報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「大金ゲット!」

2024-02-15 20:44:25 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月27日10時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所]

 善場「帰省旅行より無事に帰京されたようで、まずは何よりです」
 愛原「おかげさまで。本当は、お土産をお渡ししたいところなのですが……」
 善場「お構いなく。利益供与の疑いを掛けられては、元も子もありませんので」

 帰省から帰京して翌日、予定通りに善場主任達は事務所にやってきた。
 月曜日である為、リサは学校に行っている。

 善場「まずは大事な物をお渡ししましょう」

 主任が目配せすると、隣にいる黒スーツの部下が頷いて、小さなジュラルミンケースを応接コーナーのテーブルの上に置いた。
 そして、私達の方に向けてケースを開ける。
 その中には、確かに奥日光の保養施設内のカジノからガメて……もとい、景品保管庫のような所からゲットした諭吉先生が何百人もそこにいた。

 善場「所有者と思しき栗原家は、所有権を主張しませんでした。また、警察や私共の方で捜査しましたが、特にバイオテロや脱税などの証拠にもなりませんでした」

 恐らくお札に書かれている番号を全て照会したのだろう。
 しかしながら、全てのお札が何がしかの事件に関わっているという証拠が出てこなかった為、普通の遺失物という扱いになったようである。
 そして、建物の所有者である栗原家に確認したものの、どうやら的を得なかったようだ。
 今、栗原家は大変混乱しており、現金の管理すらままならない状態なのだろう。
 だから警察やデイライトの確認にも、まともに答えられなかったようだ。
 とにかく事件性が無いと判断した警察は、デイライトに全てを押し付け……もとい、委任し、デイライトとしても、特に権利があるわけでもないのに、こんな大金を押し付けられても困るので、拾得者の権利を主張している私達に引き渡したいというのが本音なのだろう。

 愛原「そうでしたか」

 本来は公示から3ヶ月以内に遺失者が現れない場合に限り、拾得者である私達に権利が委譲するというのが正式である。
 私達がカジノからこの大金をゲットしたのは、今月上旬のことなので、実はまだ1ヶ月も経っていない。
 ただ、拾得した場所や状況からして、元々の所有者が栗原家であることに間違いは無く、その本人達にはバイオテロ捜査中などで確認が取れず、かといって権利を主張しているわけでもない。
 しかも、拾得者である私達が権利を主張しているということもあり、今回は早めの措置が取られたと思われる。

 善場「因みに所長、これは私の独り言なのですが……」
 愛原「な、何でしょう?」
 善場「このお金が『カジノの景品』であることは、大きな声で言わない方がいいです。日本では賭博罪に問われる恐れがあります」
 愛原「そ、それもそうですね」

 カジノの景品が、直接この現金だったわけではない。
 あくまで、メダルが景品だ。
 しかしそのメダルを投入することにより、貴重品ボックスの扉が開き、その中にこの札束が入っていただけのことだ。
 ……まるで、パチンコの三店方式だな。
 もしかしたら、金のメダルや銀のメダルって、実はメッキではなく、本物だったりして?
 今から思えばね。
 ……もしかして栗原家、パチンコ店の経営とかやってたりして?
 ……まさかな。
 とにかく、現金は全て私達の手に渡った。

 高橋「す、凄いっスね」
 愛原「全部で300万円近くある。すぐに金庫にしまうぞ」
 高橋「は、はい。……んでねーちゃん、インゴットの方は……?」
 善場「出所が、かつてバイオハザードの発生したスペイン製であったことから、バイオテロに何かしらの関係があるのではないかと見られ、しばらくは証拠品として預からせて頂きます」
 高橋「うへー……」
 愛原「スペインというと……プラーガとか、ガナードの発生した場所ですか」
 善場「そうです」

 2004年くらいに発生したバイオハザード事件だ。
 地中海では宗教テロ組織ヴェルトロがバイオテロ事件を起こしていたが、その頃、スペインの片田舎では、別の宗教団体がバイオテロを起こしていた。
 前者がウィルスであったのに対し、後者は寄生虫。
 当時のアメリカ大統領の娘、アシュリー・グラハム氏が誘拐され、大統領のシークレットサービスの一員であったレオン・S・ケネディ氏が救助に向かった事件だ。
 プラーガとは寄生虫の名前で、それに寄生されて化け物となったのがガナードという。
 化け物と言っても、普段は人間の姿のままである。
 今リサが使役している寄生虫とは全くタイプの違う物だが、システム上はとても似通っている為、リサが使役する寄生虫のことを便宜上、『日本式プラーガ』と呼んでいる。

 善場「その村は宝石や金などが産出される村だったのですが、そこで採掘された金を使って精製されたインゴットであったようです。その為、しばらくお預かりさせて頂くことになります」
 高橋「マジか……」

