報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「GW最後の行楽」

2022-06-22 13:44:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月7日10:35.天候:曇 栃木県那須郡那須町 那須ハイランドパーク]

 那須塩原駅からバスで1時間15分。
 一般の路線バス車両でこの所要時間だから……。

 愛原:「腰が痛ェ……」

 1番後ろの広い席に座っていたとしても、さすがに腰が疲れた。
 尚、このバスは板室温泉経由であり、ホテル天長園の前も通るのだが……。

 高橋:「先生、さっきのホテル見ました?でっけェ看板で、『歓迎!愛原先生御一行様』って書いてありましたよ?」
 愛原:「いや、見てなかった。おい、ウソだろ?」
 凛:「いえ。『最も危険な12人の巫女』様の1人が来られるという話をしたら、何だか歓迎ムードになりまして……」
 リサ:「わたし、神!?ゴッド!?」
 凛:「いえ、巫女です。白い仮面は持って来ましたか?」
 リサ:「いつも持ってる」

 尚、毎年、東京中央学園の七不思議は更新されているという。
 バスを降りると、私達は早速パークに向かった。

 愛原:「さて……」

 私が手に取るのはデジカメ。

 愛原:「俺は撮影係だ。あとは適当に楽しんでくれ」
 リサ:「えー、先生も楽しもうよ」
 愛原:「リサ達の行動をレポして、デイライトさんに提出しないといけないんだ」
 リサ:「そうなの?」
 愛原:「俺にとっては、これも仕事さ。というわけで、どのアトラクションにも乗れるパスポートを買ってあげるから、適当に楽しんでくれ」

 私はデジカメの電源をONにした。

[同日12:00.天候:曇 那須ハイランドパーク・スマイルサニーレストラン]

 えー、まずBOW達をホラーアトラクションに連れて行ってはいけないことを知った。
 半分は人間であるはずの上野姉妹は、キャーキャー言っていたが、肝心のホラーを提供する側が、リサ達を見てそれ以上にビックリしていたことは【お察しください】。

 リサ:「お客さんがBOWになって、獲物を追いかけ回すアトラクションとかはどう?」
 愛原:「そんなものあるか!」

 東京中央学園高等部の文化祭において、リサが『ホラーハウス』でオリジナル版リサ・トレヴァーの役をやった際、会場が阿鼻叫喚の地獄と化した。

 高橋:「センセ、やっぱりこういう所は絶叫系っスよ。絶叫系なら盛り上がったでしょ?」
 愛原:「これがか!?」

 私が写真を撮り出すと、リサが絶叫を上げながら背中から触手を出したものだから、後ろの客が別の理由で絶叫を上げているシーンが写し出されていた。

 高橋:「後ろでこんなことが……!?」

 私と高橋が隣り合って座り、その後ろにリサ達が座っていたのだが……。
 上野姉妹も微妙に変化しているように見えるが、リサみたいに触手を出すわけじゃないからな……。

 愛原:「そうだよ」
 リサ:「とにかく、お昼にしよ!」

 リサはビーフカレープレートを食べ始めた。

 愛原:「全く……」

 私は醤油ラーメン。
 たまに昼間、ラーメンを食べたくなる。

 愛原:「午後は気を取り直して、あまりリサ達が興奮して変化しない所に行こう」
 リサ:「えー、それじゃつまんないよ」
 高橋:「オマエらが変化するから、先生に気を使わせてんだろうが」
 リサ:「ゴメンナサイ」

[同日15:30.天候:曇 同パーク・ウーピーズキングダム]

 午後は大観覧車やミニトレインなど、絶叫系やホラー系を避けたアトラクションに終始した。
 最後はウーピーズキングダムと言う、土産やグッズを取り揃えたショップに立ち寄った。

 愛原:「御用邸チーズケーキ、斉藤社長へのお土産に買って行ったっけなぁ……」
 高橋:「善場の姉ちゃんに買って行ってあげたらどうっスか?」
 愛原:「『国家公務員として、民間からそのような物は受け取れません。贈収賄罪に問われかねませんので』と言って断られた」
 高橋:「相変わらず頭の固ェ姉ちゃんだ」
 凛:「それなら、一緒に食べるのはどうですか?」
 愛原:「なるほど。それはいいかもしれない」

 たまに、善場主任の方から事務所に来ることがある。
 その時にお出しすればいいのかも。

 リサ:「もしムリなら、『自分への御褒美』で先生が食べる」
 愛原:「いいのかな……。そういうリサは、友達に何か買って行かないのか?」
 リサ:「もちろん買う。これが鬼斬り先輩用」
 愛原:「蓮華さんに買って行ってあげるのか」
 リサ:「うん。『これで、わたしを斬るのはカンベンしてください』って」
 高橋:「女桃太郎には弱ェな!」

 いや、一応ケンカはリサの方が強いのだが。
 だが、本当に鬼の首が斬れる刀というのは、リサにとってはロケットランチャーより怖い武器らしい。

 リサ:「リンも買って行った方がいいかもしれない」
 凛:「そ、そうですか。先輩がそう仰るのなら……」
 理子:「私も買って行った方がいいですか?」
 リサ:「リコは中等部だから、多分大丈夫。校舎も違うし」
 理子:「そうですか」

 まあ、BSAAやブルーアンブレラ以外にも、抑止力があるのはいいことだ。

[同日16:00.天候:曇 同パーク『那須ハイランドパーク』バス停→関東自動車バス車内]

 1日2本しか無いバスの終便に乗り込む。

 愛原:「すいません。ホテル天長園の前で降ろしてもらえますか?」
 運転手:「ホテル天長園の前ですね。分かりました」

 ホテルのある辺りはフリー乗降区間なので、バス停ではないホテルの前でも運転手に言えば降ろしてもらえる。
 途中で降りるので、前の方の席に座った。

〔「板室温泉、黒磯駅西口経由、那須塩原駅西口行き、発車致します」〕

 バスは、だいたい席が埋まる程度の乗客を乗せて発車した。

 愛原:「いやあ……疲れた……」
 高橋:「先生、あとはホテルでゆっくり休んでください」
 愛原:「そうさせてもらう」

 ぐったり疲れているのは私だけではない。
 バスには他にも家族連れが乗っているのだが、やっぱり親は疲れているようだ。
 彼らがどこまで乗って行くのかは知らぬが、多分彼らがバスを降りる頃には【お察しください】。

 凛:「今日はありがとうございました。ホテルの御案内は任せてください!」
 愛原:「ふふ……若いっていいねぇ……。よろしく頼むよ」

 今日は温泉にし、明日を遊園地にするという手もあったのだが、先に行っておいた方が後で疲れなくていいと思ったのだ。

 高橋:「先生、何か降りそうですよ?」

 空はどんよりと曇っている。
 もうだいぶ日が長くなったはずだが、真冬の日の長さかと思うくらい、薄暗くなっている。

 愛原:「ああ。遊園地で降られなくて良かったな」

 ホテルにいる分には、まあ雨が降っても良い。
 私はそう思った。
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“私立探偵 愛原学” 「那須紀行」

2022-06-22 11:03:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月7日07:44.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東北新幹線355B列車8号車内]

〔22番線から、“やまびこ”355号、仙台行きが発車致します。次は、上野に止まります。黄色い線まで、お下がりください〕

 ホームから発車ベルの音が聞こえてくる。
 東海道新幹線では発車メロディを導入しているが、それ以外の新幹線ホームではベルである。
 発車ベルが鳴り終わると、甲高い客扱い終了合図のブザーが流れてくる。
 これは駅員が車掌に対して、『乗客の乗りが終わったので、ドアを閉めても良い』という合図である。
 英語で言えば、『All aboard』である。
 これを直訳すると、『皆さん、ご乗車ください』ということらしいが、実際にアムトラック(全米旅客鉄道公社)の車掌が『発車オーライ』的な感じで歓呼しているのを見ると、『全員乗車完了』という意味のような気がしてしょうがない。
 新幹線では駆け込み乗車が無かったか、スムーズに発車した。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“やまびこ”号、仙台行きです。次は、上野に止まります。……〕

 私を含めて、朝食の駅弁に箸を付ける。
 いつもより朝食時間が遅かったせいか、リサは一心不乱に弁当の中身をかき込んでいた。

〔「皆様、おはようございます。本日も東北新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございます。7時44分発、各駅に停車致します“やまびこ”355号、仙台行きです。東北新幹線では3月16日に起きました地震の影響で、現在暫定ダイヤでの運転となっております。……」〕

 東海道新幹線で言えば、“こだま”号のような列車である為、車内の混雑はそれほどでもない。
 多分、編成が長いからというのもあるだろう。
 元々この列車は、“やまびこ”205号であったそうだ。
 それが暫定ダイヤで、列車番号が変わっている。
 いずれにせよ、各駅停車タイプであることに変わりは無い。
 暫定ダイヤで郡山駅以北で徐行運転を行う為に、所要時間が長くなっていることを放送で言っていた。
 徐行運転を行うのはそうであったとしても、通常ダイヤよりも遅くなるのは栃木県からである。
 なので、私達が下車する那須塩原の時点で、既に影響が出ているというわけだ。
 東京駅を出発すると、私はすぐに善場主任にメールで報告。
 主任からはすぐに返信メールが来た。
 土曜日でも出勤されるのだろうか。

 愛原:「善場主任、今日も出勤なのかね。報告メール送ったら、すぐに返信が来たよ」
 高橋:「あの姉ちゃんも働き者ですね。あれも化け物ですから、案外体力はガッツリあるのかも」
 愛原:「おいおい、失礼なこと言うんじゃないよ」
 高橋:「ここだけの話っス。霧生市に行った時、その化け物ぶりを俺は直に見たんスから」
 愛原:「ああ、聞いたよ」

 人間なら致命傷とも言うべき傷を負った善場主任だったが、刺さった物を高橋に抜いてもらっただけで、傷は見る見るうちに塞がって行き、ついには何の痕も無く消えてしまったそうだ。
 これはGウィルスの効力の1つである。
 同じ現象をアメリカのシェリー・バーキン氏も起こすことができるそうだ。
 いくらBOW化が防げたとしても、感染者の遺伝子に深く侵蝕する為に、例えワクチンを投与しても、後遺症は長期に亘り(或いは一生)残り続けるという。
 ただ、後遺症というのは苦しむべき病状のことを言うのだが、Gウィルスの場合はちょっと違う。
 はっきり言って、特異菌よりも危険なウィルスなのである。
 傷をたちどころに癒やしたり、超人的な身体能力を手に入れられたり、老化が止まるなんて後遺症とは言えないだろう。

 愛原:「俺はGウィルスなんてカンベン願いたいね」
 高橋:「全くです」
 リサ:「…………」

[同日09:03.天候:曇 栃木県那須塩原市大原間 JR那須塩原駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、那須塩原です。東北本線、黒磯方面はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。那須塩原の次は、新白河に止まります〕
〔「まもなく那須塩原、那須塩原です。お出口は、左側です。停車の際、電車が大きく揺れる場合がございます。お立ちのお客様は、電車の揺れにご注意ください。お乗り換えの御案内を致します。宇都宮線下り……」〕

 愛原:「新幹線だとあっという間だな」

 私はそう言うと、席を立って荷棚に乗せた荷物を降ろした。
 電車が揺れるというのは、那須塩原駅のホームは本線から外れた副線にある為、そこへのポイント通過で揺れるという意味である。
 新幹線では、よくある構造だ(東海道新幹線では、新富士駅もそうだね)。
 そして、ホームの無い本線を通過列車が轟音を立てて通過して行くのが醍醐味だ。

 愛原:「忘れ物に気をつけろよ」
 高橋:「大丈夫っス」

〔「ご乗車ありがとうございました。那須塩原、那須塩原です。お忘れ物の無いように、お降りください。……」〕

 ドアが開くと私達はホームに降り立った。
 ここでの下車客も、意外と多い。
 特に、自由席から降りてくる客が目立った。
 東京駅出発の時点では賑わう自由席車も、こういう所で空いてくるのだろうか。

 愛原:「次はバスに乗るけど、所要時間結構掛かるから、先にトイレとか行っておいた方がいいな」
 高橋:「そうですね。そうしましょう。俺は一服してきますんで」
 愛原:「行ってらっしゃい」
 リサ:「じゃあ、わたしもトイレ行って来る」
 愛原:「ああ。バスの時間は9時20分だ。遅れるなよ」

 もっとも、そのバスはホテル天長園の前を通ることもあってか、上野姉妹はよく知っているようだ。

 高橋:「バスで行くと、遊園地までどれくらい掛かるんスか?」
 愛原:「時間にして、1時間ちょっとだね」
 高橋:「マジっスか!」
 愛原:「マジです。だから、先にトイレは済ませた方がいい」
 高橋:「タバコもですね?」
 愛原:「……そだね」

 こいつはどうやら禁煙する気が無いらしい。
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