報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「帰省最終日」 5

2022-06-06 20:14:07 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月7日19:15.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 湯快爽快おおみや]

 入浴した後、館内着に着替えて食事処に行き、夕食を取る稲生家とマリア。
 館内着は作務衣タイプを着ている。

 マリア:「えっ?!大師匠様がいらしてたの!?」
 勇太:「そうなんだ……」
 マリア:「通りで天気がいきなり良くなったと思った……」
 勇太:「さすが大師匠様だね」
 マリア:「そりゃあ、雲の上の御方だもの」

 夕食はビールで乾杯した後、天ぷらの盛り合わせや刺身の盛り合わせ、生姜焼きなどを注文した。
 屋敷では食べられないものを注文したのは勇太である。

 宗一郎:「今度は、いつ帰って来れるのかな?」
 勇太:「いつになるだろうねぇ……」
 マリア:「師匠のお許しが出たら、と思います」

 今回はイリーナが多忙で日本国内にいなかった為、帰省できた。
 本来は弟子として師匠に付いていなくてはならないのだが、さすがに師匠の地元が戦争中とあっては、まだ経験不足の弟子達を連れて行くわけにはいかなかった。

 勇太:「まあ、今年中に帰れればいいと思ってるよ」
 宗一郎:「その時は、2人の良い報告を待ってるよ」
 勇太:「ま、まずはロシアとウクライナの戦争が終わったらね」
 マリア:「師匠に報告してからにしませんと……」

[同日21:30.天候:晴 湯快爽快おおみや→送迎バス車内]

 夕食の後は自由行動。
 宗一郎のようにまた飲み過ぎて『くつろぎ処』のオットマン付きリクライニングシートで休んだり、佳子のように『手もみ本舗』でマッサージを受けたりの他、勇太とマリアは“カット&ビューティーサロン”で調髪した。

 マリア:「きれいにカットしてもらった」
 勇太:「ますます可愛くなったね」
 マリア:「今ここでコック硬くしても、何もしないよ?」
 勇太:「し、してないって!」

 館内着から私服に着替え、最後の精算が終わって、シューズロッカーに向かう。

 勇太:「おー、夕方とは打って変わっての快晴!月がきれいだね」

 外に出て、勇太は空を見上げて言った。

 マリア:「うん。満月の夜は、色々な人外が空を飛びたがるという。魔界ではドラゴンしかり、ヴァンパイアしかり、そして……魔女も含まれる」
 勇太:「ホウキ乗り達だね」

 マリアも魔女には分類されるのだが、師匠のイリーナがそもそもホウキ乗りではなかったということもあり、マリアもホウキには乗らない。
 その代わり、瞬間移動魔法を習得するように指導されている。
 中距離程度なら比較的マスターも簡単なのだが、遠距離の場合はMPの消費量が大きいし、短距離は到着地の細かい設定が厳しい。

 勇太:「おおっ、誰か乗ってるよ?」

 月の光を一部遮るように、ホウキ乗りが2人飛行しているのが勇太の目に見えた。

 マリア:「本当だ。おおかた、エレーナとリリィだろう。リリィはまだ見習いで、エレーナが指導してるらしいからね」
 勇太:「後輩の面倒を看るのも大変だなぁ……」

 そんなことを話しながら、送迎バスに乗り込む。
 21時30分発が、この施設を出発する最終便だという。
 施設自体はまだ営業しているのだが、バスの運行は終わる。
 週末のせいか、バスは満席に近かった。
 宗一郎と佳子、勇太とマリアといった感じで2人席に前後して座った。

 運転手:「大宮駅行き、最終、発車しまーす!」

 運転手が乗り込んで、バスは出発した。
 ルートの関係で、正面入口の前を通る。
 その際、徐行した。
 何も安全の為だけでなく、駆け込み客がいないかの最終チェックもあると思われる。
 それからバスは裏路地に出て、バス通りに向かう。
 狭い路地を走るので、マイクロバスでないとダメなのだろう。
 もう夜なので、車内はオレンジ色の照明が灯っているが、電車の照明と違ってそこまで明るいものではない。
 車内の様子が分かる程度の明るさなので、本を読むにはちょっと暗い。
 国道バイパスに出ると、相変わらず下り線は車が多かったが、上り線は空いていた。
 しばらくは、片側3車線の道路の左車線を走行した。

[同日21:45.天候:晴 同区内 JR大宮駅→埼京線2142K電車10号車内]

 バスは往路よりも順調に到着した。
 路線バスの降車バス停より手前に停車する。
 ちょうど、パチンコ屋の近くだ。

 マリア:「チップは……」
 勇太:「要らないって」

 逆を言えば、外国では無料送迎バスであっても、あくまで運賃が無料というだけであって、運転手へのチップは別途ということだ。
 もちろん、義務ではない。
 運転手の接客態度が良くて、安全運転で好感が持てれば1ドルか2ドルくらい払えば良い(逆にそうでない場合は不払いでもOK)。
 但し、公共の路線バスに関しては運賃以外払う必要は無い。

 マリア:「そうなんだ」

 バスを降りて、ペデストリアンデッキの階段を昇る。
 しかし、その前にマリアは魔道士のローブを着込んだ。
 5月とはいえ、夜はさすがに冷えるからだ。
 仙台など、ブレザーを着てくれば良かったかなと思ったほどだ。

 宗一郎:「それじゃ、気をつけて帰れよ?」
 勇太:「分かったよ」
 佳子:「イリーナ先生によろしくね」
 マリア:「はい。師匠にお伝え致します」

 西口の南改札からコンコースに入る。
 勇太とマリアは更に下に向かうエスカレーターに乗り、宗一郎と佳子は京浜東北線ホームに向かって行った。

 勇太:「えーと……21時59分発、各駅停車、新宿行き。あれに乗ればいいな」

 最初にエスカレーターに乗ると、降りた先は1階。
 よく見ると、排煙窓の隙間から他の在来線の線路が見える。
 そこから更に階段を下って、地下ホームへと至る。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の19番線の電車は、21時59分発、各駅停車、新宿行きです。発車まで、しばらくお待ち願います。次は、北与野に停車致します〕

 上り副線ホームには、京浜東北線とは色違いのJR電車が停車していた。
 埼京線のラインカラーは緑である為、電車の色もそれが使われている。
 座席の色も、緑色であった。
 その為か、久しぶりにベルフェゴールがモブ乗客として同乗する。

〔この電車は埼京線、各駅停車、新宿行きです〕
〔This is the Saikyo line train for Shinjyuku.〕

 緑色の座席に腰かけると、マリアの緑色のスカートが座席と一体化するかのように見える。
 だが、マリアのスカートはモスグリーン。
 ローブの色は深緑である為、完全に同化するというわけではない。
 ミニスカートから覗く白い足がそれで目立っている形だ。
 マリアは荷棚に人形達の入ったバッグを置くと、それから本を取り出して読み始めた。
 電車内は明るいので、本を読むのも大丈夫だ。

〔「この電車は21時59分発、埼京線、各駅停車の新宿行きです。発車までご乗車になり、お待ちください」〕
コメント
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