報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「帰省2日目の温泉旅行」 2

2024-02-01 20:19:29 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月25日14時前後 天候:曇 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅→仙山線3839M列車最後尾車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の7番線の列車は、14時4分発、快速、山形行きです。この列車は、4両です。……〕

 昼食も食べ終わり、私達は仙台駅へと向かった。

 愛原学「まだ市街地は雪は積もってないけど、向こうは積もってるのかな?」
 愛原父「そりゃあ向こうは山の中だし、昔はスキー場もあったくらいだから、積もってるんじゃないか?」
 学「それもそうか」
 愛原母「早く旅館に入って、温泉に浸かりたいねぇ。せっかくラーメン食べて温まったのに、これじゃまた冷えちゃう」

 午後になってから少し風が出て来た。
 仙石線や地下鉄と違って、それ以外のホームは地上にある為、寒風が吹くともろに当たる。

〔まもなく7番線に、当駅止まりの列車が参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックの内側まで、お下がりください。折り返し、14時4分発、快速、山形行きとなります。この列車は、4両です。……〕

 仙石線を除く仙台駅の在来線ホームの自動放送は、首都圏のそれと殆ど同じである。
 言い回しから声優まで同じ。
 但し、首都圏と同じ輸送システムを導入しているわけではない。
 しばらくすると、下り方向から眩いヘッドライトの光を灯して、4両編成の電車がやってきた。
 E721系と呼ばれる、仙台地区では新型の部類に入る車両だ。
 2両編成と4両編成があり、2両編成を2編成繋いだものではなく、4両で1編成の電車だった。
 確か、1000番台と言ったか。
 他の2両編成と違い、ワンマン運転には対応しておらず、外装にもピンク色のラインが入っているのが特徴である。

〔せんだい、仙台。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 終点である為、ここで大勢の乗客達が降りて来る。
 それから私達は先頭車だった車両に乗り込んだ。
 つまり、これから最後尾になるということ。

 

 ボックスシートを1つ確保したが、高橋とパールはその横、つまりドア横の2人席に腰かけた。
 そこで良いのだろうか?
 両親達には窓側に座ってもらい、私とリサは通路側に向かい合って座った。
 私が後ろ向きにしておく。
 最後尾に乗ったのは、そこから乗務員室の窓越しに、後部視界を見る為だった。
 『本当の通は1番後ろ』と、鉄ヲタの友人が豪語していたのを思い出す。

〔この電車は仙山線、快速、山形行きです。停車駅は北仙台、国見、陸前落合、愛子、作並、山寺、羽前千歳、北山形、終点山形の順です〕

 父は窓際のテーブルの上に、缶ビールを置いた。

 母「昼間から飲むなんて」
 父「いいじゃないか。今日は温泉旅行だ。それに、車だったら飲めないぞ。いい機会じゃないか。なあ、学?」
 学「そ、そうだね」

 そういう私も、父から缶ビールを受け取った。

 母「呆れた」
 父「お前も飲めよ」
 母「私は夕食の時とかでいいわよ」
 父「ノリ悪いな」
 母「そういう問題じゃないって。だいたい、通院中なんだから無茶しないの」
 学「そうか。お父さん、大学病院に通院中だったもんね。大丈夫なの?」
 父「おかげさんで、今は落ち着いてるよ。病院の中の食堂の飯も美味くてな、今度一緒に連れて行ってやろう」
 学「そ、そうなの」
 リサ「お肉料理ありますか!?」
 父「おー。トンカツ定食とかカツカレーとかあったぞ」
 リサ「おー!」
 学「フツーの飯だなw」
 母「食欲があるうちはいいんだけどねぇ……。リサちゃん、私達は普通のお茶とかにしておきましょ。これで、そこの自販機で好きなの買ってきていいから」
 リサ「わっかりましたー!」

 リサは母親からイクスカを渡された。
 これは仙台市交通局が発行している交通系ICカードのことである。
 Pasmoと同様、仙台市地下鉄やバスだけでなく、JRも乗車可能である。
 リサは降りると近くの自販機に行き、お茶と自分の飲むジュースを買って来た。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。7番線に停車中の列車は、14時4分発、快速、山形行きです。次は、北仙台に、停車します〕

 リサ「お待たせしましたー」
 母「ありがとう」

 リサは母にペットボトル入りのお茶を買って来て、自分はりんごジュースを買ってきた。

〔「14時4分発、仙山線、快速列車の山形行きです。停車駅は北仙台、国見、陸前落合、愛子、作並、山寺、羽前千歳、北山形、終点山形の順に停車致します。停車駅にご注意ください。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 父「駅からはどうやって行くんだ?」
 学「旅館が送迎バスで迎えに来てくれることになってるよ」
 父「そうか」

