報恩坊の怪しい偽作家!

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“愛原リサの日常” 「忍び寄る人食い鬼」

2024-02-29 11:21:16 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日12時35分 天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校・学食]

 リサ「今日のB定食はヒレカツ定食か。次の時間、体育だから、いい食後の運動になりそうだ」
 淀橋「さすがは魔王様」
 小島「わ、私はお腹もたれるから、お蕎麦でいいかな……」

 リサはそんなの気にしない。
 テレビ近くのテーブルに座る。
 学食内にはテレビがあるが、大抵のチャンネル権は3年生が持っている。
 しかし当の3年生達はもう卒業して行ったので、今は2年生が持っている。
 その2年生達も、来月には3年生になるわけだから……。

 リサ「この時間、情報番組しかやってないねぇ……」

 リサはリモコンのチャンネルを回しながら首を傾げた。

 淀橋「さすがにアニメはやってないと思うよ?」
 リサ「そりゃそうだ。“ひるおび”辺りしておこう」
 小島「無難なところ行きますね」
 リサ「間違い無いのを選ぶのが結局1番いいって愛原先生が言ってた」
 小島「なるほど」
 淀橋「それにしても、レイチェルはどうしたんでしょうねぇ?」
 リサ「レイチェルにもブルマ穿かせて体育受けさせようと思ってたのに」
 小島「この寒い時期に、半袖の体操服で体育受けられるの、魔王様たるリサだけだと思うけど……」
 淀橋「夏はいいんだけどねぇ……」

 レイチェルは11時台の授業中、突然、『BSAAからの呼び出しがあった』という理由で早退してしまった。
 BSAA北米支部養成学校に通うレイチェルは、5年間の養成学校期間中、前半2年の『予科』期間を東京中央学園で過ごすことが許されている。
 予科を過ぎると、2年間の本科、それから最後の1年間は専攻科となる。
 最後の1年間でもって、BSAAの何の部隊へ配属されるかが決まる。
 専攻科期間中は殆ど学校におらず、部隊に配属されている状態での実習期間である。
 レイチェルのことだから、既に予科期間の大部分を日本への留学に充てていることもあり、北米支部日本地区派遣隊に配属されるのではと言われている。
 これは人数の少ないBSAA日本地区本部隊への支援や合同作戦を実施する為の部隊である。

〔「ここで速報が入って来ました。えー、今日午前10時頃、東京都板橋区常盤台の住宅で、この家の住人と思われる遺体が発見されました。遺体はこの家に住む女性、伊藤松子さんと見られ……えっ?……少々お待ちください」〕

 小島「やだ、こんな昼間から……」
 淀橋「常盤台……伊藤……」

〔「失礼しました。もう1人ですね。もう1人の遺体も見つかったようです。こちらは全国のチェーンスーパーを展開するペンギン堂の経営者、伊藤忠太郎さんのお宅とのことです」〕

 リサ「ん!?ペンギン堂!?」
 淀橋「そうだ!あれ、伊藤縁の家だよ!?」
 リサ「ええっ!?」

 テレビの画面は、マスコミのヘリからの映像となる。

〔「海外出張から帰って来ました伊藤忠太郎さんを待っていた専属ドライバーの方が、『家の中から社長の叫び声がした』と、警察に通報したとのことです。それで、警察が駆け付け、家の中を調べたところ、遺体の発見に繋がったということです。えー、繰り返しお伝えします。今日午前10時頃、東京都板橋区常盤台の住宅で、この家の住人の2人の遺体が発見されました。うち1人は全国チェーンスーパーを展開するペンギン堂の社長、伊藤忠太郎さんと思われます。現在、警察の方で詳しい身元確認をしております。……」〕

 小島「これ、伊藤君の家なの?」
 淀橋「だってあいつ、前、リサに『うちは常盤台の大豪邸なんだ』って自慢してたじゃん!」
 リサ「ああ、言ってたね」

 金持ちを鼻に掛けて、リサを釣ろうとしていたのだろう。
 金には興味が無く、愛原一筋のリサは鼻にも掛けなかったが。

 リサ「! じゃあ、縁はどうした?」

 リサの指摘に、魔王軍四天王の2人は同時にテレビを観た。
 因みに残りの2人は1年生で、どちらも弁当派なのでここにはいない。

 淀橋「何も言ってないね」
 リサ「死体が発見されたのは10時。でも……縁はその前に、倉田先生からの電話に出てる」
 小島「あっ!」
 淀橋「これは一体、どういうこと?」
 リサ「分からない……」

