[2月22日22:45.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所→タクシー車内]
出発当日の夜になって、私達は一旦、事務所に移動した。
ここで合流するのは、斉藤絵恋さんとパール。
但し、パールはあくまで見送りだけである。
リサ:「先生、タクシー来た」
事務所の窓から外を見ていたリサが言った。
愛原:「よし。それじゃ、行くとしよう」
私は最後に出て事務所を閉め、エレベーターに乗った。
パール:「御嬢様、どうか気をつけて」
絵恋:「分かってるわよ。リサさんや愛原先生も御一緒なんだから大丈夫よ」
パール:「いえ、その逆です」
絵恋:「逆?」
パール:「旦那様が愛原先生方に依頼されたということは、それほど危険な事なのではないかと」
愛原:「さすがパール、伊達に修羅場を潜ってないな。まあ、大丈夫だよ」
高橋:「そうだぜ。先生なら安心だ」
パール:「そうですか」
高橋:「俺……無事に帰れたら、先生に婚姻届の保証人にサインしてもらうんだ……」
愛原:「何さらっとフラグ立ててるんだよ!?」
パール:「ほお……」
愛原:「パールも本気にしない!」
そしてビルの外に出て、予約したタクシーに向かう。
愛原:「すいません、予約した愛原です」
運転手:「お待ちしておりました。どうぞ」
荷物はハッチを開けてもらって、そこに積む。
助手席には高橋に乗ってもらい、私とリサと絵恋さんは後ろに乗る。
愛原:「東武浅草駅までお願いします」
運転手:「はい、東武の浅草駅ですね」
パールの見送りに手を振る絵恋。
車は深夜の新大橋通りを走行した。
種別表示は、『予約』から『割増』に変わった。
愛原:「これで行けば、だいたい発車の1時間前に着けるだろう」
絵恋:「かなり早いですね」
愛原:「しょうがない。早めに行って、集合場所の確保をしないといけないからな」
リサ:「それを本当は、サイトーのお父さんがやるはずだったんだ?」
愛原:「そ、そうだな。一応、慣例的にPTA会長がやることになってるから……」
コングロマリット企業の社長が、深夜の浅草駅で修学旅行生の集合場所の案内とか……シュールだな。
そのうち、この慣例も廃れるのだろう。
[同日23:00.天候:晴 東京都台東区花川戸 東武浅草駅]
深夜の空いている道路を進み、私達は無事に東武浅草駅へと到着した。
運転手:「こちらでよろしいですか?」
愛原:「あ、はい。ここでいいです」
私はタクシーチケットで料金を払った。
これは斉藤社長からの頂き物である。
さすがに、完全に丸投げすることになったお詫びの意味も込められているのかもしれない。
因みに、帰りの分もあるというw
私が料金を払っている間、他の3人は先に降りて、後ろに積んだ荷物を降ろしていた。
愛原:「よし、中に入ろう」
控えと領収証をもらった私は、最後にタクシーを降りた。
そして、駅の中へと入る。
リサ:「お店、やってない」
愛原:「もうこんな時間だからな。あとは、コロナ禍による時短というのもあるだろう」
絵恋:「リサさん、もしかしてお菓子とか全然買ってないとか?」
リサ:「お菓子は買っている」
愛原:「そうだろうそうだろう。昼間、あんなに買ってたもんな」
リサ:「少しは食べたけど……」
愛原:「食べたんかーい!」
リサ:「ちょっとだけ」
愛原:「自販機は稼働してるから、飲み物くらいなら自販機で調達できるだろう」
夜行列車のお供に、ペットボトルは欠かせないからな。
大きな階段を挟んで、両側にエスカレーターがある。
これで改札口の前まで行くと、その左後ろ側に待合室がある。
そこが集合場所となる。
リサ:「自販機はある」
愛原:「そう、自販機はあるんだ」
リサ:「お菓子の自販機はある?」
愛原:「それはどうだろう?」
エスカレーターを上がって、左後ろにあるので、初見だと分かりにくいかもしれない。
私は荷物の中から、腕章と幟を取り出した。
腕章は緑色に白抜き文字で、『東京中央学園上野高校PTA』と書かれている。
私と高橋は左腕にその腕章を着けた。
そして幟は、『東京中央学園上野高校 集合場所』と書かれている。
愛原:「よし、高橋。オマエはこの幟を持って、そこの待合室の前に立っててくれ。俺はエスカレーターの前で立哨・案内する」
高橋:「は、はい!」
警備員時代の名残か、つい立哨という言葉が出てしまった。
リサ:「わたしも行くー」
絵恋:「わ、私も!」
愛原:「こらこら、高橋を1人にしてやるな」
高橋:「いや、俺は別にいいっスけど……」
エスカレーター前に行くと、2人のスーツ姿の男が上がってきた。
ケンショーグリーン:「クフフフフ……。こんばんは。先般の始業式における大感動は、未だ冷めやらぬものであります」
ケンショーブラック:「ただいまより、修学旅行を開催致します」
