報恩坊の怪しい偽作家!

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“愛原リサの日常” 「沖縄では……」

2024-06-09 21:01:03 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月10日15時00分 天候:晴 沖縄県那覇市某所 沖縄中央学園那覇高校]

 東京ではリサが進路相談をしている中、沖縄では我那覇絵恋も進路相談を受けていた。

 進路指導教師「ん?何だ?我那覇さん、希望進路が白紙じゃないか。東京中央学園大に行きたいとか言ってなかった?」
 我那覇絵恋「はあ……。親が許してくれなくて……」
 教師「それじゃ、大学進学は諦める?」
 絵恋「いえ……県内の大学……家から通える大学にしなさいって……」
 教師「家から通える大学か。確か我那覇さん、真嘉比から自転車通学だったね?」
 絵恋「はい……」
 教師「市内でという意味なら、まずは沖縄大学だな。真嘉比なら、おもろまち駅が近いだろ?そこからバスも出てるぞ。家から通えると思う。他には県立芸大だな。ただ、あそこは芸大だから……」

[同日15時30分 天候:晴 同高校]

 絵恋「はー……」

 進路指導室を出た絵恋は、溜め息をついて廊下をとぼとぼと歩いていた。

 ???「どうしたの、『支部長』さん?」

 背後から声を掛けて来る者がいた。

 

 絵恋「ああ、早苗さんかぁ……」

 後ろにいたのは、絵恋と同級生の早苗と名乗る少女だった。
 2年生の時に転校してきたのだ。
 それも、東京中央学園から。
 彼女は『魔王軍』のメンバーではなかったが、彼女らの活動に興味があるという。
 そして、絵恋が『魔王軍沖縄支部』の『支部長』を務めているということで、近づいて来たのだ。

 早苗「なに?『魔王様』から課されたノルマを達成できなくて悩んでるの?」
 絵恋「そんなんじゃない!……そりゃあ、早苗さんのおかげで、リサさんの『ブルマ復活計画』を達成できたのは助かったけどさ……」
 早苗「それでそれで?」
 絵恋「リサさんとの約束、果たせそうにない……」
 早苗「何なの?教えてよー」
 絵恋「実は……私、東京中央学園大に行きたいの」
 早苗「また、東京に戻りたいの?」
 絵恋「うん。高校では離れ離れになっちゃったけど、大学で再会したいの」
 早苗「なーるほどねぇ……。で、親が許してくれないと?」
 絵恋「そうなのよ……」
 早苗「私から頼んでみてあげようか?」
 絵恋「早苗さんが!?で、でも……赤の他人の早苗さんが言ったところで、お母さんがOKするとは思えないけど……」
 早苗「すぐにはね。でも、必ずOKするようになるよ。私が説得すればね……」
 絵恋「ど、どういうこと?」
 早苗「とにかく、今日これから遊びに行っていい?」
 絵恋「いいけど……」
 早苗「ありがとう」
 絵恋「お父さんが離婚しちゃったから、うち、何にも無くて……」
 早苗「別にいいよ。手土産くらい、私が持って行くから」
 絵恋「ええっ!?」
 早苗「そーと決まったら行こ!」
 絵恋「ちょ、ちょっと……」

 早苗は絵恋の手を引いた。

 絵恋(何かこのコ、リサさんに似てるわぁ……)

 顔はそんなに似てるわけではないのだが、雰囲気が似ているのだ。
 何というか……『女ぬらりひょん』とでもいうのか。
 いつの間にかそこにいて、いつの間にかリーダーシップを取っている。
 そんな感じ。

[同日16時00分 天候:晴 同県那覇市真嘉比 我那覇家]

 絵恋の家は、母方の親族のツテでマンションになっている。
 ただ、あんまり新しい建物ではない。
 一瞬、古い公営住宅かと思うほど。

 絵恋の母親「いけません!東京の大学なんて!学費やアパート代だけで、いくら掛かると思ってるの!!」
 絵恋「……前は、リサさんと一緒の大学に行っていいって言ってたくせに……」
 母親「お父さんのせいで、こんなことになったんじゃない!……って、何度も言ってるでしょ!お父さんが悪い事さえしなかったら、引っ越しとかもせずに済んだのに!」
 絵恋「お父さんはお父さんでしょ?」
 母親「大企業の社長だったお父さんと離婚したせいで、今は生活が苦しいの!どうして分かってくれないの!大学には行っていいのよ!ただ、家から通える所にしなさい!あとは奨学金とかで何とかするから!」
 早苗「まあまあ、そんなに熱くならないでください」
 母親「これは私達、親子の問題ですから、あなたはどうぞお帰りになって……」
 早苗「そうですね。これ以上はお邪魔みたいです。……あ、どうぞこのお茶とお菓子、食べてください。特にお茶は、気持ちを落ち着かせてくれますよ」
 母親「それは、お気遣いどうも」
 早苗「それじゃ、絵恋さん、私は帰るね。このお茶、必ず飲んでね」
 絵恋「う、うん。何か、何もお出しできない上に、却って色々貰っちゃってゴメンね」
 早苗「いいのいいの。それじゃ、また明日学校でね」

 早苗はそう言うと、玄関の鉄扉を開けて出て行った。

 母親「何だか不思議なコねぇ……。まるで、愛原リサさんみたい」
 絵恋「ねー?そう思うでしょ?顔とかはあんまり似てないんだけど、雰囲気が似てるよね」
 母親「転校生なんでしょ?」
 絵恋「うん、だけど違うクラスだよ」
 母親「そうなの?」
 絵恋「私が3年3組……ふひっ、リサさんと一緒……で、早苗さんが7組だったか8組だったかって感じ」
 母親「違うクラスなのに仲がいいの」
 絵恋「ねー?何かいつの間に友達になってたって感じで。……あっ、それより、早速もらったお茶とお菓子食べようよ!」
 母親「もうすぐ夕食なんだから、その後にしなさい」
 絵恋「えー……」

[同日20時00分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家4階・リサの部屋]

 リサ「そうかぁ……。エレンも、進路を選べなかったか……」
 絵恋「今日もお母さんに頼んでみたんだけど、どうしてもダメだって」
 リサ「それは、本格的にわたしが頼みに行かないとダメかな」
 絵恋「リサさんが頼めば、聞いてくれるかな?」
 リサ「寄生虫があればね。でも、藤野に行ってから使えなくなっちゃったなぁ……」
 絵恋「ダメか……」
 リサ「実はデイライトにすごーく頼んでみようと思ってる」
 絵恋「えっ?」
 リサ「何だかんだ言って、学校でも私には監視者が必要。今はBSAAからの留学生がわたしを監視しているテイになってて、基本大学からは要らないだろうと見ているんだけど、もしどうしても必要だとなったら、候補者がいないんだ。そんな時、エレンが打ってつけだって、わたしから言おうと思ってる」
 絵恋「なるほど!その手があったのね!」
 リサ「自分で言っといて何だけど、そう上手く行くかどうか分かんない。まずは愛原先生に相談してみるよ」
 絵恋「宜しくお願いね!」

 リサは電話を切った。

 リサ「エレンと一緒に通えるのなら、東京中央学園大……でなくてもいいのか???まあ、いいや」

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