報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「GW中、東北新幹線は暫定ダイヤだった」

2022-06-21 21:04:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月7日07:00.天候:晴 東京都千代田区鍛冶町 JR神田駅]

 岩本町駅で電車を降りた私達は、徒歩でJR神田駅に向かった。
 神田駅の入口に行くと、既に上野姉妹が待っていた。

 上野凛:「おはようございます!」
 上野理子:「おはようございます」

 上野姉妹も私服だった。
 スポーツ系の凛はショートパンツ姿だったが、それほどでもない理子はスカート姿だ。
 リサと比べれば、その丈は長い。

 凛:「今日はよろしくお願いします!」

 さすが体育会系なのか、凛はハッキリとした挨拶をしてくる。

 愛原:「ああ、おはよう。今日はよろしくな。じゃあ、キップは1人ずつ持とう」

 私はキップの束を取り出した。
 新幹線は普通車指定席である。
 先頭車や最後尾ではない為、予め善場主任を通してBSAAには連絡してある。

 リサ:「わたし、先生の隣ね!」
 高橋:「俺もお願いします!」
 愛原:「ハイハイ」

 というわけで必然的に、私は3人席の真ん中になるわけである。

 愛原:「2人は2人席で隣同士でいいかな?」
 凛:「あ、はい。ありがとうございます」
 愛原:「じゃあ、まずは東京駅まで行こう。乗車券だけを改札口に入れてね」

 私は『東京山手線内→那須塩原』と書かれた乗車券を手にした。
 これは片道の距離が101km以上200km以下の乗車券に適用される制度で、名前の通り、東京の山手線各駅とその内側を走る中央・総武線の各駅ならどこからでも乗り降りして良いというものである。
 私達は東京駅から新幹線に乗るわけだが、神田駅から東京駅まで他の電車に乗った場合、その分の運賃を新たに払う必要があるのかというと、それは無い。
 東京山手線内の各駅であればどこからでも良いので、これが例え新宿駅から中央線に乗って東京駅まで行っても、その区間分の運賃は新たに請求されない。
 尚、片道201キロ以上の長距離になると『東京都区内』となり、更に乗降可能駅の範囲が広がる。
 ホームの駅名看板に、□に『山』と書かれた表示を見ることができるが、これは『東京山手線内』の駅であるという意味である。
 私達は山手線に一駅だけ乗り、東京駅に向かった。

[同日07:30.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅・新幹線ホーム]

 東京駅に着いて、私達は東北新幹線乗り場に向かった。
 さすがに新幹線改札口では、乗車券・特急券2枚重ねで行くことは皆知っていた。

 リサ:「先生、駅弁はー?朝ごはん!」
 愛原:「ホームに駅弁売り場があるから、そこで好きなの買っていいぞ」
 リサ:「おー!」
 高橋:「先生、俺はタバコ吸って来ます」
 愛原:「あいよ。8号車な。間違えるなよ?多分、E6系も連結されてるから、そっちに間違えて乗るなよ?」
 高橋:「分かってますって。要は赤い新幹線じゃなく、緑の新幹線に乗れってことですね」
 愛原:「そういうことだ。オマエの駅弁は買っといてやるよ」
 高橋:「先生と同じのでオナシャス!」
 愛原:「分かった」

 これから乗る列車が出るホームにエスカレーターで上がると、高橋はホームの喫煙所に行き、私達は駅弁売り場に行った。

 リサ:「これがいい!」

 やはりというか、リサは牛肉弁当を所望した。
 私はやっぱり幕の内弁当。
 高橋も同じ物でいいというので、これを2つ買う。
 上野姉妹、凛は意外と“深川めし”を所望した。

 愛原:「意外だね?意外なヤツ、チョイスしたね?」
 凛:「山育ちなもので、こういう海鮮系は珍しいんです」
 愛原:「そうなのか」

 意外と日本の鬼って、山育ちが多いよな。
 まあ、鬼ヶ島とかは海の上に位置しているが、それ以外は確かに山に住んでいるというイメージが近い(それにしても、鬼ヶ島の鬼達は、どうやって海を渡って人間の村を襲っていたのだろう)。
 上野姉妹の栃木県も内陸県だし、リサが長いこと暮らしていた霧生市も内陸部にある。

 愛原:「うーむ……」
 リサ:「どうしたの、先生?」
 愛原:「いや、基本的に日本の鬼は山に住んでいることが多いが、鬼ヶ島は海にあるなと思って……」
 凛:「それが、どうかしましたか?」
 愛原:「いや、孤島とも言える鬼ヶ島の鬼達は、どうやって海を渡って人間の村を襲っていたのかなって……」
 凛:「村を襲っていたのではなく、いわゆる海賊行為を行っていたようですよ」
 愛原:「そうなのか。……よく知ってるな」
 凛:「天長会で、そういう話があったもので」
 愛原:「ふーん……」
 凛:「あとは干潮の時に海が浅くなるので、その時に徒歩で渡っていたとも言われています」
 愛原:「そんな簡単にできるものかね?」
 凛:「リサ先輩が使役されるタイラントとかも、かなり身長が高いじゃないですか」

 タイラントは安土桃山時代からいたのか?

