報恩坊の怪しい偽作家!

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“新アンドロイドマスター” 「プロジェクト始動!」

2015-03-26 15:11:28 | アンドロイドマスターシリーズ
[3月24日10:00.東京都都区内・某写真スタジオ 井辺翔太、Lily、未夢、結月ゆかり、初音ミク]

「まず最初にして頂く仕事は、宣材写真を撮ることです。そうでないと始まりません」
 井辺は新人ボーカロイド3人に言った。
「はい!」
「宣材写真なら、劇場時代に撮っていたからね」
「私は初めてです……」
 スタジオに入ると、既に撮影を始めている者がいた。
「あっ、初音先輩!」
 ゆかりが反応すると、ミクはパタパタとやってきて、
「おはようございます、プロデューサーさん」
「おはようございます。えーと……今日、初音さんは……」
「今度の定期ライブで着る衣装ができたので、それを着て撮影しています」
桜ミクですね。さすがです」
 Lilyはピンクと白を基調とした、しかしオリジナルのデザインの衣装のコンセプトは残したままのミクの衣装を見て感心した。
「初音さんはこれからですよね?」
 と、井辺が聞く。
「はい」
「それならこのコ達に、どのような感じにして撮るか、お手本を見せて頂けますか?」
「いいですよ」

「じゃ、撮りまーす!」
 ミクは新しい衣装を着て、次々とポーズを決めていった。
 その度にカメラマンが、
「いいね!」
 とか、
「目線こっちに!」
 とか言っている。
「さすが初音先輩ですね」
 ゆかりは感嘆の声を上げた。それを受け、
「ボーカロイドを詳しく知らない人であっても、まず真っ先にそれを聞いて初音さんを思い浮かべるほどです。社長の腕には感服します」
 と、井辺はここにはいない敷島の敏腕ぶりを称えた。
「うーん……。何か、劇場時代に撮ったのと違う感じね」
 Lilyは難しい顔をした。
「劇場は人間側から見れば、試作のボーカロイドをお披露目するという目的があったそうです。なので、写真もアイドルのような写り方ではなく、どちらかというと、カタログの写真のような感じになっているのでしょう」
「ああやって、ミクさんみたいに笑わないとダメ?」
「お願いします。これからあなた達は外に向けて、色々な仕事をして頂くことになります。初音さんのように、笑顔は基本中の基本です」
「分かったわ。だから、プロデューサーも調整お願いね」
「分かりました」

 だが、敷島が最早持ち前の感覚で調整しているのに対し、新人の井辺はマニュアル片手にぎこちない様子で、ノートPCのキーボードを叩いていた。
「固いよ!もっと自然な感じで!」
「は、はい!」
 その為か、敷島の時のように、なかなか上手くいかない。
「プロデューサーさん、もう少しここをこのようにするといいですよ」
 と、撮影を終えて、いつもの衣装に着替えたミクがやってきて、ヒョイと顔を覗かせた。
「ええっ?しかしマニュアルには……」
「たかおさん……社長は、そんな感じにしてますよ」
「はあ……」
 井辺は首を傾げながらミクのアドバイスを聞いてみることにした。すると、
「おお、いいねぇ!その笑顔だよ!」
 カタい顔をしていたLilyが自然な笑いを浮かべた。
「さすが初音さんですね」
「Lilyはメーカーは違いますが、ソフトウェアはわたしに似たタイプを使用しているそうです。だから、わたしの時のような感じにすれば大丈夫かなと思いました」
「そうだったんですか。では、結月さんは……」
「ゆかりはどちらかというと、MEIKOさんの方に近いので、この数値をもっとこう……」
「おっ、そのポーズいいね!目線もこっちに向けて!」
「さすが初音さんですね」
「えへへ……。お役に立てて何よりです」
「おっ、出たね」
 外で警備をしているシンディがやってきた。
「何が出たんですか?」
 井辺は疑問を投げた。
「どのタイプでも、やっぱり私達は人間の役に……。ん!?ちょっと待って……」
「?」
 シンディは言葉を切って、再びスタジオの外に出て行った。
「……何か、緊急信号を受信したみたいです」
 と、未夢。
 元はマルチタイプの後継機として設計された名残で、そういったことが分かるようだ。
「何かあったのかな?」
「じゃ、最後は未夢さん、お願いします!」
「はーい!じゃ、行ってきます」
「お願いします」
「プロデューサーさん、未夢さんに関してはマニュアル通りでいいと思います」
「そうですか」
「マルチタイプのソフトウェアを使用しているので、微調整とかも必要無さそうです」
「なるほど。……初音さんの方が私より詳しいですね」
「ご、ごめんなさい!そういうわけじゃ……」
「いえ、いいんです。こちらこそ、助かりました」