 高橋は心底ガッカリした。
 どうやら高橋、インゴットの売却経路を知っているようで、そこで売り払って大金に換え、それを結婚資金にしたいらしい。

 愛原「あっ、高橋!」
 高橋「はい?」
 愛原「お前、婚姻届、うちの親父に送ったか!?」
 高橋「あっ、しまった!まだでした!」
 愛原「全く。ここは俺に任せて、お前はそれをやってろ!」
 高橋「は、はい!失礼します!」

 高橋は慌てて応接コーナーから出て行った。

 善場「何かあったのですか?」
 愛原「あ、いえ、これはとんだ失礼を……」

 私は事情を説明した。

 善場「ああ、そうだったのですか。それなら、郵便局が開いているうちに行った方が良いですね。午前中に出せば、仙台なら、翌日には届くでしょう」
 愛原「そうですね。普通郵便なら、今は2~3日掛かるようですが、書留でしたら、1日か2日で届くようで……」
 善場「そんなことろでしょうね。それでは、話の続きですが……」
 愛原「あ、はい。すいません」

 レオン氏が駆けずり回った村やその地域には、ガナードでありながら、レオン氏に味方した集団がいたらしい。
 それは通称“武器商人”。
 当初はレオン氏やエイダ・ウォン相手に商売すれば儲かると踏んで近づいたらしいが、元々ガナードの支配種達に対して反感を持っていた武器商人達は、そんな彼らの活躍ぶりに、後半では明らかにサービス精神旺盛で、武器の強化改造などを喜んで引き受けたという。
 そんな彼らは何もレオン氏達に武器や弾薬を売っただけではなく、逆にレオン氏達が探索途中で手に入れた貴重品や貴金属などの買い取りも行っていた。
 その中に、大小様々にサイズの金塊もあったという。

 善場「……栗原家がその武器商人達から、インゴットを買い取ったという証拠はありません。ですが、何らかの繫がりがあったと見て、BSAAでは捜査の最中にあります。最低でもその捜査が終わるまでは、お預かりさせて頂く形になると思いますね。せっかく拾得されたところ、まるで私共が没収したみたいで、心苦しいところではありますが……」
 愛原「いえいえ。仕方ありませんよ」

 元々この現金同様、証拠品の提出のつもりであったのだから。
 あわよくば、現金だけでも戻って来ないかなと思っていたので、私にとっては計画通りなのである。
 それにしてもあのインゴット、スペインのバイオハザードに繋がっていたとは……。

 善場「それでは次に、昨夜、仙台市内で起きた事件についてのお話です」
 愛原「はい」

 善場主任の話は、まだまだ続きそうだった。
コメント (2)
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“私立探偵 愛原学” 「夜の帰京」

2024-02-15 15:07:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月26日22時24分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東北新幹線6158B列車1号車内→JR(東日本)東京駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。東海道新幹線、東海道本線、中央快速線、山手線、京浜東北線、横須賀線、総武快速線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本もご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 列車は何事もなく、順調に走行を続けていた。
 さすがに今、栗原蓮華は襲ってこないようだ。
 人間だった頃、女剣士として厳格に育てられたからか、あまり卑怯な真似はしてこないようである。
 もう日本刀は捨て、大岩ぶん投げてヘリを墜落させたりと、本当に鬼のような戦い方になってしまっているが。
 彼女からの果たし状的には、藤野が決戦の舞台となっているようである。
 それまでは来ないのかもしれないし、そう油断させておいて、やっぱり来るのかもしれない。

〔「ご乗車お疲れ様でした。まもなく終点、東京、東京です。到着ホームは21番線、お出口は変わりまして右側です。東海道新幹線ご利用のお客様、最終列車の時刻にご注意ください。22時48分、“こだま”815号、三島行きは14番線からの発車です。……」〕

 新幹線は最終列車を気にするようになる時間帯である。

 愛原「リサ、そろそろ降りるぞ」
 リサ「ん……」

 リサは窓側の席で、ボーッとしていた。
 窓の外を覗き込む。
 窓の外には、東京都心の夜景が広がっていた。
 窓ガラスには、時折赤く光るリサの瞳が映る。
 棚に乗せた荷物を降ろしたりしているうちに、列車がホームへと進入する。

 高橋「先生、着いたらちょっと一服いいっスか?」
 愛原「分かったよ」

〔ドアが開きます〕

 そして列車は、東京駅21番線に到着した。

〔「ご乗車ありがとうございました。東京、東京、終点です。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください。21番線の電車は折り返し、22時44分発、“なすの”281号、那須塩原行きとなります。本日の東北新幹線、最終列車です。……」〕

 ここでも最終列車の案内が流れる。

 ホームに降りると、高橋とパールはすぐ近くの喫煙所に向かった。
 私とリサは、ホームで待つ。

 愛原「こっちも少し冷えるなぁ……」
 リサ「仙台ほどじゃないけどね」

 ヒュウッと一陣の風が吹いてくる。
 明日は春一番が吹くかもしれないということだ。
 地下鉄は大丈夫だと思うが、地上の電車はもしかしたら、風でダイヤに影響が出るかもしれない。
 特に、京葉線や武蔵野線、川越線はその影響を受けやすい。
 しばらくして、高橋達が戻ってきたので、私達は改札口に向かった。

