報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「天長園の夜」

2022-06-25 21:12:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月7日21:00.天候:晴 栃木県那須塩原市 ホテル天長園7F客室]

 念願の露天風呂に入った後は、部屋に戻った。
 で……。

 リサ:「いらっしゃいませ。『リサ・トレヴァーの出張マッサージ店』へ。ただいま、緊急オープンします」

 浴衣姿のリサが鼻息荒くし、両手をわきわきさせて言った。

 愛原:「う……風呂上がりのマッサージは格別だが、俺の岩のように凝り固まった肩をほぐすことができるのか?」
 リサ:「ここの温泉、効能に『肩こり』とあった。それで先生の肩は、ある程度ほぐれてるはず。そこへ私がトドメを刺せば、先生の肩コリは治るはず」
 愛原:「いや、トドメ刺すな。……まあ、そういうことだったら、お願いしようかな」
 リサ:「こっちに来て、椅子に座って」

 リサ、私の手を引っ張る。
 そして、窓際の椅子に私を座らせた。

 リサ:「どこがお疲れですか?」
 愛原:「えっと……だから、肩……」
 リサ:「他には?」
 愛原:「あとは腰とか……」
 リサ:「あとは股関節が疲れてますね。分かりました」
 愛原:「やっぱりセラピストが決めるんかい!」
 リサ:「それでは全体的にほぐしていきますので、よろしくお願いします」
 愛原:「あ、ああ。よろしく」
 リサ:「それでは、ベッドに横になってください」
 愛原:「あ、ああ。分かった」

 私は自分のベッドに横になろうとした。
 だが、リサは私の手を掴んだ。

 リサ:「そこじゃなくて、こっち!」
 愛原:「えっ?」

 リサは隣のツインルームに連れて行くと、ドアを閉めた。
 高橋が私達の部屋に取り残された感じだ。

 高橋:「おい、コラ!開けやがれ!!先生をどうする気だ!?」

 向こうから高橋の怒鳴り声と、ドアを乱暴に叩く音がする。

 リサ:「わたしのベッドに横になって。『リサ・トレヴァーの個室マッサージ店』へようこそ」

 リサはニタァッと笑った。
 口元からは牙が覗いている。
 要は、第1形態に戻ったということだ。

 愛原:「個室マッサージの意味が分かってるんだろうな!?」
 リサ:「もちろん。早くうつ伏せになって」
 愛原:「うう……分かった」

 こりゃマッサージが終わらないことには、部屋から出してもらえなさそうだ。

 愛原:「高橋、大丈夫だ!普通にマッサージしてもらっているだけだ!心配するな!」
 高橋:「本当っスか!?」

 こう言っておかないと、本当に高橋はどこからかロケットランチャー調達して、隣の壁をぶっ壊しそうだ。
 リサは私の上に跨ると、肩を揉み始めた。

 愛原:「うう……そこそこ……」
 リサ:「ここですか?この辺りですか?」
 愛原:「そうそう」
 リサ:「温泉のおかげで、だいぶほぐれてる。これなら、わたしでも肩こり解消させられそう」
 愛原:「うう……何かスマンねぇ……」
 リサ:「いい。前回は先生の肩だけほぐせなかった。だから今回は、そのリベンジ。温泉の効能に『肩こり』って書いてあったから、これである程度ほぐせば、イケると思った」
 愛原:「ホントだなぁ。きっとほぐれるよ」
 リサ:「エヘヘ……」

 時折、顔の横にチラつく長い爪が少し怖いが、少なくともその爪は私を引き裂く為の物ではないと信じている。

 リサ:「次は腰~」
 愛原:「腰もなかなか疲れてるんだよなぁ……」

 鬼の姿をしたBOW(生物兵器)にマッサージされている人間なんて、世界中どこを探しても私だけだろうなぁ……。

 リサ:「次は太もも~」
 愛原:「リンパマッサージだな」
 リサ:「ふふ……先生のここ、ゴリゴリ言ってる……」

 リサは私の血中老廃物に涎を垂らした。

 リサ:「でも、まだ我慢。はい、では仰向けになって」
 愛原:「おー」

 私は仰向けになった。
 これが本当のマッサージ店だと、目にタオルなどを当ててくれるのだが、リサはそうしなかった。
 リサは私の頭側に回ると、今度は肩の前側を手で押して来た。