[同日13時15分 天候:晴 同学園・生活指導室]

 昼食の後、更衣室に行って体操着に着替えたリサ達。
 今日は体育館で授業が行われるのだが……。

〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ 「生徒の呼び出しです。2年5組の愛原リサさん、2年5組の愛原リサさん、至急生活指導室まで来てください」〕

 リサ「ん!?」
 淀橋「生活指導室だって!」
 小島「魔王様、何かした?」
 リサ「いや、何もしてないよ、多分……」

 血液や血中老廃物の摂取も、今は『魔王軍』メンバー内で完結している為、新規者が後で騒ぐなんてことはないはずなのだが……。

 リサ「まあいいや。ちょっと行ってくる」
 淀橋「気をつけて……」
 小島「体育の授業、受けられるといいね」
 リサ「そうだな」

 リサは取りあえず、長袖のジャージの上着を羽織って、生活指導室に向かった。

 坂上「来たか。お前にお客さんだぞ」
 リサ「わたしに?体育の授業はどうするの?」
 坂上「お偉いさんとの面談だから、受けられないだろう。ただ一応、『見学』という形にしておくから、『欠席』にはならないから安心してくれ」
 リサ「タイミングの悪い……」

 リサはそうボヤきながら、生活指導室に入った。
 中は小さな会議室のようになっており、白いテーブルが1つと、椅子が4つ向かい合わせで置かれている。
 そして、そこにいたのは……。

 善場「こんにちは、リサ」
 リサ「善場さん!?」

 善場であった。

 善場「まだ授業中なのに、申し訳ないね。ちょっと緊急案件だから勘弁してね」
 リサ「う、うん」
 善場「御協力感謝します。終わりましたら御連絡致します」
 坂上「では……」

 室内にリサと善場、2人きりになる。

 善場「私がここに来た意味、分かるかしら?」
 リサ「もしかして、イトーエンのこと?」
 善場「分かってるじゃない。それじゃ、あの事件にあなたは何か関わりがあるの?」
 リサ「例のスーパーでトラブってからは、あいつと会ってないよ」
 善場「そう……」
 リサ「死体が見つかったんだって?縁の死体も見つかったの?」
 善場「見つかったのは、彼の両親の遺体だけ」
 リサ「両親の遺体かぁ……」
 善場「それも、かなり惨殺の状態。というか、食い殺されている」
 リサ「は?」
 善場「さっきBSAAに出動依頼を掛けたから。もしかしたら、犯人は栗原蓮華かもしれない」
 リサ「蓮華が都内に戻ってきたの!?」
 善場「そうかもしれないと思って、BSAAに出動依頼したわけ。その間に私達は、警視庁とは別に捜査を行うわけよ。だから、あなたにも協力してもらう」
 リサ「しろと言えばするけど、わたしは何も知らないよ。あいつの家だって、行ったこと無いんだし」
 善場「でも、彼には言い寄られていたようね。何か心当たりは?」
 リサ「無い。全然無い」

 どうや善場は最初、リサがトラブルの腹いせに伊藤家を襲ったものだと思っていたようだ。
 伊藤家に防犯カメラはあるのだが、そのどれにもリサは映っていなかったというのも潔白が証明された理由だ。

 善場「リサが犯人ではないのというなら、もう1人の容疑者は栗原蓮華。しかし、何故彼女が伊藤家を襲ったのかは不明。また、仮に偶然だったとするならば、縁君も襲われているはず。しかし、彼は行方不明……」
 リサ「逃げたんじゃない?あいつ、臆病な性格だからね。例のスーパーの時も、私が鬼の目で睨み付けてやったら、慌てて逃げて行ったからw」
 善場「逃げるにしてもどこへ?それこそ、警察に通報するなり、ときわ台駅前に交番もあるから、そこに駆け込んで助けを求めてもいいはずです」
 リサ「そんなこと言われてもねぇ……」
 善場「とにかく、検査をするから、保健室まで一緒に来てください」
 リサ「ちぇっ」

 本当にリサが人食いをしていないかどうかの検査である。
 そんなわけで、リサは体育の授業は『見学』となってしまったのである。

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