報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「天長会と天長園」

2022-06-24 20:04:25 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月7日17:00.天候:雨 栃木県那須塩原市 ホテル天長園・大浴場]

 高橋:「あ!この、不肖の弟子、高橋正義がぁ~!あ!無二の師匠、愛原先生にぃ~!あ!断固としてお応えして参るぅ~!あ!決意でありますぅ~!」
 愛原:「毎度いつもの恒例……」
 天長会信者:「あのお兄さんは、顕正会の信者さんか何かで?」
 愛原:「いえ、違います……。恥ずかしいからさっさとやってくれ!」
 高橋:「いざ!参らん~!」

 高橋、喜び勇んで私の背中を流し始めた。

 愛原:「全くもう……」
 天長会信者:「ハハハ……。まるで、寅さんに付き従うチンピラの少年みたいですな」
 愛原:「フーテンの寅さんに、そういう役の子が出てくる話、ありましたっけ?」
 高橋:「はぁ~♪グッと来て~♪ガッと来て~♪」
 愛原:「何だその歌……」

 私は呆れる他、無かった。
 雨はまだ降り続いてる為、露天風呂は諦めることにした。
 また雨が止んだら来ることにしよう。

[同日18:00.天候:雨 同ホテル・最上階レストラン]

 入浴の後は最上階のレストランに行き、そこで夕食。
 テーブル席に行くと、『愛原様』という表示がしてあった。

 愛原:「ここだな」
 凛:「お客様、お飲み物は何になさいますか?」
 愛原:「おっと!?凛ちゃん!?」

 そこへ着物を着た凛がやってきた。

 愛原:「何してんの?」
 凛:「17時から22時まで、臨時のアルバイトです。明日は朝6時から9時までのシフトに入りました」
 愛原:「働くねぇ……」
 凛:「家業の手伝いなので、私でも大丈夫なんです」

 女将の職は外されたが、経営者一族の1人という点は変わっていないわけだ。
 その娘なのだから、家業を手伝うという事か。
 そういえばうちの近所にはスナックがあるのだが、そこのママの娘がまだ小中学生くらいなのに『お手伝い』と称して、夜でも働いてたな。
 店舗兼住宅だからこそできることだと思うが。
 凛もその感覚でバイトしているということか。
 リサは……【お察しください】。

 愛原:「そうなのか。偉いなぁ。じゃあね、俺はビール」
 高橋:「俺も先生と同じので」
 リサ:「わたしも先生と同じので」
 愛原&高橋:「アホかーっ!」
 凛:「えー……先生方は瓶ビール2本に、リサ先輩はオレンジジュースで宜しいですね」
 愛原:「リサ、そうしろ」
 リサ:「ぶー……オレンジジュース」
 凛:「かしこまりました。少々お待ちください。それでは、お鍋に火を点けます」

 こういう旅館・ホテルの夕食の定番。
 固形燃料に火を点けて温める一人鍋。
 今日は1人すき焼きのようだ。

 愛原:「リサ、その肉は生で食べないように」
 リサ:「うっ……はーい」

 どうやら生で食べようとしていたらしいのだが、私に先に釘を刺されたようだ。
 そして、凛が瓶ビールとオレンジジュースを持って来る。
 オレンジジュースも瓶入りで、既に開栓されていた。

 高橋:「さ、先生、どうぞ!」
 リサ:「さ、先生、どうぞ!」
 愛原:「こらこら!ビールとオレンジジュースを混ぜる奴があるか!リサは自分で注ぎなさい」
 リサ:「えー……」
 愛原:「次は俺のを注いでもらうから」
 リサ:「ほんと!?」
 愛原:「じゃあ、まずは乾杯だ!乾杯!」
 高橋:「お疲れ様っしたーっ!」
 リサ:「お疲れー!」

 リサは早速、バクバク食べ始める。

 愛原:「しっかし、露天風呂入れなくて残念だったなー」
 高橋:「もう、そろそろ雨止むんじゃないスかね?」
 凛:「夜は晴れるそうですよ」
 愛原:「やっぱり。夜、また入りに行くか」
 高橋:「そうしましょう」

