報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「帰省最後の日」

2024-02-10 20:40:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月26日13時15分 天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 愛原家1階リビング]

 愛原母「リサちゃん、東京に帰る前に、汚れ物洗濯してあげるから出して」
 リサ「えっ、いいんですか!?」
 母「女の子は、着替えが多いからね。そこの迷彩柄のあなたも」
 パール「は、はあ……」

 母親がそんなことを話している。
 まあ、男は換えのパンツさえあればいいなんて言うが……。
 実際、パンツとシャツと靴下くらいしか換えていない。

 母「学とそこのお兄さんも、汚れた下着、ついでに洗濯しておくから」
 高橋「ま、マジっスか!?ガチで実家に帰って来た感マックスっス!」
 学「俺、まだお前の新潟の実家に行ったことないんだけどな?」
 高橋「じ、時期が来たらご案内しまっス。ま、まあ、来ない方が先生には幸せかと……」
 パール「マサ!」
 高橋「おっと……」
 学「はあ?」

 時々高橋も変なこと言うなぁ……。
 私が首を傾げていると、リサが寄って来た。
 どうやら洗濯して欲しいものを、母親に渡したようである。

 

 リサ「わたしの下着、全部洗濯してもらっちゃうけど、いいかな?1枚くらい、洗濯前のヤツを先生にあげても……いいよ?」
 学「別に今ここでもらうことじゃないさ。どうせいつも1つ屋根の下で暮らしてるんだからさ」
 リサ「そうなんだけど、東京の家だといつも過ぎて、そんな気が起こらないんだよ」
 学「あー、なるほど。日常過ぎるもんな」
 リサ「そう」
 学「だけど、心配無いから。お前もゆっくり寛いでていいんだよ」
 リサ「わたしは先生の横が1番落ち着く」

 そう言ってリサは、私の隣のソファに座った。

 学「ああ、そうかい」
 リサ「で、伯父さんの手紙、何て書いてあったの?」
 学「『捜査機関がやってきた。巻き込んでしまって、申し訳ない』とか、『これ以上、迷惑を掛けられないので、旅に出ます』とか書いてある」
 リサ「またどこかで会えそうだねぇ……」

 リサは身を乗り出して、手紙を覗き込んだ。
 今のリサは人間形態をしている為、角は生えていないし、耳も長く尖ったりはしていない。

 学「そうだな。『尚、詫びの品として、知り合いの千葉県の酪農家が育てた黒毛和牛のステーキ肉を融通してもらった。好きに食べてくれ』?はあ!?」
 リサ「ステーキ肉……!」🤤

 と、そこへインターホンが鳴った。

 学「はいはい!」

 インターホンの近くにいるのは私なので、私が出た。

 学「はい、愛原です」
 配達員「こんにちはー!郵便局でーす!」
 学「はーい!どうぞー!」

 私はハンコを持って玄関に向かった。

 配達員「冷凍ゆうパックです!」
 学「どうもお疲れ様です」

 私は伝票にハンコを押した。
 冷凍ゆうパックということから、何となく予感はしていたのだが、差出人はやはり伯父さんだった。
 もう千葉に移動したのか。
 ってか、今度の隠れ家は千葉県なのか!?

 リサ「血の滴る肉の匂い……」
 学「箱の中に入ってるのに分かるのか!?」
 リサ「鬼の嗅覚、ナメちゃダメだよ」
 高橋「犬の間違いじゃねーか?」
 リサ「鬼だよ!」

 リサは牙を剥き出しにして高橋に反論した。

 学「とにかく、箱を開けてみよう」

 何かまた手紙でも同封されていないかと思ったが、そんなことは無かった。
 千葉県の酪農家の名前か書かれた、牛肉が詰まれた袋が入っているだけだった。

 母「まあ!公一伯父さんから!?」
 学「そうなんだ。今度は千葉県だって」
 母「あの人も、色々と人脈があるのねぇ……」
 父「歳に似合わず、色々と歩き回ってるからな。大学教授を引退したというのに、未だに人脈があるのはそのせいだよ」
 学「どうするの?」
 父「デカい肉だな。こりゃ、1枚300グラムはあるぞ?」
 リサ「300かぁ……」

 リサは少しがっかりしたような顔をした。
 いやいや!ステーキを出すレストランでも、300グラムはなかなかデカい方だぞ!?