 愛原:「そしたら、桃太郎達がわざわざ舟を調達する意味が無くなる」
 凛:「兵器や手勢も乗せる為、帰りは宝物を乗せる為に舟を調達したらしいですよ」
 愛原:「そうなのか。何か、まるでキミ達が本物の鬼のように見えてくるよ」
 凛:「……母が投与された特異菌って、どうもアメリカとかヨーロッパの事件の元となったヤツとは違うみたいです」
 愛原:「違う!?」
 凛:「はい。白井博士がどこからか手に入れた、鬼のDNAと混合したとか……。だから、私の母は鬼のような姿になりますよね」
 愛原:「おいおい、変なタイミングで新たな真相が出て来たな」

 白井は鬼を復活させようとしでもしていたのか?

 凛:「白井博士は永遠の命に拘っていました。鬼の寿命も長いですから、関心があったそうです。『最も危険な12人の巫女たち』が、どうして危険なのかと言いますと、『鬼の化身だから』だそうです」
 愛原:「……せっかくだから、天長会に行って詳しい話を聞いた方がいいか?」

 白井は死んだが、どこかで別の人間に生まれ変わっている。
 天長会は、それを知っているかもしれない。
 私は駅弁と飲み物を買うと、8号車へと急いだ。

〔ピン♪ポン♪パン♪ポン♪ 22番線に、7時44分、“やまびこ”355号、仙台行きが17両編成で参ります。この電車は、各駅に止まります。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車と11号車、自由席は1号車から3号車と、12号車から17号車です。まもなく22番線に、“やまびこ”355号、仙台行きが参ります。黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕

 ホームを歩いていると、接近放送が鳴り響いた。
 ホームに清掃員が整列していないので、どうやら折り返し列車ではないようだ。
 すぐに乗れそうなので、私達はすぐに列に並んだ。
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“私立探偵 愛原学” 「幾度目かの北関東紀行」

2022-06-21 16:03:26 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月7日02:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 ここ最近、リサの奇行が著しい。
 私への想いの強さによるものなのだろうが、私の部屋に夜這いに行こうとする。
 しかし、私の部屋のドアには、リサ対策でドアに鍵を3つほど付けているので、簡単には開けられない。
 もちろんリサが本気を出せばそれでもドアを破ることはできるし、もっと乱暴なやり方だと、隣の壁をブチ破ってもいい。
 アメリカの本家リサ・トレヴァーはそこまではしなかったが、タイラントやネメシスはそれをやっていた(“バイオハザードRE:2”“バイオハザードRE:3”)。
 今夜もまた、ドアの向こうでドアを引っ掻く音がする。
 第1形態に戻り、鋭く長い爪でカリカリと引っ掻いているのだ。

 リサ:「先生……先生……。ここを開けて……。ねえ……お願い……。先生……」

 ドアをムリに破ろうとしたり、壁をブチ破ろうものなら、即座にBSAAが出動することになっている。
 私に迷惑が掛かり、それで嫌われることを警戒しているリサができる精一杯のラブコールらしい。

 カリカリ……カリカリカリ……。

 愛原:「リサ、今何時だと思ってるんだ?早く部屋に戻って寝なさい」
 リサ:「眠れないの。ここを開けて?」

 リサは甘えた声で、ドアの向こうから囁いてくる。

 愛原:「俺は眠いんだ。またな」
 リサ:「そんなぁ……先生……」

 開扉を拒絶すると……。

 リサ:「シクシク……グスン……グスン……」

 ドアの向こうからすすり泣く声が聞こえてくる。
 しかし、それで仏心を出し、ドアを開けてはならない。
 もうこの辺はジャパニーズホラーの定番ですな。
 開けた途端、鬼と化した女が飛び込んで襲って来る。
 そして、あとは【お察しください】。
 というわけで私は、急いでベッドに戻った。
 言うべきことは言ったのだから、これで後は朝まで待つ。
 これがここ最近の夜中のルーティンであった。

[同日06:00.天候:晴 愛原のマンション]