 私がグラスのビールを飲み干したので、今度はリサが注いでくる。

 愛原:「おっ、ありがとう」
 リサ:「先生!わたし!わたしにも!」

 リサは自分のオレンジジュースの瓶を渡してきた。

 高橋:「おい。先生に注がせるとは、てめぇ……」
 愛原:「まあ、いいじゃないか。オマエも、ほら」
 高橋:「あっ!さっ、サーセン!」

 するとリサ、こんなことを言い出した。

 リサ:「先生、ジュースを口に含んで」
 愛原:「ん、何だ?」
 リサ:「で、口移しして?」
 愛原:「どんなプレイだ!?」
 高橋:「そういうプレイ……ですね。アホだ、こいつ……」

 食欲が旺盛なうちは、性欲が抑えられているはずなのだが……。

[同日20:00.天候:晴 同ホテル・大浴場]

 夕食を食べた後で、もう一度大浴場に行った。
 もう雨が止んでいることもあり、露天風呂に入ることができた。
 すると、更に外から太鼓の音と鐘の音が聞こえて来た。

 愛原:「どうやら、天長会で何かお祈りの儀式でもやっているようだな」

 気が付くと、先ほどは大浴場がそれなりに賑わっていたのに対し、今は空いている。
 こういう所では夕方よりも、夜の方が賑わうイメージがあるのだが、逆だ。
 恐らく今日の利用者の大半である天長会信者達が、あの太鼓や鐘の鳴り響く会場にいるのだろう。

 愛原:「何だか神秘的だねぇ……」
 高橋:「何だか気味悪いです」
 愛原:「そうか?」
 高橋:「『煮えたぎる湯に浸けて……死ねば人間、生きていれば魔女』みたいな……」
 愛原:「そりゃ魔女裁判だ!」

 すると、太鼓の音色が変わった。
 それまでは、速いテンポでドンドコドンドコ鳴っていたのが、今はドン!ドン!ドン!ドン!と規則正しい音色に変わった。

 高橋:「天長会はガサ入れしないんスかね?」
 愛原:「いや、しただろ。したけど、何も見つからなかっただけだ。白井の犯行を裏付けるような、何かをな。多分、上手く天長会の教義にカムフラージュしてるんだろうな」

 天長会が運営していた児童養護施設。
 そこと日本アンブレラが癒着し、『養子に出す』と称してアンブレラが子供を引き取り、人体実験を行っていたところまでは分かっている。
 リサもそこにいたことで日本アンブレラに捕まり、『最も危険な12人の巫女』の1人となるべく、様々な人体改造を受けて今に至っている。
 と、いうことは……。

 愛原:「向こうの儀式に、リサは参加しなくていいんだよな?」
 高橋:「リサは信者じゃないでしょう?」
 愛原:「信者というか……崇め奉られる側?」
 高橋:「ああいう新興宗教は、教祖様が神だから、関係無いんじゃないスか」

 実際にリサが呼ばれたり、連れて行かれるようなことは無かった。
 『最も危険な12人の巫女』は、天長会の教義には出ているものの、リサがそのうちの1人だと喧伝はされていなかったからだろう。
 どうも、今は消えてしまった東京中央学園上野高校の“トイレの花子さん”がそうだとされているようだ。

 愛原:「まあ、そうだな」
 高橋:「どうします?」
 愛原:「どうするも何も、俺達はただの一般利用者だ。知らんぷりしておこう」
 高橋:「うス」

 もっとも、その割には関係者割引を物凄く使っているのだから、私も都合が良いな。
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“私立探偵 愛原学” 「何度目かのホテル天長園」

2022-06-24 14:58:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月7日16:30.天候:雨 栃木県那須塩原市 ホテル天長園]

 愛原:「急げ!急げ!急げ!」

 予定通り、路線バスをホテル前の通り上で降りる。
 さすがに路線バスということもあり、ホテルの前までは入ってくれなかった。
 で、バスを降りると空には雷鳴が轟き、雨が降り出し始めた。
 大粒の雨だ。
 私達はバスを降りると、急いでホテルまで走った。

 愛原:「間一髪間に合った……のかな?」

 ホテル正面入口の屋根の下まで行くと、シャワーみたいな雨が降り出していた。
 空からはゴロゴロと雷が鳴っている。

 高橋:「普通の雨ならギリセーフなんでしょうけどねぇ……」
 リサ:「まあ、何とかなる精神で何とかなった」
 凛:「早く入りましょう」

 入口の所には、歓迎札が掲げられていて、そこに『愛原学先生御一行様』と書かれていた。

 高橋:「偉いっスね!ちゃんと、先生を先生と呼んでますよ?」
 愛原:「俺は別に偉い先生じゃないんだがねぇ……」

 本来、探偵はそんな風に呼ばれるものではない。
 だが、私に師事する高橋がそう呼び、リサがそれを真似して、リサの周囲の者達がそれを真似して……といった構図だ。

 フロント係:「いらっしゃいませ」
 愛原:「予約していた愛原です」

 私がフロントに向かうと、凛も付いてきた。
 凛は当然の如く、フロントの中に入って行ったので、私は一瞬ビックリする。
 だが、元々凛は女将であった母親と共に、ここでアルバイトをしていたのだった。
 高校進学を気にアルバイトを辞めたと思うが、母親が名義上このホテルの共同支配人の1人であった為、ここでも自由に振る舞えるようだった。

 凛:「愛原先生は、こちらの書類に書いてください」

 恐らく特別割引を利かせる為の書類があるのだろう。
 一般の宿泊者カードとは違う物を書かされた。
 書く内容そのものは同じであったが。

 フロント係:「ありがとうございます。それでは、こちらがカードキーなっておりますので」
 愛原:「ありがとう」
 凛:「それじゃ先生、どうぞごゆっくり。私達は寮に戻ります」

 このホテルの裏手には従業員寮があり、上野姉妹はそこに住んでいた。
 2人とも上京の為、引き払ったわけではないようだ。
 母親の上野利恵がいつ釈放されるか分からないので、引き払うにも引き払えないのだろうか。

 リサ:「えー?リン達は泊まらないの?」
 凛:「このプランは『スタッフ紹介プラン』なので、スタッフが泊まると意味が無いんです。お風呂だけは御一緒させてもらいますから」
 愛原:「まあ、いいじゃないか。部屋に行こう」

 私は部屋のカードキーを持って、エレベーターに向かった。
 驚いたことに、古いエレベーターはリニューアルされていた。
 それ自体は珍しいことではないが、セキュリティが強化され、乗り場ボタンの下にカードリーダーが設置された。
 ここに先ほどのカードキーを当てないと、ボタンを押しても反応しないというものだ。

〔上に、参ります〕

 昔、都内のビルの防災センターに勤務していた経験から、もしかしたらと思ったのだが、やはりそうだった。
 カードリーダーは内側にもあって、乗り込んだ後で内側のカードリーダーにもカードを当てないと、やはり行き先階のボタンが押せないようになっていた。

〔ドアが、閉まります〕

 高橋:「いきなりメンド臭くなりましたね?」
 愛原:「何かあったんだろうなぁ……」
 リサ:「何かあったに決まってるでしょ。先生が襲われた!」
 愛原:「え!?それのせいなの!?」
 高橋:「エレベーターは関係無くね?」
 愛原:「なあ?」

 リサ達の得意技に、ダクトを通ってマップ移動できるというものがある。
 BOWや、最近のザコクリーチャーもそれをやってのけて来ているので、逃げ込んだ部屋に誰もいないからと言って安心してはいけない。
 ダクトを通って追い掛けて来る恐れがある。
 私も上野利恵には、それで部屋に侵入されて襲われた。
 リサも第3形態まで変化させれば肉体を軟化できるということもあり、そのスキルを使用することができる。