 母「私はそんなに食べれないわ。半分の150グラムで十分よ」
 父「私も200がせいぜいだな。お前達で、食べてくれ」
 リサ「ありがとうございますぅ!」
 学「俺もこの300がマックスだから、父さん達が食べない分はリサにあげて」

 リサは増えた肉に大歓喜だった。

 父「一体、どこから送られてきた?」
 学「千葉だね。千葉にもそういえば牧場があるなぁ……」
 父「うむ。千葉の黒毛和牛は有名だからな。……まさか、その有名ブランドの肉を寄こしてきたのか?」
 学「そうかもしれない」
 父「ま、まあ、きっと等級落ちして安くなった肉を譲ってくれたのだろう。伯父さんに会う機会があったら、お礼を言っときなさい」
 学「分かってるよ」
 母「じゃあ、今夜はステーキね。あと、牛タンもあるから」
 学「いつの間に?」
 母「あんた達が来る前、生協で買って来たのよ。冷凍してあるから、賞味期限も大丈夫よ」

 東京では高級食材の牛タンも、仙台では生協で買えるレベル。

 学「ん?」

 そこで私はふと思いついた。
 帰省最初の夜はすき焼きで、肉はやはり伯父さんが知り合いから融通してくれたという仙台牛の切り落としであった。
 切り落としとはいえ、すき焼きの肉にするには十分な量だったし、元々がブランド牛の肉だったから美味かった。
 そんな伯父さんは、仙台のこの実家の地下室に隠れていたのだ。
 それが今は、千葉……。
 何か、法則があるような気がしてならない。
 私は箱に付いていた伝票を剥がすと、それを写真に撮り、善場主任に送った。
 今日は日曜日なので、さすがに主任も休みだろうから。
 ……と思ったが、意外と早く返信が来た。

 善場「連絡ありがとうございます。こちらで差出人の住所を調べたところ、南房総市内のホテルであることが分かりました。恐らく今はいないでしょうが、公一容疑者は南房総市内に潜伏していると思われます。有益な情報であった場合、報奨金をお支払い致します。ありがとうございました」

 という内容のものだった。
 もう調べたのか。
 早いな。
 もっとも、グーグル先生でも使えば一発か。
 恐らく今はいないだろうが、BSAA出動案件というわけだな。
 千葉県は見た目、袋小路な形をしているが、今は成田空港もあるし、外洋に出る港もあるから、けして行き止まりの県というわけではない。
 私としては、それらの交通機関を使って、また他県に避難しているのではないかと思った。
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“私立探偵 愛原学” 「仙台市東部は晴れで雪無し」

2024-02-10 16:23:40 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月26日11時30分 天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅3階すし通り 気仙沼あさひ鮨]

 確かにお昼前ということもあり、店内は空いていた。

 愛原父「遠慮せんでも、好きなの頼んでいいからな?」

 肉好きのリサには、物足りないかもしれないな。
 まあ、夕食に期待してもらうとしよう。

 愛原学「まあ、やっぱり握りの盛り合わせだろうな」
 リサ「わたし、丼ぶりの“潮騒”で」
 学「東京駅から総武本線をひたすら走って銚子まで行く電車を選ぶとは、さすがはリサだな」
 リサ「エヘヘ……」(∀`*ゞ)
 愛原母「なーに言ってるの。今度は海に連れて行ってもらいたいものだわ」
 学「マジか!」
 リサ「海だと魚ばっかりで、なかなか肉が食べれないイメージ……」
 学「ほら、リサもそう言ってるし!」
 母「あのね、今すぐ連れてけって言ってるんじゃないからね」
 学「わ、分かってるよ」
 父「飲み物も頼んでいいからな?私はキリン」
 母「また昼間っから!」
 父「いいじゃないか。旅行の締めに一杯くらい……。学も付き合え」
 学「へーへー。でも、俺はアサヒで」
 リサ「わたしも先生と同じので!」

