報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「さいたま戦、終結」

2015-08-03 16:11:24 | アンドロイドマスターシリーズ
[7月22日19:00.天候:雷雨 埼玉県さいたま市西区・公道 鷲田警視&村中課長]

 さいたま市郊外の公道を走る1台のセダン。
 見た目はタクシーからその装備を外したような感じだ。
「警視、やっぱり道が封鎖されてますよ」
 ハンドルを握る村中がさも想定内といった感じで言った。
 何か喋る時は、いつもニヤけた顔をする。
「……だろうな」
 規制線手前まで行くと、白いレインコートを羽織った若い警察官がやってきた。
「すいません、この先は事件発生の為に立ち入り禁止で……」
 と、お決まりのセリフを言ってくる。
 すぐさま村中は手持ちの警察手帳を取り出した。
「警視庁【部署名省略】の村中です」
「同じく鷲田警視だ」
「け、警視庁の警視殿ですか!?」
 狼狽する若い警察官に、助手席に座っている鷲田は運転席側に身を傾けて口を開いた。
「この先で何があったかは、おおよそ分かっている。警視庁の……私らの捜査している内容と関係が濃厚なので、これから向かうところだ。お前さんの上司には言っておくから、通してくれないか?」
「りょ、了解しました!」
 若い警察官はビシッと敬礼すると、封鎖しているゲートを避けた。
 早速、村中はゲートの中へハンドルを切った。
「埼玉県警本部も、手をこまねているみたいですね」
「相手はヤクザ者でも、不良外国人でもない。いずれにしても、そいつらはまだ人間だからな。中身は化け物かもしれないが、一応は人の皮を被っている。だが、私らが相手にしているのは……機械だ!銃を向けても怯まず突き進んで、私らの装備よりも強い銃火器で反撃してくる、テロ組織だ!」
「どこから仕入れて来るんですかねぇ……。あんなに大量に」
 道路脇や中央部分には、バージョン・シリーズの残骸が散乱していた。
 少なくともこれを除去しないことには、この道路の通行再開は難しいだろう。
「少なくとも、海外マフィアなどが関わっているのは確かだな。銃火器はともかく、燃料のLPガスなど、おおよその部品も国内で調達できるレベルだ。問題は、その工場がどこにあるかだ」
「そうですねぇ……」
 あまりにも残骸の数が多い為、まだ全ての箇所で警察の調査は進んでいないようだった。
「! 車止めろ」
「は、はい!」
 鷲田が何かに気づいて、車を止めさせた。
「どうかしましたか?」
「あれを見ろ」
 道路脇に不自然に置かれた大岩。
 ここが山道なら、落石でもあったのかと思うだろう。
 しかし、ここは違う。
 両脇は荒れ地が広がっており、とても大岩が転がって来るような場所は無い。
「何でこんな所に大岩が?これも、奴らが?」
「……まずいな」
「えっ?」
「あの大岩の下、見てみな」
「ええっ?」
 村中は車の外に出た。
 進行方向左側に謎の大岩があるので、運転席からは見えにくい。
 鷲田の視線の先にあったものは……。
「だ、誰かが下敷きになってる!?」
 岩の下から、人間の手が覗いていた。
「確かさっき、県警のRVがいたな?そいつ呼んでこよう。ウィンチが付いているはずだ」
「はい!」

[同日同時刻19:25.同区内 デイライト・コーポレーション埼玉研究所 敷島孝夫]

