報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「中央線の旅」

2022-06-12 20:32:58 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月29日15:37.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅・中央線ホーム→1593T電車10号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。1番線に停車中の電車は、15時37分発、中央特快、高尾行きです。発車まで、しばらくお待ちください。次は、神田に停車致します〕

 私達は中央線ホームに移動し、そこから中央特快に乗車した。
 本当は大月行きに乗りたかったのだが、ちょうどいい時間の電車が無かった為、高尾までこれに乗ることにした。
 さすがは京王線の特急に対抗する為に設定された、日本初の特別快速ということもあり、中央線で東京都の東端である高尾駅まで1時間足らずで行くことができる。
 しかも、珍しい電車に乗ることができた。
 いま、中央快速線ではグリーン車を組み込む計画を進めている。
 しかし、全ての電車に一気にそんな改造工事はできないから、少しずつ行う形になる。
 で、改造工事中は当然走ることはできないから、その分、電車が足りなくなってしまう。
 そこで、逆に新車投入で余りが出た千代田線乗り入れ用の電車を臨時に持って来て運用することになったのだ。
 しかし、千代田線乗り入れ用(常磐緩行線)と中央快速線ではラインカラーが違う。
 そこで、見た目には塗装だけ変更して臨時運用に当たっているわけである。
 その運用に私達は当たってしまったわけだ。

 
(右が通常、中央快速線で運転されているE233系。左が臨時運用に当たっている、今回愛原達が乗った元・常磐緩行線の209系)

 
(臨時運用の為か、内装についてはさほど手を加えられていない)

〔「ご案内致します。この電車は15時37分発、中央快速線、特別快速、高尾行きです。お待たせ致しました。信号が変わりましたので、発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください」〕

 座席についてはE233系よりも硬い。
 また、運用についても基本的には高尾から西の大月行きなどには使用しないし、10両固定編成なので、青梅線や五日市線に乗り入れることも基本的には無い(ダイヤ乱れによる臨時運用で、稀に入ることはあるかもしれないという。実際それに備えて、その線区用の行き先表示も用意されているとか)。
 ホームから、アップテンポの発車メロディが流れてくる。

〔1番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 電車はドアを再開閉させることなく、スムーズに発車した。
 中央線ホームにはまだホームドアが無いので、電車のドアが閉まればすぐに発車する。

〔「お待たせ致しました。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。中央線、特別快速の高尾行きです。停車駅は神田、御茶ノ水、四ツ谷、新宿、中野、三鷹、国分寺、立川、立川から先の各駅です。次は神田、神田です。お出口は、右側です」〕

 尚、自動放送は無い。
 常磐線時代から無かったのか、或いは臨時運用の為だけではと、この中央線用の自動音声データは搭載されなかったのかは不明だ。
 リサ達は制服を着ている。
 5月から上着の着用は自由化されるらしいが、今はまだ緑色のブレザーを着ている。
 泊まり掛けで行くということもあり、彼女達はいつもの通学鞄よりも少し大きめのバッグを持っていた。
 まるで部活帰り、或いはこれから合宿に行くみたいな感じだ。
 特にスポーツ系の上野凛さんを見ると、そんな気がするのである。
 リサは完全なるBOWということもあり、通学も特別に認められているということもあって、部活までは許可されていない。
 しかし、生徒会の手伝いとかはしているようだ。
 また、学校で多発しているという怪奇現象の謎を追う為に、新聞部に仮入部したこともある(その怪奇現象の原因のうち、6割は“トイレの花子さん”絡みによるもの、3割はリサ自身によるもの、そして残りの1割はまだ原因が特定されていないという)。

 高橋:「先生、タバコいいっスか?」
 愛原:「電車ん中で吸うな」
 高橋:「あ、もちろん降りてからっスよ」
 愛原:「残念だ。国電区間の駅は、全部禁煙だ」
 高橋:「えーっ!」
 愛原:「藤野まで我慢するんだな」

 車なら禁煙車でなければ吸えたかもしれないが、免停食らうのが悪い。

[同日16:33.天候:晴 東京都八王子市高尾町 JR高尾駅]