 またリサのヤツ……。

 父「おーい、店員さーん。とりまビール3つ~!」
 愛原母子「本当に頼むな!!」

[同日12時15分 天候:晴 同駅3階]

 学「あー、食った食った。ごちそーさん」
 高橋「ゴチ……いえ、御馳走様っした」
 パール「御馳走様でした」
 リサ「御馳走様でした!」
 父「いやいや、いいんだよ。たまには私も、若い人の為に金を使わんとなぁ……」
 学「伯父さんみたいなこと言ってw」
 母「そこは兄弟ね。学。まだバスの時間があるんだから、先に新幹線のキップ買ってきたら?まだ買ってないんでしょ?」
 学「あー、そうだな……」

 ちょうど3階なら、新幹線改札口がある。
 つまり、キップ売り場もあるということだ。

 学「そうしよう」

 みどりの窓口もあるが、私はそこへは行かず、隣の指定席券売機に向かった。
 買うのは新幹線の自由席である。
 帰りに乗ろうと思っている新幹線は仙台駅始発なので、必ず座れる自信があった。
 あと、リサが一緒なので、必ず先頭車か最後尾に乗らないといけない。
 先頭車は自由席なので。

 学「ここでクレカを使えば、またポイントが溜まると……」
 リサ「で、交通費は経費で落とす……と」
 学「シーッ!」
 リサ「自由席なら経費で落ちるんだって?」
 学「シーッ!……あれだ。キップは乗る時に渡すから、それまでは俺が預かっておこう」
 リサ「自動改札口は1人ずつでないと通れないもんね」
 学「そうそう」

 キップを手に入れると、西口バスプールの横の喫煙所に向かった高橋達を追って行った。

[同日12時38分 天候:晴 同地区 仙台駅前バス停(西口バスプール)→仙台市営バス320系統車内]

 喫煙者の高橋やパールと合流すると、帰りのバスが到着する停留所に向かった。
 それは西口バスプールの島から発車する。
 このバスプール始発ではなく、地下鉄東西線が開通する前まで、大和町線と呼ばれるこのバス路線は混雑路線で、ここから乗る場合は昼間でも座れないほどであった。
 本数も昼間で15分に1本の割合で存在していたが、東西線開通後は閑散路線と化し、本数も1時間に1本と激減している。
 実際にやってきたバスも、数人しか乗っていないほどだった。
 しかも、ここで降りる乗客もいる。
 それでも一応、私達を含め、10人強ほどの乗客が乗り込んだ。
 殆どが地下鉄駅の階段の乗り降りが億劫なお年寄り達。
 私も両親がいなければ、地下鉄を利用するところである。
 バスであれば、乗り降りはバスのステップだけで良いので。
 今度のバスは、仙台市交通局のオリジナルのものだった。
 それでも、座席のモケットはメーカー標準のもので、かつてのオリジナルの緑色のモケットではない。
 それぞれ空いている2人席に座る。

 リサ「今度のは埼玉のバスみたいだね」
 学「あー、そうだな……」

〔発車致します。ご注意ください〕

 バスは私達乗客を乗せると、すぐに発車した。
 雪の無い所を走る路線の為、このバスはチェーンを巻いていない。

〔ピン♪ポン♪パーン♪ いつも市営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは連坊一丁目、木ノ下四丁目経由、薬師堂駅行きです。次はJR東日本前、JR東日本前でございます。……〕

 JR東日本前というバス停名は都合3度ほど名前が変わっている。
 初代は『仙台鉄道管理局』前。
 旧国鉄の仙台鉄道管理局のことである。
 その次は、『東日本鉄道前』。
 旧国鉄が民営化されてJR東日本となり、それまでの仙台鉄道管理局がJR東日本東北地域本社となった。
 JR東日本の正式名称は、『東日本旅客鉄道』である為、そこから取ったのだろう。
 ところが、JR東日本が地域本社制を辞めた為、東北地域本社は仙台支社となる。
 東日本鉄道というのも一般的な呼称ではないので、仙台市交通局も三度名称を変更、『JR東日本前』となる。
 そこに隣接してJR病院も開業したから、それがきっかけだったのだろう。

