報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「帰省最終日の朝」 2

2024-02-09 21:09:01 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月26日09時00分 天候:晴 宮城県仙台市青葉区作並元木 鷹泉閣岩松旅館・売店]

 朝食を終えた私達。
 まだ浴衣姿の両親達は先に部屋に戻って着替えるという。
 残った私達は、売店に立ち寄って土産物を覗いていた。

 リサ「朝ごはんも美味しかった!」
 愛原学「そりゃあ良かった」
 リサ「ホテルの朝ごはんはバイキングなのがいいね!」
 学「御膳タイプもあるようだが、リサの場合はバイキングの方がいいと思ったんだ」
 リサ「さすがは先生!」
 学「いちいち抱き着くなっての!」

 次のリサとの泊まりの予定は、来月の八王子辺りだ。
 藤野に朝一に行く為には、どこかで前泊しなければならない。
 1番ホテルが集約されているのが八王子である為、そこのビジネスホテルに泊まることになりそうだ。
 幸いチェーンホテルであれば、大抵は朝食バイキングが付いている。

 学「うーん……。やっぱり、酒も欲しいなぁ……」
 リサ「一緒に飲もうか?」
 学「“鬼ころし”以外、酒なんか飲んだら、また変な感じに化けてしまうぞ?」
 リサ「やっぱりそうかぁ……」

 どうして“鬼ころし”だけ、リサの暴走を防げるのかは不明である。
 一種の暗示か何かではないかと言われているが……。

 リサ「笹かまぼことかある」
 学「そうだな。お土産とか買って行くか?」
 リサ「そうだね。ヨドバシとかコジマから頼まれてる。あと、レイチェル」
 学「そういえばそうだな。ここの旅館の名前が入ったヤツなんかいいんじゃないか?」
 リサ「それもそうだね。牛タンは……」
 学「牛タンはお土産品としてもあるけど、冷凍だから持って帰るの大変だぞ?」

 それに少し高いが、東京でも食べれる。
 東京駅の『八重北食堂』とか『東京駅一番街』とかに牛タン店で出店している。

 リサ「それもそうか。お菓子の方がいいかな」
 学「そうした方がいい」

 高橋達は……。

 高橋「サーセン。アメスピください」
 パール「私はアイコスの……」
 学「土産買う気無いんかいw」

[同日09時45分~10時00分 天候:曇→小雪 同地区 作並温泉元湯バス停→仙台市営バス840系統車内]

 ホテルをチェックアウトした私達は、雪の残る中、ホテル向かい側のバス停に向かった。

 学「俺達がここから乗った時って、夏だったっけ?」
 高橋「そうっスね」

 バスが来るまで少し時間があったので、私達は両親をバス停の前で待たせ、以前仕事で訪れた場所を覗いてみることにした。
 仙山線の奥新川駅の近くに公一伯父さんの旧宅があって、そこは隠れ家となっていたが、今は取り壊されている。
 そして私達はそこから脱出する為、トロッコに乗ったのだが、それが着いた先が仙台雨傘園という日本アンブレラの保養施設跡だったのである。
 日本アンブレラが潰れてから長らく廃墟になっていたらしいが、ようやく買い手が付いて、建物は取り壊され、新しいホテルが建つところであるという。

 学「あー……うん。何か建ててる感じだな」

 解体工事中の場所に出てしまったので、あの時は工事関係者達から怒られてしまったが、今は聞いたことのある建設会社の名前が書かれた仮囲いがされている。
 日曜日ということもあり、工事は行われていない。
 どうやら、ここにはもうアンブレラに関する物は何も無いようだ。

 学「何も無いな……」
 高橋「そうっスね」

 仮囲いの隙間から中を覗いてみたが、鉄骨の骨組みがあり、新しいホテルが鋭意建設中であることが分かった。
 ホテルの名前を見てみたが聞いたことの無い名前であり、アンブレラとの関係は分からない。
 後でこのホテル経営会社について、調べてみることにしよう。
 バス停に戻ると、何だか雪がちらついてきた。
 朝起きた時は日が出ていたのに、山の天気は変わりやすい。
 逆を言えば、街に出さえすれば、雪からおさらばできるということである。

 高橋「ちょっと一服させて頂きゃす」
 学「あいよ」

 バス停の前はタバコも販売している酒屋があり、店の前には吸い殻入れがいる。
 そして、自販機と公衆電話、郵便ポストまであった。

 学「おっ、来た来た」

 しばらく待っていると、廃止された区間の方から、大型の路線バスがやってきた。
 片側1車線の道路では大型車は転回できないから、もしかしたら旅客運送用としては廃止になったとしても、回送線としては生き残っているのかもしれない。
 旧・作並深沢山バス停は転回場にもなっているからだ。
 ただ、ここから更に山に入った場所にある為、ここよりも更に雪深いのかもしれない。
 だからか、バスはチェーンを巻いていた。
 そして、バスは停留所に止まり、中扉を開ける。
 車種自体は、一般の路線バスと同じだ。
 バスに乗り込むと、後ろの席に座った。