愛原:「な、何ですか、あなた達は?」
ケンショーブラック:「それでは、グリーンが自己紹介を致します」
ケンショーグリーン:「クフフフフ……。この度は顕正ツーリストをご利用頂き、真にありがとうございます。私共、本日より皆様のお世話をさせて頂く、顕正ツーリストの横田と申します。コードネームはケンショーグリーン。以後、お見知りおきを」
ケンショーブラック:「それでは、私が自己紹介をさせて頂きます。私も同じく、顕正ツーリストから派遣されました矢島と申します。コードネームはケンショーブラックであります。あっつぁブログでは、『アデランス』という不本意な渾名を与えられましたが、この度、『ケンショーブラック』というコードネームを名乗らせて頂くものであります。何卒、よろしくお願い申し上げます」
愛原:「りょ、旅行会社の人!?そんな怪しい名前の旅行会社だったかなぁ?」
ケンショーグリーン:「クフフフフフ……。さすがは、御嬢様学校の聖クラリス女学院の生徒さんですね。早速美少女2人とお会いでき、大変な功徳です。クフフフフフ……」
リサ:「キモっ!」
絵恋:「何このオヤジ……!」
大沢:「ちょっと待ったぁーっ!!」
階段をバタバタと駆け上がって来る、これまたスーツ姿の男女2人が走って来た。
大沢:「アンタ達は違うだろ!この人達は東京中央学園の関係者だぞ!」
愛国清澄:「そうよ!ケンショーは去りなさい!」
ケンショーブラック:「それでは私共は、これにて終了致します。ご苦労さまでした!」
脱兎の如く逃げて行くケンショー2人。
私が唖然としていると、1人がにこやかに名刺を差し出して来た。
大沢:「大丈夫でしたか?私達は妙観光の者です。本日より東京中央学園の皆様のお世話をさせて頂く、大沢と申します」
愛国清澄:「同じく愛国清澄です。よろしくお願い致します」
愛原:「そ、そうでしたか。あなた達が本物の……。私は愛原と申しまして、PTA会長の代理を務めさせて頂くことになりました。もう1人、助手に高橋という者がいまして、彼は今、待合室の方にいます」
大沢:「顕正ツーリストは偽物ですからね。私共、妙観光は本物です。是非ともお任せください」
愛原:「よろしくお願いします」
びっくりした。
これまた聞いたことの無い旅行会社であるが、こちらは誠実そうな2人だし、大丈夫だろう。
出発当日の夜になって、私達は一旦、事務所に移動した。
ここで合流するのは、斉藤絵恋さんとパール。
但し、パールはあくまで見送りだけである。
リサ:「先生、タクシー来た」
事務所の窓から外を見ていたリサが言った。
愛原:「よし。それじゃ、行くとしよう」
私は最後に出て事務所を閉め、エレベーターに乗った。
パール:「御嬢様、どうか気をつけて」
絵恋:「分かってるわよ。リサさんや愛原先生も御一緒なんだから大丈夫よ」
パール:「いえ、その逆です」
絵恋:「逆?」
パール:「旦那様が愛原先生方に依頼されたということは、それほど危険な事なのではないかと」
愛原:「さすがパール、伊達に修羅場を潜ってないな。まあ、大丈夫だよ」
高橋:「そうだぜ。先生なら安心だ」
パール:「そうですか」
高橋:「俺……無事に帰れたら、先生に婚姻届の保証人にサインしてもらうんだ……」
愛原:「何さらっとフラグ立ててるんだよ!?」
パール:「ほお……」
愛原:「パールも本気にしない!」
そしてビルの外に出て、予約したタクシーに向かう。
愛原:「すいません、予約した愛原です」
運転手:「お待ちしておりました。どうぞ」
荷物はハッチを開けてもらって、そこに積む。
助手席には高橋に乗ってもらい、私とリサと絵恋さんは後ろに乗る。
愛原:「東武浅草駅までお願いします」
運転手:「はい、東武の浅草駅ですね」
パールの見送りに手を振る絵恋。
車は深夜の新大橋通りを走行した。
種別表示は、『予約』から『割増』に変わった。
愛原:「これで行けば、だいたい発車の1時間前に着けるだろう」
絵恋:「かなり早いですね」
愛原:「しょうがない。早めに行って、集合場所の確保をしないといけないからな」
リサ:「それを本当は、サイトーのお父さんがやるはずだったんだ?」
愛原:「そ、そうだな。一応、慣例的にPTA会長がやることになってるから……」
コングロマリット企業の社長が、深夜の浅草駅で修学旅行生の集合場所の案内とか……シュールだな。
そのうち、この慣例も廃れるのだろう。
[同日23:00.天候:晴 東京都台東区花川戸 東武浅草駅]
深夜の空いている道路を進み、私達は無事に東武浅草駅へと到着した。
運転手:「こちらでよろしいですか?」
愛原:「あ、はい。ここでいいです」
私はタクシーチケットで料金を払った。
これは斉藤社長からの頂き物である。
さすがに、完全に丸投げすることになったお詫びの意味も込められているのかもしれない。
因みに、帰りの分もあるというw
私が料金を払っている間、他の3人は先に降りて、後ろに積んだ荷物を降ろしていた。
愛原:「よし、中に入ろう」
控えと領収証をもらった私は、最後にタクシーを降りた。
そして、駅の中へと入る。
リサ:「お店、やってない」
愛原:「もうこんな時間だからな。あとは、コロナ禍による時短というのもあるだろう」
絵恋:「リサさん、もしかしてお菓子とか全然買ってないとか?」
リサ:「お菓子は買っている」
愛原:「そうだろうそうだろう。昼間、あんなに買ってたもんな」
リサ:「少しは食べたけど……」
愛原:「食べたんかーい!」
リサ:「ちょっとだけ」
愛原:「自販機は稼働してるから、飲み物くらいなら自販機で調達できるだろう」
夜行列車のお供に、ペットボトルは欠かせないからな。
大きな階段を挟んで、両側にエスカレーターがある。
これで改札口の前まで行くと、その左後ろ側に待合室がある。
そこが集合場所となる。
リサ:「自販機はある」
愛原:「そう、自販機はあるんだ」
リサ:「お菓子の自販機はある?」
愛原:「それはどうだろう?」
エスカレーターを上がって、左後ろにあるので、初見だと分かりにくいかもしれない。
私は荷物の中から、腕章と幟を取り出した。
腕章は緑色に白抜き文字で、『東京中央学園上野高校PTA』と書かれている。
私と高橋は左腕にその腕章を着けた。
そして幟は、『東京中央学園上野高校 集合場所』と書かれている。
愛原:「よし、高橋。オマエはこの幟を持って、そこの待合室の前に立っててくれ。俺はエスカレーターの前で立哨・案内する」
高橋:「は、はい!」
警備員時代の名残か、つい立哨という言葉が出てしまった。
リサ:「わたしも行くー」
絵恋:「わ、私も!」
愛原:「こらこら、高橋を1人にしてやるな」
高橋:「いや、俺は別にいいっスけど……」
エスカレーター前に行くと、2人のスーツ姿の男が上がってきた。
ケンショーグリーン:「クフフフフ……。こんばんは。先般の始業式における大感動は、未だ冷めやらぬものであります」
ケンショーブラック:「ただいまより、修学旅行を開催致します」
愛原:「な、何ですか、あなた達は?」
ケンショーブラック:「それでは、グリーンが自己紹介を致します」
ケンショーグリーン:「クフフフフ……。この度は顕正ツーリストをご利用頂き、真にありがとうございます。私共、本日より皆様のお世話をさせて頂く、顕正ツーリストの横田と申します。コードネームはケンショーグリーン。以後、お見知りおきを」
ケンショーブラック:「それでは、私が自己紹介をさせて頂きます。私も同じく、顕正ツーリストから派遣されました矢島と申します。コードネームはケンショーブラックであります。あっつぁブログでは、『アデランス』という不本意な渾名を与えられましたが、この度、『ケンショーブラック』というコードネームを名乗らせて頂くものであります。何卒、よろしくお願い申し上げます」
愛原:「りょ、旅行会社の人!?そんな怪しい名前の旅行会社だったかなぁ?」
ケンショーグリーン:「クフフフフフ……。さすがは、御嬢様学校の聖クラリス女学院の生徒さんですね。早速美少女2人とお会いでき、大変な功徳です。クフフフフフ……」
リサ:「キモっ!」
絵恋:「何このオヤジ……!」
大沢:「ちょっと待ったぁーっ!!」
階段をバタバタと駆け上がって来る、これまたスーツ姿の男女2人が走って来た。
大沢:「アンタ達は違うだろ!この人達は東京中央学園の関係者だぞ!」
愛国清澄:「そうよ!ケンショーは去りなさい!」
ケンショーブラック:「それでは私共は、これにて終了致します。ご苦労さまでした!」
脱兎の如く逃げて行くケンショー2人。
私が唖然としていると、1人がにこやかに名刺を差し出して来た。
大沢:「大丈夫でしたか?私達は妙観光の者です。本日より東京中央学園の皆様のお世話をさせて頂く、大沢と申します」
愛国清澄:「同じく愛国清澄です。よろしくお願い致します」
愛原:「そ、そうでしたか。あなた達が本物の……。私は愛原と申しまして、PTA会長の代理を務めさせて頂くことになりました。もう1人、助手に高橋という者がいまして、彼は今、待合室の方にいます」
大沢:「顕正ツーリストは偽物ですからね。私共、妙観光は本物です。是非ともお任せください」
愛原:「よろしくお願いします」
びっくりした。
これまた聞いたことの無い旅行会社であるが、こちらは誠実そうな2人だし、大丈夫だろう。
因みにこの他、『ソッカーツアーズ』のエージェントとして、んっ?さんやか河童さんにもお願いしようかと思っていたのですが、こちらはボツですw
……でも本当に学会系旅行会社、ありそうな気がしてしょうがない今日この頃です。