 学「一旦実家に戻って、夕食まではゆっくりしよう。夕食を食べてから、東京に戻る形になるから」
 リサ「分かった」
 学「お前達もいいか?」

 私は通路を挟んで、反対側の座席に座っている高橋達に言った。

 高橋「了解っス」

[同日13時00分 天候:晴 仙台市若林区某所 愛原家]

 実家に帰ると、何だか雰囲気が異なっていた。

 母「何か、変な感じねぇ……」
 父「ふーむ……見た目には変わらんのだが……」

 この家の地下だけとはいえ、BSAAが捜索に入ったからだな。

 母「あら?ポストの中に何か入ってる。……あらま、お兄さんからじゃない」
 学「なにっ!?」

 今日は日曜日で夕刊は休みだし、郵便も普通郵便は休みである。
 なので、ポストの中にはせいぜいチラシくらいしか投函されないのだが、今回は手紙が入っていた。
 しかも、わざわざ速達郵便で送るほどである。
 消印を見ると、『若林郵便局』となっていた。
 どうやら昨日手紙を書いて、そのまま郵便局に出したようである。
 速達なので、今日届いたというわけだ。
 速達郵便なら、土休日も配達をしているからだ。

 母「学宛てよ」
 学「俺宛てかよ!」

 取りあえず私は母親から手紙を受け取ると、家の中で確認することにした。
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“私立探偵 愛原学” 「市街地にて」

2024-02-10 11:31:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月26日10時20分 天候:晴 宮城県仙台市青葉区上愛子字下十三枚田 仙台市営バス白沢出張所]

 バスは作並温泉仲町、作並温泉元木、作並温泉入口と、作並の付くバス停をいくつも通過する。
 この後にも作並新坂、作並新坂東、作並宿……と、やっぱり作並の付くバス停を更にいくつも通過するので、話題性があって良いと思うのだが。
 国道48号線は『作並街道』と呼ばれ、宿場や関所がかつては設けられていた。
 今の宮城県と山形県の県境である関山峠には、『鬼が出る』とか、『山姥が棲んでいる』とか、私の今は亡き祖父母や曽祖父母が言っていたような気がする。
 現在の関山峠には関山トンネルが通され、年間を通して多くの車が行き交っているものの、心霊スポットになっているらしい。
 今は塞がれている旧・関山トンネルであればそれも分かるが、現道で心霊スポットというのもなかなか……。
 関山峠麓の作並温泉では、私の隣に座っている鬼娘が温泉に入り来たくらいだ。
 鬼が風呂好きというのも頷ける。

 そしてバスは、仙台市営バス白沢出張所に到着した。
 これは川内営業所の出張所であるが、名前は出張所でも、敷地面積や設備などは営業所並みにある。

 
 
〔「白沢車庫前です。お降りになるお客様がいらっしゃいませんので、先に洗車機を通過させて頂きます」〕

 バス停は国道上にあるのではなく、出張所内にある。
 その為、バスも国道から外れてその中に入る。
 待合所もあるし、ここがこの路線の拠点だということが分かる。
 恐らく出入庫便(路線バスによくある、『○○車庫行き』とか『○○営業所行き』など)なんかもあるのだろう。
 バスは確かに雪の中を走って来たこともあり、車体が汚れていた。
 それで、洗車機を通すのだろう。
 客を乗せたまま洗車機を通るのは、初めてだ。
 恐らく、ダイヤに余裕があるのだろうな。

〔「窓を開けている場合、窓を一旦お閉めください」〕

 いや、さすがにこんな寒い日に窓は開けていないか。

 リサ「お~!」

 私もトラックドライバーをやっていた頃、運送会社には洗車機があったので、それを使ってボディを洗っていた。
 なので、大型車用の洗車機がどんなものなのか知っているつもりだったが……。
 豪快に水の当たる様は、普通車の洗車機よりもアトラクション性が高い。