 リサの目について調べたいというのが、今回の再検査の理由だ。
 完全に人間に化けた第0形態なら、概して瞳の色は黒いままだが、第1形態の鬼姿の時は赤色になったり金色になったりする。
 私も何の違いでそうなるのかは分からなかった。
 それを調べたいのだという。
 些事かもしれないが、こういう所にリサが人間に戻れるヒントが隠されているのかもしれない。
 どうせゴールデンウィークは旅行に行く予定は無いので、ちょうど良いだろう。

〔「まもなく終点、高尾、高尾です。1番線に入ります。お出口は、左側です。お降りの際、車内にお忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください。高尾からのお乗り換えをご案内致します。今度の中央本線下り、普通列車の大月行きは、3番線から16時47分。その後、普通列車の小淵沢行きは、4番線から17時19分の発車です。京王高尾線ご利用のお客様は、一旦改札を出てからのお乗り換えとなります。本日もJR東日本、中央快速線をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 東京駅を発車する時は、やや遅れ気味だった電車も、高尾駅に着く頃には定時に回復できていた。
 東京でも気軽に登山できる高尾山への入口駅だが、実際に高尾山に行くには、ここから京王線に乗り換える必要がある。

〔たかお~、高尾~。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 電車がホームに到着し、私達は電車を降りた。
 大月行きだったらここで乗り換えをせずに済むのだが、仕方が無いだろう。

 リサ:「そういえば今日は、八王子に泊まんないんだね?」
 愛原:「今回は宿泊費が出ないからな。但し、研修センターへの宿泊ならいいそうだ」

 まあ、これで良かったのかもしれない。
 ホテルの中にはトリプルもあるだろうが、探してみると案外無いものだ(ファミリータイプとかだと、大抵料金の高いホテルになる)。
 それなら、大勢泊まれる合宿所みたいな所の方がいいかもしれない。

 高橋:「ここには喫煙所は……」
 愛原:「無ェよ!藤野まで我慢しろっつったろ!」

 もっとも、藤野駅にも喫煙所があるかは【お察しください】。
 まあ、少なくとも研修センターに行けばある。
 合宿所形式の宿泊施設だが、ターゲットが社会人なだけに、ちゃんと酒とタバコはやれるのである。
 私達は、更に西へ向かう電車が発車する3番線へと向かった。
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“私立探偵 愛原学” 「マッサージ器具、あなたならどう使う?」

2022-06-12 16:04:19 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月28日21:45.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園女子寮・大浴場脱衣所]
(ここでは三人称です)

 上野理子:「お姉ちゃん、大浴場、私達で最後みたいだね?」
 上野凛:「うん。消灯時間までに入れて良かったよ」

 中等部と高等部の寮ということもあり、門限もあれば消灯時間もある。
 この寮での消灯時間は、22時に設定されていた(門限ではなく、在室確認。門限以降消灯時間までの間に在室報告を寮監にすれば良いので、必ずしも22時に一斉に行うわけではない。もちろん、在室報告以降の外出並びに外泊は禁止)。
 なので、入浴できる時間も決められている。
 理子が手持ちのドライヤーで髪を乾かしていると、もう1つドライヤーらしき物を見つけた。

 理子:「あれ?誰か、ドライヤー忘れてるよ?」
 凛:「ホント?誰の?」

 凛が脱衣所の籠の中に手を伸ばすと、それはドライヤーではなかった。
 それは何と、電マ!

 理子:「!?」
 凛:「!」

 この姉妹……使ったことがない。
 そして本来の用途と、裏用途を知っていた。
 鬼の先輩である愛原リサから、『性教育』と称してさんざんっぱら『指導』されたからである。

 理子:「え……?何でこれがここにあるの?」
 凛:「誰か……使ったんじゃない?」
 理子:「ええーっ!?ここでーっ?!」
 凛:「いや、ほら、肩こり!普通にマッサージで使う以外無いでしょ!?」
 理子:「わ、分かってるよ、そんなこと!肩こり!大変だもんね!愛原先生も大変だから、リサ先輩が毎日肩もみしてあげてるって話じゃん!?」
 凛:「…………」
 理子:「…………」

 沈黙する半鬼姉妹。
 因みに理子が中学1年生の妹で、凛が高校1年生の姉である。
 最初に沈黙を破ったのは理子だった。

 理子:「こういうの、良くないよ、お姉ちゃん。正直になろ?お姉ちゃん」
 凛:「な、何のこと?正直って、私、何もウソついてないし……」
 理子:「どういう使い方、想像したの?」
 凛:「べ、別にフツーの使い方しか知らないし」
 理子:「ほら、ウソついてる!たいぶ前、リサ先輩から『他の使い方』教えてもらったでしょ!?エッチな使い方……」
 凛:「やめて!理子はまだ中学生でしょ!?」
 理子:「もう中学生だもん!リサ先輩なんか、小学生の時から『エッチなこと』してたって言うじゃない!」
 凛:「リサ先輩は私達とは違う。リサ先輩は正真正銘の化け物だから、私達と同じに考えちゃダメ……」
 理子:「誤魔化さないで!」
 凛:「BOW(生物兵器)の肩は、そんなものじゃほぐれない!」
 理子:「お姉ちゃん……」
 凛:「BOWは……肩こり解消に……そんなものは使わないの……」

 凛はポロポロと涙を零した。
 つられて理子も、涙を流す。

 理子:「この事は忘れよ……」
 凛:「うん……」

 しかし、脱衣所の外から賑やかな声がした。

 不良A:「ドライヤーと間違えて持ってった電マ、置き忘れちまったぜェ!」
 不良B:「超バカスw」
 不良A:「乾かすどころか、余計濡れちまうところだったぜェ!ワイルドだろぉ~!?」
 不良B:「いつの時代のギャグだよ!?ギャーハハハハハハハ!!」
 不良A:「ギャーハハハハハハ!!」

 不良というか、バカコンビ1号2号といったところか。
 地頭は悪くないので得意教科だけはギリギリ及第点の1号と、超絶バカのくせに勉強もロクにしないので追試や補習の常連の2号である。
 その2人が脱衣所に行くと……。

 凛:「グスッ……グスッ……」
 理子:「シクシク……」
 不良A:「……あいつら、何でアタシの電マ持って泣いてんだ?」
 不良B:「怖っ……!」

[4月29日15:15.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]
(ここから愛原の一人称になります)

 凛:「……ということがあったのが、昨夜の話です」

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は高橋とリサ、そして上野姉妹を伴って東京駅に来ている。
 先日のリサ達の身体検査で、リサに対して再検査をしたいという通知が送られてきた。
 本格的な検査は藤野の施設で行われる為、ついでにそこに収監されている上野姉妹の母親にも面会させてあげようと誘ったわけである。
 上野姉妹は寮住まいではあるが、事前に届け出れば外泊も認められる。
 ましてや今はゴールデンウィークの始まり。
 地方からの越境入学者や特待生が入寮しているわけだから、帰省は当然の如く認められている。
 尚、基本的に寮は2人部屋。
 1人部屋は一部の特待生のみである。
 本来、姉の凛は女子陸上部からスカウトされていたこともあり、正式な特待生ではないものの、寮では特待生扱いされるはずだった。
 しかし、妹との同室を望んだので、それが認められている(本来、中高一貫校とはいえ、中学生と高校生が同室になることはない)。

 愛原:「面白い学校だねぇ……」
 リサ:「うん、面白い学校だと思う」
 高橋:「女子校のノリっスね」

 東京駅で待ち合わせしたのだが、どうも姉妹のテンションが異常に低かった為、何か悩みでも抱えているのかと思い、まだ電車の時間まで間があったので、話を聞いてみたのだった。

 愛原:「ていうか……」

 私はリサの頭にグリグリ攻撃。

 愛原:「つまりはオマエのせいだろうが!」
 リサ:「あぁん!もっとォ~!」

 私からの体罰も、リサには御褒美か……。
 電マはリサのBOWとしての異常な性欲を解消させる為に買い与えたものだ。
 自分に使うだけならまだしも、後輩達にも使うとは……!

 高橋:「先生、こいつ、最近チョーシに乗ってますぜ?一度、マグナムで頭撃ち抜いた方がいいかもしれません」
 愛原:「チョーシに乗っている?オマエが言えた口か?」
 高橋:「ファッ?!」

 藤野にこの人数で行くのなら、いつも通りミニバン1台をレンタルして行くのが楽である。
 それがどうして、面倒な乗り換えのある電車になったかのかというと……。

 愛原:「オマエは何回免停食らったら気が済むんだ、このドアホ!」
 高橋:「さ、サーセン!い、いや、すいません!」

 運転役の高橋がまた免停を食らったので、往復共に公共交通機関と相成った次第である。
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