 学「これは……」

 ノンステップバスだが、比較的古いタイプ。
 最後部の座席は背もたれが高く、しかも足が伸ばせる。
 それでもって、モケットの柄を見ると……。

 学「横浜市営バスの中古車だな」
 父「ほお?」

 モケットは全体的に水色だが、模様が『大きな吊り橋』だったり、『超高層建築物』だったり、『女性物の靴』だったりする物が入っている。
 それは『レインボーブリッジ』『横浜ランドマークタワー』『赤い靴』なのだろう。
 宮城交通に横浜市営の中古車が入っていたことはあったが、最近では仙台市営にも入るようになっている。
 古いタイプのノンステップバスだから座席数は少なく、しかしその分シートピッチは広い。
 私とリサ、両親は1番後ろに座り、高橋とパールはそのすぐ前の2人席に腰かけた。
 リサは座席の上に、旅館で買った土産物を置く。

 リサ「取りあえずこれが、『魔王軍』の皆へのお土産」
 学「うん。いいんじゃない」

 発車の時刻になり、バスは中扉を閉めて出発した。

〔ピン♪ポン♪パーン♪ いつも市営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは白沢車庫前、東北大学病院前、県庁市役所前経由、仙台駅前行きです。次は作並温泉仲町、作並温泉仲町でございます〕

 父「ん?このバス、大学病院の前を通るのか。なるほど……」
 学「今日は日曜日だから、外来はやってないよ?」
 父「知ってる。だが、外来は休みでも、そこ以外の施設は開いていたりするもんだ」
 学「んん?」

 バスが走行している国道48号線は除雪がしっかりされてはいるものの、路肩には案外多くの雪が寄せられている。
 本当に市街地は全く雪が無いのか疑わしく思うほど。
 チェーンの音を鳴らして、バスは国道の上り線を進む。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「帰省最終日の朝」

2024-02-09 15:18:16 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月26日07時00分 天候:晴 宮城県仙台市青葉区作並元木 鷹泉閣岩松旅館・客室]

 枕元に置いたスマホがアラームを鳴らす。
 私はそれで目が覚めた。
 隣で寝ているリサも、それで目が覚める。

 愛原「ううーん……」
 リサ「ううーん……」

 今度は悪い夢を見なかったようだ。

 愛原「おはよう」
 リサ「おはよ……」

 リサは結局また私の布団に入り込んでいた。
 布団の中はリサがかいた寝汗で、香しい匂いが染み付いている。
 人食いをしていないリサでさえ、体臭はある。
 ましてやこれが、人食いした鬼だと、物凄い体臭になるという。
 だから、それを隠す為に消臭剤や香水で誤魔化すとのこと。
 何しろ、旦那を1人食い殺した上野利恵でさえ、リサ以上の体臭がするのだから、人食いは本当に大変だ。
 布団から起きて、室内の照明を点ける。

 リサ「眩しっ!」

 リサは自分の布団の所に再び潜り込んだ。

 愛原「こらこら、起きろ。着替えて、朝飯に行くぞ」
 リサ「! おおー!そうだった!」

 再び布団から出る。
 浴衣がはだけて、白いスポブラとショーツが見えてしまっている。

 リサ「バイキング?」
 愛原「そうだよ。俺は向こうで着替えてくるから、お前も着替えろよ」
 リサ「はーい」

 私は隣の洋室に寝ているはずの両親を起こしに行ったが、ベッドにはいなかった。
 テーブルの上にメモ書きが置いてあり、それを見ると、『朝風呂に行ってきます』とのこと。
 私とリサは夜中に入ったからもういいが、両親達は2回目の温泉を堪能しているようだ。
 私はバスルームに入ると、そこで顔を洗った。
 高橋達は起きただろうか?
 一応後で、モーニングコールをしておこう。

 愛原「リサー、使っていいぞー」
 リサ「んー」

 リサは往路と同じ私服に着替えていた。
 違うのはTシャツくらい。
 この上に、パーカーを羽織るわけである。
 リサはブラを換えたのか、寝る時着けていたスポブラを荷物の中にしまうところだった。

 リサ「顔洗って来るけど、わたしの荷物、勝手に開けて下着漁らないでよ?w」

 リサはニヤッと笑った。
 口元から牙が覗く。

 愛原「そんなことするか!w」

 何を今さら……。
 私は洋室のテレビを点けた。

〔「おはようございます!日曜日の“ニュース万歳\(^o^)/”のお時間です!まずは速報からです。先週、国会の審議中に居眠りをした宇集院連太郎氏は……」〕

 リサのヤツ、あと何枚下着を持って来ているのだろう?
 洗濯が大変だろうなぁ……。
 リサはまだ洗面所にいるかな?
 ちょっとだけ……ちょっとだけ確認をば……。
 私はそーっと、次の間である和室に移動した。
 この時、私の足元にはリサが放った寄生虫が潜んでいたらしい。
 私が移動したのを確認した寄生虫は、テレパシーで宿主に御注進。