 というわけで、ゆかり達個別の撮影は終わる。
「今度は3人一緒に撮りまーす!」
 ユニットとして活動する以上、当然メンバー全員の写真も撮るわけだ。
「まずはいつもの通り、ワイワイやってる感じの所を撮りますので、よろしくお願いしまーす!」
「えっ!?」
 驚いたのは井辺。
 いつも通りも何も、昨日顔合わせしたばかりで、とてもワイワイやれるほど仲良くなったわけでは……。
 しかし、それはあくまで人間の感覚。
 ミクが、
「Lilyさん、劇場時代の面白いエピソードをお願いします!」
 と、促した。
「劇場時代の!?えーっと……それじゃ、敷島社長が財団参事だった頃の面白ネタを……」
「そんなのがあるんですか」
 要はボーロカイドのガールズトークをやっている所を撮るというわけだ。
 ミクは先輩ボーカロイドとして、上手く後輩達を促していた。
 ホッとする井辺。
「もっとアクティブに動いているところも撮りたいのですが……」
 そこへカメラマンが井辺に注文をつけてきた。
「アクティブに……ですか?」
「ええ」
「うーん……」
 井辺が首を傾げ、困った顔をしていると、ミクが、
「すいません。このボール、お借りしてもよろしいですか?」
 小道具セットの中にあったバレーボールを持ってきた。
「どうぞ」
 ミクがポーンとボールを未夢に投げ渡す。
「これで、適当にボール遊びしてみてください」
「は、はい。えーと……じゃ、ゆかり。取りあえず、パス」
 未夢がボールをゆかりに投げる。
「うわ!」
 ゆかりは受け損ねて、おでこにボールが当たる。
 そのボールは跳ねて天井付近に高く舞い上がるが、Lilyがフワリと高くジャンプした。
「おおっ!?」
「前にリンとレンがここでボール遊びしていて、いい写真を撮れたという話を聞きましたので」
 と、ミク。
「そうでしたか」
「でも、それにしても……」
 ミクは楽しそうにボール遊びをしている3人の様子を見て、何か分析している様子だった。
「何か?」
 そこへシンディが戻ってきた。
「何かありましたか?」
「仙台で未確認のテロ・ロボット発見で、エミリーが破壊したって」
「破壊、ですか?」
「別に余裕があるんだったら、破壊じゃなくて捕獲にしておけば分析もしやすいだろうに、相変わらず姉さんはやること成すこと豪快だからねぇ……」
「…………」
「…………」
 井辺とミクは同時に、『アンタが言うな』という言葉を思い浮かべ、そして飲み込んだ。

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2 コメント

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ANPさんへ (作者)
2015-03-27 07:43:58
ANPさんからの法論は、私の回答不能により、ANPさんの大勝利となりました。
おめでとうございます。
返信する
Unknown (ANP)
2015-03-26 23:51:01
海の戦場を題材にした糞アニメが終わったらしい。私は見てなかったがMADを視聴した時このアニメはひどいと思った(ユタさん風)
返信する

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