 上空に雷鳴が轟く。
 どうやらまたゲリラ豪雨が降ってくるようだ。
 本当にここ連日、天候が不安定である。
 それはともかく、壊れかけたレイチェルが敷島に放った最後の銃弾、これが敷島に当たることは無かった。
 何故なら……。
「レイチェル!?」
 レイチェルの頭部が首から千切れ、ガランガランと転がり、残った胴体もドンと倒れたからだ。
「レイチェル、何が……?」
「社長!」
「!?」
 研究所のエントランスから、結月ゆかりの声がした。
 その方を向くと、
「ゆかり!アルエット!」
 レイチェルと同じく満身創痍のアルエットが、ゆかりに肩を貸してもらい、こちら側に右手を変形させたレーザー光線銃を向けていた。
 もちろん敷島に対してではなく、レイチェルに対してだ。
「アルエット!大丈夫なのか!?」
 もちろん、レイチェルの頭を撃ち抜いて吹き飛ばしたのがアルエットだとすぐに分かった。
 大雨が降り出す中、敷島はエントランスに向かって走り出した。
「カタ……キ……。達……夫はか……せの……かた……キ………」
 シューと傷ついた所から煙と焦げた臭いを出して、アルエットも倒れた。
「社長……」
 傷の無いゆかりが不安な顔で聞く。
「アルエットを中に入れよう。傷ついた部分が雨に当たるとまずい」
「は、はい」
 実際、レイチェルは大雨に当たった所がショートして、ここからでも分かるくらい激しく火花を散らしていた。
 アルエットはどうだか分からないが、レイチェルはもう完全に壊れただろう。
(シンディはどこ行ったんだ?)
 薄暗い所内にアルエットを運び込むと、壁掛けの内線電話で敷島は地下避難所に掛けた。
「……ああ、もしもし。私、敷島エージェンシーの敷島と申します。そちらに避難しておられる皆さんの中に、アリスという主任研究員がいると思いますが、その身内の者です。外はもう稼働しているテロ・ロボットはいなくなりましたので、もう避難所から出て頂いても大丈夫かと。……はい。警察も駆け付けておりますし、もし具合の悪くなった方がいらっしゃいましたら……あ、大丈夫ですか。……ええ、そういうことですので。あと、大至急修理して頂きたいロイドが1機……できれば、後でもう1機になるかと思いますが……。ああ、すいません。よろしくお願いします。失礼します」
 敷島が電話を切ると、今度は自分のスマホが鳴った。
「鷲田警視か?……もしもし?」
{「ああ、私だ。状況報告を……」}
「KR団のマルチタイプ7号機、レイチェルは完全に壊れました。研究所内においても、稼働しているバージョン・シリーズはありません。所内の避難所に避難している関係者も、全員無事です」
{「KR団が狙っていたという十条達夫博士の遺品は?」}
「どうも、車両火災に巻き込まれたみたいです。研究所正門前で、何台か車が燃えましたが、その中にあったようです」
 その車両火災を起こした原因を作ったのが敷島本人なのだが、そこは黙っている。
{「そうか……。人的被害が殆ど無かったのが幸いだ。こちらも、まもなくそちらに到着する。……手土産付きだ」}
「手土産?」
{「キミの秘書兼護衛ロボットが何故か大岩の下敷きになっていたので、取りあえず回収だけしてそちらに持って行く。重要な捜査資料だ。くれぐれも、修理は最低限にしてこちらの捜査に協力してくれ」}
「随分、上から目線ですなぁ?私は捜査協力中の一般市民ですよ?」
{「ほう……。立ち往生していた路線バスを無断拝借してテロ・ロボットに立ち向かい、大事な証拠資料を焼失させた者が一般人とは思えぬがね?」}
 バレていた!
「……!!」
{「違法性阻却事由に当てはまらない行為だ。意味が分かるか、敷島君?……分かったなら、こちらの知りたいことに協力するように。以上」}
「く、くそ……。で、でも、シンディは無事だったのか???」
 外で大きな爆発音がした。
 レイチェルが爆発したのである。
「わたしも……」
「ん?」
 ゆかりが口を開いた。
「わたしも壊れたら、ああやって爆発するんですか?」
「い、いや。ボーカロイドはマルチタイプとは内部構造が違うから、爆発はしないと思うけど……」

 相変わらず外は雷鳴が轟き、バケツをひっくり返したようなゲリラ豪雨に見舞われていた。

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つぶやき (作者)
2015-08-03 17:58:52
 “フェイク”の記事によると、法論にやってきた学会員に対し、そこの末寺の御住職も信徒も対応できなかったらしい。
 恐らく乗り込んで来た学会員は、“フェイク”の回し者だと思う。
 これで“フェイク”が学会系であることが確証されたわけだ。
 コテンパンにされた末寺の皆様にはお気の毒だが、今度は顕正会員をコテンパンにして憂さを晴らして頂きたい。

 ……愛唱歌のレベルがそもそも劣るからなぁ……。
 “東方Project”の楽曲に歌詞付ければ、学会歌超えができるのになぁ……。
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