報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「斉藤秀樹の安否」

2022-03-30 15:09:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日11:26.天候:曇 東京都千代田区大手町 呉服橋バス停→都営バス東20系統車内]

 善場主任との話が終わった私達は、その足で最寄りのバス停に向かった。
 東京駅日本橋口の前には永代通りという大通り(国道1号線)が通っており、その向かい側の歩道に都営バスの停留所がある。
 高速バスは『東京駅日本橋口』なのだが、都営バスは『呉服橋』。
 バス会社が違うと、バス停名も変わるという例である(そのような例はさいたま市内にも存在する)。

 絵恋:「あーあ……。お父さんのせいで、とんだ無駄な時間だったわ」
 愛原:「お疲れさま。ちょうどお昼時だ。向こうに着いたら、何かお昼でも御馳走するよ」
 リサ:「ほんと!?」
 愛原:「どっちみち、高橋もパールも夕方までは帰って来ないからな。マックでも買って帰るか?」
 絵恋:「そうですね。早いとこ、リサさんの部屋でゆっくりしたいので……」
 リサ:「いや、リビングでゲームでもしようよ?」
 絵恋:「ええっ!?」
 愛原:「仲いいね~」

 そんな事を話していると、バスがやってきた。
 このバス停からは、錦糸町駅前行きが出ているのだが、系統番号に注意だ。
 東20系統と東22系統。
 後者は菊川駅前を通らないので注意だ。

 愛原:「お願いします」

 前扉からバスに乗り込み、先にICカードで運賃を払う。
 さすがにこれには、リサもすっかり慣れた。
 1番後ろの席は既に先客がいたので、2人席に2人の少女が座り、その前の1人席に私が座った。
 東22系統よりも本数が少ないので、その分空いてはいる。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは永代通りを東へ進んだ。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。この都営バスは、門前仲町、東京都現代美術館前経由、錦糸町駅前行きでございます。次は日本橋、日本橋でございます。地下鉄銀座線、東西線ご利用の方は、お乗り換えです。次は、日本橋でございます〕

 私達が乗ったバスでは、運転席の後ろにモニタが設置されている。
 これは電車の乗降ドアの上に設置されているモニタと似たような用途で、広告や天気予報、ニュースや鉄道の運行情報が流れている。
 やはり速報なのか、ハイジャックされた中華系の旅客機がロシアのウラジオストク郊外に墜落したということを流していた。
 何だか、大変だな。
 私もスマホを開いて、ニュースを見てみることにした。

 リサ:「このバス、Wi-Fi入るよ」
 絵恋:「そうね」

 高校生のスマホプランでギガ数が制限されている場合、Wi-Fiが繋がるのはありがたいことだ。
 私のは仕事用でもあるので、ギガ数が多いプランに入っている。
 一般の路線バスでWi-Fiが入るのは珍しい。
 それでニュースアプリを立ち上げ、ハイジャック機墜落事故について閲覧してみる。
 内容が更新されており、犯人グループはヤング・ホーク団というマイナーなテロ組織らしい。
 過去にはアメリカでも国内線航空機をハイジャックしたことがあり、それもまた墜落事故を起こしているが、同乗していた日本人乗客らの尽力により、墜落時の死亡者はいなかったという。
 犯行に及ぶ際、抵抗の有無を問わず、乗員全員を射殺する残忍な手口が彼らの手法だ。
 また、彼らの警告に従わない乗客も躊躇無く殺すらしい。
 てか、そんなことするから飛行機が墜落するのではないか?
 過去にハイジャック事件で、機長を殺したのは全日空機の1人しか私は知らない。
 もちろんそれは、ハイジャック犯が自分で操縦できるので、パイロットは却って邪魔だから殺したのだろうが。
 それにしても、日本国内の国内線で外国人テロ組織によるハイジャックとは……世も末だ。
 犯行声明によれば、ロシアのウクライナ侵攻はプーチン大統領をも陰から操る黒幕のしわざであり、両国に平和を訪れさせる為、その黒幕を討ちに行くのだということだったが……。
 その行き先がウラジオストク?どういうことだ?
 その黒幕さんとやらは、ウラジオストクにでもいるのだろうか???
 テロ組織の考えることは分からん。
 ……分からん方が良い。

