 シンディ:「くぉらっ!いい加減、学習しろ!このビッチ!」

 姉には頭の上がらないシンディも、姉の性に関してだけは思いっ切り突っ込める。

〔「さあ、世紀の瞬間です!皆様、とくとご覧ください!」〕

 ライデンは空中ブランコに乗り、そして勢いをつけて輪っかの中を潜り抜け、反対側のブランコに乗り移った。
 その瞬間、客席から歓声が起こる。

 敷島:「ほお……なかなかやりますなぁ……」
 オーナー:「ジャニーズさんですら、タレントに歌って躍らせるだけやのうて、バラエティとかもやらせておりますやろ?ロボットを使うのもええですが、あないな感じでエンターテイメント性を持たせるんも大事やと思ております」
 敷島:「なるほどねぇ……。そのうち、ロイドに漫才でもやらせますか?」
 オーナー:「漫才!?あー、ええですなぁ!それ、頂きまっせ!」
 敷島:「どうぞどうぞ。(アイドル性が高いうちのボカロには無理そうだなぁ……)」

 2日目もこのまま順調に行くかと思われた。
 

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