 買って来た飲み物で過ごしていると、ホームから発車メロディが聞こえて来た。
 “すずめ踊り”の祭囃子調の発車メロディである。

〔7番線から、快速、山形行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。駆け込み乗車は、おやめください〕

 車掌が最後に笛を鳴らすと、ドアチャイムが鳴る。
 首都圏の電車だと一気に閉まるが、こちらの場合、閉まり切る前に一旦ドアの動きが止まって、一呼吸置いてから閉まり切るという変わった動きをする。
 それから電車は、ゆっくりと走り出した。
 仙台駅構内のポイントを渡って、仙山線本線に出る。
 実は途中の小田原地区(駅弁業者のこばやし本社がある辺り)までは東北本線と仙山線は並行しており、ダイヤによっては、双方の列車が並走することもあった。
 今でもそういうシーンがあるのかは不明だが、首都圏などの大都市圏以外でそのようなシーンが見られるのは貴重だと思う。

〔今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は仙山線、快速、山形行きです。停車駅は北仙台、国見、陸前落合、愛子、作並、山寺、羽前千歳、北山形、終点山形の順です。【中略】次は、北仙台です〕

 父「ほれ、食うか?つまみ」

 父はビニール袋の中から、あたりめの袋を取り出した。

 学「ありがとう」
 父「ビーフジャーキーは……」
 リサ「わたしが頂きます!」
 父「そ、そう?キミはお肉が好きなんだねぇ?」
 リサ「はい!先生のお肉が1番大好きです!」
 学「コラ!」
 父「こ、こんなバカ息子の肉で良かったら、いつでも食ってくれ」
 学「父さん!」
 母「そうねぇ……。こんな可愛い女子高生を誑かせるなんて、バカ以外の何者でもないわ」
 学「だから、霧生市で助けたんだってば」
 リサ「先生。お父さん達の許可が取れたから」

 リサはビーフジャーキーを齧りながら、私に牙を見せた。

 学「それはカンベンしてくれ……」

 さすがに食い殺されるのはカンベンだな。
 せっかく、霧生市で生き延びたというのに……。
コメント (3)
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“私立探偵 愛原学” 「帰省2日目の温泉旅行」

2024-02-01 11:55:33 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月25日08時00分 天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 愛原家2階・愛原学の部屋]

 枕元に置いたスマホがアラームを鳴らす。
 私は手を伸ばして、そのアラームを止めた。

 

 リサ「おはよ、先生」

 隣でゴソゴソ動く感触がしたと思い、そちらの方を向くと、リサの緑色のブルマが目に飛び込んで来た。
 リサは脱いでいたジャージのズボンと上着を着始める。
 ていうか……いつの間にか寝ていたのか……ていうかもしかしてリサのヤツ、私のベッドに同衾してた???
 ベッドの中が、何となくリサの体臭がするのはその為だろうか。
 まさかとは思うが、『ぱんつはいてない』状態では?……と、思ったが、そんなことは無かった。

 リサ「先生も早く起きて。顔洗って、朝ごはんにしようよ?」
 愛原「あ、ああ……。そうだな」

 私もゴソゴソと起き上がった。

[同日8時30分 天候:晴 愛原家1階ダイニング]

 愛原学「おはよう」
 愛原母「おはよう。早く食べちゃいなさい」
 学「うぃーす」

 私の隣に座るリサは、さすがに今は私服である。
 黒いTシャツに、デニムのショートパンツを穿いていた。

 リサ「いただきまーす」
 愛原母「リサちゃん、その恰好で寒くないの?」
 リサ「いえ、全然大丈夫ですよ」
 愛原父「若いっていいねぇ……」
 学「そういう問題じゃないんだがな」

 BOWの体温は概して高いので。

 学「それより、今日は皆で出掛けるから、よろしくね」
 母「はいはい。やっと学も、旅行に連れて行ってくれるようになったわねぇ……」
 学「近場で申し訳ないんだけどね」
 愛原父「この歳になると、遠出がキツいから構わんよ。今じゃ、電車やバスで1時間が精々だ」
 学「そうかい。それなら、ちょうどいい距離かもしれないね」
 父「ほお、そうか。学のことだから、変な所に連れて行かれるとか思ったんだがな」
 学「い、いや、そんなことはないよ!ちゃん往路は電車、復路は乗り換え無しの路線バスだ。心配無いよ」
 母「それとて、ちょっと安心できないのよねぇ……」
 父「うむうむ」
 学「リサ。息子を信用しない両親をどう思う?」
 リサ「親の記憶が無いわたしに聞かないでよ……」
 高橋「面白くていいと思います!」
 パール「同じく!」

 自称、毒親を持つ高橋とバールには好評なうちの両親なのだった。

[同日12時17分 天候:晴 仙台市若林区木ノ下 国分寺薬師堂前バス停→仙台市営バスJ320系統車内]

 電車の時刻にはやや早いが、仙台駅周辺で昼食を取ってから行こうという話になった。
 市街地へは地下鉄で行くのが最も早いが、前期高齢者の両親から見ても、地下鉄の駅のアップダウンは足にキツいらしい。
 仙台市地下鉄東西線は新しい地下鉄なので、全ての駅に地上からアクセスできるエスカレーターやエレベーターが設置されている。
 それでも、やや面倒な所はあるという。
 それが路線バスなら、速度は遅いが、階段の昇り降りは乗降時のみで良いというメリットがある。
 その為、今回、仙台駅には地下鉄ではなく、バスで行くことにした。
 帰りはバスがあればそうするが、無い場合はタクシーに乗ってもいいかもしれない。

 リサ「バスが来た」

 大型のノンステップバスがやってきた。
 隣の薬師堂駅が始発である為、既に先客が何人か乗っている。
 だが、ほとんどガラ空きであった。

 愛原「ここのバスは後ろから乗って、SuicaやPasmoを当てるんだ」
 リサ「埼玉のバスと同じだね」
 愛原「そういうことだ」

 バスに乗り込むと、客層はやっぱりシニア世代が多い。
 前降りの為、だいたいが前の方に座っている。
 とはいえ、さすがに運転席後ろの席には座っていなかったが。
 あれは大型トラックに乗り降りするような感覚で着席するものだからだ。
 それで、私達は後ろの席に座った。

 リサ「先生、これ、都営バスじゃない?」

 隣に座るリサが、座席のモケットを指さして言った。
 すると、そこには都営バスのマスコットキャラ、『みんくる』のイラストがプリントされていた。

 愛原「本当だな……」

 仙台市営バスでは、自社オリジナルの新車の他、他社の中古車も導入している。
 大抵が他の公営バスであることが多い。
 そして今回は、元都営バスの中古車に当たったというわけだ。

〔発車致します。ご注意ください〕

 バスは中扉を閉めて発車した。
 私達が乗り込んだことで、バスの乗客数が2ケタに上がる。

〔ピン♪ポン♪パーン♪ 次は木ノ下四丁目、木ノ下四丁目でございます〕

 リサ「放送はさすがに都営バスのものじゃない」
 愛原「そりゃそうだろう」

 外装はちゃんと仙台市営バスのオリジナル。
 しかし、内装はあまりいじらないようである。
 運賃表示器とか整理券発行機、それとICカード読取機くらいか。

 リサ「公一伯父さんは一緒に来ないの?」
 愛原「来ないさ」

 そして、私はリサにそっと耳打ち。

 愛原「俺達が温泉旅行に行ってる間、またどこかへ逃亡するつもりだろう」
 リサ「な、なるほど」
 愛原「俺達は温泉旅行に行ってたから知らんという言い訳もできる」
 リサ「そういうことだったんだね」

[同日12時30分 天候:晴 仙台市青葉区中央 仙台駅前バス停(60番)→仙臺ラーメンみそ壱]

 バスは仙台駅前バス停に到着した。
 かつては中央1丁目の交差点を左折した所にあるバス停に到着していたが、今はその手前、愛宕上杉通上のバス停に到着する。

 父親「ラーメンでも食べてから行くか」
 学「結構、シンプルだね?」
 父親「それでいいだろ。旅館に着いたら、夕食は刺身とか立派な料理が出て来るんだろ?だったら、昼はシンプルでいいんじゃないか?」
 母親「それと、お父さんがラーメン好きというのもあるわよね」
 高橋「実は俺もです!」
 学「あー、高橋はそうだろうな」

 バスを降りて、愛宕上杉通の反対側に横断する。
 仙台ロフトの前を歩く。

 父親「とりあえず、ここで仙台ラーメンを御馳走しようかな」
 パール「御馳走様です」
 リサ「おー!ラーメン!」
 高橋「先生、隣のP-STATIONってパチ屋、結構出るんスか?」
 学「日曜日の夜なら割と出やすく……」
 母親「他に言う事無いんかい!」

 私達はラーメン店に入ることにした。
 さすがに隣のパチンコ屋への入店は許されなかったが。
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