 リサ「フフフフ……」

 リサは私が次の間に向かうところを確認したらしい。
 だがしかし……。

 愛原母「ただいまぁ」
 愛原父「温泉は朝の方が熱いなぁ!」

 両親が大浴場から帰って来た。
 私は急いで、洋室に戻る。

 愛原学「お、お帰り!早かったね!?」
 リサ「チッ……!」
 母「そう?6時過ぎに起きて、お父さんと行ったからね。学達は朝風呂行かないの?」
 学「じ、実は夜中、リサと行って来たんだ」
 父「夜中、何かガサゴソ音がすると思ったらそれか」
 学「いやあ、夜中に目が覚めて、なかなか寝付けなかったもんで。な?リサ」
 リサ「う、うん」
 母「仲良さそうに寝てたわね。まあ、いいけど。もう着替えちゃったのね?」
 学「まあ、もう風呂はいいや」
 母「準備ができたら、朝ごはんに行こうね」
 学「ちょっと高橋達、起こしてくる」

 私は室内の電話機を取った。
 それで、高橋とパールの部屋の番号を押す。

 学「もしもし、高橋?おはよう!もう起きたかい?……そうか。それじゃ、皆で朝食バイキングに行こうと思うんだけど、一緒に来るかい?……分かった。それじゃ、会場でな」

 私は電話を切った。

 学「高橋達も準備して行くから、会場で落ち合おうって」
 母「そう」

 高橋とパールはツインの部屋に泊まっているので、フロアが違う。
 リサも朝の支度が終わると、皆で朝食会場に向かった。

[同日08時00分 天候:晴 同旅館・朝食会場]

 朝食会場は夕食会場と同じ。

 学「おはよう。眠れたかい?……いや、『楽しめた』かい?と聞いた方がいいか?」
 高橋「おはざっス!おかげさまで、『楽しめた』っス!」
 父「そうか。キミ達は、婚約中だったね?」
 高橋「そうです!作者が婚活に失敗中なもんで、なかなか婚姻届を出せないんス」
 学「メタ発言すなw」
 父「保証人はいるのかい?」
 学「先生はサインして下さるそうです。ただ、もう1人が……」

 パールのツテで斉藤秀樹元社長にお願いしていたものの、海外へ逃亡。
 公一伯父さんにお願いするも、彼もまた逃亡。
 善場主任には断られ、宙に浮いている状態。

 父「それなら、私がサインしようか?」
 高橋「えっ、本当ですか!?」
 学「いいの?」
 父「いいよいいよ。婚姻届はどこにある?」
 高橋「あー、家っス」
 父「それなら、簡易書留か何かで送ってくれ」
 学「返信用封筒も入れとけよ?」
 高橋「はい!」

 そんなことお構いなしのリサは、朝食の品を山のように盛っていた。

 パール「お茶でございます」
 父「おっ、ありがとう」

 そういえば高橋達も私服に着替えている。

 学「お前達は朝風呂に入ったのか?」
 高橋「いえ、俺らは部屋の風呂で十分っス!」
 パール「お、同じく……」

 なるほど。
 ベッドだけではなく、部屋備え付けの風呂でもイチャラブしたのだな。
 まあ、それはそれで良し。

 父「それで、帰りはどうするんだ?」
 学「ちょうどホテルの前から、市営バスが出てる。ホテルの前始発だから、必ず座れるよ。それで市街地まで戻ろうと思う」
 父「ここから市営バスでか。相当、時間掛かりそうだな……」
 学「まあ、1時間強ってところだな。ホテルの前始発だよ」

 仙台市営バス840系統作並線は、本来はもっと山の方まで路線があった。
 本来の起終点は『作並深沢山』という所。
 渓流釣りのポイントがあるので、それの利用者を狙ったものだろう。
 とはいえ、バスで釣りに行く利用者は少なく、結局は作並温泉街止まりとなり、その先は廃止となった。

 母「仙山線には乗らないの?」
 学「今はもう作並始発が無いからね、座れるかどうか分かんないんだよ」
 母「なるほど」
 学「チェックアウトの10時、正にその10時ちょうど発の便がある。これで戻ろうと思う」
 母「分かったわ」
 父「まあ、連れて来たのは学だからな。帰りも学に任せることにしよう」
 学「バスが発車するのは10時ちょうどだから、それまでゆっくりしてて」
 父「了解」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする