報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「鷲田警視の事件簿」

2018-07-01 20:13:57 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月23日15:05.天候:晴 東京都豊島区内某所 とある賃貸マンション]

 敷島からデイジーの所有者の居住地を聞いた鷲田は、部下の村中を連れて現地へと赴いた。
 村中が運転する覆面パトカーで現地に向かう。

 村中:「部長、ここがそのマンションですね」

 村中は車をマンションの前に止めた。

 鷲田:「ごく普通のマンションだな。賃貸か?」
 村中:「賃貸ですね」

 マンションは新しくなく、かといって古いわけでもない。
 きれいというわけでもないが汚いというわけでもない。
 本当に、日本全国どこにでもあるような佇まいのマンションだった。

 鷲田:「とても、デイジーを10億円で買い取るような富豪の住んでいるマンションには見えんな」
 村中:「別宅とか、個人事務所としての用途ですかね」
 鷲田:「分からん。とにかく、入ってみるぞ」
 村中:「はい」

 といっても令状は無いので、任意での捜査になる。
 管理人室はあるのだが、無人であった。
 最近のマンションでは、管理人不足が問題化しているらしい。
 しかしエントランスには、管理会社らしき男がいた。

 男:「……そうなんですよ。これはもしかしたら、警察に来てもらうことになるかもしれませんね。……ええ」

 手持ちの携帯電話で誰かと話している。
 恐らく、会社の人間なのだろうが。
 警察という言葉が出て来たので、鷲田はエレベーターの呼び出しボタンを押す手を引っ込めた。

 男:「……分かりました。じゃあ私はちょっと警察まで行ってきます。……はい、失礼します」

 男が携帯電話を切り、マンションを出て行こうとしたので、鷲田が呼び止めた。

 鷲田:「ちょっと失礼。もしかして、警察に何か御用ですかな?」
 男:「は?そうですが、それが何か?」
 村中:「いや、警察ならここにいるものでね」

 鷲田と村中は一緒に警察手帳を男に見せた。

 男:「やっぱり事件性があるんですね!?」
 鷲田:「確かに私達は、とある事件の捜査でこのマンションに来たのですが、しかしまだこのマンションで起きていることについては知らないのです。あなたはどなたで、何をもって事件性ありとお思いですかな?」
 男:「あ、はい。私は、こういう者です」

 男はスーツのポケットから名刺入れを取り出し、鷲田に渡した。

 鷲田:「おお、不動産屋さんでしたか。ここの住人さんに、何かあったということですかな?」
 不動産屋:「そうなんです。実は家賃を3ヶ月ほど滞納してらっしゃる方がいて、様子を見に来たんですけど、全く何の返事も無いんです」
 村中:「携帯電話とか勤め先とかには?」
 不動産屋:「それが契約書の連絡先に掛けても繋がりませんし、お勤め先もとっくに退職されていると……」
 村中:「何と……」
 鷲田:「失業でもして収入が無くなり、夜逃げでもしたのかな?」
 不動産屋:「そう思いまして、ここの防犯カメラを調べてみたのですが、出て行かれた様子が無いんです」
 村中:「その住人さんの名前は?」
 不動産屋:「布袋仁様と申します」
 鷲田:「布袋さん。偶然では無いようだな」
 村中:「ええ」
 不動産屋:「もしかして、刑事さん達が捜査中というのは……」
 鷲田:「私達はその布袋さんに話を聞きに伺ったのです。よろしければ、一緒に部屋まで案内してもらえますかな?」
 不動産屋:「はい!是非、お願いします!」

 不動産屋は率先して、エレベーターのボタンを押した。
 このマンションは7階建てである。
 その最上階に布袋という男の部屋はあった。

 村中:「7階じゃ、飛び降りて夜逃げなんてできませんね」
 鷲田:「しかし、非常階段があるだろう?」
 不動産屋:「それも調べましたが、やはり映っていませんでした」

 エレベーターが7階に到着する。

 不動産屋:「こちらです。この部屋です」
 鷲田:「この部屋の間取りは?」
 不動産屋:「2LDKです」
 鷲田:「1人で暮らすには十分な広さだな。……1人暮らしですかな?」
 不動産屋:「契約書ではそうなってますね」
 村中:「部長、どういうことでしょうね?」
 鷲田:「おおかた、デイジーに悪さをさせているので、やっぱり夜逃げでもしたんだろう」

 部屋の前に着いて、不動産屋がインターホンを鳴らした。

 不動産屋:「こんにちはー!大沢ハウジングの橋本ですー!布袋様ー!?」

 しかし、中からは返事が無い。
 何度もインターホンを押したが、やっぱり反応は無かった。

 村中:「留守のようですね?」
 鷲田:「鍵は掛かっているかね?」

 村中はドアノブを回してみたが、鍵が掛かっていた。

 村中:「掛かっています」
 鷲田:「そうか。不動産屋さん、合鍵は持っているでしょう?開けてみてもらえますかな?」
 橋本:「は、はい」

 橋本はポケットから鍵を取り出した。

 鷲田:「あー、コホン。その前に、こう言ってはなんですが、私達はまだ令状を持っておりません。任意で話を聞く為にここに参ったのです。そしたら偶然にも、ここにあなたがいた。あくまでも、あなたは家賃滞納者の様子を不動産屋として見に来た。そして私達がたまたまそこに居合わせた、ということにして頂きたいのです」
 橋本:「分かりました」

 橋本は部屋の鍵を開けた。
 そして、ドアを開ける。

 橋本:「あれ!?」

 だが、ドアは半開きでしか開けられなかった。
 何故なら、内側からドアチェーンが掛けられていたからである。

 村中:「部長、これ!?」

 普通、外出する時に鍵は掛けても、チェーンまでは構造上、外から掛けることはできない。
 それが掛かっているということは……。

 鷲田:「布袋さん!いるんでしょ!?ちょっとここを開けてください!」

 鷲田は部屋の中に向かって叫んだが、それでも返事は無かった。

 村中:「部長、車からチェーンカッターを持ってきます!」
 鷲田:「頼む!」

 村中は再びエレベーターに飛び乗った。

 鷲田:「腐臭などは漂ってこない」
 橋本:「腐臭ですか?」
 鷲田:「もし布袋さんが3ヶ月も死体となって転がっていたのなら、とっくに腐乱死体……いや、白骨化していてもおかしくないでしょうな。しかしその代わりに独特の臭いや、ハエの大群などが我々に襲い掛かっても良いのです。しかし、それが無かった」
 橋本:「どういうことなのでしょうか?」
 鷲田:「恐らく、布袋さんは何らかの方法で内側にドアチェーンを掛け、そこから夜逃げしたのかもしれませんな」
 橋本:「で、でも……」

 しばくして村中がチェーンカッターを持って来た。

 鷲田:「これはあなたが使ってください。警察の我々が令状も無いのに、勝手にチェーンを切ったというのは問題ですからな。あくまで、あなたが我々から借りたということにして頂きたいのです」
 橋本:「分かりました」

 橋本は村中からチェーンカッターを借りると、それでドアチェーンを切った。
 そして、恐る恐るドアを開けた。
 果たして、鷲田達は何を見たと思う?

 1:布袋の死体が転がっていた。
 2:全く別の人間の死体が転がっていた。
 3:デイジーが襲い掛かって来た。
 4:特段何も無かった。

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