 リサ:「腋にもリンパが通ってて、ここも疲れが溜まりやすいんだって」
 愛原:「そうなのか」
 リサ:「はい。しっかりほぐしましょうね」
 愛原:「ああ」
 リサ:「次は足つぼ。……今日は色々歩いたから、老廃物が溜まってそうだね……じゅるっ」
 愛原:「やっぱり吸うのか?」
 リサ:「吸いたーい……」

 リサは右手の人差し指をくわえて言った。
 そして、ペロッと舌を出す。

 愛原:「分かった。じゃあ、吸い出してもらおうかな」
 リサ:「わぁい」

 リサは私の足裏をマッサージし始めた。
 所々、ゴリゴリとする箇所がある。
 老廃物が溜まっている場所だ。
 リサは指先を変化させ、無数の髪の毛より細い触手をそこに突き刺した。
 髪の毛よりも細い針なので、痛みは全く無い。
 しかも傍目から見て、一応足つぼマッサージをしているように見えるのだから不思議だ。
 但し、老廃物だけきれいに吸い取れることはなく、やはり血も少し吸われてしまう。
 リサとしては、私への吸血も目的の1つなのだ。
 だが、疲れが取れる感覚はあっても、血が吸われている感覚は無かった。

 愛原:「どうだ、リサ?俺の血と老廃物は」
 リサ:「美味しい……。先生、だいぶ疲れてるね?前回マッサージした時よりも、更に血がドロドロだよ?」
 愛原:「そ、そうか。やっぱり、俺も歳だなぁ……」

 それにしても、リサのこのマッサージは癖になる。
 本当にスッキリする感じだ。
 貧血にならない程度の吸血でこれだけスッキリ、酔いも醒めるほどなら、毎日やってもらいたいほどだ。

 リサ:「……ック!」
 愛原:「ん?どうした」
 リサ:「な、何でもない……ヒック!」

 しゃっくりしてる?
 私の老廃物と血を吸い取っているのだから、腹いっぱいになってゲップをするのなら分かるが、これではまるで……。
 ん?私の酔いが醒めている?

 リサ:「ヒック!ひゃ、ひゃっくり……ック!ひゃっくり……止まんにゃい……!」
 愛原:「リサ!?」

 私が飛び起きると、リサの顔や体全体が赤みがかっており、目も充血していた。

 愛原:「お、オマエ、もしかして!?」
 リサ:「も……もうダメ……」

 リサはバタッと仰向けに倒れた。
 浴衣の胸がはだけ、下に着けている黒いスポブラや、下半身からは黒いショーツが覗いている。

 リサ:「グー……!グー……ッ!」

 リサはイビキをかいて昏睡した。
 私は風呂上がりにビールを飲んでいた。
 そして、そこに含まれていたアルコールは、私の血中を巡る。
 それをリサを吸い取った為に、リサもまた酔っ払ってしまったのだ。
 で、逆にアルコールを吸い出された私の方の酔いが醒めた。

 愛原:「わ、悪かったな、リサ」

 私はリサを抱き抱えて、ベッドに寝かせた。
 ラスボスを張る実力を持つ上級BOWは、酒に弱かった!

 高橋:「先生、あのリサを倒すなんてさすがです!やっぱ先生は一流の探偵ですよ!!」
 愛原:「いや、探偵は関係無いと思うが……」

 リサは酔っ払うとすぐに寝込むタイプか。
 うむ、一応覚えておこう。
コメント
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