 愛原学「バスに乗ったまま洗車機を通過するのは、2回目だ」
 リサ「そうなの?」
 学「1回目は小学校の時の社会科見学でさ、あの時も、こういう体験をさせてくれたよ」
 リサ「それでそれで!?」
 学「今のバスは窓が小さく開くだけだが、昔のツーステップバスは上下に大きく開くタイプでな。どこかのアホが洗車機を通過するってのに、窓を大きく開けやがってさ、車内が水浸しになって大変な騒ぎだよ」
 リサ「うはははは!」

 リサ、大ウケである。
 バスは洗車機を通過した後、大きく転回してバス停の前で止まった。

〔「10時20分の発車です。発車まで、しばらくお待ちください」〕

 ここで乗務員交替でもあるのだろうか。
 運転手は前扉を開けて、バスを降りて行った。
 まあ、サイドミラーを拭きに降りただけかもしれない。

 リサ「先生もずぶ濡れ?」
 学「いや、それは別のクラスの話さ。何しろ悪ガキが多くいるクラスで有名だったからなぁ……」
 愛原母「それで次の年から、市営バスの社会科見学が無くなったのね」
 学「お、俺のせいじゃないよ。次の年から地下鉄の社会科見学になったんだから、それでいいじゃないか」
 リサ「もっと面白いエピソード無い!?」
 学「可哀そうなのは女子達だよな。彼女らまでとばっちりでずぶ濡れだったんだから」
 リサ「あー、それは大変だねぇ……」
 学「幸い殆どの女子が、下はブルマだったから、スカートを脱いでブルマ姿を披露してくれたものだ」
 リサ「今度、やってあげるね!」
 学「バスに乗ったまま洗車機を通過する機会なんて、そうそう無いぞ!」

 都営バスでもそんなことは無いだろう。
 都営バスの中ではローカルな所を走る青梅地区であってもだ。

 高橋「先生。車に乗ったままで良かったら、セルフスタンドの洗車機でできますが?」

 1つ前の2人席に座っている高橋が、後ろを振り向いて言った。

 学「お前なぁ……」
 リサ「それでやろう!」
 学「やるなやるな!」

 車の中が水浸しだなんてとんでもない!

〔「お待たせ致しました。愛子駅前、東北大学病院前、県庁役所前経由、仙台駅前行き、まもなく発車致します」〕

 バスはこのバス停から数人の乗客を乗せて、出張所を発車した。

〔ピン♪ポン♪パーン♪ いつも市営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスはS840系統、愛子駅前、東北大学病院前、県庁市役所前経由、仙台駅前行きです。次は倉内、倉内でございます。……〕

 バスは再び国道48号線の上り線へと入った。

 父「学、提案があるんだが……」
 学「何だい?」
 父「少し早いが、先に昼を食ってから帰らないか?帰ってから母さん、昼食を用意するのも面倒だし」
 学「それは俺も考えてたよ。ただ、仙台駅前には11時台に着くから、少し早いかな思ってたんだ」
 父「だからこそ、店も空いてていいんじゃないのかね?」
 学「まあ、確かに」
 母「夜は用意するからね。最後の夜だし」
 学「何か、悪いね」

 そして、その頃には公一伯父さんもさっさと逃走しているということか。

[同日11時14分 天候:晴 同区中央 仙台駅前バス停]

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく仙台駅前、仙台駅前、終点です。お忘れ物、落とし物の無いようご注意願います」〕

 バスは青葉通りと愛宕上杉通りの交差点付近の降車場に到着した。
 目の前には地下鉄乗り場がある。
 JR仙台駅前というよりは、地下鉄仙台駅前といった感じだ。

 リサ「すご……!」

 仙台市営バスもICカードで乗車できるのだが、起点の作並温泉元湯から終点の仙台駅前までを乗り通すと、1130円である。
 路線バスで4桁も引き落とされる様に、リサも驚いた。

 学「まあ、なかなか珍しいよな。後でまたチャージしてやるから」
 リサ「うん」

 尚、両親の分に関しては私が連れているテイなので、私が払う。

 父「ありがとう。それじゃ、昼は寿司でいいかな?駅の中にいくつかある所で」
 学「ああ、いいよ」
 リサ「寿司……魚……」

 やっぱり年寄りは、肉より魚の方がいいか。
 私達は地下鉄の入口から地下道に下り、JR仙台駅を目指した。
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