[同日12:15.天候:曇 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 菊川駅前でバスを降り、菊川駅前交差点の角にあるマクドナルドで昼食を買う。
 昼時なのでレジも少し混んでいたが、何とか目当ての物を買うことができた。
 それを手に、マンションへ向かう。

 愛原:「どうぞ」
 リサ:「サイトー、ウェルカム」
 絵恋:「お邪魔しまーす!」

 ダイニングのテーブルに買った物を置いた。

 愛原:「食べる前に着替えて来たら?」
 リサ:「うん、分かった。……体操服とブルマがいい?」
 愛原:「私服でいいから!」
 リサ:「分かった。もしも先生が『体操服とブルマに着替えて』って言うんだったら、サイトーも着替えてもらう」
 絵恋:「ええっ!?」
 愛原:「親友を巻き込むな!」

 リサは自分の部屋に行った。

 絵恋:「……ゴクッ!」
 愛原:「絵恋さん、いくら親友でも、故意の覗きはどうかと思うよ?」
 絵恋:「ちちち、違うますぅ!そんなんじゃないですぅ!!」
 愛原:「でも、アレだな。もしも私が、『体操服とブルマに着替えて』って言ったらリサはそうして、絵恋さんにもそうしてもらうって言ってただろ?」
 絵恋:「そうですね」
 愛原:「もしも私が、『スクール水着に着替えて』って言ったら、そうするのかな?」
 絵恋:「何考えてるんですか!?変態!」
 愛原:「いや、だから、もしもの話だってば!」

 私は慌ててリビングのテレビの電源を入れた。
 それで、情報バラエティ番組のチャンネルに切り替える。
 情報バラエティなので、速報でハイジャック事件のことをやっていた。

 リサ:「先生、着替えて来た」
 愛原:「おー!じゃ、食べようか」

 リサは白いTシャツに黒いプリーツのミニスカートというラフな格好に着替えて来た。

〔「えー、ここで続報が入ってきました。多くの日本人乗客を乗せたハイジャック機墜落事故ですが、乗客の中に、大日本製薬代表取締役社長の斉藤秀樹氏が入っているとの情報が入って来ました」〕

 愛原:「ええっ!?は?!」
 絵恋:「!!!」
 リサ:「サイトーのお父さんが?」

〔「乗客名簿の中に斉藤秀樹社長の名前は無かったのですが、その後のロシア当局の情報によりますと、大日本製薬株式会社の代表取締役社長、斉藤秀樹氏がいるとの情報が入っております。何故、乗客名簿に無かったのか、それは不明であり、また、現在は本人確認の最中であります」〕

 絵恋:「お、お父さんが……」
 愛原:「今の話だと、生きてるんだか死んでるんだか分からんな……。あっ!」

 絵恋さんは呆然としていた。
 当然だろう。
 父親が行方不明になったと思えば、何故か飛行機に乗っていて、しかもその飛行機がハイジャック後にロシアで墜落していたというのだから。

 リサ:「サイトー、どうした?」

 リサがポンと肩を叩くと、絵恋さんはそのまま体を震わせて、バタッと床に倒れた。

 愛原:「わあっ!?大丈夫か!?」
 リサ:「サイトー、お腹空き過ぎて倒れた?」
 愛原:「そうじゃない!ショックで失神したんだ!取りあえず、部屋で休ませろ!リサの部屋でいいな?!」
 リサ:「いいけど……。サイトーの分のハンバーガーは?」
 愛原:「取りあえず置いとけ!早く絵恋さんをベッドに運ぶんだ!俺は善場主任に連絡する!」

 私は自分のスマホを取り出すと、それで善場主任に電話を掛けた。

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