 愛原:「一応、報道もされたから、外部向けに『館内セキュリティを向上させました』というアピールなのかもしれんね」

〔ピーン♪ 7階です。下に、参ります〕

 私達が宿泊する客室フロアに到着する。

〔ドアが、閉まります〕

 因みにこのエレベーター、オーチス製で、アナウンスは富沢美知恵氏という声優が声をあてている。
 氏は有名どころでは、“クレヨンしんちゃん”の『まつざか先生』や、“ゴーストスイーパー美神”の『小笠原エミ』、“ブラックラグーン”の【某メイドさん】の役を務めている。
 が、先にそちらの声を知っている者がエレベーターのアナウンスを聴くと、『本当に本人?』と首を傾げるのである。

 愛原:「えーと……この部屋だな」

 私はつい和室二間の部屋を想像していたのだが、入って見るとそこは洋室だった。
 ツインの部屋が2つ繋がった、いわゆる『コネクティングルーム』であった。

 愛原:「よし。俺と高橋はこっちのベッドで寝るから、リサは隣のベッドで寝てくれ」
 リサ:「えー?ベッド1つ余るよ?」
 愛原:「3人なんだからしょうがない」
 リサ:「だから先生が、私の隣で寝て?」
 高橋:「マグナム撃ち込むぞ、コラ!」
 愛原:「まあまあ」

 その時、部屋のチャイムが鳴った。

 高橋:「俺が出ます!」

 高橋はマグナムを構えた。

 愛原:「おいおい。そんな身構えなくても……。リサ、BOWの気配はするか?」
 リサ:「ううん、しない」
 愛原:「ほら。普通の人間だよ」

 外国ではそれが強盗である可能性もあるのだが、今さら人間の強盗くらいで驚く私達ではない。
 こちとら、もっと恐ろしい化け物達を相手にしてきているのだ。

 女将:「失礼します。御挨拶の方、よろしいでしょうか?」

 入って来たのは新しい女将だった。
 上野利恵が不祥事案件を起こした為に解任となり、代わりに別の女将が就任したようだ。
 今度の女将は、普通の人間らしい。
 私よりもずっと年上の女性だった。
 さすがに、私の母親ほどではないがな。

 愛原:「どうぞどうぞ」
 女将:「本日は天長園をご利用頂き、ありがとうございます。よろしければ、お部屋の御説明と館内の御説明をさせて頂きたいと存じますが、宜しいでしょうか?」
 愛原:「是非」

 こういう女将の説明も、旅行気分の1つだと私は思う。
 既に何度か泊まっているホテルなので、新しい情報は殆ど無かったが、しかし全く無かったわけではなかった。
 やはり、この部屋はリニューアルされていた。
 元々はやはり和室だったらしい。
 それを前の女将の不祥事案件により、損傷してしまった為、思い切って洋室に改装したのだそうだ。
 確かにホテル外観と、部屋の外側と比べれば、やけにこの部屋は真新しい感じを受ける。

 女将:「愛原様方には前任の者が多大な御迷惑を掛けてしまい、そのお詫びの意味も込めまして、こちらのお部屋を御用意させて頂いた次第でございます」

 確かに、私が利恵に襲われた部屋と同じフロアだったような気がする。
 ていうか、まんまこの部屋だったのでは?
 しかし、さすがにダクトは存在したままだった。
 まあ、建物の構造上、仕方が無いとは思うが。

 女将:「御夕食は6時からとなってございますので、それまでの間、どうぞごゆっくりとお寛ぎくださいませ」
 愛原:「ありがとう」

 私は夕食の前に、温泉に浸かることにした。
 外は相変わらず大雨が降っている。
 露天風呂は、この時間帯は諦めざるを得ないだろう。
 まあ、どうせゲリラ豪雨か何かだろうし、夜には止むだろうから、その時に入ればいいか。
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