 で、朝になると……。

 リサ:「先生、おはよう!」

 夜中の奇行がウソのように、ケロッとして部屋から出てくるリサなのだった。

 愛原:「おはよう。……って、オマエまた下着だけで寝て……」

 リサは上は黒いスポブラ、下は同じ色のボクサーショーツを穿いていた。

 リサ:「だってぇ……。ここ最近暑いんだもん」
 愛原:「いや、それはオマエの体温が高いだけだ」

 ゴールデンウィークに入り、確かに昼は暖かくなったか、夜はまだガチ涼しいぞ。
 日によっては、上着を羽織らないと寒いくらいだ。

 愛原:「早く着替えて来い。今日は朝から出発なんだから」
 リサ:「はーい」

[同日06:45.天候:晴 同地区内 都営地下鉄菊川駅→661K電車先頭車内]

 私達は朝食は取らずに、地下鉄の菊川駅に向かった。

 リサ:「温泉だけ行くのもつまんないなぁ……」
 愛原:「そうだろ?」

 私はそれだけで十分な旅行なのだが、リサ達には味気ないことだろう。
 そこで……。

 愛原:「どうして温泉だけでこんな朝早く出るのかというと、その前に遊園地に行こうと思うからだ」
 リサ:「遊園地!?」
 愛原:「リサ、前に絵恋さんと行った時、遊園地にも行っただろ?」
 リサ:「時間が短くて回り切れなかった」
 愛原:「そうだろう?そこで今日は、その回れなかった所を回ればいいと思ってね」
 リサ:「おー!」
 高橋:「これも先生の御計らいだ。感謝の気持ちを忘れるなYo?」
 愛原:「何で最後、ラッパー風に?」
 高橋:「ノリっスよ、ノリ」

 週末の早朝でまだ人けも疎らな地下鉄の駅に行き、そこで電車を待っていると、トンネルの向こうから強い風が吹いて来た。

〔まもなく1番線に、各駅停車、笹塚行きが10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 風が一層強くなり、電車が接近する轟音が響いてくる。
 リサのショートボブヘアーが風で揺れた。
 今日は私服姿であり、黒いミニ丈のプリーツスカートと白いTシャツ、その上にはグレーのパーカーを羽織っていた。
 御嬢様の服装をしていた斉藤絵恋さんと比べると、随分とラフな格好だが、BOWで服装に気を使う者はあまりいないようである。

〔1番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです。きくかわ~、菊川~〕

 乗り入れて来た京王電車がやってきた。
 笹塚行きということは、これから京王線に帰る所なのだろう。
 やってきたのは“京王ライナー”にも使用される新型車両(5000系)ではなく、従来からの車両(9000系)。
 平日よりも空いているローズピンクの座席に腰かけた。
 すぐに短い発車メロディが流れる。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 こんな空いている時間でも駆け込み乗車があったのか、JR東海の在来線車両(313系など)と同じドアチャイムを何度か鳴らして再開閉した。
 少なくとも駆け込みは、階段から離れた先頭車では起こっていない。
 階段に程近い中間車両のどこでか行われたのだろう。
 そして、ようやく運転室から発車合図のブザーが聞こえて来て、電車が走り出した。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Morishita.S11.Please change here for the Oedo line.〕

 リサ:「先生、この電車でどこまで行くの?」
 愛原:「岩本町駅だ。そこから神田駅まで歩く。神田駅で上野姉妹と待ち合わせて、東京駅まで行くよ」
 高橋:「何か、あいつらに気を使ってません?東京駅そのまま現地集合にした方がいいんじゃ?」
 愛原:「まだ彼女らは上京したてだからね。東京駅はまだ引率無しでは厳しいだろう」

 幸い彼女らが乗ってくる地下鉄銀座線は、日本で最初に開通した地下鉄ということもあり、基本的にどの駅の構造もシンプルだ。

 愛原:「神田駅の構造はシンプルだからね。それに……」
 高橋:「それに?」
 愛原:「彼女達の力で、宿泊料金が激安になったんだから、それくらいのサービスはしてあげなきゃ」
 高橋:「そういうことですか」
 リサ:「どのくらい安くなったの?」
 愛原:「安いチェーンホテル並み」
 高橋:「東横イン並みっスか!そりゃ安くなりましたね!……素泊まりで?」
 愛原:「いや、もちろん2食込みで」
 高橋:「なるほど。それで、一応オレ達が歩く側にしたわけですか」
 愛原:「オマエ達は若いんだからいいだろう?」
 高橋:「まあ、そうッスね」

 今頃、半鬼姉妹も銀座線に乗っているだろう。
 そういえば、荒俣宏先生の“帝都物語”では、地下鉄銀座線の工事現場に鬼が出るということで、ロボットを使って鬼退治するシーンが無かったっけ。
 その銀座線に半分だけとはいえ、鬼の血が流れている姉妹が乗り、それから凡そ50年後に開通した都営新宿線に鬼娘が乗車している……と。
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