 高橋「ここから、どうされますか?」
 愛原「タクシーで直帰だよ」
 高橋「その方がいいっスね」

 と、八重洲中央口付近のタクシー乗り場に向かう。
 曜日や時間帯によっては長蛇の列ができることもあるタクシー乗り場だか、日曜日の深夜は空いていた。
 やはりここは直帰の方がいい。
 既に時間帯は深夜帯。
 大の大人の私達が一緒だからまだいいものの、制服姿のリサだけなら補導されるだろう。

 愛原「俺が前に乗るから、お前達は後ろで」
 高橋「ハイ」

 今ではもう一般的になりつつある、トールワゴンタイプのタクシーに乗り込む。
 リアシートが広く、真ん中席だと足元の出っ張りが無いので座りやすくなっている。

 愛原「菊川2丁目○-×までお願いします」
 運転手「はい、ありがとうございます」

 運転手は私が言った住所をナビに入力した。
 あとは、ナビ通りに行ってもらう。
 今ではカーナビも、殆ど標準装備となった。
 幸い、タクシー配車アプリに対応しているタクシー会社だったので、支払い方法もそのアプリ決済にしておく。
 この場合、領収書はアプリ画面に表示される形となる為、紙の領収書は発行されない。
 タクシーは、同じ場所を発車する高速バスを交わし、交差点に向かった。
 その高速バスも、窓には全てカーテンが引かれているものもある。
 それは夜行バスだ。
 夜行バスも発車する時間帯に、今はなっている。
 もう少し早い時間に帰京する新幹線でも良かったかなと、今更ながらに思った。

[同日23時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家]

 タクシーが新大橋通りから外れ、路地を走行する。
 住宅地の中は、殆ど人けが無かった。

 愛原「あ、そこで止めてください」
 運転手「こちらで宜しいですか?」
 愛原「はい」

 運転手がハザードランプを点けて、料金メーターを止める。
 既にアプリで支払いを済ませているので、車内で決済のやり取りは無い。
 ハッチを開けてもらい、そこから荷物を降ろす。
 その間に私は、助手席後ろにあるタブレットを使って、アプリ決済。
 これだけで、もう支払いは終わり。

 愛原「忘れ物無い?」
 高橋「大丈夫です」
 愛原「よし。じゃあ、入るか」

 私は持っていたカードキーで、玄関の鍵を解錠した。
 因みに鍵などで、普通に鍵を開けることを『解錠』という。
 もう1つ似たような意味に『開錠』というのがあるが、これは鍵を壊して強引に開けることを言う。
 バイオハザードの資料映像にも、2つの単語が出て来るので要注意だった。
 一応私は警備員の仕事をしていたことがあったので、2つの単語の意味の違いは知っていたが、この3人は首を傾げていた。
 資料映像でも、猛者が鍵を見つけて普通に解錠することもあるし、古い鍵なら壊して開錠するることもあった。
 玄関から中に入ると、すぐ目の前に2階に上がる階段がある。
 しかし、大きな荷物があったので、すぐ横のガレージに入るドアを開けた。
 こちらもカードキーで開ける。
 ガレージは真っ暗なので、一旦照明を点ける。
 それからエレベーターを起動させて、上に向かうことにした。

 愛原「すぐに風呂を沸かしてくれ。で、リサに先に入ってもらおう」
 リサ「わたし?」
 愛原「明日、普通に学校だろ?風呂入って、すぐ寝ろよ」
 高橋「お子様は寝る時間だぜ?」
 リサ「わたし、もう子供じゃないもん!」
 高橋「まだ17のガキが何言ってやがる」
 愛原「法律的にも、まだ成人年齢じゃないもんね」
 リサ「むー……」

 そして、3階でエレベーターを降りる。
 私とリサは、更にその上の4階まで向かった。

 愛原「明日はいよいよ大金が手に入るぞ?」
 リサ「えっ、そうなの?」
 愛原「奥日光で手に入れた札束を返してもらえることになっているんだ。その金で、4階にシャワールームを増設しよう。これなら、風呂の順番待ちもそんなにしなくて済む」
 リサ「いいね!どこに設置するの?」
 愛原「トイレと洗面所の横に、中途半端な3畳分くらいの納戸があるだろう?そこでいいな」
 リサ「ふんふん」

 元々は6畳間があったそうなのだが、この建物を建てたオーナーが、後ほど6畳間を半分潰し、トイレと洗面所を増設したのだそうだ。
 本当はシャワールームも造りたかったそうなのだが、予算が足らずに断念したのだとか。
 おかげで今、中途半端な3畳間は納戸として残っている。
 が、物置や収納は他にもあるので、殆ど使うことはない。

 愛原「荷物を整理する頃には風呂も沸くだろうから、そのタイミングで入ってくれ」
 リサ「分かった」

 私も自分の荷物を持って、自室に入った。
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